サイドストーリー

格納庫の傭兵 [〜神出鬼没〜
「・・・もう朝か。」
昨日の出来事は一体何だったんだ・・。たしかアリーナで試合をしてた途中で・・・。
それで気が付いたらここにいたってわけか。


「・・・起きたかロストマン。身体のほうはもう大丈夫だろ?」
タイミングよく部屋にアステカさんが入ってきた、そういえば特に身体に怪我とかはしてないみたいだ。
俺はさっそく昨日のことを聞こうとした。

「昨日のことだろ?顔に出てるよ。」

「一体何があったんですか?たしか自分はあの時アリーナでの試合を・・・。」
アステカさんはただ黙って聞いていただけだった。そしたらちょうどゲドとトーメントも部屋に入ってきた。

「アステカ、お前から話せないなら俺から話すけどいいか?」
アステカさんはうなづいて部屋から出て行ってしまった。

「まず二人に告げることがある。アリーナでの戦い方、見事だった。」

「ありがとうございます。」

・・・待てよ、ということは俺も勝ったってことか?

「ロストマンは試合のことは憶えてなさそうだな。まあ無理もない。」

・・・一体どういうことだ。

「・・・ちょっときてほしい。」

ゲドはそういうとドアを開け歩き始めた。それをトーメントと俺はついていった。

しばらくすると病室の前で立ち止まった。

「ここは病室だけど・・・誰かいるのか?」
ゲドは答えないまま扉を開けた。

病室の中には一人、ベットで横になっている患者らしき人がいた。








「・・・・!?」







ベットにいたのは俺がアリーナで戦った相手のリリスだった・・。彼女は身体を包帯でグルグル巻きにされていて昏睡状態だった。

「どういうことだ・・。」

「・・・どうやら本当に憶えてないらしいな。」



そんな時に部屋の扉が開いた。



「・・・!!お・・お前は・・うあぁぁ!!リリスを返しやがれ!!!!」
部屋に入ってきたのはトーメントと戦ったブラッドだった。

「落ち着け、ブラッド!!ロストは本当に覚えてないんだ!!」
トーメントがブラッドをなだめるがブラッドは聞く耳を持たない。



「・・・黙れ!ここは病院だぞ!静かにしろ!!」
ゲドの喝により病室は静まった。



「・・・ロストマン、これを見てほしい。」
ゲドが差し出したのは一本のビデオテープだった。

「このテープはコールが撮ったやつだ。お前とトーメントの試合が入ってる、これを見れば全てがわかる。」

・・・・あの試合のテープか。

さっそくビデオテープを見てみる。

「・・・これはまだトーメントの試合だな、少し早送りしよう。」
ちょっと早送りすると俺の試合が始まった。

「・・・これを見る限りでは明らかにリリスが優勢だった。観客が見てもわかる。」

・・・たしかここら辺までは記憶があった気がする。

「・・・そうだ、トーメントここで一回止めてくれ。」

「・・・ここだ。」
ゲドが指差す方には俺の機体が煙を出しながら立ち止まっていた。

「続けてくれ。」

リリスは容赦なく俺の機体を攻撃してる。俺はなぜか動かず立ち止まったままであった。







すると急に画面が真っ暗になった。


「言うのを忘れてたな。この後、原因不明の停電が起きたんだ。」

「・・・停電、あのアリーナで?」

「ああ、主催者側の連中も停電が起きるなんて思ってもいなかったらしい。」

「ここからが一番重要なんだ。できれば目を凝らさず見てほしい。」

しばらくすると停電は収まり、全てのシステムが通常に作動しはじめた。だが俺はこの後、思いもよらない映像を目の当たりにしてしまった。








「こ、これは・・・!?」









なんと優勢だったはずのリリスが乗ってたACアーセナルが無残な姿で転がっていた・・・。

あまりの出来事に観客はざわつきはじめる者。泣き叫ぶ者。驚いてただ呆然としてる者と様々であった。

本当にこれは俺がやったのか・・・?

「・・・もういい、トーメント消してくれ。」

「この後、リリスとお前はここに運び込まれた。
 リリスは全身を重度の火傷を負っていて意識不明の重体だ。そしてなぜかお前は無傷だった・・。」

・・・・・。

あの意識が無くなりそうになった時か・・・。



「ロストマン、最後にもう一度聞くが本当に何も憶えてないんだな?」


「・・・はい。」
本当に俺はその時のことは憶えてなかったが、ブラッドは俺をずっと睨んでいた。

「わかった。じゃあ一度部屋に戻ろう、もう一つ話がある。」

もう一つ・・?



「よし、もう一つの話というのはお前達が働いてた格納庫の襲撃事件についてだ。」

・・・あの事件か、できれば思い出したくなかった。

「何かわかったんですか?」

「ああ、誰がやったかわかったんだ。これを見てくれ。」
ゲドがベッドの上にニュース新聞を広げて見せた。

「新聞・・・?」

「ここの記事を見てくれ。」

・・・レイヴンが失踪?どういうことだ。

「ロストマン、トーメント。≪アスタリスク≫という組織を知っているか?」

「≪アスタリスク≫?何ですかそれは。」

ゲドが言うには3年前に管理者を破壊しようとした少数による組織らしい。

「つまり、その組織がまた動き出そうとしてるってわけですね?」

さらにゲド達B・C・Gは一度、組織の一人を目撃したらしい・・。

「そうだ、もし管理者が破壊されたらこの≪レイヤード≫の秩序は完全に崩壊し、人類が滅んでしまう。」

「・・あの、ちょっといいですか?」

「なんだトーメント。」

トーメントが言うには管理者が破壊されただけでは特別に問題は無いんじゃないかということだった。

たしかに発電所など使えば何日かは持つだろう。

しかし管理者を破壊されてクレストの連中が黙ってるわけない。

おそらく企業同士で全面戦争が勃発して≪レイヤード≫は崩壊するだろう・・。

どの道、管理者が破壊された時点で終わる。

「どうやら格納庫を襲撃したのはその≪アスタリスク≫の連中らしい。」

「・・・つまり、トロードさんの仇討ちと共に任務に出てほしいと?」

「察しがいいな、その通りだ。」

・・・・・。

「で、でも俺らなんかができるのかな・・?」

任務の内容は管理者のエリアにつながってる最下層エリアのクレスト防衛施設を≪アスタリスク≫襲撃から守ることらしい。

「もちろん、お前らだけじゃなく俺も、コールやブラスも参加する。あとアステカもな。」

・・・ちょっと待てよ。アステカさんはミラージュの幹部じゃなかったか?なぜ対立するクレストに・・。

「とりあえずもうお前の退院手続きはとってある、アステカのとこに行くぞ。」


準備がはやいな・・。




















「よく集まってくれた。さっそく任務のことだが、まずは二手に分ける。
 一方は防衛施設付近で待機し、≪アスタリスク≫の連中がきたらこちらの指示で迎え撃ってほしい。
 もう一方は防衛施設から少し離れた場所にエネルギー施設がある、そこで待機しその後、防衛施設で待機してる部隊と合流だ。」

淡々とアステカさんが任務の詳細を話しはじめる。

「そうだな、防衛施設の方は少人数のほうがいいだろう。ロストマン、トーメントにやらせてみないか?」

「え・・・お、俺らが?」

「いやただそこで待機していればいい、おそらくクレストもMT部隊などで抵抗するはずだ。俺たちが来るまで何もしなくていいよ。」

話によると≪アスタリスク≫は単独で襲ってくるらしい。でもなぜ管理者なんかを狙ってるんだ・・。

「そういえば3年前にも襲撃を試みたって聞きましたけどなんでその時は大丈夫だったんですか?」

「ああ、そのことについてはまた後で詳しく話すよ。」

・・・・・。



「出発は明日だ!」

明日・・・。休む暇も無しか。・・・さっそくACの整備にかかるとするか。



































その日の夜・・・。

「なあロスト。俺なんかが管理者を狙ってる連中なんかに通用するか?」

いつものように行きつけのレストランで夕食を食べながらトーメントと話していた。

「正直、わからない。でも訓練もアリーナで実戦もこなしてきた。
 それに管理者が破壊されるなんて知ったら阻止するしかないだろう?」

「・・・ん・・。たしかにそうだけど・・。」
ステーキを口に運びながらトーメントは言った。

「B・C・Gもついているんだ、やれるさ。」

「そうだな・・・あ。」
トーメントが見る方向にはテレビでニュースが流れていた。

「・・・・あれは。」

テレビに映ってたのはアリーナでの停電のことだった。

ニュースによると何者かが施設のブレーカーをいっぺんに停止させたらしい。

・・・・ニュースでは俺のことも流されていた。記者の一人は俺がグルになって停電させたとも言っている・・・。

「ロスト、気にするな。あんなのでまかせだ!」

「ああ・・。」







































「ロスト、もし任務が成功したら俺たちが≪レイヤード≫を救うことになるんだよな?」

「まあそういうことになるんじゃないのか?」

「なら俺たちスーパースターじゃん!!」

・・・・トーメントらしいな。

もしかしたら死ぬかもしれない任務なのに・・・そんなことはトーメントも承知か。

「よし、格納庫で仮眠をとったらアステカさんから指示がある。」

「そうだな、少しでも多く休んだほうがいいよな。」

・・・・・。










・・・正直、トーメントより俺のほうが任務のことで焦っている。



俺の記憶に無いAC、アリーナでの出来事・・。






同じことが起こらないよう祈るしかないのか・・・・。
作者:RYOSUKEさん