One more chance
System all green
Main System. Engage of combat mode.
コア、頭、腕、脚、FCS・・・ 各パーツのグラフィックが表示され、消える。
機体に異常はない。
俺は次に、【赤い悪魔】を倒すための武装を考える。結局、いつもの武装になったのだが。
ブレード、ミサイル、レーザーキャノン。
・・・最後に、最強のレーザーライフル【WG−1−KARASAWA】
この銃を右手に握り締め、俺たちは、「アイツ」にもう一度挑む。
「怖くない、怖くない」
自分に言い聞かせる。 だが、逆にものすごく恐れているようで、自分が情けなく思えてきた。
ACデッキの中をゆっくりと歩き、エレベーターへ向かう。
負けられない・・・
負けるわけにはいかない。
俺のACがエレベーターの前に達すると、扉が開き、赤いランプが点灯する。
低い声が聞こえてくる。男のアナウンス。
もちろん、そんな声、俺は聞くつもりはない。
勝つためには、どうしたらいいか? それだけを考えていた。
中に入ると脚部を固定され、そのまま機体ごと上昇する。
あの時と、同じ感じ―
実にゆっくりと登る昇降機。
俺はそれに多少の苛立ちを覚えながらも、ACの戦闘モードを起動する。
焦り、いらだった瞬間。甦る、敗戦の記憶。
あの時、俺は冷静に対処すべき判断を誤った。
【WG−1−KARASAWA】これさえあれば、奴にだって勝てる。絶対に、勝てる。
悔しいが、そう踏んでいたのが間違い。
悔しい・・・?
今、私は心の底から悔しいと言えるのだろうか?
ACを飛び立たせ、上空からひたすらカラサワを連射する俺。
しかし、奴は軽快な動きで俺の銃弾を左右にかわし、どんどん接近してくる。
それだけで俺は焦り、恐怖した。たったそれだけの事なのに。
パルス光弾が俺を襲い、バランスを崩す。 そのまま、不恰好に着地する俺のAC。
その瞬間、斬りつけてきた【赤い悪魔】。俺は何とかブースターを吹かし、後退する。
(もしかしたらカウンターが決まるかもしれない)
そんな甘い考えを起こし、あいつにブレードで斬りかかった。 無駄だとは解っていたが、僅かな可能性に期待したのかもしれない。
奴のブレードはコンパクトだ。 一度斬っても直ぐに体制を立て直せる。
だが、俺のは違う。
【LS−99−MOONLIGHT】絶大な威力を誇る最強のブレード。 しかし、使用時のリスクは大きい。
斬りつけ、前のめりになった俺に、奴は容赦なくブレード攻撃を浴びせ掛けてきた。
ブーストで後退しようとしたが、やはり間に合わない。
キレのいい音と共に、揺れる機体―
そろそろダメージがまずくなってくる。
焦り、苛立ち、そして希望を失う。
やはり俺には無理・・・
そんな気持ちに負けそうになり、情けなく思えてくる。
いい加減な闘い。
悪夢を見せられているような気分になる。
「どうすればいいんだ・・・」
そう口にした時だった。
はっ、と我に返る、俺。
今は、次の戦いのことを考えなくては・・・
気が付くと、レバーも滑るほどに、手が汗でにじんでいた。
「だめだ! 時間がない」
何があっても弱音だけは吐きたくなかった。
しかし、口をついて出た言葉がこれだ。
そんな自分自身を情けなく思い、余計に苛立ちを覚える。
目の前が真っ白になっていった頃、脳裏をよぎる例の記憶。
考えたくなくても、考えてしまう。
大型のレーザーキャノンを構え、あいつを狙い撃つ。
一発逆転を狙うため、低い可能性に賭けた。あのときの、俺。
凄く集中しているかのようにトリガーを握る。
他人から見れば、闘志に満ち溢れているように見えるかもしれない。
だが、あの時は違った―
集中しようとすればするほど、あきらめのような気持ちが湧いてくる。
(もうどうせ勝てない)
そういう気持ちに支配されていく。
レーダーを見ると、やつは直ぐ後ろにいる。 それでも撃った。
撃つ事で、自分が戦った証を見せたかった。
実際は、ただの悪足掻きなのだが・・・
「もう・・・だめだ」
撃つ直前、俺は喉の奥で、小さく、僅かにつぶやいてしまった。
言わなければ、勝てたような気がする。
いや、「言った瞬間負けが決まった」と言った方が正しいのかもしれない。
不思議な事に、アイツは何もしなかった。 少なくとも、攻撃は・・・
だが、俺は気持ちで負けていた。
一方奴の動きは冷静。正確そのものだった。
もしかしたら、アイツは既に俺の心理状態を解っていたのではないかと思うほど。
とりあえず上昇し、上から奴の位置を探った。やっと補足した瞬間、アイツはパルスライフルを放ち、牽制してきた。
数発被弾しながら、慌てて着地した。無様に。
なんとなく後退し、ミサイルをロックオン、タイミングを取らず、いい加減に発射する。
左右にミサイルを振り、俺のサイドに回りこむアイツ。
あの時は、負ける気になっていて、震えすら起こらなかった。
だが、今は違う。
涙が収まらない。 手も、トリガーが握れないほど震えていた。
そのとき、アイツの姿が脳裏をよぎった。
左肩に描かれた、【9】の文字。
幼い頃見た、恐怖の象徴。家族の仇。【赤い悪魔】
そして、アイツはあの時、止めにグレネードを放ってきた。
家族を焼き殺したのと同じ・・・
怖くない、怖くない。
負けられない――
俺は、やっと決意できた。
アイツを倒し、心の中の闇を討ち払うと・・・
扉が開き、ACの脚が離される。こちらが構えると、アイツもモニターの中でパルスライフルを構えていた。
〜GO〜
サインが出ると、俺は勢い良く突進していった・・・
作者:ACCACさん
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