CODE:06 kU-o,THE olD FrIend.
「・・・・・・完全に無理矢理だな」
『なに言ってるの。依頼料は高くつくのよ?
私だけだけど♪』
通信機から嬉しそうな声が響き、カイは溜息をする。
「・・・僚機を担当しているのに何故依頼料が回らん」
『そんなの決まってるじゃない?
私からの情報料よ、情・報・料?』
「・・・・・・詐欺師め」
『どこがよ!?』
『あの・・・・・・そろそろ作戦領域へ到達するのですが・・・・・・』
別の回線から聞こえる申し訳無さそうな女の声。エマの声では無いので、考えるまでもなくスカーのオペレーターだろう。
『そうだったわね・・・。
とりあえず話しておくケド、貴方は正面から進攻、私は別ルートから侵入して挟み撃ちにする。
かなりシンプルでしょ?』
「だな」
無感動に答えると肩を落とす。
エマからのオペレートが無い・・・という事は、こちらが勝手に契約した依頼を快く思っていないのだろう。
後に愚痴を言われる事を覚悟し、再び溜息をついた。
『到着、っと。
ここからは別行動ね。寂しいからって通信配線繋げちゃイヤよ?』
「安心しろ。
こちらからかける事は永久に無い」
『・・・・・・クスン』
なにやらぐずるような声が聞こえたが、そのまま回線は閉じる。
――正面ゲート。
「・・・破壊しろという訳か」
カイは呟くと中型ロケットの発射口を入り口の扉へと向けた。
『ッ! レーダーにAC反応!
レイヴンが進入した模様で・・・うわあああああああッ!?』
『ち、ちきしょうッ!』
『たたらを踏むな! 一気に蹴散らせぇ!!』
『だ、ダメです、第一ブロックもう持ちません!』
「中々・・・派手にやってるじゃない?」
通信機から聞こえてくるMTパイロット達の声に、スカーが満足そうに上唇を舐める。
「エルモ、ここから先に繋がる通路から・・・どこに行ける?」
『え、あ、はい。
えっとですね、ここから先にはしばらく貨物室が繋がりますが、
その後にはMT部隊の駐留している広間でMT部隊にぶつかる事になり、そのMT部隊の数は大体――』
「あ〜もういいもういい。
・・・・・・慣れていないのはわかってるけど、MTMTってそう何度も言わないでくれる?」
『・・・スミマセン・・・』
消え入りそうな声で謝るエルモに、スカーは溜息をつく。
「はぁ・・・いくら独り慣れしたからって、こんな新人オペレーターじゃね・・・」
『うぅ・・・』
「まあいいや。
エルちゃん、カイ君はどこまでMTを排除したのかな?」
『え、エル・・・もーいいです。
えーっと・・・敵のほぼ30パーセント撃破・・・って早ッ! ・・・スゴイですねぇ』
「感心しなくていいの。
それで? 第一ブロックの方に敵のMTは向かっているの?」
『え? ええ、はいそーです』
エルモの言葉ににやりと笑みを浮かべると、
「それじゃあ突撃ね」
『突撃って・・・この外装を壊すんですか!?
厚さだって2mはあるのに・・・』
「だ〜い丈夫!
お姉さんに任せなさいッ!!」
カイに言った台詞を言うと、
これで3人目ね・・・。
ふと、そんな事を思い浮かべてスカーは自らのAC『トレノ』のEOを起動させた。
「――まだ出てくるか」
最後と思っていたMTをHALBERDで切り裂いた直後に、巨大なドアが開き増援が這い出てくる。
(例え逆間接MTといえど、この数では・・・)
「・・・・・・エマ、残りの敵勢力は?」
『・・・只今、留守にしております。ピーッと鳴ったら・・・』
「作戦行動中に個人の感情を入れてどうする」
カイは吐き捨てると、マシンガンの弾丸をばら撒きつつ逆間接MTを切り裂く為ブーストを起動させた。
どごぅっ
桁違いの轟音と共に、スカーの重量型AC、クレノが撃ち砕いた外壁から内部へと進入する。
『!! こちらからもACが――』
「ハイハぁ〜イ?
スタークラッカー参上ッ!!」
再び轟音が鳴り響き、爆煙が昇った。
・・・ズ・・・ゥン・・・
「・・・?」
爆音が聞こえたような気がし――今だ増援の止む気配の無い扉に目を向ける。
それも一瞬で、すぐに目の前のMTをブレードで切り裂いたが。
ズ・・・ン・・・
「・・・」
今度はかなり近くで聞こえ、さすがに不安を感じて通信機を使う。
「エマ、俺だ。
この近くのブロックだが・・・」
『ピーッと鳴ったら――』
ブツッ
回線を切るとカイはロケットとマシンガンを乱射する。
「・・・話にならんッ!」
どれだけ撃墜したかは分からないが、ゲートから出てくる逆関節MTの進攻が止む気配は無い。
「ならば――」
ドランクレイドのロケットをゲートへ向けると、
「全てまとめて叩き潰してやるッ!!」
しかし。
ズドォォォンッ
「――!?」
前触れの無い轟音と爆煙に、カイの動きが止まる。
爆煙がひとしきりゲート奥に蒼いアイライトが浮かび上がる。
「 ・ ・ ・ 」
何も考えず、ただただ嫌な予感がしたのでカイは機体のOBを起動させる。
『・・・・・・・・・・・・ぃぃいいぇえええええいッッ!!!』
突然振ってきた大声が聞こえ――
カイの居た場所を含むこのブロックが爆煙と轟音に包まれた。
「きゃっほぉぉぉぉぉッ!!
ざっつグレイトぉ!!」
『あ、あの・・・・・・スカーさん・・・・・・?』
「邪魔邪魔ぁぁぁっ!!
全部壊れろおおおおッ!」
壊れているとしか言いようの無い騒ぎ方に、エルモがかなり心配そうな声をあげるが、聞こえてはいないようだ。
狙いなどつけていないに相応しい攻撃で、グレネードが狭い空間を乱れ飛び、投擲、マシンガンの弾丸が雨のように降る。
弾ける轟音と流星群。まさにスタークラッカーの名に相応しい攻撃方法である。
そして、全てが止んだ時、スカーは爽快感溢れる声をだす。
「くゥぅ〜・・・最ッ高!!」
『・・・』
通信機の向こうから悲しそうな溜息が聞こえた。
ザー ピッ
『えぇ〜、こちらスタークラッカーこちらスタークラッカー。
もしも万が一にでも生きていたならご返事ください。どぞ〜?』
「ご希望にそぐわず本当に申し訳無いが、1発も被弾していない」
ノイズの後響いた声に、カイはかなり落ち着いた声で言う。
『え!?
君、生きてたの!?』
『てゆーか殺すつもりだったんですか?』
「・・・」
スカーとそのオペレーターの声を聞きつつ、カイは本日3度目の溜息をついた。
「とりあえず、俺まで狙った理由は?」
帰途の為に呼んでおいた輸送機内。
カイはACから降りるとスカーに問う。
「え? だってぇ〜、私ぃ、ちゃんと髪の毛の礼はするって・・・」
「・・・」
「なぁにぃ?」
「ぶりっ子ぶっても始まらん」
「あっそ」
完全に開き直ると、スカーは鼻を鳴らして窓に顔を向ける。
「・・・・・・それは置いておくが、これぐらいの任務なら1人でも出来ただろう?」
「いやだって怖いし?」
「ウェイトレスの収入は意外と高いらしいぞ」
「だからなんでそこにいくのよ、そこに!!」
叫んで指を突きつける。
「本音は?」
とりあえずその指を払いながらカイが言うと、
「・・・・・・・・・・・・前に気を取られてる奴らを駆逐するのが楽しくて?」
「ちなみにだな、ウェイトレスの仕事では客向けが良いと店長からもチップが・・・」
「だからなんでそこにいくの、って言ってるの!!」
喚くスカーを見下ろして、カイは溜息をついた。
全てが終わり、カイは弾薬費とフレームの修理費などを支払い自室へと戻る。
結局彼自身には何の得も無く、味方にも狙われるだけの役柄である。
出費もかさみ、彼の耳にはまだ爆音が響いていた。
ピッ
いつものようにパソコンを起動させると溜息をつく。
パソコンが完全起動するまでの間に、自室に設置されている保冷庫を開くと、中から固まった野菜と肉の塊を取り出し、解凍室に放り投げる。
その後、パソコンの置いてある机に戻ると、椅子を引いて座る。
(新着メール、1通・・・)
なにも考えずにクリックすると、大音量の砲撃音が鳴り響く。
「・・・」
無言で音量を0にすると、メールの内容を読む。
・・・内容は分かっていたが。
古き親友『クロス・アリーナ』
『やっと見つけた、カイ!
なあなあ、ちゃんとこの曲聴いてるか!?』
(勿論完全無音で聞いている)
心の中で呟くカイ。
『それはさておき、知ってるか?
近々グローバルコーテックスのアリーナ運営局が、クロス・アリーナっていうタッグ戦を行うらしい。
俺も地上に上がって幾年月・・・やっとお前を探し当てたって訳で、グローバルコーテックスに登録したんだ!
だからさ、地上での再開は男らしく戦いの場、アリーナって事で!!
随時連絡すっから、よろしくな!!』
「・・・」
これで何度目か。
そう考えつつもつい出てくる溜息をカイは止める術など無かった。
「・・・・・・クーオ・・・・・・あいつが来るのか・・・・・・」
肩から力を抜いて天井を見上げる。
クーオは、今の自分を見て何と言うだろうか?
クロスアリーナ――。
態々挑戦権が剥奪された自分が行く必要も無いが、だからといって無視する訳にもいかない。
せめて仕事の依頼が入ってくれれば良いのだが。
そんな事を考えながら、もう1つの問題を思い出す。
「・・・・・・オペレーターの慰め方など知らないんだが」
カイは更につもる溜息をつき、シャワーを浴びる事にした。
Code:06 ku-o, the old friend.
Success.
後書
今日も良いお天気(?)で。・・・外ではドラムカンが風に煽られていましたが;
私の書いた駄文(ヲイ)を読んでいただいて、ありがとうございます。
えーっとですねえ、今回は初めての後書ですが、いつもよりかなり短い小説を伸ばすべく書いております。つまり要らない猿知恵ですね。
とりあえずこのSSの誕生した話や、色々な事を書いておこうと思います。
まず初めに、この小説には色々と有耶無耶にされている部分があります。
・・・・・・さて、どこでしょう?;;
見つけられても何も御座いませんのでご了承ください。
それは置きまして、まずこの小説を書こうと思ったのは、ずばり
AC3サイレントラインのOPがかっこよかったんじゃ〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・変なのりは置いときましょう。
えっとですね、確かにあれを見た時に衝撃が走りまして(馬鹿?)、それでこれを製作するに至りました。
しかし。
途中までちゃんと書けていたつもりが勉強疲れのせいか途中で変わり始め< !?(・・; 、最後には全然違う形に・・・(つ□`)゜゜。
気付いたのは3話目作成途中(;T▽T)
小説作家の苦労(?)を知りつつテストほったらかしにしていました。
反省しております(--;
更に続きましては誤字落字・・・。
作者の不甲斐無さが現れてますね;
さて、ひとしきり反省したところで、オリジナルキャラとオリジナルACの解説です。
DATA 01
レイヴンネーム カイ・カツラギ
本名 葛城 櫂
身長175cm
体重 63kg
年齢18
特徴・性格
周りの人物に壁を作り、あまり長い会話をしようとはしない。
細いイメージだが筋力はあり、更に新陳代謝も良い頗る健康体でもある。
普段は冷静さながらだが、ヒートしやすい。頭の中では色んな想いが交錯し、傍から見ると呆然自失といったイメージがある。
世間の常識には少しズレている節があり、自らの短所もそこまでわかってはいない。
作者としてのコメント
・・・・・・なんつーか、こう・・・・・・暗くてじめじめしてる所にいそうで(笑
色々と過去になにかあるようですが、あまり考えておりません;(爆
一応主人公ですので、暖かくも冷たく突き放してやってください(謎
DATA 02
レイヴンネーム フレイ・ディノクライド
本名 フレアイルズ・ディノクライド
身長187cm
体重73kg
年齢24
特徴・性格
深い深紅の双眸を持つ男。
『死神』『深紅の舞者』などの異名を持つ。
彼の過去に至っては、アリーナ最強のレイヴン、そして管理者を破壊した者としか残されておらず、残りは全て抹消されている。
凍てつく程にクール。
カイとは対照的に、戦闘時に熱くなる事は無い。
自分に対し我などの言葉を使い、古臭いイメージをもたせる。
作者コメント
出た! 出ましたよ最強の敵っぽいヒト!!
あ、いや、ていうか最強なんですけどね。
この人に関しても過去にただならぬ光景があるようです。
もう1つの小説に彼を主人公としたものを作ろうと思っているのですが、いかんせんAC3が手元にありません;;
AC3の世界観ってなんじゃ〜!?
DATA 03
レイヴンネーム スタークラッカー
本名 マオ・イルムガルド
身長164cm
体重49kg
年齢26
特徴・性格
右端だけを青に染めたカラーリング。そして金をおしみないACの豪快な使いよう・・・。
繊細で知的な外見とは裏腹に、かなりおおまかな大人の女性。
1歳でも年下には子供扱いをするが、かなり離れていない限り年上にも馴れ馴れしい。
慣れるスピードも早く、一度でも顔を合わせた人間などにはすぐにニックネームまでつける、ひとなつっこさがある。
細かい事も気にはせず、その性格からレイヴンながらも人気がある。
管理者破壊後の最終オペレーション、『オメガ』に出撃したという情報もある。
作者コメント
最終オペレーション『オメガ』!? なんじゃそりゃ!! ・・・しーません、自分で思いつつ書いてしまいました。お詫びとして内容説明;
もう一つ作ろうと思っている小説の最終話に適用しようと思っています。
簡単に言うと、『管理者破壊!? おんしゃー何やっとんじゃ! 全レイヴン出撃!
イレギュラーを叩き潰せ!!』って感じです。以上、説明お終い(・・・。
それにしても・・・何か意味ありげって感じですな、謎があって・・・大人の女性?
ハイ、ちょっと違いますね(笑
謎といっても大体のキャラが持ってそうだし(--;
とりあえず人物はここで終わりですね。
DATA 01
種類 HPC
機体標識 XX-001 試作形2速歩行人型戦闘起動兵器
コードネーム ファーストオメガ
機体特徴・性能等
HPC――ハイパワードコア。
その名の通り、従来のACを越えるまさに最強の冠を有する人型起動兵器の試作機。
パーツ変換などは無く、完全に1つの兵器として運用される。
原動力・装甲にロストテクノロジーの一部を適用する事により、驚異的な機動性能と積載量を誇る。
AI研によるレイヴン達の資料などを集めた、最高傑作とうたわれる。
外見はとても滑らかで、しなやかな動きも再現する事ができる。
パイロットとシンクロし、更に性能を向上させた。
武器には、右腕内臓のプラズマライフル。
威力は高く、KARASAWAをも越す性能を誇るが、弾数・エネルギー消費に難がある。
左腕にも内臓式のレーザーブレードがあり、こちらの威力はダガーの威力そのままで、長さを初期型ブレードまで伸ばしたモノ。
背部には外装のハイパープラズマキャノン。
その威力は絶大で、蒼い光の渦――竜巻としか思えないものが障害物を巻き込み・消滅させながら突き進む。
全体的にエネルギー効率が悪く、一撃を狙った高速機。
ロストテクノロジーの一部を使った、エネルギーイレイサーのマントを使用。
このマントはエネルギーなどの熱量物体に反応・融解し、エネルギー物体を包み込んで再び固体化する。
これによりエネルギーを無効化させ、更に持ち前の積載量でマント内部にグレネード、ライフル、マシンガン、パルスライフルなど、
様々な軽・重火器類を下げており、防弾チョッキの役目と、総弾数を飛躍的に向上させている。
搭乗者 フレイ・ディノクライド。
作者コメント
ハイパワードコアねぇ・ ・ ・はっきりいって微妙なネィミングですが、気にしないでください。
もちろん試作機とつくぐらいですから他にも出てきてくれる事でしょう(--;
・・・ん?
おおおおおおおおおおっ!?
猿知恵だとばかり思っていたのに意外と行数が稼げる;;
まあそんなこんなで、後書の第一は終わりを告げます。
もしよろしかったら、また読んでください。
それでは。
終
作者:安威沢さん