サイドストーリー

SILENTLINE EPISODE 6 〜旧敵〜
ゴォッ・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
ここ、地下高速道A-3。ミラージュが開発した特殊輸送列車「スカロプス A-3」が、
轟音を立てて何処かへ進んでいく。
「次のA-0065ポイントでA-3をおりる」
「了解、左側方面のゲート・アスファーデル市街区方面に通行します」
このスカロプス A-3は、ミラージュが新技術を注ぎ込んで開発した特殊輸送列車で、
地下高速道A-3を通行できる唯一の手段である。列車には小型砲台、大型砲台といった多彩な武装が施されていて、
頑丈なレアメタル鉱と何枚も重ねたコンクリートで、十分な防御力や耐久力も期待できる。
それに、8両の列車には、乗客や物資を運べる十分なスペースがある。
そのスペースに乗客が乗る所を、客席・寝台室・食堂室の3つに分けられ、物資を運ぶ所を物資保管室・格納庫の2つに分けられている。


「R-COO1ポイントへ進め」
「了解、右側方面のゲート・アルファライト市街区方面に通行します」
スカロフスA-3は、進行ルートを変更。右の「RーCOO1」と、書かれたゲートのロックを解除し、その奥へ進んでいく。
「A-3を降りてもう1時間ですね。どこまで進むつもりでしょう?」
「我が社の指示に従えば判る。アレを持っていけそうな場所はクレストに嗅ぎ付けられているがな・・・C-133ポイントへ進め」

「了解、右側方面のゲート・アスパディア市街区方面へ通行します」

ゴォッ・・・プシューーー、ゴゴゴゴゴゴゴ・・・

「W-0444ポイントへ進め」

「了解、左側方面のゲート・シャーロット市街区方面へ通行します」
ゴォッ・・・プシューーー、ゴゴゴゴゴゴゴ・・・

「X-4566ポイントへ進め」

「了解、前方面のゲート・ヘリックス兵器工場地帯方面へ通行します」

ゴォッ・・・プシューーー、ゴゴゴゴゴゴゴ・・・


「J-4797ポイントへ進め」

「了解、左側方面のゲート・ガザ渓谷方面へ通行します」

ゴォッ・・・プシューーー、ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・ゴゴゴゴゴゴゴ・・・

「C-5654へ進め」

「了解、右側方面のゲート・ザーク森林保護地区方面へ通行します」

ゴォッ・・・プシューーー、ザァーーーゴゴゴゴゴゴゴ・・・ザァーーー・・・・・・

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

「B-3708で降りる」

「了解、左側方面ゲート・ガグバス市街区方面で降ります」

ゴォッ・・・プシューーー・・・キィィィーーーーゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・


スカロプス A-3は6つの区画を通行したあとに、ガグバス市街区方面のゲートを通行したあとに降りた。
電灯が次々とネオンみたいに点る中、着いた所がミラージュの最大情報管理施設「レヒト研究所」だった。
スカロプス A-3の乗務員たちは、列車の乗客に次の出発時刻を知らせると、そのまま研究所へ直行した。
「ブツのACは建物の裏に・・・ウェルズ、カスター、いるか?」
車長が誰かを呼ぶと、2人の白衣の研究員が駆け付けて来た。
「お待ちしていました、車長」
2人の白衣の研究員は敬礼する。
「無人ACを、スカロプス A-3の格納車両に」
車長はスカロフス A-3の一番後ろの車両を指す。その後に他の乗務員たちが次々と降りて、レヒト研究所の裏へ廻っていく。
レヒト研究所の裏にある無人ACは輸送車の荷台に積んであった。トラックの荷台の表面にミラージュ社のマークが貼ってある。
「ヘリックス兵器工場を出て、ずっとここにあったというのか・・・荷台のコンテナを出します」
「待て。以降のAIのプログラムの操作はこちらでやる。コンテナの中身をあらたろ」
車長の指示で、輸送車の荷台のコンテナの中身を改める事になった。
コンテナの蓋が開くと同時に、中のAI機体はハンガーで武装状態のまま仰向けになっていた。
肩に大型ロケット・リニアキャノン・グレネードライフル・ブレードと言った武装だ。
そのAI機体には赤のカラーリングが施されていた。
車長と乗務員たちは、AI機体を見てほくそ笑んだ。


ゴォー・・・ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
AI機体を積んだスカロフス A-3は、K11区画(トレネシティ方面)を目指して轟音を上げつつ、A-3の内部を進んでいた。
「これで勝負はついたようだな」
「え?」
「クレストの連中だよ。クレスト社の勝負はもう着いたと言っているのだ」
「ここから先は無人ACを大量量産して、クレスト社への我が社の無人兵器による攻撃部隊を幾つか編成する。
クレストのやつらも平然とした顔でいられるのも今夜が最後だと言う事だ」
「その後はどうなるんで?」
「各地にある58個のクレスト支社ビルをことごとく潰し、最後にベイルートのクレストの本社をブッ潰す。
そこでキサラギもクレストと同じように潰される道を歩ませる。どことなりと消えてしまえば、我々の仕事もそこで終わりだ。
それで良いな、お前たち?」
「・・・・・」
「返事は!?」
「は、はい!!」
車長に叫ばれて乗務員たちが飛び上がる。だが、その時、乗務員の1人が叫ぶ。
「車長、後ろから何か来ます!」
「どうした!?」
「解りません・・・・何かが追って来るんです」
「クレストの奴等か!?」
「いえ・・・まだ解りません。逆探知してみます・・・!? これは、AC!? ACです!!
2体の反応を確認!! ACです!!!」
「AC!? クレストのレイヴンか! 総員、甲一種戦闘配置!! 各部隊は迎撃用の対空砲及び全砲台の操縦席につけ!!」


ゴゴゴゴゴゥーーー・・・ガシュン、ガシュン。
ゴゴゴゴゴゥーーー・・・ガシュン、ガシュン。
スカロプス の全車両に付けられていた砲台が動きだし、次々と後方に向けて狙いをつけた。
車両の横に対空砲、車両の上には対空砲・ミサイル砲台などの様々な砲台が現れ、車両の前後に管制塔が現れ、
これを破壊すればスカロプス A-3の車両を1つ切り離す事ができる仕組みになっている。
武装状態のスカロプス A-3は、地下高速道を高速移動していた。目標はK11区画。ミラージュ本社ビルのあるトレネシティへだ。
スカロプス A-3を追う2体のACとは、サイプレスの駆るフロートAC「テン・コマンドメンツ」と、
ゴールドブリットの駆る「クローバーナイト」だ。どちらもクレストに専属する部隊のレイヴンだ。
「目標は、K11区画へ移動中。K11区画へ入る前に破壊しろ」
「「了解した」」
サイプレスとゴールドブリットは、スカロプス に近づいて行く。
「撃〜〜〜〜〜〜〜い!!!」
車長の指示で、スカロプス A-3の全砲台がテン・コマンドメンツとクローバーナイトへ一斉射撃を浴びせる。
無数の銃弾が2体のACへ襲い掛かる。
「煩い蝿どもだ!!」
サイプレスのテン・コマンドメンツの両肩のチェーンガンがガクン、と、列車の砲台のほうへ狙いを定め、2門一斉に火を吹く。
その途端に1両目のコンテナを潰し、チェーンガンの向きを変えつつ、上と左右の砲台を次々と潰した。
ドン、ドン、ドン、ボゥン!!
ガシャッ・・・ガシャッ!! ドン、ゴォウゥゥゥーーーーー・・・・
砲台を潰された所から火が吹き出し、その砲手のいる場所で火災が発生した。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「第1から第16砲塔大破!! 弾薬庫に被弾、第1・第2・第5・第6モーターに被弾、炎上!! 消火急げ!!」
「1両につき16もある砲台を一瞬で・・・・!?」
スカロプス A-3の第8車両内に不穏な空気が流れつつある。その途端に、破壊された
コンテナから大型レーザー砲台が姿を現わした。紫色の2連レーザー砲台だ。
「コンテナが・・・レーザー砲!?」
ゴールドブリットは唖然とする。その途端に大型砲台はこちらに狙いを定めたかと思ったら、極太の青緑色の閃光を放った。
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
「うわ!! 何だこのAC以上のでかさのレーザーは!?」
サイプレスとゴールドブリットは魂消る。その途端にも大型砲台は其れどころかますます攻撃の激しさに手を増して来て、
レーザーを連続発射して来た。
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
「く・・・この野郎、調子に乗りやがって!!」
サイプレスは砲台の横に廻り込み、チェーンガンを連続発射しつつブレードから光波を飛ばした。
その同時の一撃一撃が砲台の多くの装甲を奪った。やがてダメージが蓄積するうちに、大型砲台の接続部分が吹き飛ばされ、
ゴション、ゴショッ・・・ガガガン!!と、吹き飛ばされて、地下高速道の闇の奥へゴロゴロと転がって行った。
「クローバーナイト、お前は管制塔を潰せ!!」
「了解ッ!!」
ゴールドブリットは弾かれたように車両に乗り上がる。それと同時にドスン、と、音が響く。乗務員たちはそれに驚いて手を止める。
「な・・・何だ!?」
乗務員たちがそう呟いた途端、ガシャッ・・ガシャッという音が響き、ガクン、と、車両が揺れて、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・・と、
車両が右の方向に傾く音が響いた。車両が切り離されたのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
乗務員たちは悲鳴をあげる。その瞬間、火を巻き散らしながら第8車両は、
大きい音とともに後ろの方へスリップしながら地下高速道の闇へと消えて行った。
それと同時に、第7車両の全砲台が姿を見せた途端、砲撃を行って来た。さっきと同じように銃弾が吹き飛んでくる。
「くそっ、また砲台か」
サイプレスが叫ぶ。だが、こう砲台を相手し続けたら切りが無い。それどころか、スカロプスA-3を逃してしまう危険性が高い。
それに追い込まれたサイプレスとゴールドブリットは、管制塔のみをねらう事にした。
「管制塔さえ潰せば!!」
管制塔は1両につき、2ケ所ある。1つ潰しても、ジョイントが外れない。全部潰せば、砲台を潰さなくても切り離す事ができる。
サイプレスとゴールドブリットは次々と管制塔に狙いをつける。
ガシャッ・・・・ガシャッ!!
管制塔が次々と潰され、切り離されて行くスカロフスA-3の車両。
「第7・・第6・・第5車両管制塔破損! 第7・・・第6・・・第5車両分離されました!! 車長!! このままでは・・・」
「わかっている!!  スピードのボルテージを90%にアップだ!! 全速力でこの区域を離脱する!!」
車長の命令で、乗務員たちはスカロプス A-3のスピードをフルスピードに上げて、全速力でこの区域を離脱しようとする。
車輪のモーターが激しく回る音が響いた。
「やばい!! スピードを上げて来たぞ」
ゴールドブリットが叫ぶ。これで管制塔破壊でもますます間に合わなくなる、と、思った2人は第1車両さえ潰せば、と、判断した。
「ブーストのペースをあげろ!! このままだと・・・」
「わかっている!!?テン・コマンドメンツとクローバーナイトはブーストの出力を上げつつ、スカロプスA-3の前ヘ回り込む。
途中で砲台が攻撃して来たが、そんなモノに構っている暇は無い。やがて第1車両の前ヘ回り込んだ。
前方に現れた2体のACの姿を見て、車長と乗務員は悲鳴をあげる。
「廻り込んで来たぞ!!」
「第1車両の全砲台の砲手班、何をしている!! 迎撃だ!!」
車長の叫ぶ声によって、第1車両の左右にかかっている対空砲が攻撃を始めた。
「馬鹿めが・・・」
それと同時にサイプレスが両肩のチェーンガンを作動させ、その撃ち合いに応じる。
対空砲とチェーンガンは、攻撃力の差がありすぎる。対空砲は疎か、上の砲台群も潰れた。
「第1車両の全砲塔が大破しました!!」
「くそっ・・・、ここまで来て、もう駄目だと言うのか?」
車長は頭を下げる。その途端にバキッ、ガシャガシャガシャ!! と、ディスプレイ
を突き破ってテン・コマンドメンツのチェーンガンが顔を覗く。
「うわああああ!!」
車長と乗務員たちは叫ぶ。その途端にガガガガガガガガ、と、チェーンガンが銃弾を吹いて、
そこにいた車長と乗務員たちはバラバラに肉片になって打ち砕けて行く。
「第1車両の管制室を破壊した。クローバーナイト、管制塔と反応炉を潰して、停止させろ」
「了解!!」
ゴールドブリットのクローバーナイトは、スカロプス A-3の装甲の表面をバリバリッ、と、抉じ開ける。
その中にスカロプス A-3の反応炉(リアクター)があった。ガスタンク状のリアクターだ。
「反応炉を発見した」
「よし・・・潰せ!!」
「了解ッッ!!」
サイプレスに弾かれたように、クローバーナイトは反応炉にレーザーライフルの銃口をガシン、と、填めつける。
そして、トリガーを引いた。
バシュゥゥゥン!! バシュゥゥゥン!!
爆発を起こす反応炉。ドシュゥゥゥ、ドドドン!! ドシュゥゥゥ、ドドドン!! 
爆発が次々と起こり、スカロプス A-3の装甲と車両が次々と爆発を起こし始め、だんだん動きが遅くなり始めた。
破壊した事になった、と言うべきか。
「よし、目標の撃破を確認。御苦労だった、レイヴン」
依頼主の通信が入る。


破壊された第8車両内部。
中に居た乗客と乗務員たちの死骸が転がっている。
そして、破壊されたコンテナと弾薬、食糧の積んだ袋。是等の中の中身が散乱している。
大量の血。グチャグチャに広がった死骸から内臓、目玉、手首、齦、肉が飛び散っている。
中には横転して、硝子を打ち破って外へ放り出され、バラバラになった者、顔を割って死んだのもいる。
「・・・・ガガガ・・・ゴトッ、ガガ・・・ピーピー」
その時、車両のハンガー内部で何かが、いや機械が動く音が響いていた。
そして、その何かは立ち上がった。
「ショーブダ、レイヴン・・・ドチラガタダシイカハタタカイデキメヨウ・・・
 
 ショうブだ、レいヴん・・・どチラガたダしイかハたタカいできメヨウ・・・
 
 しょうぶだ、レイヴん・・・どちらガただしいカハたたかいデきめよう・・・
 
 しょうぶだ、レイヴン・・・どちらがただしいかはたたかいできめよう。
 
 しょうぶだ、レイヴン。 どちらがただしいかはたたかいできめよう。
 
 しょうぶだ、
 しょうぶだ、
 しょうぶだ、
 しょうぶだ、
 しょうぶだ、
 しょうぶだ、
 しょうぶだ、
 レイヴン。
 レイヴン。
 レイヴン。
 レイヴン。
 レイヴン。
 レイヴン。
 どちらがただしいかは
 どちらがただしいかは
 どちらがただしいかは
 どちらがただしいかは
 どちらがただしいかは
 どちらがただしいかは
 たたかいできめよう。
 たたかいできめよう。
 たたかいできめよう。
 たたかいできめよう。
 たたかいできめよう。
 たたかいできめよう。
 
 しょうぶだ、レイヴン。どちらがただしいかはたたかいできめよう。しょうぶだ、
 レイヴン。どちらがただしいかはたたかいできめよう。しょうぶだ、レイヴン。
 どちらがただしいかはたたかいできめよう。しょうぶだ、レイヴン。どちらがた
 だしいかはたたかいできめよう。しょうぶだ、レイヴン。どちらがただしいかは
 たたかいできめよう。しょうぶだ、レイヴン。どちらがただしいかはたたかいで 
   きめよう」


その何かは繰り替えしつつ喋っていた。何かに対する挑戦の言葉を。
そして、たった1人の何かに勝負を挑もうとしている言葉を。
そして、ついに。


「勝負だ、レイヴン。どちらが正しいかは戦いできめよう」


ヴシュゥン・・・ジジジジジ・・・


ドゴォォォォン!!!!
爆発音が遠くで響いていた。
「何かが爆発したみたいだぞ」
ゴールドブリットは呟く。
その途端、

ビービービービー!!

敵の接近の警告が知らされた。
「敵!?」
「どこだ!?」
ゴールドブリットとサイプレスが辺りを見回していると、その途端闇の奥から赤いACが
高速移動で近づいてきた。手にはグレネードライフルにブレード、肩の大型ロケットとリニアガンを装備している。
それに、エクステンションは迎撃ミサイルだ。
「A・・・AC!?」
ゴールドブリットは驚く。すると、大慌てな依頼主の声がスピーカーホンから入ってきた。
「レイヴン!! すまないがそのACの破壊を頼む!! 報酬は追加すブツッ」
スピーカーホンの依頼主の声は途切れ、かわりに男の声が入ってきた。
『勝負だ、レイヴン。どちらが正しいかは戦いできめよう』
その途端に赤いACは襲ってきた。
「この声・・・あの機体は!?」
サイプレスには、その機体と男の声に見覚えがある。
火星に居た頃、軌道エレベータ「ラプチャー」で、レオス・クラインの放った無人ACとの戦闘がフラッシュバックされる。


『勝負だ、レイヴン。どちらが正しいかは戦いできめよう』
たくさんの動力炉が、グォォォン、グォォォンと轟音を立てて動く中、レオス・クラインAC(偽)が話し掛けてきた。
「一騎討ちか、面白い」
サイプレスはほくそ笑む。
その途端に赤いACはハンドグレネードを放って来た。サイプレスのテン・コマンドメンツはチェーンガンで撃ち合いに応じる。
動力炉に当たらぬよう、赤いACに狙いをつける。弾丸が赤いACの腕部に食い込む。
赤いACは構わずグレネードライフルを連射してくる。
それも、高機動力で飛び回りながら。
グレネードの弾丸が着弾すると土煙を挙げると同時にドーム状の爆発を起こす。
爆発が激しく起こる中、サイプレスは上下の運動を繰り返すだけでなかなか攻撃できない。
「くそっ!!」
サイプレスも負けじと反撃する。ハンドガンの弾も、チェーンガン同様赤いACの腕部に食い込む。
その途端に小さい爆発を起こし、赤いACの両腕がボロボロになっていく。
カチッ、カチッ・・・
赤いACのグレネードライフルの弾が切れた。それと同時に赤いACはグレネードライフルを宙に投げ捨てると、
今度はリニアガンに切り換えて、何度も撃って来た。
しかし、サイプレスの方向には定まっておらず、動力炉のギリギリの距離、壁、天井、
テン・コマンドメンツの左右のガラ空きのスペースに当たるだけ。
「何処を狙って・・・」
サイプレスは左腕から青緑色の光を放つ。
「・・・んだあああああああぁァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
それと同時に赤いACに突進してブレードをブンッ、と振るう。袈裟掛けにコアを切り裂かれた赤いACは爆発を起こして地面に落下する。
『・・・・・・・・ガク・・ガガガ・・ククググ・・・ガガガガ・・・・』
息切れしてるように、自分の体をガク、ガクと震わせる赤いAC。
『勝負だ、レイヴン。ガガガククク・・どちらが正しいかはクク・・・戦いできめよう』
サイプレスは突然の異変に気づく。こいつは、クラインじゃ無い? と、思い始めた。
『しょーブダザザザーレいヴん。ブーザザザードちラがタダしいザザザー・・カハタタかイでザザーキメよウザザザザザー』
だんだんクラインの声にノイズが入り始めた。それどころか、声が徐々に裏返り始めてるのでは? と、さらに思い始めた。
『ショーブギャーーーザザザザ・・・ダ、レいヴヴヴヴヴヴウヴヴ・・・』
そしてついに、その赤いACは爆発した。その後、彼のオペレーターのネルがふるえていた。
「これは、無人機・・・! 此所にもクラインは・・・」
「・・・・・・・」
その後は、沈黙していた。
「サイプレス、どうした! 何を突っ立っている!」
「・・・はっ!?」
ゴールドブリットの声で、ハッと我に帰るサイプレス。その時、赤いACのリニアガンをテン・コマンドメンツは胸部に喰らった。
「ぐっ!!」
テン・コマンドメンツは仰け反ったが、すぐに体勢を立て直すと腕のMG-300のトリガーを引き、連射した。
ダダダダダ・・・ダラララララララララララララララッ!!
テン・コマンドメンツの反撃に、マシンガンの連射を喰らった赤いAC。
爆発を起こしたが、それは両腕の装甲板を奪われただけ。武器をグレネードに変えて攻撃して来た。
ドシュゥゥゥン!! ドシュゥゥゥン!!
だが、赤いACはグレネードを連射しているが当たらない。AIが確りしていないせいなのか、的外れな方向に当たる。
「連射というのはな・・・・こうするんだよ!!」
サイプレスは両肩のチェインガンと腕のグレネードランチャーを連射する。
今度は1回目のテン・コマンドメンツの反撃連射とは桁違いな攻撃力となり、赤いACの装甲の大半を奪い去った。
そして、沢山のダメージを与えたという証拠を見せた。
「次はこれだ!!」
ゴールドブリットは赤いACのブースターパックに、エネルギーライフルの銃口をゴリッと押し付けた。そして、トリガーを引く。
バシュゥゥゥン!! ドガアアアアアアァ・・・・・・
炎を巻き上げて落ちていく赤いAC。
ドゴッ、という音とともに赤いACは着地した。
ガグッ、ガグッと赤いACはラプチャーに現われたレオス・クラインAC(偽)と同じように息切れをしているかのように、
ガグッ、ガグッ、ガグッと自分の身体の機体を震わせていた。
その赤いACに内蔵されていたAIは、ノイズの入り交じった声で喋った。
『・・・・・・・・ガク・・ガガガ・・ククググ・・・ガガガガ・・・・』
『勝負だ、レイヴン。ガガガククク・・どちらが正しいかはクク・・・戦いできめよう』
『しょーブダザザザーレいヴん。ブーザザザードちラがタダしいザザザー・・カハタタかイでザザーキメよウザザザザザー』
『ショーブギャーーーザザザザ・・・ダ、レいヴヴヴヴヴヴウヴヴ・・・』
その赤いACは、突然爆発を起こし、コアに入っていた脳と機械部品をバラバラに吹き飛ばし、飛び散らせた。大量の血が飛び散る。
「何だ、これは・・・・」
サイプレスとゴールドブリットが唖然とする。
その時、サイプレスの耳の中にあの時のクラインの言葉が耳に谺している。

「勝負だ、レイヴン。どちらが正しいかは戦いで決めよう」





ども、武田です。
今回は「特殊輸送車両襲撃」をもとに描かせてもらいました。
今回現れたAI機体はオリジナルと言う事で・・・
このあとも、いろいろなAI機体が現れます。
さて、次回は「新設基地侵入」「新設基地制圧」の2つをもとにして話を描きます。

〈今回登場したレイヴン〉
名称:サイプレス(28・強化人間)
管理者を最も厚く信奉しており、戦う時に管理者に祈りを捧げると言う、管理者を崇拝するレイヴン。
構成パーツは全てクレスト社の製品であり、管理者に一番信奉されている企業のパーツを選んだと言う理由がある。
フロートの機動力を活かし、敵を撹乱しつつ確実にしとめる。
祈り言葉は、「我ら世界の創造主・管理者よ・・・我に力を与えたまえ!」
AC:テン・コマンドメンツ
頭部:CHD-MISTEYE
コア:CCL-01-NER
腕部:CAM-01-SOL
脚部:CLR-00-MAK
ブースタ:None
FCS:VREX-WS-1
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:None
エクステンション:CWEM-AM40
右肩武器:CWC-CNG-300
左肩武器:CWC-CNG-300
右腕武器:MWG-MG/700H
左腕武器:CWGG-GRSL-20
オプション:OP-INTENSIFY
(ナーヴスコンコード所属時代の時の愛機《基準違反機体》)
頭部:EHD-NIGHTEYE
コア:ECL-ONE
腕部:ZAN-202/TEM
脚部:ZLR-MOC200/FG
ブースタ:None
FCS:DOX-ALM
ジェネレータ:HOY-BV2500
ラジエータ:RRX-COT-GK10
インサイド:INW-DEC-MQ2
エクステンション:BEX-BAMS-287
右肩装備:EWC-CNG4000
左肩装備:EWC-CNG4000
右腕装備:EWG-HG-ART
左腕装備:ZLS-400/SL
オプション:SP-S/SCR   SP-ENE/SCR   SP-BCNDR    SP-BSI-LE    SP-ECM-JAM
                        SP-VIECH    SP-BMALAD

名称:ゴールドブリット(29)
秩序を守る団体に属しているレイヴン。そのオーソドックスな戦闘スタイルは、
教科書を読んでその教科書通りに戦ってきて身につけたものである。
今や最近負け続けてきた事を、正しいように戦ってきているのになぜ負け続けているのか疑問に思ってきている。
AC「クローバーナイト」を駆る。

(今回登場したAI機体)
AI機体・TYPE:ζ(強化人間)
頭部:MHD-RE/005
コア:MCL-SS/ORCA
腕部:MAL-RE/REX
脚部:MLM-XA3/LW
ブースタ:MBT-NI/MARE
FCS:AOX-X/WS-3
ジェネレータ:MGP-VE905
ラジエータ:RMR-SA44
インサイド:None
エクステンション:CWEM-AS40
右肩装備:CWR-HECTO
左肩装備:CWC-LIC/100
右腕装備:CWGG-GR-12
左腕装備:CLB-LS-3711
オプション:OP-INTENSIFY
作者:武田 慎さん