サイドストーリー

CODE:03 second MissIon---------EncounTer oF pLan
「君の活躍、見せてもらったぞ」
メビウスリングは、開口一番に言った。
「・・・」
無言で見つめるカイと違い、リトルベアは顔面から血の気が引いてゆく。
(・・・・・・間違いない! あいつはアリーナトップランカーのメビウスリング!
 という事は、後ろの2人は・・・・・・)
「カ、カイ! 今日の試合は本当に素晴らしかったよ!
 それと、依頼の共同承諾は考えておいてくれ! そ、それじゃあな!」
慌てつつ一気にそこまで喋ると、リトルベアは逃げるように走り去る。
「・・・」
リトルベアが走っている途中で転ぶのを見てから、前へと視線を戻す。
「カイ君・・・だったかな? 君の名前は。
 初めての依頼には失敗したらしいが、その操縦技術があるなら、きっと次の依頼は成功するよ。
 君の操縦センスに関しては脱帽だ」
「なら黙って道を開けろ」
有無を言わさず喋るカイに、メビウスリングは薄く笑いながら道を譲る。
「・・・」
「――待て」
無言で出口へと続く通路へと向かうカイを、ゼロが呼び止める。
「・・・道を譲って貰ったのだ。礼を言うのが普通だろう?」
「人の事を頼んでもいないのにとやかく言う奴に、俺は礼など言わん」
ゼロはなるほど、嘲笑うような表情を浮かべたが、隣に居たフォグシャドウはまともに顔色を変えていた。
「貴様・・・俺等が誰だと思って口を聞いている!?」
「知らん。教えてもらわないのに分かるはずが無い」
「グッ・・・!」
「・・・・・・やられたな?」
詰まるフォグシャドウにゼロが冷たく言った。

「君の言うとおりだ。
 君の事をとやかく言った事には謝る。ついでにだが、私達の名前も話しておこう」
「教えてくれとは言っていないが?」
「・・・つけあがるなよクソガキ!」
「止せ。相手は子供だ」
凄むフォグシャドウをゼロが止める。
「確かに君はそんな事は言っていなかったが、とりあえず自己紹介はさせてもらおう。
 ――私の名前はメビウスリング。アリーナランカーだ」
「・・・・・・ゼロ」
「フォグシャドウだ。
 ・・・俺達の名前をレイヴンランクで探してちびるなよ?」
「安心しろ。探す気は無い」
「・・・!」
顔を赤くさせて拳を振り上げるフォグシャドウをメビウスリングが止める。
「抑えろフォグシャドウ。
 ・・・・・・ともかく、いずれ君とはアリーナの闘技場で戦う事になるだろうな?
 まあ最も、君が順調に勝ち昇ってくれれば、の話だが・・・?」
「――言いたい事はそれだけか?」
「・・・ああ」
メビウスリングが再び薄く笑うと、カイは通路の奥に消える。
「チっ、・・・いけ好かねえガキだぜ!」
「言うな。若い頃にはああいうモノが普通だ。
 最も、奴の場合は過去に何かあったようだが・・・」
「――過去の事などどうでもいい。
 問題は、彼が私の場所までたどり着けるか否か、だ」
「・・・フン。面白くないな」
ゼロが鼻を鳴らす。
「俺達はもうお前まで届かないとでも?」
「フッ、そうは言わない。ただ、君達は・・・
 届かなかっただけだ」
メビウスリングの言葉にゼロはカイの消えた通路に目を移す。
「・・・・・・やはり、面白くないな」


カイはACのバランサー調整、システム系統の異常がないか調べると自室へと戻った。
パソコンを起動させる間、カイの頭の中には3人の名前が回っていた。
(・・・フォグシャドウ、ゼロ、メビウスリング・・・)
パソコンが起動し、カイはマウスを動かしながら頭を回転させる。
(リトルベアの態度、フォグシャドウの自信、そしてトップランカーの人数・・・。
 確実に奴らはAランカーだな・・・)
メールボックスを開き、メールを調べる。

グローバルコーテックス アリーナ運営局『初勝利おめでとう』
『レイヴンへ。初勝利、おめでとうございます。
 今回のバトルアリーナによる報酬は5000Cです。
 なお、今後は特定のランクへ到達するごとに、当局からレイヴンへパーツを贈呈します。
 我々は、強く、そして魅力のあるレイヴンを歓迎しています。
 貴方の今後の活躍を期待します』

(・・・ACの弾薬料や機体修理費の足しぐらいにはなるな・・・)
とりあえずパーツは今の所関係無いので無視しておく。
パソコンの画面を下にスクロールすると、2通の新着メールがあり、『厳重』のマークまでついていた。
(ひとつはクレスト・・・もうひとつは・・・・・・ミラージュ?)
何故だかそのミラージュのメールに異様な不自然さを感じ、カイはクレストのメールから開く事にした。

[厳重]クレスト『依頼』
『前回、レイヴンの行動により、ミラージュの情報を得ることは出来ず、我が社は何の功績も上げられ無かった。
しかし、前回の失敗は目を瞑る事にし、今回の依頼を受けてもらいたい。記しておくが、これは極秘の依頼だ。
 我々クレストは、ある施設を製作している。その施設内部は極秘であり、当初、我々クレストは施設の情報が外部に漏れないよう完成次第、
建設者や設計者、それに携わった工事員たちを社内に囲い込むという対策を取ろうとした。
 しかし、建設に携わった者の1人がこの事を完全に拒絶し、施設内部の防衛系統を狂わせ、
無人AI搭載型のガードメカを起動させて施設内に立て篭もってしまった。
 もう一度記すが、これは極秘の依頼である。
他の企業に気付かれないよう、確実に[処理]してくれ。
冷酷のように思えるかも知れないが、そちらにとっても悪い依頼では無いはずだ。
よろしく頼む』

依頼料 10000C 成功後の後払いのみ
作戦領域 要塞MK−432
敵勢力 ガードメカ×12 逆間接MT×1
作戦目標 ターゲットの[処理]

「・・・なるほど」
カイは呟くと素早くキーボードに手を走らせると、『依頼受諾』と書いたメールをクレストに送り、
すぐさまグローバルコーテックス エマ・シアーズ宛と書いたメールにクレストの依頼内容をコピーし、最後に『承諾』と付け加えてから送信した。
(・・・・・・残るは・・・・・・)
カイはミラージュからのメールを見据える。
クレストのメールを開いてから、ミラージュのメールに不自然さを感じた。
しかし開かない訳にはいかないので、釈然としないながらもメールを開く。

[厳重]ミラージュ『初勝利』
『今回のバトルアリーナでの貴方の活躍、お見事でした。
 その卓越した操縦技術は、無敗の現王者に似通ったモノがあり、機体のパーツを取り替えれば、貴方は更に強くなるでしょう。
 もしかすると、未来のアリーナA−1は貴方かもしれません』

(・・・これだけか?)
メールの本文に書かれた4行を見て、カイは溜息をついた。
見当違いだった。おそらく、あれはただの疲労から来た不愉快さだろう・・・。
そう自分に言い聞かせつつも、予兆は更に大きくなってゆく。
大体、このような簡潔な文に厳重などとつけるのだろうか?
そして、自分の勘が間違っていなかったという事は、画面をスクロールさせた瞬間にわかった。

『・・・さて、本題に入りましょう。
 今日、貴方には2度目のクレストからの依頼が来ているはずです。
 恐らく、貴方はこの依頼を受けるでしょう。
 いえ、その行動こそが[正解]であり、他の答えは[間違い]なのですから。
 そこで、我々ミラージュからレイヴンのガレージにパーツを2つお送りします。
 1つは右腕武器MWG−XCG/10。2つ目はエクステンションMEST−MX/CROWです。
 扱いづらいかも知れませんが、十二分に駆使し、戦場を生き抜いてください、レイヴン』

「・・・」
カイはすぐにメールボックスを閉じると、ガレージのパーツ一覧表へと繋げる。
一番下にはメールにあった通りのAC用パーツが届けられていて、届けられた日時は今日、5分ほど前。
カイはしばし沈思黙考する。
クレストはこの依頼を厳重に極秘として扱っている。
それが既にミラージュに漏れている?
施設内に立て篭もっている建設者が、パソコンか何かを通じて自分の身の安全を交換条件に、ミラージュへ情報を売る――
考えられない事ではない。しかし、これは恐らく間違っているだろう。
もしそれを交換条件にしたのなら、ミラージュは自分にメールを送るはずもないし、ましてやAC用パーツを送るはずも無い。
何も告げず、敵ACを待ち伏せして施設ごと爆破するか総攻撃をかけるか・・・これで充分である。
しかし、ミラージュは異常とも言える行動をした。
カイはもうひとつの可能性を考えた。
クレストからミラージュへ情報を流す者がおり、レイヴンとしてまだ使える可能性のある自分へ恩を売り、後々扱いやすくさせる為――
さすがにこれにはカイ自信も苦笑し、打ち消した。
情報を流す者なら居るかもしれないが、それならそれですぐに問題の施設を押さえればいいし、
自分を雇う以前に実力の測られているトップランカーを扱った方が効率的だ。
第3に――ミラージュの情報収集。
依頼場所の位置はサイレントラインと呼ばれる、衛星砲に護られた区域に近い。
サイレントライン内部に入ると、まず衛星砲に打ち砕かれる。
よしんば助かったとしても、最近暴れているらしい白い重装型の未確認ACに破壊されるだけだ。
しかし企業は何故かその付近に工場、軍事施設などを設置している。
ミラージュはクレストの施設にその白い未確認ACの現れる可能性が高いと踏み、自分にそのACと戦闘を行わせて情報を収集する。
ありえない事ではない。
未確認ACが出てこなくても施設内部の情報を集められる。
自分を選んだ理由としては、クレストに雇われ、『ある程度の実力があると思われるから』だろう。
現時点であまり必要性のあるかどうか問われる施設に、態々ACを雇ってまで施設へ潜入、交戦させるのは資材の無駄遣いと言うものだ。
そこで――自分が出てきた訳である。
AC用パーツを送ったのは、実力には今だ不安があるためであろう。
これをMWG−XCG/10――弾数とエネルギー消費量にはかなりの難があるが、
高い攻撃力もあいまって、なんとか駆使すれば恐らく未確認ACとやらも倒せるかもしれない。
よしんば破壊されても、雇ったレイヴンでは無いので安くつく。将来、自分達の企業を脅かす存在になるかもしれないのだから。
前・中・後で、一番可能性が高いのは後者だろう。
しかし、これも推測の域に過ぎず、証拠がある訳でも無い。
(・・・とどのつまり、考えるだけ無駄という事か・・・)
自嘲気味に笑うと、カイはパソコンの電源を落とし、眠る事にする。
シャワーを浴びようかとも思ったのだが、意外と疲れていたらしく、明日の作戦にも備えて睡眠を取る事にした。


ごおおおおぉぉぉ・・・・・・
まだ太陽の昇らぬ風の強い早朝に、カイとそのAC餓竜は、高い渓谷の上から静かに施設を見下ろしていた。
「あれか・・・」
『ええ。MK−432・・・間違いないわ』
呟くカイに答えるエマ。
建造途中と言うだけあり、外装には今だ装甲がついていない。
他の企業から雇われたレイヴンが来れば、すぐに終わるだろう。
「・・・作戦を開始する」
『・・・・・・レイヴン、気になっているのですがそのプラズマライフルと肩のエクステンションは何処で購入したのですか?』
「・・・」
カイはしばし考え込む。
今の餓竜の武装パーツは、先日のアリーナ戦のマシンガンからミラージュから送られてきた、高威力プラズマライフルと交換し、
肩にはステルス機能のエクステンションを、左腕にはダガーを装備させている。
『確かそのAC用のパーツはCランク以上になってから使用許可の下りるパーツです。
 何故1回戦勝ちしか収めていない貴方が所持しているのですか?』
「・・・・・・どうだっていいだろう」
結局、カイの導き出した解答はそれだった。
『どうだって言い訳ないじゃないですか!?
第一、	昔と違って今はより多くの秩序が必要な時期です!
それなのにそういう細かな所から見逃していたのではキリがありません!』
「うるさいぞ。これから作戦領域だ。
 愚痴は帰還後にたっぷり聞いてやる。
 通信を切られたくなかったら黙っていろ」
『・・・』
さすがにこれには効果があったらしく、エマは静かになる。
・・・物静かな通信機からはエマの怒気が伝わってきたが。
ドゥンッ
音を起てて発射したロケットにより、施設の入り口が破壊される。
『待ってください、レイヴン』
「・・・なんだ?」
施設内部に入ろうとするカイを、エマが呼び止める。
『施設内部の防御システムは、クレストから送られたIDを入れた結果、ある程度こちらで使用できるようになりました。
 その為、施設内部の破壊を防ぐという形もとって、敵勢力をA、B、C区画に区切る事に成功。
 後は、そちらが1ブロックごとに敵勢力を撃退すれば、順次ゲートを開きます。
 よろしいですか?』
「了解」
きゅいいぃぃ・・・・・・・・ドンッ
OBを展開させた餓竜は、一本道を突進した。

ピピッ
扉の前で電子音が鳴り、ロックオンサイトにロックマークがいくつか表示される。
同時に、こちらもロックされる。
『敵ガードメカを確認。4機です』
「こちらからも確認した」
『貴方のACを通して調べてみたのですが、Aブロック、Bブロックには逆間接MTは居ません』
「・・・ならCブロックだな?」
『そういう事になります。
 それと、ロックオンしているのに攻撃を開始しない事から、
恐らく敵ガードメカのAIはゲート開放時に存在する機体に攻撃を開始するよう、設定されているものと思われます』
「・・・・・・なるほど」
カイは手元のレバーを引いてACを停止させると、肩のエクステンションを起動させた。

バシュー
ガコン
軽い音を起てて扉が開き、重い音を起ててカイの餓竜がAブロックへ踏み入る。
ガードメカは何もせずにあちらこちらを行き来するだけである。
それもそのはず、ガードメカには餓竜の姿が『視えて』いないのだ。
ガードメカは主に安値で造られている為、安いレーダーを取り入れられているだけで、カメラは司令部に情報を送るためだけについている。
その為にカメラで捕らえる事はあるが、命令を変えない限りレーダーに反応しないようステルスを張った餓竜には反応しないのである。
カイは、ステルス機能には時間もあるので、切れない内にダガーで片付けて行く。
(・・・ミラージュ・・・まさかこの為にステルスを・・・?)
『熱源反応の消滅を確認。Bブロックのゲートを開きます』
「ああ・・・」
カイの考えはエマの通信によって遮られ、とりあえずこの考えは持ち越しとなった。

Bブロックの敵も同じように片付けると、カイはCブロックへと急いだ。
(・・・胸がざわつく・・・・・・。
 何かが起ころうとしている。早く任務を終わらせなければ・・・!)

CブロックはAブロックから繋がっており、Aブロックから続く道を抜けた線路沿いにあった。
「Cブロック到達・・・! ステルス展開、レーダーにより充分な行動範囲がある事を確認。
 一気に終わらせる!」
『・・・・・・レイヴン・・・・・・?』
エマが不審気な声を上げる。オペレーターともあり、声の質が変わっている事に気付いたのであろうか?
「Cブロックゲート、破壊する・・・!」
ズガァンッ
ロケットによりCブロックはひしゃげ、嫌な音を上げながら崩れる。
『・・・な!? レイヴン!?』
「・・・消えろ!」
ドドドッ
逆間接MTから声が響き、カイは唸るような声を上げて3発のロケットを発射、すぐに破壊される。
その後、カイは焦ってでもいるかのような動きでガードメカを破壊した。

「・・・・・・カイだ。
 作戦終了、これより帰還する。・・・すぐに輸送機を回してくれ!」
『え? り、了解。すぐに輸送機を回します。
 ・・・・・・? おかしい・・・』
「どうした!?」
エマの言葉にカイが焦ったように叫ぶ。
『ミラージュの大型輸送機がそちらに向かっています。
 ・・・・・・レイヴン、貴方を回収しに来たようです』
「なに・・・・・・?」
『別に危害を加える気は無いと報告しておりますが・・・・・・あッ!?』
「どうし・・・」
ドォンッ
エマの驚嘆の声にカイが発した言葉は、爆発音により掻き消される。
「・・・!? 何が起こった!」
『き、緊急事態です! ミラージュの大型輸送機が大破・・・いいえ、完全消滅!!
 所属不明のAC・・・・・・!! 違う!?
 レイヴン! 気をつけてください!
 所属不明、未確認の人型機動兵器がそちらへ向かっています!
 数は1機!!』
「くッ・・・予感が当たったか!」
カイはCブロックの部屋からは無理に出ようとはせず、とりあえず気休めとしてステルスをかける。
「エマ! ここからの最短脱出ルートは!?」
『検索中・・・』
「・・・・・・急げ! 輸送機も出すんだ!」
珍しいパートナーの焦り具合に、エマも早急に脱出ルートを探す。
・・・ど・・・ぅぅ・・・・・・ン・・・
遠くから聞こえる破砕音に、カイの決心が固まり始める。
案の定とでも言うべきか、破砕音はじょじょに大きくなり、地響きまで伴わせる。
『・・・・・・! レイヴン!
 脱出ルートを割り出しました。今から転送しますので急いで・・・』
「――いや、もう遅い」
『・・・え? それはどういう・・・まだ目標との距離は2Km程ですよ!?
 ステルスだってまだ有効のはず・・・』
エマの言葉は無視してパチン、とOBのボタンを入れる。
退路は・・・・・・先程破ったCブロックゲート!
「・・・間に合えッッ!!」
餓竜が部屋から脱出した次の瞬間。
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオッ
膨大な青白き光の渦が、Cブロックを飲み込み、その爆風で煽られた餓竜が線路の壁に正面から激突。
カイの意識は飛んだ。

「ぐ・・・う・・・」
しばらくして・・・おそらく数秒ほどだろうが、カイの意識が戻る。
コックピット内部はかなりの高温で、オーバーヒートを示すブザーが高らかと鳴っている。
これのお陰で意識が回復したのだ。
コックピットブロックは、人命最優先のため、装甲も厚く、保冷装置は今までどの企業問わずついている。
それが目玉焼きでも造れそうな温度なのだ。AC自体は装甲の塗料はもちろん、一部の装甲は溶けているだろう。
カイは仰向けに倒れた機体の中で必死に腕を伸ばすと、ラジエーターの緊急時冷却切り替え装置へと手を伸ばす。
ぷしゅー
軽い音がなり、ACの温度が急速に下がっていく。
「くっ・・・」
おそらく肋骨の辺りでも折れたのだろう胸部に走る痛みを抑えつつ、完全冷却されたところでACを起し、
ラジエーターを常時冷却の状態へと切り替える。
AP・・・アーマーポイントを見ると、先程の高温で大分削られたらしく、6821と表されている。
「・・・エマ、こちらカイ・カツラギ。AC餓竜・・・。
 聞こえているか? ・・・・・・ちッ」
ノイズが走り続ける通信機を、とりあえず操縦席に叩きつける事で黙らせる。
「・・・・・・輸送機ぐらいは出されていると思うが・・・・・・まずは」
カイは餓竜を振り向かせる。
「貴様を止めなければならないみたいだな・・・!」
カイの目の前には、ボロボロのマントを羽織るAC・・・いや、ACに似たなにかが立っていた。
それは、黒い頭部と爪先以外は白のマントで覆われている。
頭部にはアンテナらしき物が2本有り、角のようにも見える。2つのアイライトは黄金色に輝いていた。
(この高温で何故マントは燃えない?
 いや、それ以前に・・・・・・)
カイは辺りを見回す。
カイのACが叩きつけられた線路――それはまだ原型を保っているのだが、それ以外は火の海と化し、
やっと昇り始めた太陽が、首を横にめぐらせるだけで見える。
つまり、施設はほとんど全壊していた。
残り武器の弾数を見る。
ロケット24、プラズマライフル10、ダガーは健在だが、肩のエクステンションとレーダーは使い物にならないが、
レーダーは餓竜の頭部はレーダー機能もついているので、少しは気休めになる。
こんな状態で戦う・・・? 馬鹿げている。
カイは自嘲気味に笑った。
いくら直撃はしなかったとは言え、この熱量だ。いつ暴発が起きてもおかしくはないし、それ以前にあの威力の兵器を喰らえば、
一瞬で終わるだろう。
(・・・戦闘時の勘に頼って攻撃をかわせと・・・・・・?)
相変わらずナンセンスな考えだと思った。
しかし同時に、それしか生き延びる方法は無い――その事も確信していた。
(・・・やるしか・・・ない!)
例え輸送機が来ても撃ち落されるだけだ。
生き延びる為には、あの機体を破壊、もしくは撃退しなければならない。
――今までと同じように。
「・・・・・・そこの機体。
 何故俺を襲った? 人が搭乗しているのなら返事をしろ!!」
通信回線を立ち上げ、外部スピーカーにつながるマイクにやけくそ気味に叫ぶと、以外にも返事は返ってきた。
『・・・・・・貴様を殺す為に』
「・・・! 何故だ・・・!」
『・・・貴様は・・・自分で自分に生きる資格があると思うか?』
「・・・!?」

(まずい・・・非常にまずい)
エマは焦っていた。
いつもは冷静なカイに急かされ、かなり焦っていたのだが、それに追い討ちをかけるようにぶっつりと通信回線が切れたのだ。
冷静になろうとしても手元は戦慄き、何をすればいいのかわからない。
(考えなきゃ・・・! レイヴンを救えるのは私しかいない・・・!!)
必死に考えを巡らせた結果。
エマはひとつの選択をした。


CODE:03  second mission-----------encounter of plan         succes
作者:安威沢さん