サイドストーリー

偽りの自由


ゴウン、ゴウン

ここは輸送機の中、そしてさらにその中。

と言うのは私は今、ACという人型兵器のコックピットにいる。

そして私の目の前に、もう一機それがある。

おそらく彼も『資格』を取りに来たのだろう。そうでなくてはここにいるのが不自然である。



「あんた自信あるのかい?」

彼が話しかけてきた。

「……どうだか」

私は適当に答えた。

「何だよそれ、気になる言い方だな〜」

「深い意味は無い」

「けっ、無愛想だなお前」



私は別に彼が嫌いなわけではない。

意思に関係なく、口から出たのだ。

長い沈黙が続く、だが輸送機は確実に目標ポイントへ近づいている。



(私は何故資格を手に入れたいのだ?)

ふと私は考えた。

だがすぐに答えは出た。それが運命だと決まっているからだ。



『レイヤード』、汚れきった地上を捨て、人類の新たなる繁栄場所として作られた地下世界

ここでは全ての出来事が『管理者』によって定められている。

管理者の決定は絶対であり、誰も逆らうことなど出来ない。それがここの秩序だ。

人々の意思や感情など、この世界には無いに等しい。

だから、私が資格を取るためにテストを受けるのも管理者の決定なのだろう。



『そろそろ目標地点に到着する』

試験監督からの通信がきた。

『もう一度、君たちに課せられた依頼を確認する、目標は市街地を制圧している部隊の撃破。

敵戦力は戦闘メカだ。このチャンスに2度目は無い。必ず成功させることだ。』



プシュー

輸送機のハッチが開いた。それと同時に私達は機体を起こし、試験開始の合図を待った。

『目標地点に到着、機体投下』

私たちは一気に飛び出した。

『レイブン』という偽りの自由を手にするために。

作者:エマイルさん