SILENTLINE EPISODE 7 〜真夜中の潜入〜
グローバルコーテックスには、人気のある噂の女性レイヴンが2人いる。
「お互い精々協力するとしようか・・・」
作戦を始める時に淡々と冷たい部分を感じる言葉を口走る、赤い眼帯を右目に填めた女性。彼女の名は「ファナティック」。
その淋しそうな目つきが大勢の人々を引き寄せる。
もう1人は、可愛らしい体型を持った女性で、ファナティック同様、大勢の人々を引き寄せる。
アイドル的存在の女性レイヴン「ミルキーウェイ」だ。
その2人は、ある夜にミラージュからの依頼を受け、夜の進入作戦を実施する事になる。
作戦を実施する前、ファナティックはミルキーウェイと共に、自分の部屋を出る前にこう呟いた。
「やっと仕事だ・・・・お互い精々協力しようか」
グローバルコーテックスの応接室。依頼主が向側のソファーに座っている。
「場所はガザ渓谷の最奥部の、クレストの無人要塞『VG-924』だ。ここへは複数のレイヴンで共同で依頼に・・・・」
依頼主は懐から電子のマップボードをテーブルに置く。
「ガザ渓谷の地図は用意した。地軸が変わったわけでもあるまいが・・・」
依頼主は緊張感を持ちながら、ファナティックに話し掛ける。彼女の淋しそうな目つきが依頼主を緊張させているのだろうか。
「・・・今度の作戦は緊張感が張り詰めているようだな・・・」
依頼主の額を汗が流れる。そして、
「そ・・・それでは・・・早速作戦開始を・・・」
依頼主の言葉にファナティックは、
「ああ・・・・頼む・・・」
と、冷たい部分を入れた言葉で返した。
ここ、ガザ渓谷地帯。この奥にクレストが開発を進めている無人要塞「VG-924」がある。
ガザ渓谷地帯は非常に入り組んだ地形が多く、おまけに地割れ・断層も多く、ACでも非常に危ない所だった。
敵が攻めにくいところにクレストは、このガザ渓谷の要害を利用して、上空にサーチライトを付けた無人戦闘ヘリを配置し、
上空と地上の制圧権をとっていた。
要塞周辺に砲台・守備部隊を設け、さらに要塞には侵入者を葬り去る仕掛けも持っている。
まさに、「自然の要塞」の奥に設けた「無敵要塞」とも言える。
ガザ渓谷地帯入り口にて。2体のACが音を立てないように進入している。
1体は肩にスラッグガンと軽量型グレネード、腕にマシンガン、ブレードと言った武装の4脚型で、
もう1体は両肩にミサイル、両腕にハンドガンと言った武装の2脚型だ。
「早く来い。戦闘ヘリがここにも巡回に来る」
「あ・・・はい・・・」
4脚型が2脚型を促す。
「よし、行くぞ」
4脚型はファナティックの「レッドアイ」で、2脚型はミルキーウェイの「ネ−ジュ」
だ。ファナティックのレッドアイがくるりと背を向けて、ミルキーウェイのネージュ
を誘導する。
だいぶ奥のほうまで進み、1つ目のトンネル型のアーチまで差し掛かった。
「私達は今、このガザ渓谷の中心部にいる。この奥へ行くには・・・」
ファナティックはアーチの奥まで行って、上を向く。そして、奥の絶壁に岩場が突き出ている部分が多少多少見えた。
「さあ、登るぞ」
と、ミルキーウェイに言うと、ブーストジャンプで足場を一段ずつ登っていく。
「あ・・・待ってください・・・登るったって・・・」
ミルキーウェイのネ−ジュは急いでレッドアイの後を追う。
そして、彼女も足場を確かめて一段ずつ登っていくが、着地する時、時々足を踏み外してしまう。
「きゃあっ!!」
「慌てるな。落ち着いて一段一段しっかり確かめて登れ」
悲鳴をあげるミルキーウェイに、ファナティックは冷静な言葉をかける。
そして、頂上に差し掛かった。その時、最後の岩場まで差し掛かったミルキーウェイは、思わず下を見る。そしてまた、悲鳴をあげる。
「こ・・・・怖い!! ダメです、落ちたらACと一緒にペシャンコになっちゃう!!」
「シッ!!」
悲鳴をあげるミルキーウェイを、ファナティックは制する。ファナティックの視線の先に、岩場の下に灯が見えている。
どうやらクレスト警備部隊の駐屯地だ。
「かすかに灯が見えるぞ。クレストの駐屯地だ」
「え・・・・」
ファナティックのレッドアイは岩場の右方向へ進める。ミルキーウェイのネ−ジュもそれに続いて、慎重に進む。
その岩場の下にあった、灯の灯された辺りが見える。そして、小屋が幾つか見えて、テントも沢山張ってあった。
おそらく、駐屯地だろう。
ファナティックがスピーカーホンをオールサラウンド状態にすると、駐屯地から何やら話声、コップ、食器の触れあう音、
物を食べている音がが聞こえて来た。どうやらクレストの部隊員たちだろう。
ファナティックは見つかったら危険だと判断し、岩場の左端まで移動。そして、そろそろとブーストで上手く下降する。
今度はミルキーウェイのネ−ジュが岩場の左端まで移動する。下のほうでレッドアイが「降りてこい」と手を招いている。
「・・・・・・・・」
ミルキーウェイは下を見て、そろそろとブ−スターをふかして下まで慎重さを欠けずに降りていく。そして、地面近くに辿り着いた。
ホッと一息をついて、ブ−スターを吹かすのを止めた。その途端だった―――――。
ドスン!!
ネ−ジュの足が勢いよく地面に着いた。それは大きな物音となって、駐屯地のほうにも聞こえた。
駐屯地の兵士たちが何だ何だと急いで駆け足でかけてくる音が響く。岩場の近くあたりまで来た。その途端に・・・
スッ、とレッドアイのマシンガン「MG-500」が顔を覗いた。
「A・・・AC!?」
「うわあああ!!」
兵士たちは駐屯地へ逃げ込もうとする。だがその途端にトリガーが引かれた。
ダダダダダダダダダダ・・・・ダララララララララララララララララッ!!!
マシンガンが火を吹く。兵士たちは身体を撃ち抜かれ、血と肉片と化した。ファナティックには、飛び散る血と肉が見えた。
証拠隠滅にと、そして今度はスラッグガンに武器を変え、駐屯地の小屋とテントにぶっ放した。
バン、バン、バン、バン、バン!!!
広範囲に弾が放たれ、小屋とテントを尽く潰した。頑丈な角材で作られた小屋を、その角材をいとも簡単に弾が噛み砕いていく。
やがて完全に駐屯地を潰した。その時、ミルキーウェイのネ−ジュが恐る恐る顔を覗かせる。
ファナティックのレッドアイがこっちを向いた。
「行くぞ」
ファナティックは西側のアーチに向かって、アーチを潜り抜ける。ミルキーウェイも後を追う。
やがて奥のほうまで進んだ所で、レッドアイが立ち止まった。
「あれを見ろ・・・・光だ」
レッドアイが指差す。よく見ると、まっすぐ行って右の方向にまがった所で、光が微かに漏れていた。
どうやら目標の無人要塞らしい。
「どれだけ歩いていたんでしょうか・・・ずっと暗いアーチの奥に移動し続けていますね」
「ああ・・・・」
ガザ渓谷の入り組んだ道を、もう2体のACが歩いている。ディリジェントのタイムテーブル、イクスブロードのブレイクショットだ。
「上に軍用道路があるぞ」
イクスブロードは上を見上げる。よく見ると、上の岩場に軍用道路らしきものがポッカリと浮かんでいた。街灯の灯も見えている。
ゴオオオオオオオオオオオ、と風の音が鳴り響く。
「有り難え。ここなら戦闘ヘリも見回りにこな・・・」
上に上がったイクスブロードが言いかけた。その途端に足を捕まれ、ブレイクショットは下にドスン、と落ちた。土煙が上がる。
「いってぇ!!」
イクスブロードは座席の凸凹で腰を痛めた。
「何するんだ!!」
「馬鹿言ってるんじゃ無いですよ、上を見なさい」
「へ?」
ディリジェントの言葉で上を見上げた。その時、
ババババババババ!!
ババババババババ!!
と、物凄い数の戦闘ヘリが上空を徘徊していた。
「ものすげー数のヘリが・・・俺達の捜索の為に・・・!?」
イクスブロードは呆然とした。
「行きましょう、ここじゃ敵に見つかるわ」
ディリジェントは岩場の間を縫うように、そのまま渓谷の奥へ進んでいく。
「あ、おい、待ってくれ」
イクスブロードも後を追う。
ガザ渓谷の奥へ進んでいくと同時に、やがて今度は第2のアーチに出た。
その先の横の岩場に入り口にはまた、クレストの駐屯地が張られている。
「また駐屯地だ」
イクスブロードは溜息を着く。
「これで何個破壊したかと思ってんだけどよぉ・・・」
イクスブロードはもう一度溜息を着いた。そして、またもう一度を見上げる。
「戦闘ヘリの数は減るどころか、増えてるみたいだ・・・」
呟いた途端にサーチライトの目玉がギョロッとこっちを向いた。そして、イクスブロードのブレイクショットは慌てて隠れる。
「ど・・どうするんだ!?」
イクスブロードは叫ぶ。
「どうすると言ったって・・・ここは賭けに出るしか無いわ」
「か・・・賭け!?」
「賭けが外れたらそれまで。チャンスは一度しか無い」
イクスブロードは危険を感じていたが、その言葉にのせられ、ディリジェントの賭けに乗ることにした。
「足音を立てないで」
「く・・・・・・!!」
ドスッ、ドスン!
「っ・・・・・・!!」
「こっち」
2人は足音を立てずに、駐屯地の前を無事にくぐり抜ける事ができた。
「・・ちょろいぜ!」
「油断しないで!! まだまだこれからよ!!」
2人はガザ渓谷の奥へ進み続けた。だがイクスブロードは道を行く途中、ディリジェントの出した賭けが気になった。
「お前の賭けって、一体何を・・・」
「シッ!」
イクスブロードが声をかけた途端、目と鼻の奥に無人要塞に続くクレストの軍用道路が敷かれていた。
その上空を、大量の戦闘ヘリがサーチライトを灯して徘徊している。
「ぐ・・軍用道路・・・!? お前、さっきそこへ行くなと行ってたじゃ無いか・・・通報されるぞ!!」
「シッ!」
イクスブロードが言い終わらないうちに、ディリジェントのタイムテーブルが道路に乗り出した。そして、無人要塞に向かって歩き始めた。
「お・・・おい!!」
イクスブロードのブレイクショットも急いで後を追う。
道路の前を、チラチラチラとサーチライトがウロウロしている。
2人は、このサーチライトの間をくぐり抜けながら、徐々に無人要塞に近づく。
だがあと一歩と言う所で、イクスブロードのブレイクショットにサーチライトが当てられた。その途端に、戦闘ヘリが攻撃して来た。
「うわ!!」
「発見された!? 通報される前に破壊を!!」
ディリジェントは叫ぶ。イクスブロードは弾かれたように垂直ミサイルを大量に撃ちまくった。
打ち上げ花火のごとく、ミサイルは戦闘ヘリのローダーとプロペラの部分とかに当たり、次々と墜落する。
そして、急いでディリジェントがチェインガンで戦闘ヘリを掃討した。
サーチライトとロローダ−が吹き飛び、軍用道路の上をアイスホッケーのボールみたいにすれすれに滑っていき、傍の渓谷の底に落ちた。
「はー・・・・」
イクスブロードは溜息を着く。そしてまた、上を見上げる。
「すげ−、沢山の数の戦闘へリがいなくなった」
「今のうちに、早く!!」
イクスブロードとディリジェントはブーストダッシュで、基地に駆け込む。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
基地へ辿り着くと、ファナティックとミルキーウェイが無人要塞の守備隊と戦闘を始めていた。
5基の「オウルクラウン VG-924」と中距離戦闘用MT「ナースホルン」がレッドアイとネ−ジュを攻撃している。
ナースホルンとオウルクラウンは砲火をレッドアイとネ−ジュに集中している。
「ファナティック、ミルキーウェイ、援護する!!」
そこへタイムテーブルとブレイクショットが加勢に飛び込む。
「良い所に来てくれたようだな」
ファナティックは多少少し笑みを浮かべたが、フン、とそっぽを向いて、ナースホルンの相手をする。
ナースホルンはレッドアイに向かって赤い極太の閃光を放って来た。
「・・・っと・・・」
ファナティックはそれを軽々と避けた。そして、ブレードでナースホルンの関節を突き刺し、ナースホルンを崩れ落ちさせる。
ババババババババババババババババババ!!
ババババババババババババババババババ!!
物凄い音が幾度か響いたかと思ったら、ナースホルンの集団が大量の打ち上げミサイルを放って来た。
打ち上げ花火のごとく夜空に上がった打ち上げミサイルは雨のごとく4体のACに襲い掛かる。
「うひーっ!」
ミルキーウェイはあわてて基地の屋根を盾代わりにする。その他3体のACもあわてて基地の下へ隠れる。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、という音が立続けに響いて、基地の屋根は爆発を起こす。
基地の上のクレーンが横倒しになり、強化コンクリートの屋根はもうもうと煙をあげる。
「ミサイルはこちらが隠れてもこちらを攻撃するか。たとえ障害物がある場合でも・・
・味方の基地を攻撃するたあ、追尾ミサイルってのは間抜けだぜ」
イクスブロードは「ヒュゥッ」という声をあげる。ミサイルの雨が止んだあとにもう一度4人は攻撃を始めた。
接近戦に追い込まれたナースホルンはレーザーキャノンとガトリングガンを連射する。
「うおりゃ」
イクスブロードはナースホルンの集団の後ろに廻り込むと、そこから大量のミサイルを撃ち込む。
いくら装甲の固いナースホルンでも、後ろに廻り込まれたらジリ貧になる。
ナースホルンが次々と倒れる。だがナースホルンは後から後から現れる。何度倒してもキリが無い。
「くそっ! キリが無い!」
いくら冷静感を保つファナティックも、疲れを見せ始めた。5基のオウルクラウンを倒しても、ナースホルンは次々と押し寄せてくる。
ガガガガガガガ・・・バスッバスッ。ふいに、ファナティックのマシンガンの弾が底を着いた。
「チッ!」と舌打ちをしたファナティックのレッドアイはマシンガンを腹立ちそうに投げ捨てた。
そして武器をスラッグガンに切り換えて攻撃を始める。
「間もなく工作部隊が目標地点に辿り着くようですよ。ファナティック、もう少しです」
ディリジェントの通信が入る。
その頃には16体以上のナースホルンを倒していて、20体目に差し掛かった時にはもうナースホルンは現れなくなっていた。
そして、工作部隊の通信が入った。
「情報を入手した。これより・・・A、AC!? うわあっ!!
(ドガアアアアッ、バリバリバリバリバリバリ・・・ザッ・・ザ・・・ザ・・・ザッ・・・プッ)」
工作部隊はどうやら基地内にいた複数の敵ACに撃退されたようだ。
「ミラージュから、緊急の通信が入った。内容は基地内の敵勢力の排除・・・だそうだ」
ファナティックが言うと、上空を1機の輸送機がゴオオオオオオオ、と、飛んで来た。
「輸送機?」
4人が上空を見上げていると、その途端に1機の赤いACが飛び降りた。
両肩に爆雷型ミサイル、手にライフルに火炎放射器と言ったバランスタイプだ。
「緊急の依頼だから、共同でオレと依頼にあたってくれ、とのことだそうだ」
その赤いACは告げる。ちょうどその時、モニターには赤いツンツン髪に橙色の鉢巻きを頭に巻いた男の姿が写っていた。
ファナティックにはそれは誰だか分かった。
「久しぶりだな、カロンブライブ」
「え!? カロンブライブ!?」
ファナティックの言葉に、ミルキーウェイは振り返る。
その途端にネ−ジュが振り返るさい、イクスブロードのブレイクショットの足を踏んだ。
「こら、足を踏むな!」
「あ・・・スイマセン、ご免なさい」
ネ−ジュは足を放した。ディリジェントは、カロンブライブと顔見知りのファナティックに驚いた。
「C-1の「不死鳥」カロンブライブと顔見知り・・・・!? ホントにただの盲目の女性レイヴンなの!?」
「再会は以外かな?」
「いや・・・」
ディリジェントが驚く間も無く、ファナティックはカロンブライブに言葉を返した。
「どうやらあそこが基地内の入り口らしい」
ファナティックは入り口を見て言う。そして、カロンブライブが促す。
「ああ・・・この奥にいるのは、ランカーだ。気を抜くなよ」
「もう一度言うが敵はランカーだ。気を抜くなよ」
基地へ進入した時、カロンブライブが念押しに警告する。
「ACを確認。これより敵を殲滅する」
基地内に待機していた3体のACのうち、1体のAC「ブラッククロス」が言う。パイロットは「ドロール」だ。
「「了解」」
2体のAC「マイリジ」の駆る「ヴェノムランス」、「セブンスヘブン」の駆る「ユートピア」が返事を返す。
場所は、無人要塞「VG-924」の地下に設けられていた、「Underground Works」。地下開発施設内部だ。
この施設には、エネルギー供給源のパイプが幾つも設けられており、破壊すると基地内部の温度が上昇する仕掛けになっている。
「ファナティックとイクスブロードはそこから援護しろ。オレとミルキーウェイ、ディリジェントはACと直接戦闘を挑む」
「了解した」
「わかった!」
3対3のバトルが始まり、ブラッククロス、ヴェノムランス、ユートピアの3体、
ファイアーバード、タイムテーブル、ネ−ジュの3体が激突する。残ったレッドアイとブレイクショットは援護する形となった。
「撃て、撃て、撃てぇー!!」
セブンスヘブンが自分に叫びながら、パルスキャノンとマシンガン、EOを連射する。
そしてファイアーバード達の方向へ突っ込む。いつものくせが出て、彼女の頭の中に、
「突撃」の指示方針が出ていた。
「猪突猛進が芸ばかりじゃないぞッ!!」
ファイアーバードは高速で接近してユートピアを斬り付ける。バギッ、とユートピアは今の一撃で左腕の装甲板を剥がされた。
「キャッ!!」
「セブン、早まるな、1人では無理だ!!」
今度はドロールのブラッククロスが上空からファイアーバードに向かってマシンガンを連射する。
ダダダダダダダダダダダダダダッ、とファイアーバードの背中のブ−スターパックをマシンガンが命中した。
カン、カン、カンという音が響く。
「がっ」
「もらった!!」
カロンブライブは目を瞑る。すると今度はヴェノムランスがブレードを振り上げて突撃する。
そして、ファイアーバードに向かってブレードを勢い良く降り降ろした。
ザシュッ!!―――――― 装甲板が勢い良く剥がされる音が響いた。
「くっ・・・!!」
カロンブライブのファイアーバードは二重攻撃を受けて、少したじろぐ。しかし、
「まだまだ」
と体勢を立て直して突撃して来た。ディリジェントのタイムテーブルと、ミルキーウェイのネ−ジュも加勢する。
「喰らえーーーーーー!!」
ミルキーウェイとディリジェントは3体の敵ACに向かって、大量のミサイルを撃ち込んだ。
バシュッ、バシュッ、バシュッ!! と、音が何回も響いて大量の小型ミサイルが敵ACめがけて襲い掛かる。
ドドドドドドドドドドドドドド・・・・!!! 爆発が激しく起こる。
「くっ! 引っ込んでいろーーーーーー!!」
今度はマイリッジはネージュとタイムテーブルに一気に近づき、ブレードをブン、と振るった。
ミルキーウェイとタイムテーブルは慌てて避ける。
「ジャマだザコども!!」
ドロールは武器とEOのトリガーを同時に引き、ブラッククロスのEOとマシンガン併用射撃を始まらせる。
紫の極細極小の閃光と銃弾が同時に高速連射される。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ドロールは一気に前へ突進する。だが敵がいる方向とは違い、何もない方向に突進している。
「何処を狙っている!!」
カロンブライブはファイアーバードをドロールの方向に突進させ、後ろに張り付いた途端に火炎放射器とライフルを同時に、
ブラッククロスのブースターパックを攻撃する。
シャアアアアアーーーーーーーーーーーーッ!!! バババババババババババババ!!!
まさに、火を吹くドラゴンのようにブラッククロスのブースターパックに紅蓮の炎が燃え移る。
「ぎゃああああああああああああ!!!!」
ドロールは悲鳴を挙げ、前にあったエネルギー供給炉のパイプに打ち当たった。
バゴン、という音が響いてパイプは爆発を起こし、炎を吹き上げた。
「んっ!!」
カロンブライブは機体を後ろに後退させた。さらにブラッククロスを包み込んだ炎は拡大して、火だるま状態に仕立て上げた。
「燃えるー!! 燃えてしまうー!!」
ドロールは火を巻き上げ機体を四方八方目茶苦茶に突進させる。そして、とうとうラジエータが放熱限界値を超えて、爆発を起こした。
「ぎゃああああああああああああ・・・・・」
ドロールが悲鳴を挙げる間もなく、ブラッククロスは爆発した。内部に内蔵されていた地雷が誘爆し、大爆発を起こした。
ドゴォォォォォォォォォォン!!
「ドロール!!」
「ドロールさーん!!」
マイリッジとセブンスヘブンが叫ぶ。
その途端、ゴオオオオオオオオオ!! という音が響き、そっちを向いてみると、大量のミサイルが飛んで来た。
イクスブロードのブレイクショットの、武器腕ミサイル「MAW-DHM68/04」のミサイルだ。
ドドドドドドドドドドドド・・・・・・!!!!
「くっ!!」
「うっ!!」
マイリッジのヴェノムランス、セブンスヘブンのユートピアは辛うじてこのミサイルの猛攻を凌ぐ。
そして、セブンスヘブンがイクスブロードに目を付けた。
「このおお、あじな真似を!!」
セブンスヘブンは武器を「CWC-GNL-15」に切り換え、ドゴッ、ドゴッと連射した。巨大な光の塊が、ブレイクショットにめがけて飛んでいく。
「ん!?」
ドガァァァァァァッ!! ババババババババスン!!
「うわっ!!」
イクスブロードは気づくのが少し遅れたせいで、機体のAPの半分を奪われた。表示計を見た時、「3295」と表示されていた。
「なめんなあーーーーーーーーー!!!!」
イクスブロードも負けじと大量のミサイルを連射する。
それはヴェノムランスとユートピアの両方に飛んで行き、両者にかなりのダメージを与えた。爆発が、ボォン!!と両者の機体で起こる。
「くっ!! も、もう・・・」
セブンスヘブンが歯を食いしばる。そして今度は、ファナティックのグレネード
「CWC-GNS-15」を喰らった。ボロボロになったユートピアの重装甲を、一撃で粉砕した。
「うぅわあああああああああああ!!!」
ドドドドドドドドドオオオオオオオオオオオオオ・・・・!!!
セブンスヘブンのユートピアは爆発を起こしながら、向こうの壁へ吹っ飛んで行った。
ドガッ、と壁にぶつかると、大爆発を起こしてグシャッ、と潰れた。
残ったマイリッジのヴェノムランスに、ファイアーバード、タイムテーブル、ネージュの攻撃が集中する。
彼の機体は、白い煙を巻き上げていた。
「ええい!!」
マイリッジは中型ミサイルを放ち、中型ミサイルは弧を描いて飛んで行く。
「シロウトが!!」
カロンブライブは叫ぶ。そして3体のACはマイリッジの飛ばしたミサイルを避け、
彼のファイアーバードはヴェノムランスの頭上に飛び上がり、そこから爆雷ミサイルを大量射出した。
そしてタイムテーブルとネージュの大量射出された小型ミサイルもマイリッジのヴェノムランスに襲い掛かる。
ドガガガガガガガガガガガガガガ!! ドガガガガガガガガガガガガガ!!
バババババババババババババババ!! ドドドドドドドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
「があああぁーーーーーっ!!」
マイリッジの断末魔が響く中、ヴェノムランスは大爆発を起こし、ドシャッ、とヴェノムランスのコアらしき部分、拉げた脚部が地面に落ちた。
敵は全滅した。そして・・・
「いい腕だな。また一緒に戦いたいものだ・・・」
カロンブライブはファナティック、ミルキーウェイ、ディリジェント、イクスブロードの4人をぐるりと見回すと、褒めの言葉を授ける。
そして、
『任務完了、これより帰投する。レイヴン達、援護感謝する』
工作部隊の通信が入る。その後で、
「さて、任務も終わった事だし、そろそろ帰ってもいい頃じゃありませんか?」
と、ディリジェントが声をかける。
「はい、私はもう帰ります。ファァア・・・もう眠いですよう・・・」
ミルキーウェイが可愛らしい欠伸をして、ネージュをゲートへ向かわせた。
「俺も帰る。もう夜が更けるころだしな」
と、イクスブロードもブレイクショットをゲートへ向かわせる。
ディリジェントは、暫くその場にいたカロンブライブとファナティックを暫く見ていた。
そして、少し立てば2人の機体がゲートへ向いて、2人でこう言い合う。
「時間だ。私はもう帰るぞ」
「ああ・・・」
はい、武田です。
今回は「新設基地侵入」「新設基地制圧」を元に描かせて頂きました。
「新設基地侵入」の場面を、パワーを入れて書いてみました。
タイトルの「潜入」といい味をしているから・・・
次回は、全ミッション中最難関の「ローダス兵器開発工場救援」の予定です。
では、今回はこれにて!
〈今回登場したレイヴン〉
名称:ファナティック(35)
右目に赤い眼帯を填めた女性レイヴン。
その淋しそうな目つきは、大勢の人々を寄せつけ、口走る言葉には
淡々と冷たい部分を感じさせる。また、作戦を実施する時は、
必ず僚機を伴い、決して1人で作戦に参加しない。
AC:レッドアイ
頭部:MHD-MM/003
コア:MCM-MX/002
腕部:MAL-RE/HADRO
脚部:CLF-D2/ROG
ブースタ:CBT-FLEET
FCS:VREX-ND-2
ジェネレータ:MGP-VE905
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:CWC-SLU-64
左肩装備:CWC-GNS-15
右腕装備:CWG-MG-500
左腕装備:MLB-HALBERD
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-S/STAB OP-E/CND OP-LFCS++
OP-E-LAP OP-EO/LAP
名称:ミルキーウェイ(24)
可愛らしい体型を持った女性レイヴンで、
声や様子も可愛らしい。それでファナティック同様、人気がある。
機動力を確保出来た機動型ACで、敵を翻弄してミサイルとハンドガンを使いこなす。
だが、装甲が低い事から、負けてしまう事もしばしば。
AC:ネージュ
頭部:CHD-SKYEYE
コア:MCL-SS/RAY
腕部:CAL-MARTE
脚部:MLM-MX/066
ブースタ:MBT-NI/GULL
FCS:AOX-F/ST-6
ジェネレータ:KGP-ZS4
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:None
エクステンション:CWEM-R/30
右肩装備:MWM-S42/6
左肩装備:MWM-S42/6
右腕装備:MWG-HGB/108
左腕装備:MWG-HGBL-90
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-LFCS++
〈今回登場した敵レイヴン〉
名称:マイリッジ(34)
無駄な浪費や出費を嫌うレイヴン。
弾薬を撃ち尽くすよりも短期決着を心がけ、一撃で相手を倒すそのスタイルを心掛ける。
また、敵をいたぶる事が至上の喜びとしていて、弾薬をうち尽くすことすらかまわないレイヴン「ギムレット」と考えがあわず、対立している。
今回の章で、クレスト無人要塞の警護レイヴンとして、ドロール、セブンスヘブンと共に、ファナティック達と戦うが、
大量のミサイルによる集中砲火を浴びて戦死。
AC:ヴェノムランス
頭部:CHD-06-OVE
コア:MCL-SS/RAY
腕部:CAL-44-EAS
脚部:MLM-MX/066
ブースタ:MBT-NI/GULL
FCS:PLS-SRA02
ジェネレータ:MGP-VE905
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:MWI-DD/30
エクステンション:KEBT-TB-UN5
右肩装備:MRL-SS/SPHERE
左肩装備:CWM-M36/4
右腕装備:CWG-SRF-100
左腕装備:MLB-HALBERD
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-S/STAB OP-LFCS++ OP-E-LAP
名称:セブンスヘブン(24)
敵の攻撃をに受けまくって、攻撃しながら敵に突進する突撃スタイルと言う事から、
数々の機体をスクラップにしてきた女性レイヴン。
普段は温和な性格だがACに乗れば敵に突っ込む事しか考えない。そしてそれが、絶妙な戦果をあげる事がある。
クレストの無人要塞でドロール、マイリッジとともに戦うが、最後にはファナティックのグレネードを受けて戦死。
AC:ユートピア
頭部:CHD-07-VEN
コア:CCH-OV-IKS
腕部:MAH-SS/CASK
脚部:CLC-D3TA
ブースタ:None
FCS:VREX-ND-2
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RGI-KDA01
インサイド:CWI-BO-20
エクステンション:CWEM-AM40
右肩装備:MWR-TM/60
左肩装備:CWC-GNL-15
右腕装備:MWG-MG/800
左腕装備:KWG-HZL30S
オプション:OP-ECMP
名称:ドロール(36)
AC:ブラッククロス
頭部:MHD-RE/005
コア:MCSS/ORCA
腕部:CAL-44-EAS
脚部:MLL-MX/077
ブースタ:CBT-01-UN4
FCS:VREX-F/ND-8
ジェネレータ:KGP-ZS4
ラジエータ:RMR-SA44
インサイド:MWI-MD/40
エクステンション:None
右肩装備:CWR-S80
左肩装備:MRL-RE/111
右腕装備:MWG-MG/1000
左腕装備:MLB-LS/003
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-S/STAB OP-ECMP OP-E-LAP
OP-EO-LAP
作者:武田 慎さん