サイドストーリー

SILENTLINE EPISODE 1 〜新たなる物語〜
かつてはレイヤード中枢に在する「管理者」が治めていた地域・“地下世界”。
この管理された世界は「クレスト」「キサラギ」「ミラージュ」の3大企業の争いの地となり、
この争いは、世界の終わりまで続くかと思われた。
だが、管理された世界は、突然「狂い」を見せ始めた。
各地で起こる暴動、事故、殺人、戦争、遺伝、殺戮、大量殺戮、破壊、破壊衝動・・・
この地で起こる事件や異変などの言葉を並べても切りが無い。しかし、それらは全て、決められた出来事や年月によって起こる。
人々は、思い始めた。「管理者」は狂っているのだと。
そして長年の年月が経つ日々に、「管理者」は、人類に滅びの牙を向けた。3大企業も「管理者」の手にかかり、弱体化を強いられ始めた。
そして、また長年の年月が経つ日々に、秘密結社「ユニオン」が立ち上がる。
「ユニオン」は、全てのレイヴンに、「管理者」に対する宣戦布告と、真実を明かす。
「我々はここに真実を明らかにする。管理者は狂っているのだ」
真実を明かした後に、「管理者」に対する「ユニオン」とレイヴン連合の攻撃が始まり、
次第に暴動が少なく収められてゆき、最後には「管理者」は、非業の最後を遂げ、謎の言葉を残してこの世から消え去った。
「地上への・・・ゲートロックを・・・解除・・・」
この言葉は誰もが判らぬ言葉だったが、後になって明らかになった。
地上の扉は開かれた。未だ見えぬ地下世界に光が降り注ぎ、「空」が見えたのだ。
人類が始めて見た「遥かなる空」。美しい光を注ぎ込み、白い雲や遮られた太陽の光が見えだして来た。



そして、ここから新たなる世界が始まった。
先の激戦の傷跡も癒えた頃、再び3大企業は力を取り戻し、世界は再び争いの地となった。
だが、世界の一角に、誰もが知らない1つの“領域”があった。
それは、やがて“禁じられた領域・〈サイレントライン〉”と呼ばれた。
誰もが越えてはならない領域。侵されてはならない領域。
〈サイレントライン〉・・・それは、“聖域”という存在だった。



「く・・来るなぁーー、来るな!! 来たら全員殺すぞ!? こ・・・こっちにはACが付いているんだぞ!?
本気だぞ!? 皆死ぬぞ!? 来るなったら来るなったら来るなあああぁぁぁぁ???!!」
クレストの建築中の無人要塞「NKー432」に、技術者が1人のレイヴンを伴い、
さらに防衛システムまでもを混乱させて、要塞に立て籠っていた。
その技術者はクレストの無人要塞建造計画に関わっていたらしく、邪魔者になると践んだクレストは、
その技術者を抹殺しようとしたらしく、技術者は慌てて要塞の防衛機構を混乱させ、さらにどこかでレイヴンを1人伴い、
ACまでもを味方につけて、要塞内部の職員たちを人質にとっている。
要塞の入り口で、3体のACが待機している。クレストの極秘依頼を受けたレイヴンだろう。
レーダーに映った3体の反応を見て、技術者側のACのパイロットがにやりと笑う。
「これはこれは・・・ずいぶんと役者がそろって来たじゃねえかよ、ンン?」
技術者側のレイヴンは嬉しそうに笑う。このレイヴンは、「レンドルフ」で、ACは「スネークワインダー」。
4脚型にOBのコア、武器腕リニアガンに肩に大口径レーザーキャノンという火力重視の装備をしている。
レンドルフは何者かに見い出された殺人鬼で、ズバ抜けた才能を持つ。
それとは別に、Dー1のスネイクチャーマーと同じように、敵が苦しむのを至福の喜びとし、
スネイクチャーマーと1、2を争う残酷なレイヴン。嫌悪感を持つ者達も多いほど。
「し・・しかし、本当に大丈夫なのか? レンドルフ・・・」
「バーカ、言ってんだろ? 俺はこんなに強いんだって。グチャグチャ言わねえ方がいいぞ」
レンドルフの言葉に、技術者は首を垂れた。
「わかった・・・すまない・・・」
「おめーのせいじゃねえよ」
首を垂れる技術者に、レンドルフは舌を巻く。その途端に、ブッ、と音が響き、サブモニターに画像が映った。
サブモニターに映ったのは、若い青年の顔が映った。レンドルフには、それが誰だかわかった。
「ああん? リトルベアじゃねえか。何かあったのか?」
「は、早くそのACから降りろ! 犯罪者に味方するとは犯罪行為に繋がるぞ!」
ドギマギした声を張り上げる青年。彼こそが、新人レイヴン「リトルベア」だ。
若くしてレイヴンになろうとしたものの、まだ自分には向いて無いと他の仕事に就いたけれど、諦め切れず念願の一心でレイヴンになった。
ランクは低いし、戦闘スタイルは真正面に打つかりあうものと、機体は基本に基づいた構成だけれど、彼は大いに満足している。
「(リトルベアに捩じ伏せられるような機体じゃねえんだよな・・・俺のスネークワインダーは)ほー?
この俺にそんな口を聞くたァよっぽど命を粗末にするのが好きだと見たぜ。やれるものならやってみろ、腰抜けがァ!」
「なにおう!!」
レンドルフの挑発に、無性に腹立ったリトルベア。だがその途端、モニターに映った
もう1人の青年に、ぴしゃりと制された。
「話に乗るな、リトル。相手の思う壷だ」
レンドルフはその青年にも見覚えがある。そこでレンドルフは、素頓狂な声を上げた。
「ほ?ぅ! よく分かってるじゃねえか? カラードネイルよォ?」
もう1人の青年の名は、「カラードネイル」。幼い頃に家族を皆殺しにされ、その張本人のゼロに激しい怒りを燃やし、
復讐したい一心でアリーナに参戦したレイヴン。
幼い頃に見たゼロの機体を模し、怒濤の勢いでCー3のランクまで上げて来ている。
操縦には荒削りな所があるが、その闘争心は一級と言える。ゼロに挑戦する日は近い。
と、彼は信じている。
「・・・貴様に分かってるとは言われたく無い」
カラードネイルは冷たい言葉を投げる。レンドルフの眉がピクッ、と動いた。
「何ィ・・・?」
「だから貴様に分かっているとは言われたく無いと言っているだろう。殺人鬼の分際で」
「・・・・・・!!」
「どうした? 何を躊躇っている? 恐くて何も言えないのか?」
「・・・手前ェ、この俺を誰だと思ってんだ? 死にてえのか?」
「・・・何でもいい。さっさとおっぱじめるぞ」
「な・・・!! 手前ェ、この俺を誰だと思って・・・・」
「殺人鬼なぞ、気に入らない存在だ。・・・消えろ」
「上等だクソ野郎!! 手前ェをあの世の家族のもとに送ってやらあ!!」


戦いは始まった。
「メインシステム、戦闘モード起動」
「戦闘システム 起動」
「システム キドウ」
それぞれのACの頭部のコンピューターが起動の合図のメッセージを出す。戦いの第一ラウンドのゴングがなったのだ。
「リトル、ヴァーナル、敵は最深部のコンピュータールームに潜んでいる。まずは敵ACと防衛システムの破壊に移るぞ」
「了解しました」
「了解・・・」
カラードネイルは2人のレイヴンに通信を送る。その時に、2人のレイヴンは了解した。
「ヴァーナルフラワー」。彼女は昔事故にあって記憶を失った女性であり、レイヴン
と言う言葉に懐かしさを感じ、記憶を取り戻す切っ掛けになると感じ、アリーナに参戦。
だが何かを思い出しそうになるのか、動きをたまに止める事があり、対戦相手の餌食になるのが彼女のただ1つの欠点である。
この要塞はA、B、Cの3つのブロックとコンピュータールームの4つに分けられ、
Cブロックに技術者のMT、コンピュータールームにレンドルフのAC・スネークワインダーがいる。
この施設の構造を読んだカラードネイルは、まずは2つのブロックを制圧した後にコンピュータールーム??Cブロックと行く事にした。
「要塞内部の各ブロックのゲートはロックされています。まずは2つのブロックの敵を全滅させて下さい」
「了解した」
「了解しました」
「了解・・・」
クレストオペレーターの通信を呑んで、3人はまず先にあるAブロックへ足を踏み入れた。
入った途端にガードメカ「グライドコブラ」のライフルの洗礼が入った。
「ガードメカ「グライドコブラ」か・・・こいつらは雑魚だ! 吹っ飛ばせ!!」
カラードネイルのグラッジが先攻する。
両手のバズーカとグレネードランチャーが火を吹き、この部屋の3体のグライドコブラを殲滅した。
その途端に、右の壁にある「B」と書かれた扉のランプが、ピッ、と音を立てて白くなった。ゲートロックが解除された証拠である。
「熱源の消滅を確認。Bブロックのゲートロックを解除」
オペレーターの報告が入る。
「次はお前たちだ。行け!」
カラードネイルが促す。そしてリトルベアのダブルウィング、ヴァーナルフラワーのフラッシュバックがBブロックの扉の中になだれ込む。
扉を開けて中に入ると、今度は4体のグライドコブラがこちらに洗礼をかけて来た。
「散開だッ!」
リトルベアが叫ぶ。それと同時に、ダブルウィングとフラッシュバックの両機が壁の両側に飛び込む。
グライドコブラが旋回している隙に、両機の武器が火を吹いてこの部屋のグライドコブラを一瞬にして殲滅した。
「熱源の消滅を確認。コンピュータールームのゲートロックを解除」
オペレーターの通信が入った。
「次は敵ACだ。わたしに続け!」
そう叫んだカラードネイルのグラッジがジャンプして、白く光っているランプのゲートを開く。
その後にリトルベアのダブルウィング、ヴァーナルフラワーのフラッシュバックが跳び、グラッジの後を負った。
線路を辿って奥のシャッターを開く。その途中に赤いランプの「C」と書かれたゲートがある。3人は、それには気づかない。
「フフフフ・・・とうとう来たか」
レンドルフはニヤニヤしながら3人を待ち受ける。そしてグラッジ、ダブルウィング、
フラッシュバックの3機が入り込んで来た。そして待ってたかのように、
「お前等なら楽しめそうだ!!」
レンドルフはそう言い放った途端に、肩の「CWX-LIC-10」を放つ。ドシュウウウッ!!
 と音が響き、青い極太の閃光が走る。
「・・・っと・・・」
3人は極太状のレーザーキャノンを避ける。この距離なら簡単に躱せる! と、カラードネイルは思ってフンと鼻を鳴らした。そして―――。
ガシュッ・・・・ドン!! ドン!! ドン!!
カラードネイルはEOのトリガーを引き、EOを射出する。
その途端にマシンガンタイプのEOはスネークワインダーに向かってマシンガンを連射する。装甲に当たっても、傷1つ付けられていない。
これでは、微風程度だ。
「そんなものは・・・スネークワインダーには微風程度なんだよ!!」
レンドルフは武器をリニアキャノンに変え、カラードネイルのグラッジに向けて何度も連発した。
ドシュ!! ドシュ!! ドシュ!! ドシュ!!光の螺旋をくぐり抜けながら、グラッジに向かって何発かが撃ち込まれる。
だがグラッジはそれを全部軽々と躱す。
「馬鹿の一つ覚えだな」
カラードネイルはバズーカのトリガーを引く。バシュッ、バシュッ、と音と共にバズーカの銃口から吐き出された火を纏った鉛玉が、
スネークワインダーに突っ込み、スネークワインダーの装甲に食い込んだ途端に爆発を起こす。
ドシュッ・・・ドドン!! ドシュッ・・・ドドン!!
「ぐわっ!! ぐわああっ!!」
一瞬、レンドルフのスネークワインダーの動きが止まった。カラードネイルは、それを見逃さなかった。
カラードネイルはリトルベアとヴァーナルフラワーに叫ぶ。
「今だ!! 撃て!!」
「えっ・・・は、はい!!」
「はい・・・」
2人はロックオンサイトのマーカーにスネークワインダーを入れ、マーカーを赤くさせる。
ピッ、と、音と共にロックオンサイトとマーカーが赤くなる。2人は一瞬、武器のトリガーを引いた。この瞬間勝負は決まった!
ドン! ドン! ドン! ドン! ドン!
ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ!
ガン・・・ガァガガン!! バン!! ガンガガン!! ドォウゥッ、ドド・・・!!
ダブルウィングからはライフル、フラッシュバックからはパルスライフルが同時にうちこまれた。
その途端にスネークワインダーの全ての装甲を奪い去り、爆発を起こさせる。
「こ・・・この俺が・・・!!」
レンドルフの断末魔の声が消え去った途端、スネークワインダーは大爆発を起こし、
跡形も無く消え去った。
「熱源の消滅を確認。Cブロックのゲートロックを解除」
クレストオペレーターの通信が入る。
「さて、そろそろ技術者の料理に取りかかるとするか」
カラードネイルはコンピュータールームを出て、Cブロックの扉を開ける。その後にリトルベアとヴァーナルフラワーが続く。
扉を開けて中で見た者は、グライドコブラ4体に技術者の乗るランスポーター1体。
どれも大した物では無いようだ。技術者のMTを、リトルベアのダブルウィングが指差す。
「見付けたぞ!」
「・・・レイヴンか!」
技術者はたじろぐ。だがたじろいでいる暇も無い。
技術者はトリガーを引き、グライドコブラとともにカラードネイルたちに一斉攻撃を浴びせる。
「雑魚が・・・」
カラードネイルはEOとバズーカのトリガーを両方とも一瞬に引く。二重の怒濤の波状攻撃が、一瞬にして敵を全て撃ち抜く。
「うわっ・・・!!」
爆発が激しく起こり、技術者のMTとグライドコブラは一瞬にして消え去った。
「目標の掃討を確認。レイヴン達、お疲れさま」
クレストのオペレーターの通信が入る。


その後、グローバルコーテックスの休憩所で、3人はジュース等を飲む所で感想を言い合う。
カラードネイルがコーラの缶を口に付けながら言う。
「いやあ、今日はわりかし簡単な仕事だったな」
「僕達には出る幕があんまりありませんでしたね」
リトルベアはサイダーの缶の栓を開けて、苦笑しながら言う。
「おい、所で、さっきから飲んでばかりいるけど、ヴァーナルはなんか無いのか?」
カラードネイルはヴァーナルフラワーに聞く。
「何も・・・・」
ヴァーナルフラワーは静かな声で言う。それも、記憶を失っているからあまり喋るのができないせいなのか。
「まあ・・・彼女には喋るのは少し無理か・・・」
カラードネイルはすっくと立ち上がる。
「どこへ行くんですか?」
「報酬を受け取りに行くんだよ」
カラードネイルはリトルベアの質問にあっさりと答えを返す。そして、スタコラと報酬を受け取りに応接室の方へ歩いていってしまった。
リトルベアは窓の外に、円い月が見えるのに気づく。もうオレンジ色の空はオレンジから紫のドレスへ着替え直していた。
太陽が沈み、月が浮き出る。
「仲良くやって・・・行けそうですね!」
サイダーの缶を夜空へ捧げながら、リトルベアは夜空に向かってはにかんだ。



新しい章が始まりました武田です。
今回は「侵入者撃破」をもとに描かせて頂きましたッ!
最初の章でしたから、皆さんには楽しんでいただけたかどうか・・・
次回は「不審集団排除」の予定です。

〈新しく登場するレイヴン〉
名称:リトルベア(25)
レイヴンとなっても自分には向いていないと思い、他の仕事に就くが、
どうしても諦め切れず、念願の一心でレイヴンとなった。
機体の構成はあくまでも忠実で、戦闘スタイルは正面からぶつかりあうという、
まったく忠実な戦闘スタイル。ランクは低いけど、本人は大いに満足している。
AC:ダブルウィング
頭部:CHD-SKYEYE
コア:CCM-00-STO
腕部:CAM-11-SOL
脚部:CLM-02-SNSK
ブースタ:CBT-00-UN1
FCS:VREX-ST-2
ジェネレータ:MGP-VE905
ラジエータ:RIX-CR11
インサイド:None
エクステンション:KWEM-TERRIER
右肩W:KM-AD30
左肩W:CWM-VM36-4
右腕W:MWG-RF-220
左腕W:MLB-LS/003
オプション:OP-S-SCR OP-E/SCR

名称:ヴァーナルフラワー(24)
かつて事故に遭い、それまでの記憶を失った女性。
レイヴンという言葉を聞いて、レイヴンになれば記憶を取り戻せる切っ掛けになるかもしれないと思い、アリーナに参戦した。
何かを思い出しそうになったのか、たまに動きをとめる事があり、対戦相手の餌食になってしまう。
AC:フラッシュバック
頭部:MHD-RE/008
コア:MCM-MI/008
腕部:CAL-MARTE
脚部:MLF-MX/KNOT
FCS:VREX-ST-2
ブースタ:CBT-01-UN4
ジェネレータ:MGP-VE905
ラジエータ:RMR-SA44
インサイド:None
エクステンション:MEBT-OX/EB
右肩W:CWX-DM-32-1
左肩W:CWX-DM-32-1
右腕W:MWG-KP/80
左腕W:CLB-LS-1551
オプション:OP-S-SCR OP-E/SCR



〈今回登場した敵レイヴン〉
名称:レンドルフ(28)
アリーナで1、2を争う残酷な殺人鬼のレイヴン。
ズバ抜けた才能を持ち、それも敵が目の前で苦しんだり、泣叫ぶのを見るのが至福の喜びとする。
それに嫌悪感を持つレイヴンもいるが、彼の力はスネイクチャーマー同様、本物の実力であり、犠牲者は増える一方である。
クレストに命を狙われている技術者の手助けをするが、カラードネイルたちに殺された。
AC:スネークワインダー
頭部:MHD-RE/005
コア:MCL-SS/RAY
腕部:MAW-LIC/48(武器腕・リニアキャノン)
脚部:MLF-RE/006
ブースタ:MBT-NI/MARE
FCS:VREX-WS-1
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:MWI-NM/70
エクステンション:KEBT-TB/UN5
右肩W:CWX-LIC-10
左肩W:CWX-LIC-10
右腕W:None
左腕W:None
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-S/STAB OP-E/CND
                        OP-SP/E++ OP-E/RTE OP-TQ/CE
作者:武田 慎さん