サイドストーリー

サイレントライン:Drユージン
「シャウシュッツ先生、依頼はどうですか?」

「リリスか?いや、まだ来てない」

「分かりました、ではいつものメニューをやってきます」

「ああ、そうしてくれ。」

リリスが来てから一週間。
最初は厄介払いで依頼の同行させたが、
あの時の彼女の余りに新人離れした技術とセンスを見て
この通り、彼女の言い分通りに弟子にした次第だ。
彼女が言った「いつものメニュー」とは

・距離600からの射撃訓練300発

・ミサイル回避訓練5分X3

・距離300で移動しながらの射撃訓練300発

・オレとの模擬戦闘X3(上記の訓練終了後)

この訓練は全てシュミレーターだが設定の難易度を上げて
実戦と大差ないよう設定してあるので並の新人では
2つ目の訓練で3分と立たずに機体が
大破してしまうほどだが、リリスは
何の問題もなくこの訓練をやり遂げ
(模擬戦闘では21戦21勝でオレの圧勝だが)
技術の方も初対面の時と比べると数段上の技術を
持てるようになり、我ながら彼女の才能に
驚いているくらいだ。

ピーピーピー

「んっ?受信か」

ピッ

「こちらはシャウシュッツですが?
 お宅はどちらさまで?」

「久しぶりじゃのシャウシュッツ。」

「その声はDrじゃないですか!!
 お久しぶりです。」

「その様子を見るとそちらも元気そうじゃの。」

「今日はどういった用件で?」

「一週間前におぬしが交戦したACのことでな。」

「あの機体で何か分かったことでも!?」

「詳しいことは後で話そう。
 場所はセントラルパークの南口に10:00じゃ。」

「了解しました、Dr」

通信機を切るとすぐさまリリスに回線をつなぐ

「リリス、少し急用が出来た。
 最後の訓練は中止だ、移動射撃が
 終わり次第今日の訓練は上がっていいぞ。」

「分かりました先生。」

「10:00か . . . あと1時間と言ったところか。」

支度を済ませ、指定の場所に向かうとそこには一台の
車が用意されていて、Drが乗り合わせていた。

「早かったの、シャウシュッツ。」

「ええ、では早速本題に。」

「うむ。」

シャウシュッツが車に乗り込むと車は静かに動き出し、
ユニオンの拠点に向かうと同時にDrが語り始めた。

「さて、本題のACのことじゃが
 あの機体は少なくとも一世代前に存在した
 オーバーテクノロジーが使われている可能性が
 非常に高いんじゃ。」

「オーバーテクノロジー?」

「うむ、通称OT。今では不可能と言われている
 無限機動、自己修復能力、D.F.C.Sが
 主な技術じゃな。」

「Dr、D.F.C.Sとは一体?」

「機体とパイロットの神経及び、脳波をダイレクトに
 接続して機体の追従性を飛躍的に高める
 幻の技術者じゃよ。」

「そんな技術があったなんて . . . 」

「ただ、この技術には適正が必要なんじゃ。」

「適正?」

「これはようわからんが、適正者には脳波に
 ある種の波動が感知されているそうじゃ。
 その波動はおぬしからも感知されておる。」

「どういうことですか!!」

「シャウシュッツ、おぬしがワシと出会ったのは
 これで何度目じゃ?」

「2回 . . . では?」

「正解は数え切れないくらいじゃよ、シャウシュッツ。」

「言っている意味がよく分かりませんが?」

「おぬしはレイブンになったとき、以前の記録が
 全て抹消されている事に不審を持たなかったのか?」

「アレは、会社側のミスでは?」

「いや、アレはワシがやったことじゃよ。
 シャウシュッツ . . いや003。」

「なんだと?」

「ワシはおぬしのパートナーとして共に地下に
 送り込まれた特殊工作隊員じゃよ。」

「どういうことだ?」

「Dr、到着しました。」

「分かった、では降りようかの。
 話は中で茶を入れてからで遅くは無かろう?」

「そうですね。」

二人が拠点の応接室らしき部屋に通されると
タイミング良くメイドが茶を運んでくる

「茶も入ったところで話の続きにしよう . . .
  おぬしはD機関直属の特殊部隊ダークマターの
 隊長として腕を振るっておった。」

「D機関?特務部隊?隊長? . . .
 それで003とは一体なんですか?」

「003とはD機関の一代プロジェクトである
 H・H計画で作られたシリーズの事じゃ。」

「計画?どういう物ですか?」

「H・H . . . ハイブリットヒューマン計画は
 素体となる人間の遺伝子や脳神経を操作して
 通常の人間とは比べ物にならない戦闘能力を
 持たせた生体兵器計画の事じゃ。」

「では、オレも . . . 」

「そう、その計画で生み出された最高傑作が
 お前じゃ。」

「最高傑作だって?」

「D機関が今までに収集した戦闘データや
 計画で蓄積された精製技術の粋を集めて
 作られたのがお前なのじゃ。」

「狂ってやがる . . . だが、
 どうしてオレにはその時の記憶がないんだ?」

「裏切り者じゃからな、ワシらは。」

「何をしでかしてそうなったんだ?」

「お前さんが部隊を裏切って隊を全滅させ
 ワシと二人でこのレイヤードに潜入したのだからな。」

「なぜ裏切りを?」

「お前さんは、以前から組織のやり方に反感を持っており、
 部隊の隊員もそう言うお前さんを監視するために
 送り込まれてきた人間じゃからの。
 あの時、D機関はダークマターに
 レイヤードに存在するレイブンと交戦させ
 今まで無かった新しい戦闘データを収集させようと
 画作し、命令を出した。
 ワシもデータ処理のため同行し、レイヤードに
 潜入しようとした時じゃった、
 お前さんはかねてより脱出の機会を探っており
 ここぞとばかりに部隊に強襲、全滅させたのじゃ。」

「Drも共犯でか?」

「そう言う事じゃ。ワシがユニオンを設立したのも
 奴らに対抗する力を付ける為じゃ。」

「だが、何でそれで記憶を封じたんだ?」

「お前さんが、万が一の際に記憶と人格を
 変えておけばばれることなく、生活出来るだろうと
 考えたからじゃ。
 もちろん、ワシも人格を変えたがの。」

「だが、奴らにはバレバレのようだぜ?」

「泳がされていたんじゃろうな、お前さんが
 裏切ったときのデーターをどこかで収集して
 再びお前さんが地上に帰還する時まで。」

「それで、その記憶はどうなんだ?」

「もちろん、破棄したよ。」

「だろうな。」

「だが、正体がばれている以上迂闊には
 動けんのう。」

「ああ、下手をしたらオレやDr以上に
 ハンクやリリス達があぶない。」

「では、これからどうする?」

「取り敢えずはレイブンを演じていることにするよ。」

「たしかに、その方が無難じゃな。」

ピーピーピー

「んっ?レイン?」

ピッ

「シャウシュッツ、大変よ!!
 正体不明機がここのグローバル社を
 襲撃しているわ!!」

「なんだって!!それで戦力は?」

「ACタイプが5機、戦闘型MTが15機よ!!」

「分かった!!」

ピッ

「シャウシュッツ、ここから行ったのではブレイブガンナー
 に乗る前にお前がやられるだろう。」

「ではどうすればいいんだ!!」

「あの機体を使うしかない!!」

「あの機体?」

「お前さんが、潜入時に使っていた愛機じゃよ。
  あの伝説のレイブン、グロックが愛用した
 スパルタクスをベースに強化した機体じゃ。」

「 . . . ソリッドランサーか!!」

「ほう、だいぶ記憶が戻ってきたようじゃの。」

「それで、どこまで動く!?」

「現状で5割しか機能せん。」

「5割で十分だ!!相手はおそらく下士官クラスだろう。」

「それでは、スーツに着替えてくれ、
 格納庫はここの地図を見てくれ。」

「ああ、分かった。」

早々に着替えて格納庫に向かうと
記憶の奥底に封印されていたマシンがあった. . .

「久しぶりに見たな。」

「ああ、整備は行き届いている。
 ただ、あの時の戦闘で受けた損傷が原因で
 フィードバックシステムと
 インフィニティジェネレータが使えんのじゃ。」

「自己修復はどうだ!?」

「ナノマシンは正常に機能しているよ。」

「了解!!それでは行くとするか!!」

機体に乗り込むと、マシンがパイロットを待ちわびていた
かのように機動し始め、様々な計器に火が入る

「よし、これならいける . . .ソリッドランサー発進!!」

ヒュゴォォォ . . . バシュウウゥゥン!!

       サイレントライン:Drユージン 完
作者:ハンクさん