Chapter7-b:追う者達の場合
「ハァ――――ッハァア――――――ッ」
戦場。否、そこはさながら屠殺場だった。
片方には一機の二脚型AC。そしてもう片方にはミラージュの部隊。
『何だ、こいつは!
増援を………ッぐわっ!?』
振り下ろした左腕から光が迸る。
奇妙なことにその光は“分離”し、眼前のMTに飛んで爆発した。
『…………!! まさか…今のは……!』
FCSを切り替え肩部のリニアガンを構えるAC。
そのACは二脚型にも関わらず、立ったまま、OBで突撃しながらリニアガンを発射した。
戦車、戦闘機、MT、今ので何体壊れたろうか?わからない。
ACはとにかく、敵の陣地に臆すことなく突入した。
『まさか……、まさかこいつは………ッ
“プラ………… ザザッ ガッ 』
鉄色のそのACの肩には赤い三角形が描かれていた。
企業のロゴ――クレスト専属の証。
まるで機体自体に意志が宿っているように、鋼鉄の巨人はブレードを振り回す。マシンガンを叩き込む。
自らを取り囲む“敵”達を、まるごと食い散らかす。
その圧倒的な存在により、屠殺はすぐに終わった。
地面には無惨に切り裂かれ、撃ち抜かれ、引き裂かれた鉄屑たち。
戦いの勝者となったACは、パイロットの次のコマンドを待ち、静かに佇んでいた。
「ハァ―――ッハァ―――ッハァアア―――ッ」
コックピット内で荒く息を吐くパイロット。
炎のように、内に存在する凶暴性を体外に吐き出すかのように。
「お前らは別に、今日死ぬ予定じゃァなかったんだ……ハァ…ハァ…
なのにクソみてえな考えで大事な命張りやがってェ…………!
そーゆー馬鹿は死ネッ!!!!!」
クレスト専属小隊“ガンショット”。殲滅を主とする少数精鋭の部隊である。
常に闇の中で行動し、決して表の戦いに出ることは無い影の部隊。
「ハァ…ハァ…クソが……ッ!」
『ベイン。こっちは片付いたぞ』
通信が入る。
部隊の一員、これは“パイク”からの通信だ。
「…………了解、すぐに合流する」
燃え盛る紅蓮の残り火か、或いはコックピットから漏れた乗り手達の血か。
赤く染まったミラージュの十五番駐屯地を後に、AC――“クレイモア”はその足を大儀そうに動かす。
『それと、新しい任務が入ったと隊長から通信が入った。休む暇は無いぞ』
「レイジさん…今みたいに雑魚がワンサカいる奴は御免だな。
弱い奴をいちいち殺さなきゃならないし、色々無駄が多くてウンザリするんだ」
『いや、今度のターゲットはACだ。
ミラージュの犬共が動きそうだという……派手な殺し合いになるかもな』
殺し合い。
そうだ、殺し合いだ。自分がやっているのは一方的な殺人じゃないんだ。
――殺し合い。
「………了解」
クレイモアのパイロット、ベインフル=ベドラムの口は独りでに吊り上がっていた。
殺し合いが出来るなら―――自分が嫌がる理由などどこにも存在しない。
暮れゆく太陽に背を向け、ブーストを噴射し帰還するクレイモア。
クレストは、とある技術をひた隠しにしていた。
禁断の人間強化技術。即ち、アッシュ達が追うことになる技術。その一角。
彼らはつまり、“プラス”の力をその身に宿していた。
作者:アインさん
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