SILENTLINE EPISODE 8 〜大陸に降る星〜
未だ3大企業の激突が激しく続く「大陸」。
その大陸を包む蒼い「地球」の上空に、1つの謎の衛星が浮かんでいる。
それは、「衛星砲」。人工衛星のような形をした、所属不明の衛星兵器。
その衛星砲に手を延ばしたのは、ミラージュ社である。
ミラージュはこれを利用して、クレストを叩き潰そうとしている。
また、大陸にミラージュの機動部隊が動き出しつつある。
空に何隻ものの輸送機、輸送ヘリが、地球の一角に在する「資源開発地区」に向かっ
ている。その目標地点は・・・「Lawdas Weapon base」。ローダス兵器開発工場・・・クレストが所有する重要拠点の1つである。
「エネルギー増幅器充填レベル、SからAヘ移行」
衛星砲管制室。
モニター、パソコンが幾つか並ぶこの部屋で、何人ものミラージュのオペレーターが、パソコン、計器の操作をしている。
「充填までのカウントダウン開始・・・」
「衛星砲、予定コースに入りました。目標・クレスト社所有、ローダス兵器開発工場」
ミラージュのオペレーター達はモニターを見て言う。
「衛星砲発射準備!」
オペレーターの指揮官が指示を出す。
「了解!(全)」
全員が了解をした途端、オペレーターの1人が叫ぶ。
「目標周辺に敵守備部隊らしき反応、多数発見!」
「敵守備部隊だと!? 地上の攻撃部隊に連絡しろ。宇宙と地上の両方から挟み撃ちの攻撃だ!!」
「了解!(全)」
指揮官の指示が再び下り、敬礼するオペレーター達。
そして、一方、資源開発地区に向かうミラージュ機動部隊は・・・
「目標地点に到達。『αリーダー』より各部隊へ」
空を飛ぶ輸送機、輸送ヘリ。それに掴まれ、入れられて搬送されて行くMT。
逆脚MT「ランスポーター」「アローポーター」、ブースタ付MT「トラーゲン」。
「各機、目標基地の攻撃を許可する。護衛への攻撃は、各判断に任せる」
「了解(全)」
そしてさらに一方、ローダス兵器開発工場では・・・
「こちらAポイント、異常なし」
「こちらBポイント、異常なし」
「こちらCポイント、異常なし」
基地の周辺で守備部隊のMTたちが敵が何処からか来るかわからないから、怠らぬ警護、
連絡を送る。
そして。
「こちらDポイント、未確認部隊の接近を確認。攻撃命令を」
Dポイントの守備部隊が通信を送る。
「了解、全守備部隊、戦闘体勢に入れ。未確認部隊の迎撃に入る。迎撃用の全ハイメガランチャーを起動させろ。攻撃に入る」
守備部隊指揮官が通信を送る。そして、Xの字型の基地の、4方向から迎撃用のロングバレルの高出力エネルギー高射砲
「ハイメガランチャー」が現れ、未確認部隊の飛来方向へ向けられる。
「未確認部隊接近、では、攻撃開始しま・・・」
守備部隊副指揮官が言いかけた。その途端・・・
キラッ、と空の向こうから青い光が煌めく。それは、胡麻粒程の大きさだったが、それは徐々に大きくなってこっちへ来るのを感じた。
「え?」
副指揮官が目を丸くする。だがそれは、カッと物凄く大きい光となった。
「なっ・・・」
ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!
「はわあっ!!!」
巨大の青い閃光が兵器工場の中心部を直撃、大爆発を起こした。
それは巨大な火柱となって、デカイ打上げ花火のごとく火柱を破裂させ、さらにもう1つの爆発を起こした。
「な、なんだ!?」
守備部隊隊員たちがどよめく。
「副指揮官より指揮所、大変です!!」
「どうしたぁ!!」
「何か! とてつも無く速いものにッ!! とてつも無く目映いものにッ!! とてつもなく破壊力のあるものがッ!!
わがローダス兵器開発工場は攻撃を受けましたッ!!」
「なんだとぉ!?」
指揮所は混乱する。
「落ち着け、被弾箇所を確認しろ!! 謎の閃光の発射拠点を逆探知しろ、原因の早期発見を急げ!!」
指揮官が叫ぶ。そして、モニターに写し出された映像が現れた。
衛星砲だった。
「!? こ、これは・・・」
「衛星砲!?」
そして更に混乱する指揮所。だが、それを打ち破るように、
「レーダー班から指揮所、多数の新たな熱源反応が索敵範囲に侵入! 敵の輸送機、輸送ヘリです!!」
レーダー班からの通信が入る。それで混乱から解けた指揮所。指揮官は叫ぶ。
「こちら指揮所! 直ちにハイメガランチャーで撃ち落とせ!!」
4基のハイメガランチャーはドゥン、ドゥン!! と火を吹いて高威力のビームを放つ。
ビームに撃ち落とされる輸送機、輸送ヘリもいたが、辛うじて工場の敷地内の上空に進入した奴もいる。そして、
「これより投下、作戦を開始する」
「敵勢力及び工場本体を完全破壊せよ」
地上のミラージュ部隊の指揮官・副指揮官により、輸送機と輸送ヘリに搬送されたMTたちの安全鍵がバシッ、バシッと音をたてる。
「OK! オールグリーン」
「全機、安全鍵解除!! 投下!!」
ガシュッ、ガシュッ。ミラージュ機動部隊のMTが次々と投下された。
ドスン、ドスン、ドスン!! バシュゥゥーーーン、バシュゥゥーーーン!!
地面に落ちた大量の逆脚MT。空中から投下され、浮遊状態を保つブースタ付MT。
それらは次々と基地への攻撃を開始した。
「ミラージュ部隊だ!! ミラージュ部隊が我が工場へと攻撃を始めた!! 至急迎撃せよ!!」
「工場敷地に侵入した敵MT部隊の掃討を急げ!! 防衛用の全トーチカを起動、敵輸送機、輸送ヘリの撃墜を指示する。
1機たりとも撃ち漏らすな!!」
指揮官の指示が再び入る。そして、守備部隊のMT部隊が攻撃を開始した。
ズバム、ズバムと工場の周辺にミサイルランチャー兼トーチカ砲台が何台も現れ、
4基のハイメガランチャーと同時に上空を飛ぶミラージュの輸送機、輸送ヘリを攻撃する。
キューン、キューン、キューン!!
ドオオン、ドオオン、ドオオン!!
キューン、キューン、キューン!!
ドオオン、ドオオン、ドオオン!!
ガガガガ!! ドォン、ドォン!!
ガガガガ!! ドォン、ドォン!!
ガガガガ!! ドォン、ドォン!!
ガガガガ!! ドォン、ドォン!!
ボン、ボン、ドガアアア・・・ズズウウン!! ボン、ボン、ボン、ドガアアアアン!!
ズズゥゥン・・・ズズズズズズ・・・・ズズゥゥン・・・ズズズズズズ・・・
「たかがMT部隊に何を手子摺っている!!」
「うるせー!! こいつら攻撃は貧弱だけど防御が半端じゃねえんだよ!!」
「くっそー!! トーチカが固ぇ!!」
「くっ、高射砲の攻撃が邪魔でなかなか進めない!!」
ミラージュ機動部隊にイザコザが起こり始めた。守備部隊の隔壁のように固い防御に、そして鋭利な槍のような攻撃に、手子摺っている。
その時、ミラージュの小隊長の1人「βリーダー」の通信が入った。
「『βリーダー』より各部隊へ!! 衛星砲管制室から通信が入った、衛星砲による攻撃を始めるそうだ。
撤退暗号コードが全部隊に届く筈だ、届いたら直ぐに退避しろ」
「了解(全)」
βリーダーの通信が入り、ゾロゾロと撤退して行くミラージュ機動部隊の面々。それを見たクレスト守備部隊の面々が、
「やりました! 守備部隊より指揮所、ミラージュ部隊が・・・」
と、次々と叫ぶ。だがその時、空から沢山の赤いサーチレーザーみたいなものが降りて来た。「え?」と首をかしげる守備部隊の面々。
「違う!! あれは・・・いかん!! 全機回避!!」
サーチレーザーを見た指揮官は慌てて叫ぶ。
その途端に高出力のレーザーが発射された。
その場所にあったハイメガランチャーの1つが破壊され、ズズズズズズ、と火を揚げて崩れ落ちる。
そこからは、衛星砲の高出力のレーザーの雨嵐だった。バシュゥゥン、バシュゥゥン!!と、青白い光柱が次々と守備部隊のMTを倒し、
ミサイルランチャー兼トーチカ砲台を、次々と飴のように溶かし、ハイメガランチャーを沈めていった。
やがて衛星砲の雨嵐が収まると、
「『αリーダー』より全部隊へ、突撃用意ーッ! 衛星砲の作った勝機を逃すなーっ!」
「了解!!(全)」
「突撃イィィィーーーーッ!!」
雨嵐が収まったと同時に、ミラージュ機動部隊が突撃した。防衛の崩れたクレスト守備部隊なぞ、敵では無い。
そしてそこから、一気にミラージュ側の旗色が良くなり、クレスト側の旗色が悪くなる。間違い無く、ミラージュの形勢逆転だ。
「なんだと!?ローダス兵器開発工場がミラージュ機動部隊に強襲を受けているとの事だと!?
ただちに全レイヴンにこの依頼文を送れ!!」
「はっ(全)」
ローダス兵器開発工場の部隊の苦境を聞いたクレスト社本部。その時、全レイヴンに、クレスト社の依頼メールが送られて来た。
「Re:ローダス兵器開発工場救援
依頼主:クレスト
成功報酬:36000c
緊急事態が起こった。我がローダス兵器開発工場に、ミラージュの衛星砲による攻撃が
撃ち降ろされたと同時に、ミラージュの機動部隊が強襲を掛けて来たのだ。
おそらくミラージュの目的は、ローダス兵器開発工場及び資源開発地区の占拠だろう。
十分な報酬は約束する。何としてもミラージュ機動部隊の侵攻を防いでほしい」
「舞踏会はもう始まっているようだな」
輸送車の中で、依頼メールを受けたレイヴン達がローダス兵器開発工場の激戦の様子を見ている。
依頼を受けたレイヴンは、アイロニー、フレイム、アドヴェント、クラフツパーソン、メビウスリング、フォグシャドウの6人。
「目標地点に到達。本機は作戦領域より、離脱する」
暫くした頃に輸送車は6人のレイヴンを降ろすと、そのままその場を去った。
機動部隊はどうやら補給する為に引き返したらしく、基地の守備部隊を全滅させた後で一度帰還したようだ。
「どうやら補給をする為に帰還したらしい」
アイロニーが小火いた途端、キィィィィーーーー・・・という音が響いた。敵が来たらしい。
メビウスリングのオペレーター、エマの通信が入る。
「ミラージュ機動部隊の接近を確認、迎撃して下さい」
「来たな」
工場周辺にランスポーター、アローポーターがガシン、ガシンと足音を立てて次々と近づいて来て、
キィィィーーーン、という音を立ててトラーゲンが飛んでくる。
「皆で団結して、数で押し切ろうと言う作戦だな・・・そうはさせるか!」
アイロニーとフレイムが先ず左右に散開し、飛んでくるトラーゲンをマシンガンで撃ち、
チェインガン、リニアガンでランスポーター、アローポーターの群れを撃ちまくる。
そしてその後にアドヴェントがミサイル、ライフルを交互に使い分けてトラーゲンの相手をし、
クラフツパーソンがデュアルミサイルとEO、スナイパーライフルと拡散投擲銃をランスポーター、アローポーターに向かって連射する。
メビウスリングとフォグシャドウも各々の武器を使い分けて敵を倒して行く。
「散開して各個に敵を叩くぞ」
メビウスリングが皆に通信を送る。そして数を増して来た敵部隊に対しても怯まず、6連ミサイルとレーザーライフルを敵部隊に連発する。
「堕ちろ!!」
クラフツパーソンがデュアルミサイル・連動ミサイルで大量のミサイルを敵部隊にブチ込む。
弧を描いて飛び回る大量のミサイルは、敵部隊を確実に葬り去る。
「喰らえ!!」
アドヴェントは両手のライフル、両肩のミサイルを敵部隊に叩き込む。
「ジャマだ、ザコども!!」
アイロニーとフレイムはマシンガンとエネルギーショットガンをEOと併用して、敵の大軍を叩く。
「決めてやるぞ」
フォグシャドウは両手のショットガンを連射し、素早い動きで動き回るトラーゲン、
動きの遅いランスポーター、アローポーターに風穴を開け、次々と倒れさせて行く。
6人のレイヴンが次々とミラージュ機動部隊のMTを次々と撃破していく。
機動部隊の旗色が悪くなった頃に、クレスト通信士からの通信が入る。
「レイヴン、衛星砲による攻撃は、施設近辺にまで迫っている。砲撃は直に作戦領域に達するだろう、気を付けてくれ」
クレスト通信士の声には、緊張が隠っていた。
その頃には、衛星砲では第3射の準備が已に始まっていて、8つのエネルギー増幅器にエネルギーが集中し始めている。
そして銃口にエネルギーが集まり始めていた。
「ローダス兵器開発工場の守備部隊の全掃討を確認しました・・ですが、新たな増援を確認・・・レイヴンです!」
「何ッ!?」
「現在、機動部隊の6割が、そのレイヴンによる攻撃を受け、壊滅状態です! 中破16、大破25、戦死66」
「何ッ!? おのれクレスト! まだ抵抗を続ける気か!?」
指揮官は憤る。そしてさらにそれを重ねるように、
「衛星砲発射準備だ!」
と、指示を下す。
「まだ発射エネルギーが足りません!」
「なら、さっさと充填を急がせろ!!」
指揮官の指示で、衛星砲のエネルギー増幅器にエネルギーが10倍の速度で入り込む。
そしてついに。
「衛星砲発射体勢及び内部のエネルギー充填完了! 発射まであと10、9、8、7、6、5、4、3、2、1・・・・・0! 点火!!」
「衛星砲発射!!」
バシュゥゥゥゥゥゥゥン、衛星砲の銃口から極太の青い閃光が放たれ、
その銃口の周りにある何個ものサブ発射口も青い細長い閃光を放った。
「レイヴン、レーザー砲が到達する! 直撃を避けてくれ!!」
クレスト通信士の通信が入ると同時に、次々と曇り空を切り裂くように、雲の間から青い光が次々と煌めいた。
「来たぞ」
フォグシャドウは光を見て叫ぶ。その途端、シルエットはバッとその場から飛び退いた。
そしてシルエットが立っていた位置に青い閃光が落ち、爆発を起こした。
他の5人も空から降り注ぐ青い閃光の雨嵐を避ける。
ドシュゥン、ドシュゥン、ドシュゥン、ドシュゥン、ドシュゥン!! と青い閃光の落ちた場所に爆発が起こる。
その衛星砲の砲撃に乗じるかのように、トラーゲンやアローポーター、ランスポーターも反撃に転じて来た。
「厄介な奴等だぜッ!!」
フレイムは舌打ちをしながら、火炎放射器とチェインガンを襲ってくるトラーゲン、
アローポーター、ランスポーターにブッ放す。それを見て、アイロニーやアドヴェント、クラフツパーソンも回避しながらの攻撃に転じる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
4人は回避+銃撃戦の2つの山場に転じる。
「・・・ふん」
メビウスリングは回避しながら4人の戦いぶりを見て鼻で笑う。そして、高機動で衛星砲のレーザーを避けまくる。
もちろん、フォグシャドウもだ。
そして暫くすると、今度は東西の方角から土煙が上がった。そしてそれは近づいて来た。
「な、何だ?」
戦っていたアイロニーがそれに気づくと、それは正体を現わした。
そのそれとは機動装甲車「グレイボア」の改良版、機動装甲車「グレイボアmk.3」だった。
「グレイボアmk.3!?」
「メビウスリングより指揮所! 機動装甲車「グレイボアmk.3」を多数確認した!!
ランスポーター、アローポーターとともに雪崩れ込んでくるぞっ!!」
メビウスリングはアイロニーが驚くと同時に、指揮所に通信を送る。
「了解・・・グレイボアmk.3の大量投入だとっ!? クソ!」
指揮官は了解しながらも憤る。そして衛星砲の攻撃に乗じて、グレイボアmk.3も攻撃してくる。
「畜生ォーーー!! コイツ速い!!」
動きの速いグレイボアmk.3にクラフツパーソンは叫ぶ。
「待て、クラフツ! 俺たちに任せろ!!」
アイロニーとフレイムが叫ぶ。多数のグレイボアmk.3に向かって、
衛星砲のレーザーとグレイボアmk.3のラインビームを避けながら、マシンガンとエネルギーショットガンを連発する。
動きが速くても装甲の薄いグレイボアmk.3は簡単に次々と撃破された。
「うっそぉ・・・」
クラフツパーソンは唖然とする。だが唖然としてる暇も無いと判断した彼は、後ろの方角に現れたグレイボアの掃討に向かう。
ガガガガ!! ドォン、ドォン!!
ガガガガ!! ドォン、ドォン!!
ガガガガ!! ドォン、ドォン!!
ガガガガ!! ドォン、ドォン!!
ガガガガ!! ドォン、ドォン!!
ガガガガ!! ドォン、ドォン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
衛星砲のレーザーの雨嵐が降り注ぎ、飛び交う銃弾とミサイルとロケット、閃光と爆発。
吹っ飛ぶMT、機動装甲車。ローダス兵器開発工場は激戦地となっていた。
「くっそおおーーー、キリがねえーーーーッ!!!」
「親玉は何処だ、姿見せて勝負しやがれ、このクソッタレーーーーッ!!!」
フレイムとクラフツパーソンが叫ぶ。6人のレイヴンは、押し寄せてくる大軍に飲み込まれそうだった。
「メイン武器が弾切れだ!! 誰か、弾をくれ!」
アイロニーが叫ぶ。よく見ると、フォッグホーンのメイン武器の両腕のマシンガン、チェインガンが弾切れとなっていた。
「了解した、領域外に補給車がいる。そこへ向かい、補給しろ」
「わかった!」
クレスト通信士の指示に従い、領域を離脱して補給車の元へ向かうアイロニーのフォッグホーン。
「数が多すぎだ!」
フォグシャドウはチッと舌打ちをする。両腕のショットガン、両肩のステルスミサイルで応戦しているが、
敵が次々と押し寄せてくる上に衛星砲の攻撃が激しすぎる。この最悪のコンディションで何とか耐えているが。
ドシュン、ドシュン、バスッバスッ・・・ふいに、フォグシャドウの両腕のショットガンが弾切れ状態になった。
「!?」
フォグシャドウはあわてて両肩のステルスミサイルの残弾数を見た。
みると、シルエットに搭載された全ての武器が、弾切れ状態となっていた。
「くそっ、弾切れだ!! 弾をくれっ!!」
フォグシャドウは叫ぶ。
「領域外に補給車がいる。そこへ向かい、補給だ」
「!! 助かる!! 皆、俺は弾を補給しに行く、暫くの間、耐えてくれ」
通信士の指示に従い、フォグシャドウのシルエットは領域を脱出した。
フォッグホーンとシルエットが領域を離脱した後で暫くたった後、衛星砲の砲撃がピタリと止んだ。そして、敵の半分が撤退を始めた。
「おー!! ラッキー!!」
クラフツパーソンが叫ぶ。
「敵勢力が撤退を開始した、残っている敵を片付けてくれ」
クレスト通信士の通信が入る。よく見ると、残っているランスポーター、アローポーター、トラーゲン、グレイボアmk.3は12、3体程度だ。
「敵が撤退を開始したなら、残った敵は雑魚だ。 一気に蹴散らせ!!」
メビウスリングの叫びの一言が、残った3人を活気づかせた。
その後のメビウスリング、フレイム、アドヴェント、クラフツパーソンの勢いは止められない程だ。
残った機動部隊のMTは、一気に蹴散らされた。
最後のMTがメビウスリングのブレードで叩っ斬られた後、各ACのコクピットの敵勢力度が0.0になった。
「全滅した・・・ってことか?」
アドヴェントが口ずさむ。
「ああ・・・」
メビウスリングは敵勢力度を見て答える。
「なら、これで・・・」
クラフツパーソンが言いかけた、その時。東の上空からバラ、バラ、バラ、バラ、と輸送ヘリの飛ぶ音が響いた。
「もう1機・・・輸送ヘリ?」
「敵の増援か!」
フレイムとアドヴェントが辺りを見回した。そして、バラ、バラ、バラ、バラ、と音は近づいてくる。
「近いぞ!!」
メビウスリングは叫んだ途端、東の上空から輸送ヘリが飛んで来た。それは、ACを2機積んだ輸送ヘリだった。
そのACの肩のマークにミラージュのマークが着いている。
1機は、重量2脚に両肩には特殊弾倉ミサイル、バズーカにブレードと言った武装で、
もう1機は軽量4脚に、右肩に10連小型ミサイル、左肩にオービットキャノンに武器腕スプレッドレーザーと言った武装だ。
「2体のACを確認。おそらくミラージュの無人ACだ」
クレスト通信士が叫ぶ。
「こ・・・こんなもの・・・!!!」
フレイムが前に躍り出ようとする。だがその時、自機のゴーディリバーサルの横を赤い極太の閃光が通り抜けた。フレイムは魂消る。
「な・・・何ッ・・・!?」
「フレイム!! 後ろだ!!」
アドヴェントに叫ばれて後ろを見ると、西の方角からもう1体のACが現れた。
両腕でロングバレルの大型ビームキャノンを持ち、左肩に6連中型ミサイル、右肩にロングブースターポッドを搭載した重装型である。
グリーンとブルーのカラーリングが施された特殊AC「I−COO9−AG」だ。
「所属不明機の接近を確認。予定外だが、撃破を頼む」
クレスト通信士の通信が入る。
「どちらも無人ACと言うわけか」
メビウスリングが小火いたと同時に、3機のUNKNOWNは襲い掛かって来た。
『人間ども・・・全て殺す』
特殊ACがビームキャノンを放って来た。それはメビウスリングのムゲンに向けて放たれていたが、メビウスリングは軽々と躱した。
「こんな攻撃、紙一重で躱せるぞ」
メビウスリングはグレネードに武器を切り換えて特殊ACに放つ。
黒の火筒から放たれたオレンジ色の光の塊は、ベコッと特殊ACのグリーンの胸部装甲板を凹ませた。
特殊ACに内蔵されているUNKNOWNが喋る。
『そんな物・・・痛くも痒くも無い!!!』
特殊ACは6連ミサイルを放つ。
「む!」
メビウスリングはオーバードブーストで距離を一気に開けた。
それと同時に迎撃距離に入れられた6つのミサイルは、コアから放たれたレーザーで掻き消された。
一方、もう2機のUNKNOWNはアドヴェント、クラフツパーソン、フレイムと交戦中。
重量型が特殊弾倉ミサイルを放ち、大量の小型ミサイルを出現させ、3機の敵ACに向かわせる。
「くそっ」
動きの遅いクラフツパーソンのマスターピース、フレイムのゴーディリバーサルは沢山の被弾をし、一度に1240のAPを奪われた。
「調子に乗るな!!」
フレイムは重量型に一気に近づき、火炎放射器とエネルギーショットガンを連発する。
重装甲に身を護った重量型には、多少の損傷など微々たるモノ。
「くっ・・・そおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
フレイムはヤケになって連発のスピードを早めた。だが、ゴーディリバーサルが突然動きを止め、エネルギーショットガンの連発を止めた。
「!?」
あわててコクピットの画面の右(ブーストゲージの右)を見ると、
「CHARGING」
と、表示されていた。
「NOォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
フレイムは絶叫する。
「何やってんだ、この大バカヤローーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
今度はクラフツパーソンが怒鳴る。その隙を突くかのように4脚型がスプレッドレーザーを連射しながら襲い掛かって来た。
「ええい、くそッ!!」
フレイムは接近して来た4脚型に火炎放射器をブッ放す。炎に巻き込まれながらも、構わずに突進してくる4脚型。
フレイムを4脚型に任せたかのような仕草をした重量型は、アドヴェントのスケアヘッド、クラフツパーソンのマスターピースに突進して来た。
「この野郎オオオオオオオオオ!!」
激情に駆られたクラフツパーソンは重量型のバズーカを受けながら、重量型に突進する。
そして、ブレードで斬り合い、ACの拳でお互いのACの各パーツをブン殴りまくる。
フレイムと4脚型、クラフツパーソンと重量型の乱闘は、まさに子供(ガキ)の喧嘩そのものだった。
「酷いなあ・・子供(ガキ)の喧嘩だ・・・」
アドヴェントはその光景を見ながら小火く。だが、そうしてる訳にも行かないので、メビウスリングの加勢に向かった。
「・・・ふん」
メビウスリングは加勢して来たアドヴェントを見て、鼻を鳴らす。
『何人来ようとも、ザコはザコだ・・・グァアッ、ハッハッハッハッハッ』
UNKNOWNは笑う。
一方、補給に向かっていたアイロニーとフォグシャドウは・・・
「指揮官よりフォッグホーン、シルエット! アイロニー、フォグシャドウ! 何処だ、返事をしろ!」
クレスト指揮官が叫んでいる。アイロニーとフォグシャドウは通信インカムを慌ててONにする。
「フォッグホーンより指揮官! 現在補給を受けている所です!」
「シルエットより指揮官どの! 補給中、こちらも補給を受けている所であります」
2人が返事を返すと、
「スケアヘッドよりフォッグホーン! 何をしている、2機のミラージュの無人ACと所属不明ACが突如出現、
こちらと交戦中だ、早く救援を頼む!」
アドヴェントの通信がアイロニーのフォッグホーンに入って来た。
「フォッグホーンよりスケアヘッド! 分かった、すぐに行く!」
「シルエットよりスケアヘッド! 補給が完了次第、救援に向かう」
「ムゲンよりシルエット、フォッグホーン! 早くしろ、こちらは応援が必要なんだ!」
アイロニーとフォグシャドウはアドヴェントとメビウスリングに返事を返す。
その時、2人のACに補給プラグを繋げていた補給車が、補給完了を報せる。
「オールクリアー、補給完了」
プラグが外れたと同時に、フォッグホーンとシルエットは同時に駆け出していた。
(間に合え、間に合え)
アイロニーとフォグシャドウは心に声を掛けながら、持ち場へ大急ぎで戻って行く。
「だぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!! いつまで動きを止めてやがんだ!!
とっととエネルギー回復して動かんかいこのヴォケェェェェ!!」
いつまで立ってもエネルギーを完全回復せず、動きが固まり動きを停めているゴーディリバーサルに、フレイムは苛つきながら叫ぶ。
4脚型のレーザーを浴びて、APが3596奪われているせいで、残りAPは0869となり、ARMOR LOW状態となっている。
4脚型が拡散レーザー攻撃を止めたかと思ったら、今度は右肩のオービットキャノンを構えた。オービットで止めを刺す気だ。
「くっ・・・そおおおおおおおあああああああああああっ!!」
フレイムは火炎放射器を4脚型のコアに捩じ込み、そしてそこから大放射をかまそうとする。
だがその前に4脚型のオービットキャノンを喰らった。
「げっ!!」
ガシュッ、バババババババババババババ!! ドッゴォォォォォズズゥン・・・
「くそ、AP0000・・・俺の負けだ・・・」
崩れ落ちたゴーディリバーサルの中で、フレイムは呻き声を漏らした。
だがその時、ゴーディリバーサルは火炎放射器のトリガーを引いていた。
暫く立って間もないうちに、4脚型の機体がボワアッ、と燃え上がった。そしてさらに肩のミサイルが誘爆を起こす。
『ガッゴッガゴッ・・・・・・・』
4脚型にも内蔵されていたUNKNOWNは機体が爆発すると同時に、
そのままノイズ音を残して炎を巻き上げて、地面にドガアッ、と倒れ込んだ。
相打ちだ。
「くそッ、くそくそくそくそくそくそくそくそーーーーーーーーーッ!!!」
クラフツパーソンと重量型は殴り蹴り撃ちの大乱闘を繰り広げているが、クラフツパーソンの眼前にいる敵の装甲が、
マスターピースより固すぎて鳧がつかない。
重量型がパラサイトミサイルを放とうとして、両肩のパラサイトミサイルがガゴンと立ち上がった。
クラフツパーソンはそれを見た途端、
「嘗めんなあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
マスターピースはパラサイトミサイルのジョイントを殴りつけた。
パラサイトミサイルはジョイントを崩された途端にだらしなく、ゴロンと音を立てて地面に落ちた。
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
クラフツパーソンはそれに重ねるように攻撃を重ね、目の前の重量型にスナイパーライフルと投擲銃を連射し続ける。
彼がトリガーを引く度に重量型のACはボロボロになって行き、パーツが次々と吹き飛んで行く。
頭、腕、脚、右腕のバズーカ、左腕のブレード。そしてコアの中にあったFCS、ジェネレータ、ラジエータの順で吹き飛ぶ。
そして最後。頭部に内蔵されていたUNKNOWNが、
『ガッゴッガゴッ・・・・・・・』
と、ノイズ音を残して爆発した。
クラフツパーソンのマスターピースの目の前には、目の前には壊れたコアと拉げた片足の切れている脚部しか残っていなかった。
両方とも真っ黒焦げで、もうもうと黒い煙をあげていた。
そして我に帰ったクラフツパーソン、フラフラと目の前の視界が朦朧としている。
そして遂にモニターの前に倒れ込み、その弾みでシステム解除のスイッチを押してしまった。
ガグン、とマスターピースがしゃがみ込み、体中のライトの光を失う。
コクピットの明かりが消えたと同時にクラフツパーソンは気を失った。
『消えろ・消えろ・消えろ・消えろ・消えろ!!!』
特殊ACは大量のミサイルを放つ。メビウスリングとアドヴェントはそれを避けるのに精一杯で、じわじわとAPを削られて行く。
「調子にのんじゃ・・・ねえっ!!」
アドヴェントが反撃にと、エクステンションの連動ミサイルと高機動ミサイルを放つ。
上下からミサイルが特殊ACを襲い、特殊ACの重装甲の半分に損傷を与える。
『はうッ』
特殊ACの動きが一瞬、止まった。それを好機と見たメビウスリングは、
「砕けぇい!」
と、グレネードをブチ込む。その弾は特殊ACの頭部のレーダーを一発で破壊した。
『――――っ! ぬううっ!!』
耳をぶった切られたように呻いたUNKNOWN。
だがそいつの操る特殊ACは負けじと反撃しようとして、大型ビームキャノンを構えて、もう一発お見舞いしようとする。
だがその時、2つの影が特殊ACの後ろに廻り、
ドズン!! バババババババババババババ・・・ドズン!!
と、ショットガンとマシンガンの両方の一斉射撃でいきなりブースターポッドを破壊され、さらに背中の装甲板を貫かれた。
『ぐがっ・・・・・・!? ガガガガガガガーーー、ゴトッ・・・ブー・・ブー・・』
特殊ACは一瞬地面に倒れ込む。その後ろにいた2つの影が声を掛けた。
「「お待たせした。遅くなってすまない!」」
「!」
2つの影はアイロニーの駆るフォッグホーンと、フォグシャドウの駆るシルエットだ。
「ア・・・アイロニー!! フォグシャドウ!!」
アドヴェントが叫ぶ。その時、ゴーディリバーサルの中で俯いていたフレイム、
電源の落ちたマスターピースの中のクラフツパーソンの顔がパッと輝き、フレイムは希望を混じらせた声で叫ぶ。
「バカヤロー、待たせ過ぎだよ!!」
「というか待つのにおれたちがどれだけ心配したと思ってんだ?」
フレイムとクラフツパーソンの言葉の後に続くように、メビウスリングも、
「アイロニー、フォグ! もう大丈夫なんだろうな!?」
と、叫ぶ。
「ああ・・・心配掛けてすまない」
「俺とした事が、ドジ踏んでしまったよ・・・すまん」
アイロニーとフォグシャドウが謝った途端、突然地面に倒れていた特殊ACがムクッと動きだした。
「!?」
全員は一斉に驚く。特殊ACに内蔵されているUNKNOWNが、わずかに残るコンデンサのエネルギーで喋る。
それも、ノイズ音の入り交じった声で。
『ニンゲ・・・ン・・ガ・・ド・・・モ・・ジジジブブブ・・コロ・・ガガー・・・
ス』
「ま、まだ動けるのか、コイツ・・・!? 厭きれたものだな!」
アドヴェントが叫ぶ。
『コ・・・・ガガガ・・・ロ・・・・ブブーブブガガガ・・・ス・・・』
UNKNOWNは大型ビームキャノンを構えた。
以前、電力施設で戦った重武装の特殊ACが、壊れる間際にグレネードを構えた時と同じように。
そこでアイロニーとフォグシャドウは、「下がっていろ!」と叫ぶと、両手のマシンガンとショットガンを構えた。
『ニンゲ・・ンドモメ・・・・』
UNKNOWNはビームキャノンのトリガーを引こうとする。
「「決めてやる」」
アイロニーとフォグシャドウの声が重なった途端、2つの武器のトリガーが引かれた。
ガガガガガガガガガガガ!!
ドズン、ドズン、ドズン、ドズン!!
バキッ、ボキッ、ドガガガガ・・・ズズズン・・・ゴゴゴゴゴゴォォーーーーン・・・
『ザザザザザザ・・・・ブブブブ・・・ブッ・・・プッ・・・プ・・・プ・・・ツー』
UNKNOWNは、自分の身体の特殊ACもろとも消え去った。
その時、クレスト通信士の通信が入った。
「目標の掃討を確認。それにしても、あの砲撃の中で生き残るとは・・・感謝する、レイヴン」
武田です。
ローダス兵器開発工場の激戦、とても凄まじかったですね。
今回で特殊ACの登場が2回目で、AI機体(強化人間)の登場が3回目ですね。
なお、今回の特殊ACは、僕のオリジナルってことで・・・。
次回は、「武装集団排除」「集光装置破壊阻止」の2つを元に書きます。
〈今回現れたAI機体・特殊AC〉
AI機体・TYPE:α(強化人間)
頭部:CHD-01-ATE
コア:CCL-01-NER
腕部:CAM-11-SOL
脚部:CLH-STIFF
ブースタ:MBT-OX/002
FCS:AOX-X/WS-3
ジェネレータ:MGP-VE905
ラジエータ:RMR-SA44
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:MWX-LANZER
左肩装備:MWX-LANZER
右腕装備:CWG-BZ-50
左腕装備:MLB-LS/003
オプション:OP-INTENSIFY
AI機体・TYPE:β(強化人間)
頭部:CHD-07-VEN
コア:MCM-MX/002
腕部:MAW-DSL/FIN(武器腕スプレッドレーザー)
脚部:MLF-MX/KNOT
ブースタ:MBT-NI/GULL
FCS:VREX-ND-2
ジェネレータ:KGP-ZS4
ラジエータ:RMR-ICICLE
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:CWM-S60-10
左肩装備:MWC-OC/30
右腕装備:None
左腕装備:None
オプション:OP-INTENSIFY
特殊AC:IーCOO9ーAG
〈表細〉
・AP:16680
・OFFENCE POINT:7796
・DEFENCE POINT:14690
・大型ビームキャノン(ATTACK POWER:7000)
・6連スモールミサイル(ATTACK POWER:890)
・レーザーブレード(ATTACK POWER:6800)
作者:武田 慎さん