サイドストーリー

サイレントライン:少女リリス
管理者破壊から1ヶ月。地下社会の企業団体は
我先へと地上に進出していった。
レイブンも同様に新たなる戦いを求め
地上に出ていった。
これが、ある一つの機関の手によってもたらされた
ものとは知らずに . . .

「ここが、あのシャウシュッツ・ヒュッケバインが
 生活している部屋ね . . . 」

まだレイブンになったばかりの少女はシャウシュッツの
自室の前に来ていた。
少女の名はリリス・ランドール。
年齢は15〜6歳と言ったところだ。
部屋の奥ではシャウシュッツが企業からの
メールをチェックしていた。

「依頼は . . . 空港施設の防衛 . . .敵戦力は不明、
 更に僚機の同伴もついているのか。
 別に必要ないから経費も貰っておくか。」

ピーピーピー、通信機に連絡が入る

「シャウシュッツ、機体の準備が終わったわよ。」

「レインか、すぐに行く。」

その頃リリスは . . .

「(うわぁー、ドキドキするなぁ。
 もし断られたらどうしよう、ここしか行く当てが無いに。)」

「さてと、そろそろ行くか。」

「(リリス、勇気を持って!!きっといけるはずよ!!)」

二人がドアノブを握ったのはほぼ同時だった。
この二人の力を比べてみれば当然のことながら
シャウシュッツの方が上である。
ドアは部屋の内側に開く構造で、
更に彼はドアを勢いよく開くクセがある。
そうなれば、同時にドアノブを持って開けば . . .

バッ!!

「わぁ!!」

「なっ!!」

ドテッ!!バタァーン。

一人の人間が部屋に転がり込んできてドアが閉まる。

「いてて . . . って、誰だお前?」

「. . .」

「 . . . のびてやがる、しょうがないな . . .」

洗面所から水をくんでくると倒れている少女に水をかける。
すると . . .

「あだだ . . .」

「 . . . 所で、君は?」

「へっ? . . . あわわ、別に私は@△×○!?」

「混乱するなよ、少しは落ち着いたらどうだ?」

「はい、私はリリス・ランドールという者です。」

「なるほど、それで何しに来たの?」

「弟子にしてください!!」

「はっ?」

「ですから、先生と呼ばしてください!!」

「オレが?先生?弟子?」

「 . . . だめでしょうか?」

「う〜ん . . . まぁ、いいけど。
(こういうのはその気にさせて撒くのが一番だ)」
 
「ほえ?」

「だから、別に問題は無いって。」

その後、3分近くリリスが部屋を飛び回ったのは
言うまでも無かった。

「それで、マネージャーはどうなんだ?
 見たところ、ついさっき試験に合格したように見えるが。」

「それは . . その . . . 」

「しょうがないな . . .そうだ、
 どうせなら依頼の僚機をやってくれないか?」

「実戦訓練ですか!!先生?」

「まぁ、そう言うことだ。
 (これで撒けるだろう)」

騒がしい新人を引っ張りながら格納庫へ向かうと
作業員が待ちくたびれていた

「珍しいですね、いつもはすっ飛んで来るというのに。」

「すいません、ミガキさん。
 実はコイツが . . . 」

「あれ、君はさっき試験に合格した娘じゃないか。」

「はい、この度はシャウシュッツ先生の弟子に
なりました!!」

「(シャウシュッツさん、またですか。)」

「(ああ、これで何度目だ?)」

「(把握した範囲内では8度目ですね。)」

「(もうそんなに来たのか . . .)」

「(頑張ってくださいね。)」

「(ああ、適当に撒くよ。)」

「先生、早く出ましょうよ。」

「そうだったな、じゃあ出撃だ。」

格納庫を抜け、2体のACが輸送機に乗ると
パイロットからまた同じことを聞かれた

「旦那も珍しいですね、5分も遅れるなんて。」

「ああ、色々あってな。」

「そういうことですかい、大変ですねチャンピオンも。」

「全くだ。」

しばらく会話をしていると、目的地である空港につき
機体が投下される。

「リリス、今回の依頼は敵戦力が不明だ。注意しろ!!」

「了解!!」

着地した時にシャウシュッツはリリスの機体を見てみる。

「(基本アセンは中量機で武装はカラサワと
 ブレードにロケット。火力はかなり充実しているな。)」

「(これが先生の機体、ブレイブガンナーか。)」

「 . . . リリス!!来たぞ!!」

「前方に確認!!発射!!」

バシュゥン!!. . .バガァン!!

リリスが敵を確認すると新人とは思えない反応で
敵をライフルで正確に射抜く!!

「( . . . これは、本当に新人なのか?)」

続けざまにライフルを発射する!!

バシュゥン!!
バシュゥン!!

. . . ボン、バガァン!!

「 . . . 同時に3機撃墜か、やるなリリス。」

「これくらいは朝飯前ですよ先生 」

「 . . . 後方に敵機か 」

後方に忍び寄ってきたMTがシャウシュッツを攻撃すると、
そこには機体の姿はなく、かわりに側面からマシンガンの弾丸が飛んでくる!!

「コイツの機動性を甘く見たな?」

ダダダダダダッ!! . . .ボシュン、ボシュン、バガァン!!

「先生!!」

「安心しろ、オレは無事だ。」

「シャウシュッツ、敵の増援よ!!」

「わかった、レイン。 . . .リリスよく見ておけ、
 これがシャウシュッツ・ヒュッケバインの戦いだ!!」

そう言うとマシンガンをつきだし、敵の増援ポイントに
向かう!!
相手も4対1なら勝てると思いこんだが、
今回は相手が悪すぎた . . .

「墜ちろAC!!」

「これでもくらえっ!!」

ボン、ボン!!

「その程度では当たってやれんな!!」

ダダダダダダッ!! . . . ガシュ!!

マシンガンで一気に3体のMTを破壊し、
ブレードを発動させ最後の一機に肉薄する!!

「うわぁ!!来るなぁ!!」

「遅い!!」

バシュゥゥン!!

一瞬にしてブレードで切り裂かれ、真っ二つになる。

「 . . . 安心しろ、オレがやったヤツは死んではいないよ。」

「凄い . . . 」

「レイブン、お疲れさま帰還しましょう。」

「ああ、そう言いたいところだがそうはいかないようだ。」

「これは . . . 先生!!」

「ああ、かなりの大物だ。」

「シャウシュッツ、そちらへ高速で移動する大型の機影を
 確認したわ!!データを送信します。」

「 . . . やはり大型MTか。リリス、お前は下がってろ!!
 コイツとやり合うにはまだ未熟だ!!」

「いえ、支援だけでもさせて貰います!!」

「馬鹿を言うな、死ぬぞ!!」

「分かりました、状況が不利になり次第離脱します!!」

「分かった!! . .  来たぞ!!」

「 . . . ACを確認、これよりデーター収集と
機体のテストを敢行します。」

「 . . . 了解した、決して無理はするな、
 大事な機体だからな。」

「了解しました、カーライル少佐 . . . 」

「大型兵器ならば零距離で勝負だ!!」

「 . . . AC一体が接近してくる模様、これより
 迎撃します。」

ボシュウーン . . . ババババババッ!!

「コンテナミサイルか!!いかん、リリス!!」

「 . . . 弾道予測、レーザーライフル発射!!」

バシュン、バシュン!! . . バガガァン!!

「なに!!直撃コースのミサイルだけを迎撃だと!!
 さっきといい、一体何者なんだ!!」

「接近機体を正面に捕捉、グレネード砲発射!!」

バシュン!!

「遅いな!!これでエンドだ!!」

ガシュ!!バシュウウゥゥン!!

「零距離からブレードの直撃を受けた模様!!
 回避運動に移行します!!」

「させるかぁ!!オーバーリミット発動!!」

キュワアァァン ...バシュウゥゥン!!

「ALEET!!ALEET!!
  損傷率80%突破!!持ちません!!」

「 . . . データ収集は終わった、脱出しろ . . . 」

「了解しました . .少佐 . . . 」

ボガアァァァン!!

「やりましたね!!先生!!」

「ああ、だがなぜこの程度の施設の制圧にあれほどの
兵器を持ち出すんだ?」

「 . . . 先生!!撃破した目標から脱出する
反応があります!!」

「分かった、回収される前に確保する!!」

「 . . . そうはいかんよ、003 . . . 」

「何!! . . . なんだあのACは!!」

ダダダダダダッ!!

「くっ!!させるか!!」

バガガガガガッ!!

「ほう、あのタイミングで回避しつつ反撃するとは . . .
 さすがは、と言ったところか . . . 」

「誰だ、貴様?」

「いずれ分かることだ、レイブン。いや、003!!」

「003だと?」

「少佐、パイロットの回収作業が終了しました」

「了解だ . . . また会おう、レイブン . . .」

「しまった . . .  くそっ、はめられた!!」

「先生、帰還しましょう. . . .」

「ああ、そうだな。」

数分後にやってきた輸送機に乗り込み、
グローバル社に帰還したシャウシュッツはまず、
交戦した大型兵器とACの洗い出しにとりかかった

「レイン、データはあるか?」

「だめね、この機体はどの企業にも登録されては
 いないわ。」

「やはりあの時と同じか . . . 」

「ACの方も結局はシロだったわ。」

「と言うことはグローバル社の所属ではないと言うことか。」

「それと、ACの戦闘能力の方もあなたが今までに交戦した
 どの機体をも遙かに上回るデータが検出されているわ。」

「あのゲヴァイアをも上回っているのか!!」

「そう言うことになるわ。」

「勝てるのか?」

「分からないわ、少なくともこの地上にも
 レイヤードと同じく管理者のような機関が
 存在するのは確かね。」

「だろうな。」

「所で、あのリリスって子はどうするの?」

「あいつの言い分通りに弟子にしようかと思っている。」

「珍しいわね、と言うことはそれなりの腕があるって事?」

「それなりどころか、かなりの腕だ。
 とても新人とは思えないな。」

「あなただって、最初は皆そう思っていたわよ。」

「そうだな。それと、あいつの事でもう一つお願いがあるんだが、あいつのマネー
ジャーもやってくれないか?」

「ええ、いいわよ。私もあなたで手一杯じゃないから
 問題はないわ。」

「そう言ってくれると助かる。」

「先生、終わりましたか?」

「リリスか?今終わったところだ。」

「夕食が出来たんですけど、どうですか?」

「あら、作ってくれたの?」

「ええ、住み込みで修業するのでこれくらいは
 やらないとな〜、と思って。」

「そうか、丁度腹ぺこだから、いたただくとするか。」

「そうね、こっちもおなか空いたし。
 いただきましょうか?」

「どうぞ、召し上がってください。」

「(あいつ、オレのことを知っていたようなそぶりだったな。
  それに003とは一体なんなんだ?)」

「どうしました?先生?」

「いや、何でもない。それじゃいただくとするか。」


               少女リリス  完
作者:ハンクさん