SILENTLINE EPISODE 10 〜悪夢と過去〜
ォォーー・・・ォォーー・・・
ォォーー・・・ォォーー・・・
オー・・・オーーー・・・
オー・・・オーーー・・・
どこからか、死人の呻き声が聞こえてくる。
「うっ・・・うう・・・」
グローバルコーテックス・宿舎。
カラードネイルは、ベッドの中で悪夢に嘖まれていた。
寝苦しい。
暑い。
息が詰まる。
目が重い。
ここはどこだ?
一体、何が?
わたしは、何をしているんだ?
ドドドドドドドドド・・・・ドドドドドドドド・・・・
何処かで銃声が響く。
なんだ?
燃え盛る炎。
そこに、1体の黒い影が浮かぶ。
あれは・・・いったい・・・
わたしは、その影に向かって歩いてみた。
そこでみたものは・・・
いくつかの死体。
燃え盛る家。
壊された車。
グチャグチャに飛び散った血と肉。
滴る血。
そして、バラバラの目玉と手首、腕と足。
なんだ、これは・・・
いったいここで・・・なにが?
もっと奥へ近づいてみた。
だが、その時、何かに蹴躓いた。
みてみると・・・
裸の少女の体が、ころんと転がっていた。見てみると、気を失っているようだ。
ど、どうしたんだ!! 大丈夫か!! だめだ、ぴくりともうごかない・・・
わたしは、この少女の家に連れて行こう、と少女をかかえて奥へ探しに走った。
やがて、今度は火災の発生源に近づいた。
だがそこで、わたしは信じられない光景を見た。
目の前にボロボロになった看板がある。
その看板には、見覚えのある名前が書いてあった。
わたしは、こう呟いた。
わたしの・・・家・・・
そこは、わたしの家のマンションだった。
燃え盛る16階建ての高層マンション。
15階に、わたしの家がある。
家族は、いったいどこにいるんだ?
父上は、どこにいるんだ?
母上は、どこにいるんだ?
お祖母様はどこにいるんだ?
お祖父様はどこにいるんだ?
兄上は、どこにいるんだ?
弟は、どこにいるんだ?
妹は、どこにいるんだ?
わたしの家族は、どこにいるんだ?
わたしは少女をかかえて走た。マンションの入り口近くへ来た所、階段が崩れ落ち
て、エレベーターも止まっていた。もう、15階には行けない。
15階の、わたしの部屋のベランダの所を見てみた。
そこでわたしはさらに、信じられない光景を見た。
ベランダのフェンスに項垂れる、母上。
その下に倒れた、父上。
2人とも、死んでいたに違い無かった。
中のほうから火が出ていた。
中には家族がいるはず。やはり、死んでいた、と、思った。
嘘だ。
嘘だ・・。
嘘だ・・・。
嘘だ・・・・。
嘘だ・・・・・。
嘘だ・・・・・・。
嘘だ・・・・・・・!!
嘘だあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
気がつけば、わたしは泣叫んでいた。
わたしは空に向かって泣叫んでいた。
紅蓮の炎の色に染まった、広い大空に・・・
わたしの叫び声が、大空に掻き消えた。
そして、炎に浮かんでいた黒い影が、正体を現わした。
AC・・・アーマード・コア。「レイヴン」が操る人形の兵器・・・。
そのACは、赤いカラーリングが施されていた。
右肩に、「0」を両腕で握った天使のエンブレム・・・
あいつだ。
あいつが、わたしの家族を殺した。
あいつが、皆殺しにしたんだ・・・
あいつだ、あいつだ、あいつが・・・・・
怒りが流れ込む中、その、赤いACは姿を消した。
そしてわたしは、怒りと悲しみが入り交じった顔で、空を睨んでいた。
そして、涙を流した。
わたしは、気づかなかったのだろうか、裸の少女が意識を取り戻して、わたしに声をかけた。
助けて・・・くれたの・・・?
助けてくれたのに、私に気づいてくれないの・・・
お兄ちゃん・・・
お兄ちゃん、何で泣いてるの?
そのまま、わたしの意識が遠のいて行った。
目の前が、真っ暗になった。
「・・・・・ッ」
カラードネイルはそこで目を覚ました。
気がつけば、ベッドのシーツに涙が零れ落ちていた。
慌てて起き上がって、上の段に寝ていたリトルベアを見る。リトルベアは、グーグーと寝息を立てて寝ていた。
「また、あの夢が・・・」
カラードネイルは声を殺して泣く。そして、
「今夜はもう眠れそうにないな」
と、私服に着替えた。そして、ジャケットを着て、宿舎の外にある、光庭に出た。
緑の芝生に置かれた多数の丸いオブジェクトが七色に光って、青い夜空に浮かぶ、銀色に光る月の光と組み合わさって、
幻想的な風景を思わせる。
(この、忌々しい記憶のフラッシュバックは何処まで続くんだ?)
カラードネイルは月を見上げた。そして、こう呟いた。
「冗談じゃ無いぞ・・・・」
(くそっ!! くそっ!!)
翌日、部屋に朝帰りしたカラードネイルは、パソコンに依頼メールが届いているのを見た。
依頼主の名には、「ミラージュ」と書かれていた。
「Re:機密データ先取
依頼主:ミラージュ
成功報酬:49000c
クレストが旧レイヤード中枢に、レイヴンを送り込みました。
おそらく、クレストの目的はサイレントラインに関する情報を得る為でしょう。
旧レイヤード中枢に、旧管理者が残したデータが存在するようですが、これをクレストに渡す訳にも行きません。
データを確保される前に、クレストのレイヴンの撃破を依頼します。
データの吸い出しは我々の工作部隊が実行します。そちらのほうは、クレストのレイヴンの始末をお願いします。それでは、よろしく」
「起きろ・・・食事を持って来たぞ」
カラードネイルは部屋でまだ寝ていたリトルベア、ヴァーナルフラワーを起こした。
そして、3個のおにぎり、5個の唐揚げのプラスチックのパック、お茶の缶の2セットを手渡す。
「食ったら、支度しろ・・・行くぞ」
カラードネイルは言う。
「行くって・・・どこへですか? カラードさん」
リトルベアが聞くと、カラードネイルは言った。
「先の大戦の舞台だよ。旧管理者の牙城『レイヤード中枢跡』だ」
応接室で、依頼主の代理のミラージュ代表者に作戦領域のマップを見せてもらった。
中枢は、エグザイルの手で発動された核爆発によって、壁という壁にひび割れの入った、見るも無惨な姿と構造となってしまった。
全てが崩壊しなかったのが、不思議な位だ。
そしてこの惨状に、よくもまあ、ユニオン部隊とレイヴンたちが脱出出来たものだと、
現場検証に立ち合った、グローバルコーテックス調査部隊は口を揃えた。
核爆発が起こった時に、空に中枢入口のクレーターから光と炎の柱が、広大な空に向かって立ち昇ったという。
「ちょ・・・ちょっと、大丈夫ですか? 正面から堂々と入っちゃっても!?」
「いいからお前は黙っていろ。大丈夫だといった筈だ!」
ガタ・・ガタ・・・
ガタ・・ガタ・・・
ガタ・・・ガタ・・・カチッ
ゴオオオオオオ・・・・
中枢の入口の扉が開いた。
中の壁や天蓋、天井にはすっかり苔や草、蔓や黴が生えていて、すっかり神秘的な迷宮も自然に蝕まれている。
これが、管理者の「牙城」と言うよりも、お粗末な代物だった。
「うっひゃ〜〜〜、何ですか、コリャ!? 汚なぁ〜〜〜〜」
リトルベアは中の様子を見て驚く。まるで、中は、キサラギのウィリアス植物研究所の内部みたいだ。
リトルベアはカラードネイルに話し掛ける。
「・・・・・こんな所に機密データが本当にあるんでしょうか?」
だが、カラードネイルは、
「うわっ、見ろ、コレ!全部草や黴や苔がモーモーだぜ! 勘弁してくれって感じだ
な・・全く、よくこんな所でグローバルもクレストもミラージュも調査ができるな・・・ずぼらにもほどがあるぞ」
と、苔や草、黴をかき分けて進んで行く。
「でもまぁ、核爆破されたお陰でセキュリティとかが死んでくれて、こうやって楽に入れたんですがね」
と、リトルベアはシャッターにダブルウィングの両手をかけて、を開けた。
ゴロゴロゴロゴローッ、と、まるで体育館倉庫の重たい引き戸を開けるようで、音が中枢跡に響いた。
「上に通路があるぞ」
と、カラードネイルはシャッターの奥の闇を見て言う。アングリと口を開けた闇の奥の一角に、公園にある滑り台のようなスロープがある。
3人はスロープを上がってその奥にいくと、殆どが崩れ落ちた大回廊内部に出た。
それは、迷路のように入り組み、大きく曲がりくねった浮遊回廊、
天井と繋がっているキューブ状の大支柱、天井から突き出た、宝珠の埋め込まれた尖塔。
まるで、不思議世界の迷路に迷い込んだのを思わせるような、幻想的な風景だった。
「こんな所に迷路が・・・」
ヴァーナルフラワーは小声で言う。
「行くぞ!」
だが、彼女が何か言いかけたところで、カラードネイルは奥へ進み始めた。
「ま、まさか、此所を進んで行く気ですか!? この浮遊回廊は中枢の核爆破によって、半分が老朽化しかけているんですよ!?」
リトルベアは制しようとする。だが、カラードネイルは、
「それはどうだろうな・・・ただ1つだけ言えるのはな・・・、一刻も早くこの奥にいるクレストのレイヴンを撃滅しないと
・・・データを横取りされてしまうと言う事と、わたし達の命は無い、ダブルアンラッキーな結末が待っていると言う事だ」
と、奥へ進んで行き、続けるように、
「行くぞ。まだ光は消えていない。全てに見放された訳でも無い」
と、更に奥へ駒を進めて行く。
「か・・神様!!」
リトルベアとヴァーナルフラワーは浮遊回廊に足を踏み入れ、更に迷路の奥へ進んで行く。
だいぶ迷宮の最奥部に進んだ時、先頭を行っていたカラードネイルのグラッジの足が、ピタリと止まった。
「どうしたんですか?」
リトルベアがカラードネイルの見ている方向に視線をやった時、体が凍り付いた。
迷路の出口らしき1本の浮遊回廊の先に、崩れ落ちた瓦礫、岩が壁となって立ち塞がっていた。
どうやら核爆破によって、迷路は此所で陥落していたようだった。
「行き止まりだ・・・迷路は此所で陥落していたんだ・・・」
リトルベアが唖然とした顔で呟く。そして彼は続ける。
「・・・コレが現実ですよ・・・物語みたいにはいかない・・・」
その途端、ダスッ、という音が響き、リトルベアのダブルウィングが振り向いたと同時に、カラードネイルのグラッジが下に飛び降りた。
「!?」
リトルベアがギョッとすると、サブモニターにカラードネイルの顔が移って、
「下に通路がもう1つある。おそらくここにもう1つ浮遊回廊が置いてあって、此所だけは破壊を免れているかもしれない。
しばらくそこの陥落箇所で待っていろ」
「え?」
「陥落箇所が此所だけなら、この浮遊回廊を潜り抜ければまた、瓦礫岩の向こう側の迷路に出れる筈だ。
此所で待っていろ、5、6分で戻ってくる」
「そんな・・・」
その途端に、ブツッ、とサブモニターの画像は切れた。
「カ、カラードさん? ちょっと待って下さい、カラードさん! カラードさーん!!」
リトルベアが叫んでも、カラードネイルのグラッジは姿を消しており、戻っては来ない。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「無謀な事を・・・無謀ですよ・・・だって、彼方側に敵がいるかもしれないんだよ?」
リトルベアは呟き続ける。その傍らで、フラッシュバックの中でヴァーナルフラワーは黙っているだけだ。
だが、その時・・・
『ミラージュの追っ手・・・こんな所まで来おったか』
と、どこからともなく声が響く。
「!?」
2人が驚いて辺りを見回していると、
バガァァァァァァァン!!!
と、目の前にあった壁が大爆発を起こし、バラバラに吹き飛んだ。
その向こうに、1体の重量2脚のACが立っていた。両肩にパラサイトミサイル、腕に拡散バズーカにブレードと言った武装だ。
「A・・・AC!?」
『メイ・デー、メイ・デー!こちらメタルフェイス、敵ACを確認。これより排除する』
そのACはメタルフェイスと名乗った。
メタルフェイスは拡散バズーカを構えるといきなりダブルウィング、フラッシュバックに襲い掛かった。
メタルフェイス――――「鉄仮面」の駆るAC「メタルフェイス」。
鉄仮面はいつも鉄の仮面を冠って、素顔すら見せない「仮面の闘士」と渾名されていたレイヴン。
メタルフェイスはパラサイトミサイルを一度射出したと同時に、
その大量の小型ミサイルと同時に自分のACを接近させ、バズーカで攻め立てて来た。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァーーーーーーー!!!」
鉄仮面はバズーカを何度も何度も連発しまくる。拡散バズーカにミサイルの波状攻撃は、まさに津波のように降り掛かる。
「くそッ!」
リトルベアとヴァーナルフラワーは何度もその波状攻撃を浴びされかける。
だが、反撃しようとも、メタルフェイスの厚い装甲を破るのは、全く持って難しい。
「調子に乗んじゃ・・・ないぞっ!!」
リトルベアは一度ダブルウィングの膝をつかせ、軽量型グレネード「GNS-15」をメタルフェイスめがけて撃ち込む。
「グワア!!」
メタルフェイスは後ろまで仰け反りを喰らった。だがもう一度体勢を立て直そうとした所を、またもう1発を喰らう。
「こなくそ・・・!!」
すると今度は、フラッシュバックのデュアルミサイルを喰らった。装甲の半分がもげかけていた所を、一撃を喰らった。
「ぐわあ!!」
鉄仮面はまた一撃を喰らい、再びメタルフェイスを仰け反らせる。
「決まりだっ!」
リトルベアはブレードをメタルフェイスのコアに斬り降ろす。
「バ・・・カ・・・な・・・・ッ!!」
鉄仮面の断末魔が響き、メタルフェイスは袈裟掛けに斬り捨てられ、大爆発を起こした。
そのメタルフェイスの大爆発が、ダブルウィングとフラッシュバックのいた足場を崩し、そのまま2体を暗い暗い地の底へ落下させる。
「うわああああああああああ!!!」
2体のACは地面に落下し続けた所、その地面が水銀で出来た海となっていて、懐中に2体のACはドブーン。
「く・・くそ・・・!!」
「ううっ・・・・!!」
リトルベアとヴァーナルフラワーは海面に上がろうとしたが、ブースターが水銀入りの海水に邪魔されて、身動きが出来ない。
ただ、ジャンプ移動で海の海面に上がろうと一度一度泳ぐ事しか術は無いようだ。
ゴボゴボゴボゴボゴボ・・・・
水面近くに上がろうとした所、大量の銀色の泡が上がって来た。その途端に空気が来なくなって来て、2人は息苦しくなった。
「がはっ・・・」
そして2人は、とうとう意識を失った。
ゴボゴボゴボゴボゴボ・・・・
大量の銀色の泡に囲まれて、2体のACはゆっくりと沈んで行く。
(このまま・・・死ぬのかな・・・・)
2人が沈みながらそう思った時、その時、2体のACを、カラードネイルのグラッジが背負い、掴み、水面まで引き揚げて行く。
そして、水面に物凄い勢いで飛び上がった。
ザバァ!! バッシャァァァーーーーーン!!!
水飛沫が激しく飛び散る中、
「がふあーーーーーーーー!!」
「ぶはーーーーーーー!!」
と、リトルベアとヴァーナルフラワーは息を吹き返した。
「「ぶはーーーーーーぶはーーーーーー!!」
「向こうで待っていろと言っただろうが!!」
息を大きく吸い込む2人に、カラードネイルは叫ぶ。
そして2人が何度か大きく息を吸い込んだ後に、カラードネイルは向こうを向いた。
「あれを見ろ・・・出口だ・・・」
彼の視線の先に、大きな扉がある。あれこそが、迷宮の出口だ。
ガゴン・・・・ゴゴゴゴゴゴ・・・・
扉が開いた。
辛うじて陸に上がった3人は、迷宮の出口の扉を開けて迷宮を脱出する事が出来た。
その先は、1本道の通路だった。また、その先に扉がある。
「また、扉が・・・」
リトルベアが近づくと、扉は自動的に開いた。
「開いた。「入れ」という意味だな・・・」
カラードネイルが言う。3体のACが扉を開けて出ると、大きな四角形状のエレベーターがある。
その中心にエレベーターの起動パネルがある。
「乗るぞ」
カラードネイルが促す。3体のACはその中心パネルに乗り込むと、ゴゴン、とエレベーターが動いた。
だが、エレベーターは少し行ったところで止まった。
「!?」
「止まった・・・?」
3人は辺りを見回す。その時、ミラージュオペレーターの通信が入った。
「こちらの操作に反応しません・・・故障でしょうか? いえ、これは・・・外部からのジャミング!?」
「ジャミングだと!?」
カラードネイルが叫んだ途端、
『ミラージュの追っ手・・・やはり来たか!』
と、もう1つの声が響いた。
「!?」
「出てこい、ザコども!!」
再びカラードネイルが叫んだ途端、上から何かが飛び降りて来た。それは、3体のACだ。
1体はオレンジと赤のカラーリングで2脚型で両腕に火炎放射器、両肩に大型ロケットを装備していて、
もう1体は逆関節で黄色のカラーリングで、肩にロケットとミサイル、腕にハンドガンにブレードと言った武装で、
もう1体は黄色に紫のカラーリングで、4脚型に武器腕マシンガン、両肩にチェインガンを装備している。
「敵ACを確認、ランカーACレッドフューリーとインフィニティ、ヴァリアントです」
オペレーターの通信が入る。2脚型「レッドフューリー」のパイロットは「レッドハート」で、
逆関節型「インフィニティ」のパイロットは「タイムキーパー」で、4脚型は「ヴァリアント」のパイロットは「チェーンインパクト」だ。
「目標を確認した。これより作戦を実行する!」
タイムキーパーは呟く。
「レイヴン、お前なら楽しめそうだ!」
チェーンインパクトはにやりと笑い、チェインガンを連射する。ダダダダダダダッ、ダダダララララララララ!!と、
細い銃弾の弾幕が黒い火筒から走る。
「そんなもの!」
カラードネイルはヴァリアントのチェインガンを腕の装甲板でカチリ、カチリとブロックすると、
「これが本物のバルカンだ!!」
と、腕のマシンガンとEOの併用射撃をお見舞いした。ダダダダダダダダダッ、ダダダダダダダダダラララララララララララ!!
と、ヴァリアントのチェインガンより倍の弾速と連射と攻撃力が高く、ヴァリアントの装甲に風穴を開ける。
「くっ・・・!」
ヴァリアントは苦戦を強いられかける。だが勢いを立て直すと反撃に転じて、グラッジとの真っ向面の撃ち合いに転じた。
「あいつはチェーンインパクトに任せて、さてと、我はこいつらの料理に取りかかるとするか」
レッドハートは両腕の火炎放射器を構えて、リトルベアとヴァーナルフラワーに挑み掛かる。
「来るかっ!」
リトルベアはグレネードを撃とうと、発射体勢に転じる。
「戦いの途中でグレネードを撃とうと言うのか、甘いぞ坊や!」
レッドハートは両腕の火炎放射器をダブルウィングに放つ。赤と青の炎が絡み合い、
ダブルウィングの身体の装甲板を焦がして行く。
「ぐぅあああああぁぁぁ!!」
リトルベアは悲鳴をあげる。そして、コクピットのモニターに「DANGER HEART」と
「QUT PUT DOWN」の表示が現れ、ジャンジャン警報をならし始めた。
「リトル、出過ぎだ! 戻れ!!」
チェーンインパクトと戦っていたカラードネイルは、リトルベアの危機に気づいて叫ぶ。
「ぐぅああああああぁぁぁぁ・・・」
リトルベアは熱さに悲鳴をあげながら、一度ブースト移動で後ろに下がる。
だがそこへ、インフィニティがブレードを振り上げて襲って来た。
「もらった!」
「んがっ!!」
タイムキーパーの奇襲に、少したじろぐリトルベア。だが彼は負けてはいられん、と自分もブレードを振り上げる。
バチーーーーーーーーン!! ピンクと青緑の閃光がぶつかりあった。
「弾き返したか・・・動きがやけに良いぞ、このACは!」
タイムキーパーは今度はEOとハンドガンの併用射撃を使う。
高熱量のハンドガン「HG-200H」と「CCL-02-E1」の併用射撃は、剰りにもダメージが大きい。
「く・・・このォォ!!」
負けてはいられない、とリトルベアは、お返しにとインフィニティに体当たりを喰らわせる。ドゴッ、と鈍い音が響く。
「なに!?」
タイムキーパーは驚く。そのダブルウィングの体当たりは、インフィニティの貧弱な装甲の左腕を押し潰した。
ゴロッ、とインフィニティのブレードが地面に落ちる。
「ヴァーナルさん、今です!」
リトルベアが叫ぶ。それに弾かれたように、ヴァーナルフラワーのフラッシュバックがEOとパルスライフルの併用射撃をお見舞いする。
「ぐわっ・・・!!」
インフィニティは今の一撃で、今度は右腕の装甲を吹き飛ばした。その下に隠れていた骨格が露になる。
「オォ!」
リトルベアは最後の一撃に、ブレードでインフィニティのコアを斬り捨てた。
さっきの鉄仮面のメタルフェイス同様、インフィニティは袈裟掛けに斬り捨てられた。
「どうせ・・・終わりだ・・・」
タイムキーパーは断末魔の一言を残すと同時に、「インフィニティ」は大爆発した。
それを見たレッドハートは、カーーーーーッと頭に血が上った。
「ふざけやがってコラーーーーーーーー!!!!!」
レッドハートはレッドフューリーをダブルウィングとヴァーナルフラワーに突進させる。
だがその時、リトルベアはグレネードをもう一度構えていた。そして、グッとトリガーを握る。
「同じ手を―――――」
レッドフューリーはその時にはもうダブルウィングの前に来ていた。
それで何かを言いかけてラージロケットをグサリと振り降ろそうとした、
その時、リトルベアはグレネードをレッドフューリーのコアに撃ち込んでいた。
「―――――――――っ・・・・!?」
レッドフューリーはその時には、コアの中心点にグレネード弾を撃ち込まれて大爆発を起こし、跡形も無く消え去っていた。
2体のACがやられたのを見て、チェーンインパクトは心底慌てていた。
「くっ・・そおおおおおおおおおおおおおおおおおあっ!!」
チェーンインパクトも負けじと反撃しまくる。チェインガンから繰り出される連射が、
細長い弾幕を築いてカラードネイルのグラッジに飛びかかる。だが、それはカラードネイルには簡単に躱せるものだ。
「くっ・・そおおおおおおおおおおおおおおおおおあっ!!」
チェーンインパクトは叫びまくる。だが、気づいて無いのか、何も無い方向にバカスカ撃ちまくっていた。
「はははは!! 当たらん、当たらんぞ!!」
カラードネイルは無防備なヴァリアントに攻撃を打ち込み続ける。
徐々にダメージが蓄積して、ついに最後の1発が撃ち込まれた時、ヴァリアントは大爆発を起こした。
「この俺がぁぁぁ・・・・!!」
チェーンインパクトは断末魔を残すと、そのまま跡形も無くヴァリアントと共に消え去る。
その3体の敵ACが全滅したと同時に、ガグン、ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・とエレベーターが動き出した。
「動いた」
「どうやら今の3体のACがジャミングをかけていたようだ」
リトルベアが一息つき、カラードネイルが言うと、ゴゴンとエレベーターは止まる。
そして3人の目の前に4枚目の扉がある。
3人は扉を開けて奥へ進み、そしてまた、1本道の通路に出た。そしてまた扉がある。
「また扉だ!」
「次の対戦の地への入口の様だな」
3人は扉の奥に足を踏み入れた。そして、3人が見たものとは。
「俺が戦闘するのは予定外だが・・・止むを得んな」
その部屋の奥には、「テン・コマンドメンツ」のパイロットのサイプレスが調査をしていた。
どうやら彼もクレストに雇われていたようだ。入って来たカラードネイルたちを見るなり、攻撃を仕掛けて来た。
「・・・」
カラードネイルのグラッジはそれに応じるかのように、グレネードランチャーとバズーカをお見舞いする。
だが、動きの速いテン・コマンドメンツに、弾速の遅いバズーカとグレネードランチャーは当たらない。
カラードネイルはサイプレスに問うた。
「くっ、わたしより速すぎる! お前も・・・強化人間か!」
「差別的な物言いだな・・・」
サイプレスはチェインガンを連射する。そして、こう叫んだ。
「ここは、管理者の眠る神聖な場所だ・・・管理者の墓荒らしは、止めてもらおう!」
それにカラードネイルは、この返答を返した。
「わたしたちは別に、墓荒らしをしようと言う訳では無い! 必要なモノを分けてもらうとしようとしているだけだ!」
「きれい事を・・・・!! それはただの盗人の言い訳にしか過ぎない!」
下らないカラードネイルとサイプレスの戦闘しながらの口論を、リトルベアとヴァーナルフラワーは呆然として見ていた。
だが、その時、ミラージュオペレーターの警告が走る。
「ACの反応・・・上です!!」
ガシャアアアアアーーーーーーーーーン!!
と、ダブルウィングとフラッシュバックの頭上の硝子が、激しく砕け散ったかと思ったら、1体のACが飛び降りて来た。
両肩にミサイル、腕にエネルギーライフルとエネルギーシールドが施された武装だ。ゴールドブリットの駆る「クローバーナイト」だ。
「ク・・クローバーナイト!?」
リトルベアは驚く。その時、カラードネイルと戦っていたサイプレスは、ゴールドブリットに呼び掛ける。
「クローバーナイトか・・・こいつ等を始末するぞ!!」
「了解!!」
ゴールドブリットは返事を返すと、直ぐさまダブルウィングとフラッシュバックに襲い掛かった。
「はーっはっはっはっはっはっ。これでも食らえ!!」
ゴールドブリットは12連の小型ミサイルを、12発眼前の敵ACに放つ。
弧を描いて、12発のミサイルがダブルウィングとフラッシュバックを襲う。
爆発が何回か起こり、半分のAPをダブルウィングとフラッシュバックは奪われた。
それに追い打ちをかけるようにエネルギーライフルとEOの併用射撃をかける。
「くそっ・・・!!」
「っ・・・」
リトルベアとヴァーナルフラワーは12連スモールミサイル?
エネルギーライフル+EOのオールラウンドアセン系の連携攻撃に、更にAPを削られてジリ貧になった。
「まるでオーソドックスな連携攻撃だ! 各々の武器の威力が低い事をその攻撃でカバーして・・・」
リトルベアが言いかけた途端、
「第2のコンビネーションアタックを食らえ!」
その言葉と共にもう一度クローバーナイトが襲い掛かって来た。
今度は肩のマルチミサイルを放って来て、ダメージを与えたところで12連ミサイルを12発もう一度撃ち込んだ。
その途中でEOを使ってくる。
「ぐああああああああ!!」
リトルベアとヴァーナルフラワーは、マルチミサイル?12連スモールミサイル+EOのミサイルアセン系の攻撃を受けまくった。
そこへクローバーナイトが踏み込んで来て、エネルギーライフルを構えた。
「させるか!!」
リトルベアはブレードでエネルギーライフルを弾き返す。
「おっ、外したな!!ならばこれはどうだ!!」
と、今度はクローバーナイトをダブルウィングに体当たりさせた。
「ぐっ!」
その体当たりでリトルベアの右腕がグシャッ、と潰れて地面に落ちた。
「く・・・○○アセン系の攻撃ばかり使いやがって・・・」
リトルベアは呻く。だがそこでクローバーナイトがもう一撃と、こちらに向かって来た。
「ちょうしに・・・のるな――――――っ!!」
リトルベアはグレネードをクローバーナイトにぶち込む。ドォォォーーーン、と爆発が起こりクローバーナイトのコアが凹む。
「ぐっ・・・E-9のダメ人間の分際で!!」
と、ゴールドブリットも負けじと反撃する。だがそこへ、背中にフラッシュバックの体当たりを食らう。
「ぐわっ!!」
と、クローバーナイトはよろめいた所を、さらにダブルウィングのもう一撃を食らった。
その途端にコアの装甲板が吹き飛び、爆発を起こしはじめる。
「そ・・・そんな・・・卑怯な・・・・ああああああああああああああああ!!」
と、ゴールドブリットの断末魔と共にクローバーナイトは大爆発を起こす。
「なに!?」
カラードネイルと戦っていたサイプレスは、ゴールドブリットの最期を見て驚く。
それが命取りとなり、カラードネイルに隙を見抜かれてバズーカとグレネードランチャーで撃たれた。
それはテン・コマンドメンツのコアを撃ち抜いた。
「ぐぁ・・・・」
爆発を起こすテン・コマンドメンツ。テン・コマンドメンツとクローバーナイトが撃破されたと同時に、
奥にある、「管理者の間」の入口の巨大な扉が開いた。
どうやらテン・コマンドメンツとクローバーナイトには扉のロック解錠装置が隠し持たされていたようで、
テン・コマンドメンツとクローバーナイトが撃破されたと同時に破壊されたようだ。
「開いたぞ」
カラードネイルは扉を見て言った。不気味な赤い光を放つ巨大な扉は、両側に引っ込み、そして「管理者の間」の道を開けた。
3人が奥に入ると、そこは朽ちかけた極太の柱が立っていた。
その周りにベーゴマみたいな足場が全部、ポックリと地面に落ちている。上を見上げると、青い空が顔を覗かせていた。
「綺麗だ・・・」
リトルベアが呟く。その時、カラードネイルは柱に何か文字が書かれているのを見つけた。
この時、「管理者此所永眠」と書かれている。「管理者、此所ニ永眠ス」という意味なのだろうか・・・
その時だ、ミラージュオペレーターの通信が入る。
「敵勢力の全撃破を確認、お疲れさま、帰還して下さい」
その日の夜、カラードネイルは再び悪夢に悩まされた。
どうしてもあの時の、ゼロの乗っているAC「クラッシング」が頭に出て来てしまう。
「畜生・・・まただ・・・」
カラードネイルは再び光庭に出た。昨日と同じようにあの幻想的な風景が目に描かれる。
そこで彼は、七色に輝くオブジェクトに座り込んで俯いた。
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょぉ・・・」
偶然視界に入った、足下に転がっていた小さい岩を拾い上げると、
「チクショォ!!!」
と、地面に思いきり叩き付けた。ドガッ、という凄い音が響き、岩は小さく3回バウンドしたかと思ったら、粉々に砕け散った。
そこで、カラードネイルは心の中に現れている「怨敵」に叫ぶ。
全部、彼奴だ!! 全部、彼奴のせいだ!!
貴様のせいでわたしの人生はガタガタのボロボロだ!!
いつもいつも悪夢や過去に悩まされてばかりだ、いつもいつも惨め、哀しいキモチでいっぱいだ!!
わかるか!! 貴様はわたしにとっては悪の元凶だ!! 悪の帝国の大魔王、悪の大魔王だ!! 悪の帝王だ!!
死ね!! 死ねっ!! 終われ!! 終われッ!! 死んで責任を取れ!! 終わって責任を取れ!! 死んで終わって責任をとれッ!!
「ああああああああああああああおおおおおおおおおおおおお・・・・・!!!」
カラードネイルは空に向かって泣いた。
その声は、満月と夜空に吸い込まれて、消えていった。
はい、武田です。
今回は「機密データ先取」を元に描かせて頂きました。
「機密データ先取」は3人のレイヴン(オーリー、ゴールドブリット、サイプレス)
が出る予定でしたが、AC3SSの21章で、オーリーは已に死んでいるので、
少し登場構成を変えて6人(鉄仮面、チェーンインパクト、タイムキーパー、レッドハート、ゴールドブリット、サイプレス)にしました。
それから、始めと終わりにはカラードネイルの過去と悪夢のシーンが出ていますが、
僕はこれを考えるのに少し苦労しました。なぜなら、自分のサイドストーリーだから、自分で考えなくては・・・
次回は、「新型兵器破壊」の予定です。
さて、今回の章では、リトルベアが機体構成を変えました。
その機体構成を此所に書きます。
AC:ダブルウィング
頭部:CHD-SKYEYE
コア:CCM-00-STO
腕部:CAM-11-SOL
脚部:CLM-02-SNSK
ブースタ:CBT-01-UN4
FCS:VREX-ST-2
ジェネレータ:MGP-VE905
ラジエータ:RMR-SA77
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:CWM-VM36-4
左肩装備:CWC-GNS-15
右腕装備:MWG-RF-220
左腕装備:MLB-LS/003
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-LFCS++ OP-L-AXL OP-E-LAP
(今回現れた敵レイヴン)
名称:鉄仮面(58・強化人間)
顔に鉄の仮面を冠って、素顔を隠した男。
ACに乗る時も日常の時も、仮面を身肌離さず冠っていて、正体が謎に包まれたままで、「仮面の闘士」と呼ばれている。
今回の章で、クレストのレイヴンとして旧レイヤード中枢跡に進入するが、戦死した。
AC:メタルフェイス
頭部:CHD-07-VEN
コア:CCH-OV-IKS
腕部:CAM-11-SOL
脚部:CLH-STIFF
ブースタ:MBT-NI/MARE
FCS:VREX-WS-1
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:MWX-LANZER
左肩装備:MWX-LANZER
右腕装備:MWG-SBZ/48
左腕装備:KLB-TLS/SOL
オプション:OP-INTENSIFY
名称:チェーンインパクト(49)
AC:ヴァリアント
頭部:MHD-MX/RANCHIS
コア:CCL-01-NER
腕部:CAW-DMG-0204(武器腕マシンガン)
脚部:CLF-D2-ROG
ブースタ:MBT-NI/MARE
FCS:VREX-WS-1
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR11
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:CWC-CNG-500
左肩装備:CWC-CNG-500
右腕装備:None
左腕装備:None
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-ECMP
名称:タイムキーパー(36)
AC:インフィニティ
頭部:CHD-02-TIE
コア:CCL-02-E1
腕部:CAL-44-EAS
脚部:CLB-SOLID
ブースタ:MBT-NI/GULL
FCS:PLS-SRA02
ジェネレータ:MGP-VE905
ラジエータ:RMR-SA44
インサイド:MWI-DD/10
エクステンション:MEBT-OX/MB
右肩装備:MWM-M24/2
左肩装備:MWR-AR/602
右腕装備:CWG-HG-200H
左腕装備:CLB-LS-2551
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-LFCS++ OP-L/AXL OP-ECMP
名称:レッドハート(32)
AC:レッドフューリー
頭部:MHD-MX/BEE
コア:MCM-MI/008
腕部:CAL-66-MACH
脚部:CLM-55-RVE
ブースタ:MBT-OX/002
FCS:VREX-WS-1
ジェネレータ:KGP-ZS4
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:None
エクステンション:CEBT-HEX
右肩装備:CWR-HECTO
左肩装備:CWR-HECTO
右腕装備:KWG-FTL600
左腕装備:KWG-FTL450
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-ECMP OP-M/AW OP-CLPU
名称:サイプレス(28・強化人間)
管理者を最も厚く信奉しており、戦う時に管理者に祈りを捧げると言う、管理者を崇拝するレイヴン。
構成パーツは全てクレスト社の製品であり、管理者に一番信奉されている企業のパーツを選んだと言う理由がある。
フロートの機動力を活かし、敵を撹乱しつつ確実にしとめる。祈り言葉は、「我ら世界の創造主・管理者よ・・・我に力を与えたまえ!」
今回の章で、旧レイヤード中枢跡でカラードネイルとの激闘の末、戦死する。
フロートAC「テン・コマンドメンツ」を駆る。
名称:ゴールドブリット(29)
秩序を守る団体に属しているレイヴン。そのオーソドックスな戦闘スタイルは、
教科書を読んでその教科書通りに戦ってきて身につけたものである。
今や最近負け続けてきた事を、正しいように戦ってきているのになぜ負け続けているのか疑問に思ってきている。
今回の章で、旧レイヤード中枢跡でカラードネイルたちとの激闘の末、戦死。AC「クローバーナイト」を駆る。
作者:武田 慎さん