サイドストーリー

始まりの依頼〜first contact~
 遥か昔、人々は管理者という超巨大コンピューターによって支配されていた。狂うはずのない支配者。
絶対的な平穏。殺伐としているのは、管理者によって作り出された企業間の抗争と、それに便乗するように動き回る、
グローバルコーテックス所属のコウモリ、レイブンたちだけ――のはずだった。
しかし、何かがきっかけとなり、管理者は異常状態となり、自身の部隊で以って各地を破壊した。
これを収束させたのが、管理者を破壊した一人のレイブンだった。
管理者の破壊により、閉ざされていた地上への道が開かれ、企業はわれ先とばかりに光のさす地上へと進出した。
その地上で見つかった、未踏査地区。侵入を許さない沈黙の領域。一歩でもそこに入れば、衛星砲の攻撃。人はそこを、サイレントラインと呼んだ。
しかし、数年の後、サイレントラインへは何の抵抗もなく入れるようになった。理由はいまだに判明していない。
と言うよりも、解明を諦めたといったほうが正しい。積極的に究明を行っていたグローバルコーテックスの倒産が主な理由である。
時は流れ、人々が管理者もサイレントラインも、グローバルコーテックスの存在までも忘れた頃、
新興企業ナーヴィスが、かつてサイレントラインと呼ばれていた空域の奥地にて、新資源を発見。
中小企業の集合体OAE・ミラージュ・クレスト・キサラギ、そしてナーヴィスが、この物資を巡って、争いを起こすのは、火を見るより明らかだった。
そんな中、レイブンたちの箱舟――レイブンズアークは、そこに油を注ぐように、レイブンの依頼斡旋に力を入れた。
争いが激化するのは、時間の問題だった。

『レイブン、間もなく作戦領域に到達します』
「ふーん」
『(ふーん?気負いの一つも無いのか、この新人)・・・ブリーフィングで伝わっていると思いますが、これはいわば第二の試験です。
今回の成績によって、レイブンとしてのスタート位置が大きく変わります。全力で敵部隊を制圧して下さい』
「へいよ」
実際には聞いていない、寝てたから。それでも俺は生返事を返した。大体、起きてから2時間程度で、まともに動けるわけがねーんだよ。
『敵機確認! これより機体を投下します!』
「・・・テンペストボーラー、行ってきまーす」

俺が試験に受かって、レイブンズアークに入ってから、わずか半日後に依頼は来た。
ナーヴィスっつう新興企業からで、ミラージュの調査部隊を排除して欲しいらしい。
ナーヴィスはこの地区で採取された資源を独占していて、それを狙ってミラージュやクレストは進出したんだと。
アークの新人用オペレーターに説明してもらった。どうでも良いけどな。仕事に事欠かなけりゃ、な。

作戦開始時刻:1130
作戦名:ミラージュ調査部隊襲撃
依頼主:ナーヴィス
作戦領域:ロボス山脈

 ダダダダダダダ!!
『貴様、ナーヴィスの回し者・・・うわぁぁぁ!!』
ACの装甲越しに伝わってくる、硝煙と死の匂い。昂揚感は、刹那に訪れる悪寒に身を震わせ、次の瞬間には再び蘇る。
それを楽しむ戦闘狂もいるらしいが、生憎と俺はそんな性質じゃねぇ。モニタに移るMTに照準を合わせ、冷静にトリガを引く。
パーン! パーン! パーン!
 ライフルの弾頭が命中した場所から、MTの装甲がひしゃげる。ACの武器としては貧弱でも、ロートルな兵器を相手にするには充分な威力らしい。
 『うわああああああぁ!!!!』
 錯乱したMTのパイロットが、マシンガンを狂ったように乱射する。俺はあえて回避をせず、ブーストを噴かして突っ込む。
何発かが命中するが、マシンガンは単発の威力がライフル以上に低いから、大きなダメージにはならない。
 ザン!
 距離30ほどに接近したところで、ブレードを振る。赤銅の光がMTをなぎ払う。その一撃で、真っ二つになった。
『残り、一機です』
電気的な声が告げる。機体を旋回させると、かなり遠くに残っていた。俺は武器を小型ミサイルに切り替え、ロック・オンする。
パシュウ! パシュン!
続けざまに二射する。一発目は地面の隆起にぶつかって誤爆したが、二発目は見事に命中し、MTを撃破する。
 『周辺にエネルギー反応無し。敵勢力の全滅を確認』
 『レイブン、これより回収に向かいます。お疲れ様』
 ACのコンピューターとオペレーターが立て続けに声を出す。
 「あー、終わりか。一眠りしてえな、と」

 「おう、テンペスト! お疲れさんだな」
 ヘリでガレージに戻った俺を一番に迎えたのは、整備長のガイ・ロッチェだった。
 ガイという名前とその言葉遣いから、男と間違えられるが、ガイはファミリーネームであり、女性である。
 「ロッチェさん。またよろしく」
 「あいよー!」
 そのうち、がははははは的な笑い方をしそうだが、とりあえず今は突っ込まずにおいておく。
 レイブンがレイブンズアークに支給されるものは、五つ。
個人用の部屋と、そこに直結しているガレージと、ガレージに置かれるACに、ACの整備班。もう一つは、オペレーターだ。
今のところ、俺はオペレーターを持っていない。いなくても別に不自由しないから、必要ないと思うのだが、まあそのうち誰かを紹介されるだろう。
 自分の部屋までは、ガレージから約5分。遠からず近からずってとこだな。俺はドアノブを倒して扉を開けた。
鍵をかけないなんて無用心と言われるかもしれないが、それは違う。
この部屋に入れるのは、俺とロッチェさんの他には、アークの管理官くらいのものである。
レイブンには個人番号があり、それを知っているヤツしか、そいつの部屋に入れないようになっているらしい。
だから、この部屋に誰かがいるなんてことは――
 「あら。君がテンペストボーラー? それとも整備長のガイ・ロッチェさん?」
――あった。女が一人、メチャクチャくつろいでら・・・
「――誰?」
かなり間抜けな質問だと、口にした瞬間に思った。誰も彼もあったものじゃねぇ。
この部屋に入れるっつーことは、つまりは、レイブンズアーク関係者。
「船から聞いていない? じゃあ、自己紹介ってやつね。私は――」
「ちょー待て。船ってなんだ。海鮮一家のばーさんか?」
ギャグを交えて突っ込む。いや、この場合はボケか・・・?
「そんなわけないでしょ。船、つまり、箱舟。アークのことよ。それくらい解って欲しいわね、今後のパートナーなんだから」
「や、解るわけが・・・? パートナー?」
「そっそ。私はミスト=ソリシャス。今日付けでアークよりテンペストボーラー専属のオペレーターとして配属されたので、以後よろしくぅ」
放心状態の俺の肩を叩き、そいつ――ミストは、軽い足取りで部屋を出ていく。
そのままで2,3分いたろうか。脳みそが事に追いつくと、自然と口が笑いの形を取った。
ミスト=ソリシャス、ね。霧の天使か・・・死神と天使たぁ、味なコンビじゃねーか。
「面白く、なりそーだ」
呟き、パソコンの画面を見る。やる事は、いくらでもある。少なくとも、暇を見つける方が大変そーだぜ。

前回ティーリングという名前が書かれていた、カルバリンでございます。こちらが本当の偽名(?)なので、よろしくお願いします。
中途半端な終わりな上、今度も戦闘シーンが少ないですね。次回こそ、多くなる予定であります。乞う、御期待、というところで・・・

次回予告
「バトルアリーナ?」
「そっそ。それに出てもらおうと思って」
「待て。何でそんなもんに出なくちゃならん」
「仕方ないでしょ。作者が決めたんだから」
「横暴だな、カルバリンも」
「そんなもんだって、作者なんて」
『次回、第三話バトルアリーナ~gradiater~、過去最長のストーリー予定! 乞うご期待』
作者:カルバリンさん