サイドストーリー

被験者
「なんだよお前〜!!」
陽気な声が部屋中に響いた
室内には書類、鉄用具、パソコンなどがある
その奥にあるモノは.....ACだ
どうやらここはガレージのようだ
ガレージの真ん中あたりに、白いテーブルとイスがある、そのイスに座って男は話していた
その向かい側には、大きくてガッチリした体格の男がいる
表情は非常におぼつかない
そんなことは全く気にせず話し続ける、彼の名はロベルト
「いつもより元気ねーな〜!!・・・あ!!もしかして女にでもフラれたんか?」
「いや、違うんだ・・・」
ロベルトの後に憂鬱な表情をしつつ男が声を出した
前者の声とは違い、今にも消え去りそうな声だった
「なんだよ〜!!女ならオレにまかせりゃいいのによ〜!!・・・ホラ!!こないだイイ女見つけたんだよ!!ソレがもう最高で――――
ロベルトはたんたんと話し出した、しばらくたち、一気に話しすぎたせいか、少々おしゃべりに間が開いた
ゼェゼェいいつつ次の一声を発そうとした
「違うんだ・・・」
またもや俯き加減な男が声を発した、その声は虚しく発生し、部屋中を震撼させることなく虚しく消えていった
「そうか・・・金・・・だな?」
ロベルトに問いつめられ男はこくと頷く
「ははははは!!気にすんなってぇ〜!!金ならいつでも貸してやんよ!!オレ達友達だろ?・・・・ただし、条件がある」
一瞬、部屋が凍り付いた、彼はこれまでに条件を付けたことは無いからだ
ロベルトは突然立ち上がり、真剣な目つきでこう言った
「たまにはお前も女を紹介してくれよ〜!!」
やはり剽軽な性格だ
「本当に・・・すまない」
男はテーブルに頭をつけた、額に冷たい感覚が広がる
「コラァ!!頭を上げぃ!!オレは水戸光圀じゃねぇっつーの!!
・・・あ、そうだ、お前水戸黄門知ってる?知ってるハズねーよな〜!!なんせ―――
またもやマシンガントークが始まった
男は話が進む事に相槌をうった―――

―――「じゃぁな、オレ帰るわ、金は後程送るからな〜。」
「分かった、本当に恩に着る」
男の表情には活気が戻っていた


―――――数ヶ月後・・・
{ただいま、留守にしています―――
「おかしいな・・・」
ロベルトは受話器を持ちながらつぶやいた、そして、最後の電話をあきらめ、受話器を降ろした
金を送った数ヶ月後、いくら待っても連絡が来なかった
ロベルトは不振に思い、色々な連絡手段を試みたがソレが返って来ることはなかった
(まさか逃げた・・・!?いや、アイツがそんなことをするハズがない!!)
いよいよ様子が変なことに気付いた、ロベルトは直ちに友人の元へと向かった
向かった先は当然、ガレージだ、結構な距離があるので、かなりのスピードを出した
道中、立派な木が立っていた、そのてっぺんにはこちらをじっと見るカラスがいた
ギャギャギャギャー!!
同時にロベルトは急ブレーキをかけた、目の前のアスファルトを突然何かが横切ったのだ
急いで目で追った、そこには大きな目でこちらを睨み付けている、黒ネコがいた
ロベルトは急にイヤな予感がしたが、構っていられるかと言わんばかりにアクセルを踏んだ
アスファルトにはしっかりと黒線が描かれていた

「おーい、いるんだろ?入るからな!!」
ロベルトはノックもせずにガレージのドアを開けた、いつも通り明るい笑顔で迎えてくれると思った――――
「ん?」
そこには誰もいなかった、しかし、部屋が荒らされた形跡も全くない、奥にはいつものように赤いACが格納されていた
(どこに行ったんだ・・・)
特に気にすることなく、彼のメールを拝見する
遊びに来るたびに、相手の目を盗みメールをチェックするのがロベルトの趣味だった
「ん・・・?コレは・・・」
メール表を一目見てすぐ異変に気付いた
未開封メールが続出していたのだ
一番最後に開封したと思われるメールを見つけた、・・・だいぶ前のモノだった
「企業社・・・ムラクモ・・・?」
ガシャァァァン!!
突然騒音が鳴り響いた、突如としてドアが開いたのだ
ストッパーが付いていないため、ノンストップで壁にぶち当たった
その騒音とほぼ同時に何かが部屋の中へ倒れ込んできた
しばらく、部屋中がシンと静まりかえった、ロベルトは冷静を取り戻し
倒れてきた物体に近づいた
なにやらパイロットスーツらしきものが見えた、それも、友人が着ていたモノだ
それと同時に手も見えた、人間とは思えないほど白かった
「アあアあァああアぁあァアァああァ!!」
突然、そのヒトらしきモノは奇声を上げ、ロベルトの首を大きな白い手で締め付けた
「!?」
ロベルトはパニックに陥った

真っ白だった、頭も、手も、きっと体中白かったに違いない
頭に生えていたフサフサな茶毛も無くなっていた、その代わり、大きな傷跡らしきモノが見えた
その時、ロベルトと男の目が合った、男は即座に目をそらした
ロベルトは確信した、自分の友人であることを
そこまで確認した後、ロベルトの首は左に垂れた
しかし男は首を絞めることをやめなかった、これでもか、これでもかと言わんばかりに
そして、恐る恐るロベルトの顔を見た
顔色は青ざめきっていた
ブルースカイ色に輝いていた瞳もドス黒くなっていた
そして首には、いつも大事に付けている安物っぽいネックレスがかかっていた
一目惚れした女からのプレゼントだろうか

「ウォォォォォォォォォォォォ!!」
男は後悔の悲鳴を上げた
信じたくなかった、しかし、信じざるを得なかった、友人であることを―――――


――――「バ、・・・バケ者めぇ!!」
ACパイロットの悲鳴後、ACが黒煙を上げた
その黒煙の向こうで、赤いACがライフルを構える
「く・・・・くそー!!」
列車の運転手は脱出を試みた
しかしそれよりも先にライフルが火を噴いた、面白いように列車が吹き飛ぶ
延々と燃える列車、赤いACのモノアイはソレをとらえていた
しばらくし、赤ACは興味を無くしたのか、列車に背を向けその場を立ち去った
夕日がACを照らし、暖色混じりの機体色になった
立ち去っていくその姿は、非常に寂しげなモノだった

死に場所を探しているネコのように―――――
作者:ランクアウトさん