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 CODE:SWORD WIND
  
「こちら第二重MT小隊!部隊長、ACが……!」 
 狭いMTのコクピットの中で、我を忘れたかの様に叫ぶ声の主の瞳にゆらぐ朱い影が視界に映った。 
「…………っ!?」 
 報告も、泣き叫ぶ時間さえも与えられない。一瞬の閃光が彼を包み込んだ。 
 
 戦闘ヘリで指揮をとる壮年の部隊長は苦い顔で歯がみした。グレーのパイロットスーツにはクレストの証がつけられている。 
「く……、早い。軽量二脚AC?まさか黒き死神か?いや……朱い?あれは…。アリーナBランク『アイン・スカーレット』………レイヴン名『イヴァ=ラピス』!?気をつけろ!どちらにしても最悪だ!」 
 
 
ARMORDE CORE 3 SIDE STORY 
CODE:SWORD WIND(太刀風) 
 
 
「これで二万コーム…整備費用云々差し引きで一万と少し……」 
 レイヤード工場区の一端。個人用ACガレージの前で、Gパンと黒いハイネックに朱い革ジャケットを着た女はグローバルコーテックス社支給の端末を開いて口座を確認していた。 
『新着メールが届いています』 
 突然現れるメッセージに大した反応も見せず、早速メールを開く。 
『差出人:サム・アックス 件名:事前通告』 
『……ラピス。私も詳しくは分からんが近いうちに大規模な動きがあるらしい話を聞いた。恐らく依頼は自然と舞い込んで来る。機体は万全にしておけ。アリーナも控えた方が良いだろう』 
 ラピスは端末を閉じた。控えろと言われても明日には試合がある。ラピスからの挑戦だ。この試合は外せない。 
 ……ロイヤルミスト。先日Aランクから落ちはしたが実力が落ちた訳ではない。彼に勝てばBランクアリーナの頂点だ。 
 重量級と軽量級の相性はずんとこ悪い。アイン・スカーレットは圧倒的に不利だ。だから操者の腕が問われて観客はどんな戦いをするのか期待する。 
「先生っ」 
 ラピスに対して弾んだ声で呼ぶダークブルーの髪の女。TシャツにGパンといったレイヴンならありきたりな格好だがかなり若い。 
「レジーナ。どうだった?」 
 聞かれてレジーナは肩をすくめてかぶりを振った。 
「グレネード壊されちゃった。あれ、修理するより買い直した方が早いよ」 
 今日彼女はアリーナの試合があると言っていた。結果は様子から充分わかる。 
 ラピスも肩をすくめて微笑した。 
「この機会に別の武器付けてみようか。あれは火力にバランスが偏りすぎて扱いが難しいから」 
 まだ新人で、Eランクのレジーナにグレネードライフルは高価だ。とにかく金の工面が出来るまでの代用品は必要だろう。 
 ……しかしラピスもアリーナに登録したのはレジーナより少し前だ。ラピスがACに乗ってから数年、しばらくの間は任務専門に各地へと出稼ぎしていた。 
 アリーナに来た理由はアリーナの方が稼げると聞いたからだ。参戦するや否やレイヴンランクが上る毎に連戦快勝を続けた。まあ現在トップの黒き死神程の無茶な勢いは無かったがペースは早い方だ。 
 ちなみに試験の合格祝いに進呈されるAC、いわゆる「初期装備」は維持費がかかるだけで邪魔なのでさっさと売っ払った。 
 レジーナとは彼女のレイヴン試験を補助して以来の付き合いだ。礼のメールをきっかけにアリーナで挑戦。見事なまでに打ち負かしてしまったが以降、ACのアセンブルに関する助言から弾薬費の値切りテクニックまで、実に幅広い講義をしてきた。 
「とりあえず夕飯にしようか。奢ったげる」 
「……え?」 
 レジーナは警戒の姿勢ですすす、と引いて見せた。 
「オゴル…?あの金にがめつい先生が?……ま、まさか明日死地に赴くとか……」 
「……あのねえ」 
 まあ確かに豪華なものを奢ろうとはハナから思ってないが…ラピスは半眼でレジーナのTシャツをつまむと無言でひきずっていった。 
「さあ、好きな大衆食堂を選んでいいわよ。安い大衆食堂なら何・処・で・も」 
「あ〜!ごめんなさい〜!」 
 
 
「ん…………………何?」 
 朝、ベッドから半身を覗かせ、ラピスは眠いのをこらえて先程音をたてた枕元の端末を掴んだ。 
 ………メールだ。 
『差出人:ユニオン 件名:全レイヴンへ』 
 ラピスは半裸の体にもそもそと黒いハイネックを着てからメールを開けた。 
『簡潔に説明する。明日、いよいよレイヤード中枢に侵入する者がいる。だが実働部隊の戦力差に潰されてはおしまいだ。そこでレイヴン諸君に、管理者の実働部隊の陽動を依頼したい。報酬は十二分のはずだ。この任務は意思のある者だけで構わない。より多くの者の受諾を期待している』 
 ……ラピスがそのメールを読み返していると、再びメールが届いた。 
『差出人:ロイヤルミスト 件名:試合延期』 
『ユニオンからの依頼はそちらにも来たと思う。俺はこの依頼を受ける事にした。アリーナで機体を損傷させる訳にはいかないので申し訳無いがお前の挑戦試合は延期させてもらいたい』 
 滅多に依頼を受けないロイヤルミストが御苦労な事で…。ラピスは胸中でそう呟くと依頼受諾の旨を記したメールをユニオンに返した。 
 
 
「……行くのか?」 
 
眼帯の女はラピスに尋ねた。ささやかに流行のピザパーラーで、ラピスとレジーナと眼帯をした薄緑の髪の女が一つのテーブルを囲んでいる。周りのはやしたててくる男共は、銃を見せ、眼帯の彼女が少し気迫を込めて睨むとおとなしくなった。小心者め、と呟くとラピスは苦笑した。 
「ええ」 
「厄介な任務になるぞ」 
「どうしようかなー、あたし」 
 レジーナはコーラをすすりながら一人で呟く。 
「ファナティックは?」 
 ラピスが質問を返した。ファナティックはジャケットの襟を撫でて間をおいた。 
「いや……まだ決めていない」 
「さっきアリーナ見て来たんだけど試合の中止とか延期多くてさー、結構な数が参加するらしいね。ランク問わずに全ランカーに依頼メールいったみたい」 
 ここの特製プラネットバターピザを掴みながらレジーナが言う。 
「何よりAC相手の危険な任務になる。陽動とはいえ低ランクのレイヴンが行っても死ぬだけだ」 
 ファナティックがベーコンマヨソテーピザをかじる。 
 ラピスはトマトピューレカリーピザを平らげ、指に付いたチーズを舐めてから二人に提案した。 
「ね、一人じゃ危ないなら一緒に来る?」 
 屈託の無い笑みで提案するラピスに、レジーナとファナティックはしばらく、理解するまで間の抜けた顔をした。 
 
 
『お人好しだな、お前も。わざわざ低ランクの者まで連れていくのか?誰が死んでも知らんぞ』 
 ラピスの担当オペレーター、サム=アックスはやれやれと呆れた様に言った。言葉のみの付き合いだがラピスは遠慮の無いエリートタイプの人間だと思っている。今回は彼女らのオペレーターから代表して統括するそうだ。 
 ラピスはACのコクピットの中でぼんやりとしながら答えた。 
「危険だから最低二人一組で出撃なんでしょうが。三人いても構いやしないわ、僚機じゃないから収入も変わらないし……あ、きたきた」 
『AC反応、レッドアイ合流確認。エキドナはまだか?そろそろ移動時間だぞ。まったく…若い新人は緊張感が無い』 
 ラピスもまだ23だ。レジーナはレイヴンの年齢としては20と若く、割と珍しい。 
 ラピス達のチームコード『トライバード』は第二都市区担当だ。 
 居場所の分からない彼等をおびき出す手段は至って単純。管理者が標的としていた『各施設』や『脅威となる様な高エネルギー反応』のデータを擬態。再び新たな施設が稼働を開始したと思わせるのだそうだ。気付かれても中枢に戻れない様に要所要所に足止め部隊も配置されているとか。 
『ああ間に合った……グレネードが届かなくて焦ったよ』 
 アリーナ近くの飛行場に立つ二機の前にグレネードライフルを見せて近付いてくるAC、ラピスもマシンガンを持つ手を上げて軽く挨拶してやった。 
『エキドナを確認。時間だ、作戦領域に移動するぞ。早く輸送機に乗れ』 
 
 ACを固定させるとラピス達は格納庫の中でちちくりあっていた。すぐに目的地に到着するがコクピット内は居心地があまり思慮されているとは言えない。 
「よくグレネードライフル買えたわね。あれ、五万はしてたでしょ」 
 今は全員、同じ様なパイロットスーツを着ている。ただ対衝撃など戦闘性を重視しているので肌触りも着心地も良くはない。 
「FCSとかいらなくなった旧いパーツ売ってなんとかね。代わりならバズーカも有りかなーなんて思ったけど値段はあんまり変わらないから、やっぱりカッコイイのがいいじゃん?」 
 レジーナは勝ち気で派手な戦闘が好きなレイヴンだ。普段はあまりそういった面は見られないが、ACが絡むと特に際立つ。 
「フン…陽動任務なのに装弾数が少ない……おとなしくライフルでも使っていろ、その方が余程役に立つ」 
 …これはファナティック。一言で言えば彼女は素直じゃない。言動に突き放す様な冷たいニュアンスが含まれているが任務には必ず僚機を伴う辺りからも分かる様に要は寂しがりだ。 
 何しろ会話している彼女は生きているというか元気と言うべきか…とにかく充実している様子がラピスにも伺えた。 
「そっちだってマシンガンとスラッグガンなんかでAC倒せるの?なんか四脚って脆そうだし?」 
 ラピスはレッドアイを見やった。スカーレットと同じMG−500と肩に担がれた拡散砲にレーダー…対してエキドナはグレネードライフルに小型ロケットを両肩に積んでいる。 
 …アイン・スカーレットの武装は両機の間をいっているらしいと今気付いた。 
『なにを無駄話している。間も無く到着だ、各機最終確認を忘れるな』 
 サムの声が格納庫内に響く。三人は軽く会釈まがいの行為をしてそれぞれの愛機に乗りこんだ。 
 
 輸送機が撤収していく。ビルの間からその様子を眺めてラピスは大きく息を吐いた。ヘルメットをかぶり通信をオープンにする。 
「スカーレットより各機へ、既に擬態は起動してあるらしいわ。何時来るか分からないわよ」 
 擬態を生み出す装置が何処にあるか知らされていない。特に防衛目標がある訳でも無し…ただ近くにあるのは間違い無い。 
『『ネットランサー』配置についた』 
『『マリンボード』ポイントに到着』 
 他のチームも近くにいるらしい。通信機から男の声がした。ついでにちらほらとユニオンのものらしきMTも展開していた。やはりかなりの大仕事だ。 
(後は待つだけ……) 
 今頃例のレイヴンは中枢に向かって進んでいる。乱戦で軽量二脚のスカーレットに何処までやれるか……対策は講じてきたがあれは…… 
『て、敵襲!うわっ!』 
 遠方で爆発が起こったのが見えた。ラピスは素早く最後の動作を行った。 
『メインシステム 戦闘モード、起動します』 
『管理者だ!ACが……!ザ…ザザ……』 
 ノイズが走る。通信網がにわかに騒がしくなった。 
「エキドナ、レッドアイ。チームなんだから離れ過ぎたら駄目よ、陽動とは言っても目標は撃破。流れ弾に注意して。サム、向こうの数は?」 
『まだはっきりとしていないが少なくとも実働部隊ACが数機、三方向から襲撃してきている』 
「一体擬態装置はここにいくつあるのよ、最低一部隊AC三機として九機?…十機以上は下らないわね」 
『あのACが十機…?まいったな』 
 レジーナがうんざりと呟く。ファナティックはレーダーで周りを伺っている。 
『…。各機へ、他の地域にも同時に現れたそうだ、増援は期待出来ないぞ』 
『一機接近!』 
 ファナティックが短く叫んだ。ラピスのレーダーにも反応が出る。 
「四脚タイプか…。レッドアイはディフェンス、エキドナは援護!」 
 手早く指示するとスカーレットはロケットで牽制し、マシンガンを構えて接近した。 
「抵抗する暇は与えない!」 
 相手の迎撃を縫い関節を狙ってマシンガンを撃つ。距離が詰まると月光がコアを袈裟斬り。瞬く間に敵ACが機能を失う。 
『援護は?』 
『…防御は?』 
 とり残された二人はそれぞれぽつりと呟いた。 
「サム、状況は分かった?」 
『…確認されたのはACだけでも十三機。小型戦闘メカも多数。今は周りのチームと交戦中だ。いつそちらに抜けてくるか分か……』 
「来た!」 
 レジーナが小型ロケットを中量二脚AC目掛けて発射。弾数の関係からあまり無駄弾は撃てない。ブレードで斬るのが望ましいが機動性がいまいちなエキドナではリスクが高い。 
 ラピスは新手の四脚を相手にしている、あてにしてはいけない。レジーナは神経を手先に集中させて接近を試みた。 
 敵機発砲。バズーカだ、当たると手痛い被害を被る。しかし回避もギリギリだ、次の一撃が避けきれない! 
 レッドアイがエクステンションシールドと左腕のシールドを展開してエキドナの前に躍り出た。 
 被弾。しかしダメージは軽微。 
『どいていろ!』 
 スラッグガンが装甲に穴を開ける。レジーナはその隙にグレネードを構えた。 
「くたばれっ!」 
 爆発、四散。レジーナとファナティックはAC越しに互いに微笑して策敵を続けた。 
 
 
『う……弾切れだ。エキドナ後退する』 
 紺と紫の入った機体が後退していくのを見やってラピスは素早く思案を巡らせた。 
(補給に退がればタイムラグは数分…スカーレットの残弾数は約五割、担当地域にいる敵の数は…) 
 現行最強とうたわれる月色のブレードが管理者の操るMTを薙ぎ払う。既に『トライバード』の撃墜スコアはAC数機、MTは二桁にのぼる。ちなみに弾薬費は一定の金額までユニオン持ちなので心配無い。 
『レッドアイ、スカーレットから離れ過ぎだ』 
『うるさい。……ちっ!数ばかりいる』 
 サムの忠告を一言で一蹴する辺り、ファナティックらしいがレッドアイはエネルギー効率の関係から単独での長期戦闘には向いていない。僚機を伴うという話からも分かる構成だ。 
『新手の中量二脚AC接近!レッドアイに近いぞ、退がれ』 
 壁役のレッドアイはシールド周りはともかく他のダメージが大きい。当然一対一のAC戦は厳しいなのは目に見えている。 
 ファナティックは舌打ちしながらレッドアイを後退させた。敵機が追撃をかける。相手の攻撃をどうかわせばいいか…、逡巡が生まれた。 
 管理者のACの何が厄介かと言うと、それぞれ武装は勿論、機体構成が違うのだ。 
 決まった対処法がとれない様にする管理者の策だろうが他のチームもこれには苦戦を強いられている。数で勝っている内は大丈夫だろうが複数で連携を組まれれば潰される。 
『レッドアイ、エネルギーは大丈夫?』 
 ラピスの呼びかけに、敵機のレーザーライフル弾を腕のシールドで弾きながらファナティックは確認した。 
「効率四割…まだ保つ」 
『まだ…ってヤバイじゃないの!すぐ行く!』 
 レッドアイのエネルギー効率ではそう遠くない未来、チャージングに陥る。回避に重点を置いて迎撃を行うが…さすがコンピューター、正確な動きでこちらを見据えている。 
 敵機の爆雷ミサイルがEXの連動ミサイルと共に迫る。上と前、…逃げるなら横だ。 
 レッドアイはスラッグガンの散弾性能に頼って小型ミサイルを撃墜した。マシンガンを用いてもよかったが集弾性能が良すぎるMG−500は狙撃の腕が要求される。ラピスでもなければそうそう確実に落とせない。 
 続いてレーザーライフルと連射性能の高いEOで攻めたててくるACにファナティックは苦い顔つきで歯がみした。エネルギー残り二割、レッドゾーンに達する。 
『おまたせっ』 
 スカーレットのマシンガンが敵ACのEOを撃ち破壊した。同時にレジーナの声が入る。 
『エキドナ、戦線復帰する』 
『二人共…早かったな』 
 くすくすと微笑するラピスのスカーレット目掛けてレーザーが飛んだ。ラピスはそれを軽くあしらうと敵機を見据えた。 
「邪魔」 
『するんじゃ』 
『ない!』 
 マシンガンとスラッグガンと三連ロケットが一斉に火を吹いた。 
容赦なく打ち付ける弾丸の嵐に、敵機は全身を穴だらけにして崩れた。 
 
『『トライバード』。自然区の方に援護要請が来ている。そちらに向かってくれ』 
 飛翔して球状の特殊MTを叩き斬るとスカーレットは道路に着地して、ユニオンからの通信に応じた。 
「増援要請?なんで私達なのよ」 
『消耗が少ない』 
「…了〜解」 
 多少投げやりな返事を返すとラピスはレジーナとファナティックを呼び寄せた。『トライバード』全体の消耗は約六割。 
周囲の状況は膠着といった所か、他チームもなんとか互角にやりあっているらしいが荒い声がひっきりなしに聞こえていた。 
『だから敵が集まってきてるから行けって言ってんだよ!『クロスボウ』火線が途絶えているぞ!』 
『ち、畜生!うああああああっ!』 
 
「サム、輸送機は飛ぶの?」 
『無理だな。この乱戦で敵が何処から来るか分からん以上、今から機は飛ばせない。アリーナより南、数キロの辺りに自然区へ繋がる地下道がある。そこを使え』 
 
 確かに地下道はあった。まだ電力系がやられてないおかげで道は明るく、分かりやすい。だが…… 
『ちょっと待って』 
『エネルギーが……ラピス』 
 エキドナ、レッドアイ。この二機はOBも無ければ、エネルギー効率が悪かったり機動性が鈍かったりと移動には向いていない。ラピスは珍しくむくれた。 
「ったくぅ……。早くしないと、この道、中枢の方面にまで伸びてるらしいから敵が来る前にさっさと抜けるわよ」 
 
 ちらほらとはぐれMTみたいなのを撃破しながら進んで来たが、だんだんと数が増えて来たのに気付いたら最後、やはり乱戦になりながら進んだ。 
「…ん?ここにもチームがいる?…サム?」 
『…チームコード『バビロン』と出ている』 
 道路を疾駆するスカーレットのカメラが地下道の分岐路に立つ『FRIEND』と表示された三機のACを捉えた。周りに他のチームは見えないが…なるほど。ラピスは唇の端を僅かに上げた。 
『…『トライバード』?アイン・スカーレット…イヴァ・ラピスか。アリーナの件はすまなかったな』 
『イヴァ・ラピス、レジーナ、ファナティック…ヒュウ、いいねえ〜華やかで。おいロイヤルミスト、俺こっち行っていいか?』 
 堅い口調と軽い口調が通信機から聞こえた。ラピスも調子を合わせて答えてやる。 
「あ〜らBBさん。残念だけどうちは男子禁制なの」 
 ラピスは目の前の軽量二脚ACをブレードで一気に無力化させる。 
『………似ているな』 
「……ん?何?」 
 小さな声量だった。ラピスは聞き漏らしたが、ロイヤルミストが月光を振るう『撃墜王』に返す。 
『確かに構成は似ているが別人だ』 
『……………』 
『すごいな…こんな光景見た事無い』 
 レジーナが『バビロン』を見て感嘆の声をあげた。狙いを定めたグレネードがMTをまとめて一掃する。 
『カカカ、派手だねえ。ここは任せてさっさと行けよ。第二都市区から来たんだろ、自然区は真っ直ぐだぜ?』 
『お前達もせいぜい頑張る事だな』 
 ラピスはファナティックの怖い物知らずに敬意を表したい気持ちになった。自分も大してへつらっていないがトップクラスのランカー三人相手に、その台詞は使いたくない。 
 この時、こっそりとタイラントが拡散バズーカの銃口をレッドアイへと向けたのだが、それを悟ったロイヤルミストがカイザーを二機の間に入れるようにして誤魔化しの声を出した。 
『ああ、御互いにな』 
「それじゃお三方、いずれアリーナでお会いしましょう?」 
 再び移動速度を早めると、『トライバード』は閃光を散らしながらさらに歩を進めた。 
 
 
 自然区はその名の通り、閉鎖的環境におかれた地下世界において自然を人工的に作り、再現した区域だ。ここにもかなりの戦力が展開させていた。 
 ユニオンも、管理者も。 
「はああ…随分な乱戦ねー」 
 補給を受けながら様子を伺う『トライバード』。損傷も増大してきた。 
『昔の戦場って感じ…』 
 敵味方入り乱れての大乱闘、連携をとっている者は見当たらない。戦局は混迷している様だ。 
『何?増援は一チームだけだと!?くそ、こんなんで状況が変わるのかよ!』 
「……誰だか知らないけど言ってくれるわね。エキドナは敵を横から狙い撃って。これは少しずつ切り崩すしか手は無いわ」 
 見た印象、ここは劣勢だ。かなり。まず陣形を修繕しなければ…。 
「各員に告ぐ!いい?陣を組み直して対応するのよ」 
 
 
 グレネードが敵ACを吹っ飛ばし、月光が爆煙を追う様に次の敵に回り込んでいき、胴を薙ぐ。硬直の隙を突いて来た敵は二基のエネルギーシールドが止める。 
 理想的なチームプレイだったが絶対的物量差を覆すのは容易ではなかった。 
『腕部シールドにトラブル……!?ぐぅっ…!』 
『レッドアイ被害増大。推定八割、危険だぞ』 
 MTにスラッグガンを叩き込んでファナティックは荒い息づかいでブースターを吹かした。 
「レッドアイ、もういいわ。退がって。エキドナも限界でしょう、退がるのよ」 
『そんな!まだ私はやれる!』 
 レジーナの声にラピスはダメ、と返した。 
「機体は保ってもパイロットが保たないでしょう。疲れた声してんだから早く退がりなさい」 
 随分長い時間戦闘している。チームのスコアはAC12、MT多数。……上出来だろう。 
『……ラピスはどうする気だ』 
 ファナティックに尋ねられ周囲を見やった。 
 陣形はなんとか形になりつつあった。…だがここまで来るのが遅すぎた。味方機の大半が撃破され劣勢の度合いは酷くなっている。いまだ乱戦状態で孤立している味方もいる。 
『敗色濃厚、撤退も考えねばな』 
『くそ……中枢に向かった奴は何をしている』 
 サムの一言にファナティックは毒づいた。報が来るか全滅か…終わり方としては前者の方がいいに決まっている。 
 ラピスは静かに敵の群れを見つめた。 
「……………仕方無い、か。二人共早く退がりなさい。後は私が片付ける」 
『…え?』 
 ラピスはコンソールに手を伸ばし、スカーレットに付けてあるオプショナルパーツ…その中の最後の一つを起動させた。 
 
 
 やはりMT程度では話にならない!エクレールは運悪く孤立した自分を呪った。 
『撃て!撃つんだ!近付けるな!』 
 隣りのギボンから恐れの感情を宿した声があがる。脱出の用意をしておくか…エクレールは遺憾ながらもシートベルトを外した。 
『な、何だ?何か………、AC?』 
 ドォォン!と連続的な爆発音がコクピットに響いた。 
「………っ!?」 
 次の瞬間、エクレールの眼前を朱い影が横切った。 
 
 
 機体全体から軋み…悲鳴が聞こえてくる。ラピスは構わず次々とターゲットを切り替えて月光を振るった。 
 ACの胴を断ち、MTを蹴落とし、飛来した弾はすんでのところで回避する。ブースターフル稼働で敵ACの上に乗り、脳天から月光を突き立てる。すぐさまスカーレットは跳躍した。吸引音が響く。 
「ぅくっ…………!」 
 オーバードブースト起動、ロケットとマシンガンがMTを片っ端から射抜いていく。正確な射撃だ、マシンガンが確実に装甲の弱い部分を狙っている。 
 ブレーキ中の惰性で二脚ACに体当りざまに月光でコアを貫く。 
 ラピスは顔面に浮き出る汗を拭いたい衝動に駆られたがヘルメットに阻まれるのは分かっているので諦めた。バイザー部分を開け、せめてもの通気性を確保する。 
 気を抜くな、身体が震える。ただ一念してラピスは怒りとも憎しみとも言えない、その怪しく光る双眸を次のターゲットに向けた。 
 
 
「先生………すごい」 
 かなり小さくなってしまったスカーレットを眺めてレジーナは目を丸くして呟いた。手が震えている…思った以上に疲弊していたらしい。ラピスの言う事を聞いておいてよかった。 
『……あの様な戦い方、機体が音を上げる』 
 皮肉っぽく聞こえるが心配しているのだ。ファナティックは機体の安全を確保しながら己の非力を呪った。 
「あれが、上位ランカー………?」 
 
 
 ……。 
 …………。 
 ………………。 
『全機に告ぐ!敵部隊撤退行動を確認!管理者は破壊された、作戦は成功だ!』 
『やった…やったぞー!』 
 ユニオンの通信にレイヴンの多くは歓喜した。管理者が破壊された事よりもようやく戦いの終わりを迎えたという事実に対して。 
 
『ラピス、生きているか、作戦終了だ』 
『先生っ!』 
 ラピスはベルトを外し、ヘルメットを脱ぐと再び荒い呼吸を始めた。無茶をして身体がだるい。湿った髪が肌に張り付き、瞳は虚ろで焦点がぼやけている。びっしりと玉の汗が顔を占める。力無く手で顔を拭う。 
「はあ……、ふう……、こちら、スカーレット、大丈夫…生きてる、みたい……」 
 スカーレットの損傷は八割程度…他にも損耗が酷い。戻ったら大掛かりな修理が必要だ。 
 周りには動かなくなった魂無き屍が累々と一面に広がっている。ラピスは最後の力でOP接続と戦闘モードを切るとコンソールに突っ伏した。 
 
 
 結果として『トライバード』の撃破スコアはAC51機、MT132機。ラピス単独ではAC32機、MT70機という驚異的なスコアを叩き出したが管理者破壊の混乱で、その一連の流れを記した記録が表に出る事は無かった。 
 
 ……この戦い以降、その場に居合わせた者達はラピスを『太刀風』と称する事になる。 
 
 
 しばらくの間は忙しいながらも大きな事件は無く、管理者破壊がもたらした混乱はレイヴンと企業によって収拾されつつあった。 
 結局ロイヤルミストとの試合はアリーナ閉鎖のなんだかんだで行われないまま、ラピスも半ばどうでもよくなっていた。 
 とにかく安い賃金で度々呼び出す企業が気にいらない。任務自体が小さなものだから当然かもしれないがこっちはスカーレットの修理に金がかかったのだ。ユニオンの補償額だけ見れば大きな赤字だった。歩合制ならよかったと後でラピスは嘆いた。 
 ユニオンは力尽きて潰されたと聞くし、管理者破壊の張本人は責任を負わされてか、あちらこちらでよく見掛けると誰かが言っていた。 
 
 
『差出人:キサラギ技術部 件名:礼状』 
 
『諸君らから提供されたデータによってようやくOP−INTENSIFYは市販化の目処がたった。十の機能を備えたこの新商品は必ずや、窮地に立つ我が社に光明をもたらしてくれる事だろう。データ収集の依頼はこのメールが開かれた時点で完了とする。尚、諸君らに預けた試作品は特別報酬として進呈する。今後も活用してくれて結構だ。これまでの我が社への協力、感謝している』 
 
 ガレージに佇む愛機内でメール端末を開くとそんなメールが入っていた。ラピスは口座に振り込まれた結構な報酬ににんまりと唇の両端を上げた。 
 上位ランカーにまわされたこの依頼、変な噂もあったが特に問題は無かったはずだ。やはり噂は噂か。 
 先の大乱戦がこれの初実戦となったが正直代償が大きく、ここぞという時にしか使えない事を考えるとOPスロットを塞ぐのに抵抗が出来る。 
「なら好きにしていいのね、あれは」 
 そう呟いて試しにショップに売りにかけてみた。 
 
 ……そして結果が0Cなのにラピスは肩をすかした。 
「……なんでよ」 
 半眼で呟く。単にまだ表に出ていないだけか。値が設定されていないらしい。 
(ま、手放すつもりも無いけど) 
 あのインテンシファイ、工夫次第でかなり有効なパーツになるだろう。物は使いようだ。 
「あのー、ラピスさん、ジェネレータの出力チェック終わったそうです」 
 まだ大修理の後の調整が甘く、以前の様な操縦感覚が戻らない。依頼も詰まっているので実戦でテストしている様なものである。今日も小一時間したら出撃だ。契約しているメカニックチームの中でも会話の多かったフレックにラピスは手で会釈した。 
 
 
(……傭兵による代理戦争も終わらない。管理者破壊がもたらした今の疲弊しきったレイヤード社会は崩壊寸前。結局…何が変わったの?) 
 ハンガーから機体が外れる。 
 世界が変わろうとも、レイヴンは変わらない。今日はMT強盗集団の粛正へ、太刀風は舞う。 
 
 
 全てはACという超兵器が生み出した惨劇か。 
 
 管理者の狂乱ははたして真実だったのか。 
 
 人はそれを知る術を持たずただひたすらに生き、その時その日の糧を得る。 
 
 今、レイヴン、イヴァ・ラピスは転機を迎える。 
 
 
「…ゲリラ沈黙。まったく……警察でも対応出来そうな軽武装でレイヴンを回す?」 
 都市の真ん中で、うんざりとラピスは呟いた。 
 MTの一機も無い連中相手に鎮圧もなにも無い。報酬も2000C…弾薬費程度にしかならない。 
『ラピス、聞こえるか』 
「………何?ちょっと気分悪いんだけど」 
 サムの声色から何か変化があったらしいのは察した。目をつむり、気を取り直して耳を傾ける。 
『……ミラージュから緊急の依頼だ。内容は……いや、とにかく現地に急げ』 
「……んん?」 
『今すぐアヴァロンヒルに向かえ。…標的は、そこにいる』 
 サムの濁した言葉は、ラピスの鬱な心境にさらに深い霧をかけた。 
 
 
「何…………何なの?」 
 アヴァロンヒル…荒野に突き立つ艦船の様な残骸のオブジェが印象的な、アリーナの対戦ステージの一つでもある。 
 レイヴンなら馴染みの場所だ、……馴染みの場所のはずだった。 
 ここにあるのは見慣れた戦場ではない。一言で表せば、異様…おかしい、何かがおかしいのだ。 
『標的はトップランカー……。通称黒き死神、ブラックザイトだ』 
「………あの中にいるの?」 
 本当に標的はAC一機か? 
 そう思わずにはいられない規模のミラージュ部隊の戦闘行動に、ラピスは冷徹な瞳でその一点に集まってゆく火線を見つめた。 
『ザ……ん?ラピス…ザ…戦塵の……電…障害が…ザザ…気をつけ……ザ…』 
 塵が視界を悪くさせてきた。風が出ているのか…。 
 たかが一機に何事だ。ラピスはフン、と鼻を鳴らしてスカーレットを前進させた。 
『おい!そこの赤いAC!味方の弾に当たるぞ、退がれ!』 
 指令塔から言われるままに弾幕を張り続けるMTの一機からの近距離通信が響いた。ラピスは耳を貸さずにスカーレットを進める。 
『ザザ…ザ…当たらない…だ…』 
『い…いや来ないで…!ザザ…』 
 足場がおぼつかなくなる死骸の群れ…通信機越しに聞こえる悲鳴。本当の本当にこれを今も一機でやっているのか? 
『ならば脚だ!ザ…を…うわっ…ザザ……』 
 ……ラピスは無言でOP−INTENSIFYを起動させた。 
『馬鹿野郎!何処を狙って……う…ぐわああっ!』 
 背後から左右から、縦横に飛び交う大小様々な弾丸をかいくぐり、先にいるであろう死神を目指す。 
『逃げろ!逃げ……ザ…ザザ…』 
「…………………」 
 
 やがて………、見えた。黒いAC、火線の全てがあれに集う。その構成はまるで自分の影を見ているかの様だ。 
 月のつるぎを振りかざし、満身創痍のACは尚もその気性を猛らせ、獣の如く眼前の敵を食いちぎっていた。 
 背筋が凍る錯覚、手ににじむ汗。ラピスは自分に臆す時間を与えず一気に飛び込んだ。 
 向こうが気付いた。いや、本能で感じているのか。武装は左の月光のみ。右手と肩に武器は見当たらない。とっくに弾切れして捨てたのだろう。 
 同時に月光が光る。今、周囲はフリー、火線も薄い。一対一だ。 
 深く踏み込む。ブースターが唸り、捻る様な姿勢の維持に機体が悲鳴をあげる。ラピスは頭の中を真っ白にして目の前の敵を見据えた。 
 交差する。 
 ………………ッ! 
 両者はすれ違い、距離を開いた。 
 互いに左肩インサイドスペースを大きく裂かれた。向こうが万全だったなら恐らく左腕は持っていかれた…。 
 両者が振り返る、死神の月光が光波を放つ。 
「く、あああっ!」 
 スカーレットはブースターを一度停止させ、再び全開で吹かした。脚の跳躍が助けてブレード光波は機体を逸らしたスカーレットの腕とコアの装甲表層を削り、後方に飛び去った。 
 ラピスは武器をマシンガンに切り替え、斉射した。姿勢を整える間の牽制だ。 
 マシンガンが回避しようとするブラックザイトの頭を打つ。機能に支障が出た筈だ。 
 よし…ロケットで脚を潰す。ラピスが発砲を止め、武装を切り替えた刹那、ランカーは反撃に転じた。 
 ブラックザイトが跳び、コアを蹴る。後退しなければ自分もろとも潰されていた。苦し紛れに放つロケットがブラックザイトの左腕を肩から吹き飛ばす。 
 周囲から別機と火線が迫る。ラピスは険しく瞳を細め跳躍、複雑な面持ちでオーバードブーストを起動した。友軍の無差別砲撃領域より離脱……太刀風は戦場を駆け抜けた。 
 
 
 冗談では無い。もう少し長居していたら味方か、もしくはブラックザイトに撃破されていたかもしれない。 
 ラピスは一気に疲弊し、動きの鈍くなった身体に強制して、スカーレットを疾駆させていた。 
 戦域離脱は大概の場合が敵中で危険という関係からすぐに輸送機等の利用は出来ない。安全地帯で迎えを待つ気が無いなら自力で帰るしかない。 
「ん………、AC?」 
 反応有り、二機だ。反対方向から接近している。…サムからの通信は無い。照合を開始する。 
『そこの赤いAC、……えーと…確か、イヴァ・ラピスだったかしら?少しよろしい?』 
「………グナーとエスペランザ。見ない組み合わせね」 
 ワルキューレとアップルボーイ…アリーナでのランクはBとE、とかなりかけ離れたコンビだが…ここで何を? 
『あの…アヴァロンヒルにいたんですよね。シズ……いえ、ブラックザイトは?』 
 あの鬼神か…ラピスはゆっくりと思い出す様に答えた。 
「………あれでは時間の問題でしょうね」 
 頼りにしていたらしい月光は左腕もろとも吹っ飛ばした。インサイドスペース、つまり肩はまだ原形をとどめていた様だが月光は衝撃で飛んだ。後は危険視した味方部隊がブレードを破壊するだろう。もしくは乱戦で踏み潰されるか…どちらにしても今頃、使い物にはなるまい。 
 若い男声が色めきたった声でワルキューレに告げる。 
『そんな……、急ぎましょう!』 
『はいはい。輸送機が手配出来たら早かったんだけどねー。それじゃラピスさん、私達はこれで』 
「…ブラックザイトに加勢する気?ま…どちらについても、死ぬわよ?」 
 あの光景は地獄絵図だ。すぐには忘れられないだろう。邪魔になれば消去…流石、企業に情というものは介在しないと見える。
『…その様子だと、彼女とやったみたいね。その程度で済んでラッキーよ、あなた』 
「………………」 
『愚かと言われようが行きますよ、僕達は』 
 深く制止もせず走り去る二機を見送り、ラピスは一人、すっきりとしない心を抱いて帰路を急いだ。 
 
 
 そしてその後、レイヴン、イヴァ・ラピスはアリーナより名を抹消され、以降、消息が分からなくなる。当時、彼女の担当であったサム・アックスはその後、治安の悪化したレイヤードにて暴漢に襲われて死亡したとされ、彼女に関するデータはいずこかに消え失せた。 
 
 
 三年も経つとさすがに周囲の様子はいくらか変わる。地上進出……、企業もよくやる。 
 地上アリーナCランクランカー。レジーナはアリーナの控え室でそんな事をぼんやりと考えていた。レイヤードのアリーナの時と同じランクで登録される為、転向の際も、大した支障は無かった。周りは喧騒と呼ぶには少々静かな話し声が飛び交っている。 
 隣りで同Bランクランカー、ファナティックが缶コーヒーを飲み干す。 
「地上か……仕事の割はいいけどなんだか怖いよ」 
「今更臆したか?怖いのならレイヤードでおとなしくしていればいいだろう」 
 レジーナはむっとした様子でファナティックを睨み返した。 
「だって仕方無いじゃないか、………あの人が言い出したんだから」 
 二人は正面の大型モニターに目をやった。映っているのは毅然と佇む朱い軽量二脚AC…。 
『早い!早過ぎるぞ!僅か一分足らずでバーブドワイヤー沈黙!イヴァ・ラピス、お前は一体何者だあっ!』 
「付いて行かない訳にもいくまい……」 
 ファナティックは苦笑した。 
 …ほんの一月前、レイヤードで活動を続けていた彼女らの前に、ラピスは突然現れてただ一言、告げた。 
 
『地上に行く』 
 
 
  NEXT…『ARMORED CORE3 SILENT LINE SIDE STORY』 
 
 
 あとがき 
えー、ラヒロと申します。携帯電話でシズナのお話と並行して書いております(_ _)。(ラッド注:彼に最初に依頼した『あとがき』がこちらですので順番が変になっております。ご容赦を) 
諸々の責任は全て本編著者に背負っていただくとして(コラ)ラピスに関するお喋りをさせてもらいましょ。 
彼女のキーは謎の改造が施されたOP−INTENSIFY。 
作中でブレード光波等、あれ本来の性能がまったくという程、発揮されていないのは作者の陰謀です(爆) 
本パーツの作中での解釈は『機体本来の性能以上のものを無理に引きだす』といったものでひとたび起動させればもう無茶苦茶ピーキーでEX○Mの如く機体もパイロットの安全も無視します。だから使用後は機体ぼろぼろ。 
次回は、サイレントラインのラピスでお会いしましょう。 
 
 
NG 「バーブドワイヤーと私」 
 GO!の文字と同時にロケットへ武器を切り替えて… 
ドン、ドン、ドン、ドン…… 
 接近する頃には相当のダメージ。そして弱ったところをマシンガンとブレードで止め。 
ラピス「剣豪が聞いて呆れるわね〜」 
レジーナ『………………』 
作者:ラヒロさん 
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