SILENTLINE EPISODE 12 〜命なき巣穴〜
「Re:ウィリアス植物研究所探索
依頼主:キサラギ
成功報酬:46000c
我が社が管理する研究施設の1つ『ウィリアス植物研究所』の、
調査に向かった部隊からの連絡が途絶えた。至急、探索班の救出に向かってほしい。
この『ウィリアス植物研究所』は、我々が秘密裏に建造した重要施設の1つで、
生物・生体・細菌兵器の開発・培養、このあたりの特殊な植物・生物の研究拠点の
1つ として扱って来たものだが、先日、秘密裏に開発していた生体兵器が暴走して、
防衛シ ステムにも異常をきたし、内部にいた半数の職員は取り残されてしまってい
る。
至急、探索班と職員の救出に向かってほしい」
「植物研究所・・・特殊な生物・植物・・・うーん、やっぱりそうだろうなー」
カラードネイルは欠伸をしながら呟いた。
昨日、彼は新聞を何気なく読んでいて、こんな記事を見つけた事がある。
それは、「キサラギ社の輸送機・フロンティアRX-1000、資源開発地区に墜落」とい
う記事だった。フロンティアRX-1000の積んでいた貨物は、大部分が研究材料の植物
と生物で、その半数が研究器材だった。研究材料の植物と器材の半分は回収されたが、
研究材料の生物の大半が墜落地点にできあがったクレーターの中へ陥没してしまった。
ちょうどそこが、ウィリアス植物研究所の建った位置だったらしい。
「カラードさーん、キサラギから依頼のメールが届いた筈です、入りますよ」
「ん・・・ああ」
ちょうどその時、リトルベアが部屋に入って来た。カラードネイルは生返事をすると、
「では、早速行ってくるとするか」
カラードネイルはすっくと立ち上がった。
「えっ、でも、まだ準備が・・」
リトルベアが戸惑う。だけどカラードネイルは、
「リトル・・お前たちは今回はお休み・・待機だ」
「ええ?」
「この依頼は、選定試験を受けて合格した者しか行く事は出来ない。昨日、わたしは
選定試験を受けて合格して来た。その他にも9人の合格者がいる。わたしはそれらと
共同で依頼に当たるつもりだ」
「でも、カラードさんだけでは・・」
「大丈夫だ。さっきも言っただろう、複数のレイヴンで共同で依頼に当たるって」
「・・・」
「此所は譲れ、リトルベア。合格者たちの闘志もお前には引けは取らない」
「・・・はい・・」
リトルベアはもう、何も言わなかった。そして、引き止めなかった。
カラードネイルは早速、説明会へ出にミーティングルームへ向かった。
「・・・詳しいデータは未だ解析中だが・・・ウィリアス植物研究所内に向かった調
査部隊が消息を絶ったと言う事は事実だ」
グローバルコーテックス本部・ミーティングルーム。依頼主のキサラギ代表者が、電
光掲示板に写し出された作戦予定地を指して、10人の選定試験合格者に説明してい
る。
「先程も申し上げたように、今回の作戦目標は、調査部隊及び職員の救出。これが成
功するか否かで、我々キサラギの運命が大きく左右される。それは、この2つの要救
助の目標は、我々キサラギの戦力の1つ。失われば戦力を削いでしまうからだ」
キサラギ代表者は続ける。
「諸君らにキサラギの運命が掛かっているとも言ってもいい。健闘を祈る」
キサラギ代表者は言い終えた。その時、救出部隊の指揮官が、
「聞いての通りだ、早速作戦を開始する。救出部隊及びレイヴンによる、調査部隊及
び職員の、要救助者の探索を始める!」
「ハッ!!(全)」
説明が終わった直後、救出部隊とレイヴン10人は、ミーティングルームを出て、A
C・MT用のガレージへ出た。そして、各々の機体に乗り込むと、ウィリアス植物研
究所へ向かう。
レイヴン10人・・・選定試験合格者10人は、この10人。フォグシャドウ、カロ
ンブライブ、カラードネイル、ボーキュバイン、ディリジェント、パーティープレイ、
サバーハンキング、カルカース、エクレール、そしてバッド・ブレイン。
「本作戦の最優先事項は、目標の救出だ」
「我々は別ルートで行動する。全レイヴン、頼んだぞ」
『第1層の電源ガだうんシマシタ、全階層ヘノ回路ヲかっとシマス』
制御不能になったコンピューターが、次々とウィリアス植物研究所の電源をカットし
ていく。そして、内部で働いているのがグリーンとレッドの非常灯のみになった。
『未確認部隊ノ侵入ヲ確認。がーど部隊ヲ起動シマス』
コンピューターの言葉が走る。
「第1層から第6層のガードメカが動いているな・・・敵は研究所のセキュリティを
乗っ取っているかもしれん!」
研究所の1階のエレベーター入口で、ボーキュバインは叫ぶ。そして後ろに控えてい
る、コーラルスカイとラファールに言う。
「エクレール、カルカース、突入の準備をしろ」
「「了解」」
ザーーーーー・・・
ザーーーーー・・・
ガードメカ、無人MTが煽動音をたてて動き回り、侵入者を探し出して破壊しようと
巡回し続けている。
「研究所は敵だらけだな、レイヴン」
「はい・・・」
救出部隊と何故か一緒に同行しているディリジェント。レーダーを見てみれば、数の
多い赤い反応が幾多もキラキラと光り続けている。
行く途中で、2体のギボンMS‐HAが現れた。3体の眼前に現れた敵を見ると、攻
撃して来た。
「敵か!」
ディリジェントはその2体に向かって大量のミサイルを撃ち込む。小型の鉛玉がギボ
ンMS‐HAを直撃した後、2体を倒れさせて爆発させた。だがその後、また2体の
ギボンMS‐HAが現れ、攻撃を仕掛けて来た。その後でミサイルを連発すると、ま
た2体撃破。
「狭い通路で戦うのは不利ですね・・」
ディリジェントは呟き、目の前にあるゲートを開けようとした。だがその時、
オォーーオーーオォォオォ・・・
オォーーオーーオォォオォ・・・
と、奇妙な、何かが吠える声が響いた。
「!?」
3人とも飛び上がって、目を皿にして辺りを見回した。
「今の声は・・・一体!?」
ディリジェントは冷や汗を流す。
「ジャマだ、ザコども!!」
カラードネイルはガトリング型のEOを射出して、目の前をウロウロしていた、6体
のパファーを撃破する。下は下水が流れていたから、パファーは下水に流されていっ
た。
カラードネイルのグラッジの立っているパイプは、一本橋になっていた。この苔や草、
蔓の生えた壁は、下水を塞き止めるダム代わりになっている。一本橋の奥は、真っ暗
やみになっていた。
「この奥か!?」
カラードネイルはグラッジを走らせる。その奥に走っていくとドアがあった。ドアを
あけるとLの字型の通路だった。さらに奥に進むとドアがある。
ドアをあけると、そこはなにやら小ホールのようだった。中にはギボンMS‐HAが
2体、パファーが6体いる。カラードネイルが入って来たと同時に攻撃を仕掛けて来
た。
「ジャマだと言ってるだろうが、ザコども!!」
カラードネイルはバズーカとグレネードを乱射する。何発か乱射すると敵はいなくなっ
た。そしてまた目の前にドアがある。そしてまたその先はLの字型通路。その通路の
先にもう一枚ドアがある。
ドアを開けた・・その先の部屋は2つ目の部屋と同じだが、敵はいない。だが、
オォーーオーーオォォオォ・・・
オォーーオーーオォォオォ・・・
と、さっきの奇妙な遠吠えが響く。
「何だ、この声は・・・」
カラードネイルが呟いた途端、
オォーーオーーオォォオォ・・・
オォーーオーーオォォオォ・・・
2度目の遠吠えが響く。
そして一方、パーティープレイ、サバーハンキング、バッド・ブレインの3人は・・・
『警告シマス! 侵入者ハ直チニ退去シナサイ。侵入者ハ直チニ退去シナサイ』
「どけどけっ、道をあけろ!」
通路の中をフヨフヨと飛び回るパファーを蹴散らして進んでいくサバーハンキング。
おまけに、天井砲台「フォーシットL-CH」まで現れて、進入して来た敵を阻む壁とな
る。ピー、ピー! フォーシットL-CHがラインビームをかましてくる。狭い通路では
避け難く、ジョーカー、ガスト、ブラッディーホルンはダメージを被り続ける。
「おい、おい・・・破壊してもキリがないぞ・・邪魔だぞこれ!」
いくら破壊しても破壊しても現れるガードメカと砲台に、サバーハンキングは叫ぶ。
「構う事はありません、何体でも何体でも蹴散らしましょう!」
パーティープレイ、バッド・ブレインの2人がかけ声をかける。
「どけどけっ、道をあけろ!」
サバーハンキングはショットガンと投擲銃を連射しつつ、奥へ踏み込みをかける。後
の2機も続く。通路の先にある扉をあけて、その先の部屋に足を踏み入れた、その時・
・・
バリバリバリバリバリバリ!! ズシーン!
向側の壁を破り取って、何やら大きな、ブヨブヨしたものが落ちて来た。それらはピ
ンク色に輝く目を何個も持っている。
「え?」
パーティープレイとバッド・ブレインが素頓狂な声を挙げた途端、ブヨブヨしたもの
はギロリと3人のほうを見て来た。
「キシャアーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
ブヨブヨしたものはおぞましい吠え声を挙げた。それは・・生き物だった。生体兵器
「B1037f M-type」だ。遠吠えした生体兵器は、いきなりビームを吐いて攻撃して
来た。
「散れ!!」
サバーハンキングが叫ぶ。その途端に3人は散開して、ビームを避けた。
「いきなり先制攻撃かよっ!」
サバーハンキングは仕方なしにエネルギーショットガンを連射する。生体兵器の目の
1つに当たり、そこから大量の鮮血が吹き飛ぶ。
「キシャアーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
生体兵器はおぞましい悲鳴をあげる。だが、悲鳴をあげながらビームを連発して来た。
そして、生体兵器の装甲の穴からもビームが噴射されて来た。
「く、このっ!」
バッド・ブレインはプラズマライフルを、パーティープレイはハンドロケットを生体
兵器の目の1つに当てる。赤い光の塊が、日を撒き散らす鉛玉が、生体兵器のその横
目に当たり、さっきと同じように鮮血を噴出して、おぞましい悲鳴をあげる。
「キシャアーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
それでも、大量のビームを連発して、3体のACを寄せつけない。
「オレのエネルギーショットガンと、バッドのプラズマライフルも、パーティーのハ
ンドロケットも効かないのか!?」
「効いてはいるようです。おぞましい声を挙げてますから」
バッド・ブレインが冷静に言った途端、バリバリバリバリ、と、生体兵器のいる床が
減り込み、悲鳴をあげ始めた。ミッシミッシと、不気味な音を立て始めている。そし
てジョーカー、ガスト、ブラッディーホルンの足下にも、亀裂が入り始めた。
「下に落ちるぞ!」
「ヤバい、上へブーストで上がれ!」
そして・・・
ズゴーン! バキバキバキ!!
バリバリバリバリバリバリ!! ズシーン!!
「キシャアアアアアァァァァァーーーーーーー・・・」
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ・・・ズシーン、ズシーン!!
生体兵器は床の下へと落ちていった。そこで、この部屋の床は完全に無くなっていて、
ポッカリ下へと縦穴状態だった。
「落ちたな、あいつ・・・」
サバーハンキングは呟く。穴の奥深くは真っ暗闇で見えなくなっていたが、落ちた事
は確かだ。その途端―
ドボォーーーーーーーーーーーーーーン!! バシャッ、ドボオオオオオオオ・・・・
「水しぶきの音がしたぞ。やはり、あいつの落ちた場所は大水槽だったな」
サバーハンキングは下を見て呟く。
ドボォーーーーーーーーーーーーーーン!! バシャッ、ドボオオオオオオオ・・・・
「何だ、あの音は?」
「どうやら少し近くで聞こえたぞ」
一方、フォグシャドウとカロンブライブは、研究所の奥深くまで進んでいた。
「もう、何発分も撃ったんだって感じだ。いい加減目標を発見して帰還しないと、もっ
と辛いぞ・・・」
「ああ・・・」
カロンブライブは武器の弾薬を見て焦る。もう、殆どの武器の弾薬が半分切った状態
だ。
フォグシャドウもカロンブライブ同様、弾薬数に苦しんでいた。両腕のショットガン
の弾数も半分きり、両肩のステルスミサイルの弾薬の半分を切らした。
「くそ〜〜〜〜〜、まるで迷路のような研究所だな、ちゃんとこの建物の構造図を作っ
てくれよな、キサラギの奴等は〜〜〜〜ッ!!」
あっちこっち同じ場所をグルグル回っている2人。それどころか、目標に近づこうと
懸命に頑張っているが、複雑な構造に悩まされ、グルグル同じ所を行ったり来たり、
往来を続けている。まるで、蜀の軍師・諸葛亮孔明の作った「石兵八陣」に迷い込ん
だみたいだ。
だが、そうこうしているうちに・・・
「待て、カロンブライブ! あれを見ろっ!」
「何だ?」
フォグシャドウが、目標のいる部屋に繋がるエレベーターを見つけた。
「エレベーターだ! それに、TARGET POINT SENSORが反応している! 目標は
この上の階か!」
カロンブライブはエレベーターのスイッチを押す。だが、「ピピッ、エレベーターノ
電源ガセットサレテイマセン、電源ヲ入レテクダサイ」と、コンピューターが喋るだ
けだった。
「電源だと? くそ、そうか、元々電源を敵に切られていたのか」
「とにかく、一度引き返すぞ」
2人は一度エレベーターを降りて、通って来た部屋に戻った。そこは、ほぼ洪水状態
の部屋で、この部屋の3方向にドアがあった。1つはここ、エレベーターに通じるド
アで、もう2つはわからない。
だが、開いた排気孔から、何かが飛び出して来た。その何かは、濃い白とピンク色を
混ぜたような色で、まるで凧を右にひっくり返されたような形だった。表面に眼みた
いな物がついている。
「ん? 見慣れないやつがいるぞ」
カロンブライブが言った途端、その何かはラインビームを吐いて攻撃して来た。
「うわっ! 撃って来た!」
驚く2人。その何かは、生体兵器「B1037f C-type」で、生体兵器「B1037f
M-type」の幼生版だ。
「こんなもん、こうしてくれる!」
フォグシャドウは蜂の大群みたいに現れた生体兵器(子)に、両手のショットガンを
連射する。ピッ、ピッ、ピッ、と弾丸が表面に食い込み、2、3発程で一匹を撃ち落
とした。
「早くスイッチを捜せ! 探すんだ!」
フォグシャドウが叫ぶ。カロンブライブは辺りをキョロキョロしていたが、部屋の右
端にスイッチらしき物がある。
「あった!」
カロンブライブはファイアーバードをスイッチに近付けさせるが、スイッチは水に長
時間浸っていたため、スパークを起こしてショートしていた。
「ダメだ、スイッチが水に浸り続けたせいで、ショートしている!」
「それなら排水装置を捜せ!! 早く!!」
フォグシャドウに弾かれたように、カロンブライブは大急ぎで排水装置のある部屋を
探しに行く。
「くそ〜〜〜っ、蜂の巣から現れたようにワサワサワサワサと出てきやがって!!」
もう10匹以上撃ち落としたのだろうか、フォグシャドウのシルエットのAPは半分
を切っていた。何匹撃ち落としても、シューティングゲームみたいにワサワサワサワ
サ出て来たり、蜂の巣を突いたようにワサワサワサワサ出て来て、大群で襲い掛って
くるのだ。
その時、ガロガロガロガロ、と水が排水されていく。
「これは・・・多分カロンブライブが排水装置に辿り着いたんだ、助かった!」
フォグシャドウは叫ぶ。その時、ピタリと生体兵器の大群が収まり、彼は呟く。
「現れなくなった・・お終いか?」
「フォグシャドウ、無事だったか」
カロンブライブのファイアーバードが排水装置の操作室から戻って来た。だがその時、
またワサワサワサワサと生体兵器(子)の大群が迫って来る音が響いた。
「随分派手なお出迎えだな」
「また、来るぞ! 早くスイッチを押してエレベーターへ!」
フォグシャドウが叫ぶ。そして2人はスイッチを押してエレベーターの電源を作動さ
せ、急いでエレベーターに繋がる通路に駆け込む。
「閉めろ、早く!」
フォグシャドウはカロンブライブに促す。ファイアーバードはドアの「閉」のボタン
を押してドアをいち早く閉めた。外ではベチャベチャ、ベチャベチャとドアに生体兵
器(子)が張り付く音が響く。まるで蛞蝓みたいに。
「クソッ! エレベーターはセキュリティの管轄下に置かれて、どれも安然装置が働
いて作動不能だ!」
「他の階層に行きましょう!」
一方、ボーキュバイン、エクレール、カルカースの3人は、上の階層に行こうとして
もエレベーターが使えない状態になっていて、戸惑っている。
「師匠、あちらに外に物資搬送用のエレベーターがあります!」
「それだ! それを使え!!」
カルカースが物資搬送用のエレベーターがある事を指す。そして物資搬送用のエレベー
ターのシャッターをカルカースのコーラルスカイがブレードで抉じ開ける。
「くっ、施設内の複雑な構造とセキュリティのお陰で時間を大幅にロスした! 早く
しないと・・!!」
ボーキュバインはスイッチを作動させ、コーラルスカイとラファールが飛び乗ったと
同時にエレベーターを発進させる。
ゴォン、ゴゴゴゴゴ・・・
エレベーターが到達した。それと同時にエレベーターのシャッターが開放される。中
へ3人のACが駆け込み、2階の最深部へ繋がる通路を急いで走る。途中で天井砲台
のフォーシットL-CHが攻撃して来たが、バーブドワイヤーのチェーンガンとラファー
ルのロケットで掃討した。
「どこだ!?」
「どこにある!?」
3人は口々に呟き叫びながら、目標を探している。だがその途中、サバーハンキング、
パーティープレイ、バッド・ブレインの3人と出会した。
「ボーキュバインさん、カルカースさんにエクレールさん、御無事でしたか」
「ああ・・お前たちも無事でよかったな。だが、目標を助けるのが先だ、急ぐぞ!」
合流した6人は研究所の最深部へ走る。カラードネイルとディリジェント、フォグシャ
ドウとカロンブライブの2組も、最深部へ走る。
「レイヴン、来てくれたか! 助かった」
最深部に救出目標の調査部隊、職員たちはいた。そして全10人のレイヴン、そして
救出部隊は無事到着。
「目標の救出を確認。これより脱出する。皆、良くやってくれた、心から感謝する」
救出部隊のMT部隊は、職員や調査部隊の乗ったMT、輸送車を誘導する。
だが、その時だ。救出部隊隊長の乗ったMTが、動きを停めた。
「はい、こちら救出部隊隊長・・ああ本部の方ですね、どうしました・・・え!?
緊急の依頼ですって!? ・・・わかりました」
そこでさらに、
「皆、聞いてくれ。キサラギ社より緊急の依頼が入った。内容は、奥に巨大な熱源反
応が確認され、その調査に向かってくれとの依頼だそうだ。緊急の依頼だから、この
場での依頼受託を認める。後は、君達の判断だ。依頼を受ける場合は、ここにある補
給車で補給を受けてから奥へ進入してほしい」
と言い残すと、救出部隊とともに目標の誘導へ向かった。
10人はどよめいているが、ただパーティープレイ1人だけが、「上手く行けばもっ
と報酬にありつけるぞ・・・?」と、浮かれていた。
そして、第2次ミッションは始まった。
依頼を受託したのがカラードネイル、パーティープレイ、サバーハンキング、バッド・
ブレイン、ボーキュバイン、カルカース、エクレール、ディリジェントの8人で、フォ
グシャドウは「奥へ進むのか、弾も無し・・・面倒だ、止め止め!」と言って帰還し
て、カロンブライブも同感し「オレの機体も余裕ないしな」と言って帰還した。補給
すればいいのに、2人はこの後で報酬の事を考え、修理費と弾薬代が嵩むと思ったか
らだろう。
「やれやれ、今度は生物のオンパレードか!」
サバーハンキングはエネルギーショットガンを連射して、襲いくる生体兵器(子)を
撃ち落とす。
8人が奥に進入した時、そこはもう目茶苦茶に荒らされて、あたりに生体兵器(子)
の、蜂の巣型、壷型の巣が沢山築かれて、もうここは、生体兵器の巣穴同然だ。
「こんなもん、こうしてくれる!」
カラードネイルは目の前に巣が築かれているのに気づくと、グレネードランチャーを
1発ブチ込んだ。オレンジの光の塊が巣を直撃し、あっという間に粉々に砕け散らせ
た。中にいた生体兵器の孵化したばかりの赤ン坊や蛹、繭までを吹き飛ばした。
それを見た多くの生体兵器(子)が、巣を1つ吹き飛ばされた事に怒って、一斉にカ
ラードネイルのグラッジへ襲いくる。
「今すぐ私の前から消えろ、この殺人蜂が!」
カラードネイルはEOを射出させ、バズーカ、グレネードランチャーの併用射撃をお
見舞いする。次々と吹き飛ばされていく生体兵器(子)。
「わー、すげぇ・・」
カラードネイルの戦いぶりに、サバーハンキングは手を止めていた。だがその時、彼
のガストに生体兵器(子)の大群が襲い掛った。だがその前に、バッド・ブレインの
ブラッディーホルンが立ち塞がった。
「飛ぶんじゃない!」
まるで宙を飛ぶ茶バネゴキブリを始末するように、バッド・ブレインが火炎放射器で
生体兵器(子)を焼き払う。カラードネイルとバッド・ブレインの戦いぶりは、「○
ンチョールリキッド」「コック○ーチ」「バル○ン」を使って害虫退治をしているみ
たいだ。
「確かに凄い・・」
カルカースとエクレールは呆然している。だがその時、ボーキュバインに、
「行くぞ!」
と、声をかけられて、彼の乗るバーブドワイヤーの後を追う。
「これは・・・」
奥のほうに辿り着いたボーキュバイン、カルカース、エクレールの3人は、信じられ
ない光景を見た。
それは、生体兵器(子)の親玉の、さっきの生体兵器「B1037f M-type」がいて、
その幾つかの、ピンク色に光る目玉が目の前の3体のACを見下ろしていた。周囲に
生体兵器(子)がウヨウヨいて、それを防備するかのようにゆっくりと回転し続けて
いる。
「ォオォォォオオオオォォォオオオ!!」
生体兵器(親)が突然吠えたてる。それと同時に生体兵器(子)が、一斉に3体のA
Cに襲い掛る。
「来るぞ!」
ボーキュバインが叫ぶ。それと同時にバーブドワイヤー、コーラルスカイ、ラファー
ルの3体は散開した。ラインビームとプラズマキャノンの集中砲火が火を吹く。
「まずは生体兵器の子を一掃してから、親玉に取りかかるんだ!」
ボーキュバインが叫ぶ。それに弾かれたように、コーラルスカイとラファールがブレー
ドやロケットで、生体兵器(子)を次々と斬り、撃ち、そして一掃していく。
「でぇい!」
ボーキュバインのバーブドワイヤーが生体兵器(親)の側面に回り込んで、デュアル
ブレードをブンッ、と振るう。だが光で形成された刃が、生体兵器(親)の肉圧をほ
んの少し切り込みを入れただけで、ウンともスンとも言わない。
「ありゃっ!?」
ボーキュバインはもう一度切り込みを入れる。だが、さっきのと同じで、ウンともス
ンとも言わない。
「ありゃっ!?」
ボーキュバインはもう一度切り込みを入れる。だが、さっきのと同じで、ウンともス
ンとも言わない。
「師匠、こいつは・・・」
「わかっている!! ならば、こいつの弱点は何処にある・・・」
ボーキュバインは言いかけたところで、生体兵器(親)の口にいつのまにかチェーン
ガンの連射を入れていた。銃弾が口に入った途端・・
「キシャアーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
と、生体兵器(親)はおぞましい悲鳴をあげた。ボーキュバインはハッとして、
「・・・口!? そうだ、口だ! おそらく体内にコアが仕込まれているのか」
ボーキュバインはチェーンガンを連射し続ける。銃弾が入る度に、奇声を発してのた
うつ生体兵器(親)。
「師匠、こいつは・・」
カルカースが叫びかけたところで、
「こいつの弱点は口だ!!」
と、ボーキュバインは叫んで攻撃し続ける。生体兵器(親)はのたうちをつづく。
「「口!? そうか!!」」
カルカースとエクレールは閃いて前に回り込み、そこからロケットと軽量グレネード
を撃ち込み続ける。生体兵器(親)は、さらに酷くのたうちを続け、やがて息絶えた。
「バーブドワイヤーより各機へ、目標の撃破を確認・・・ん?まて、通信が・・」
そこで、割り込んだ通信とは。
「レイヴン、聞こえるか! こちらは敵と交戦中、救援を!!」
それは、救出部隊からの通信だった。どうやら脱出する途中、もう1匹の生体兵器
(親)と出会し、交戦を始めてしまったらしい。
「て、敵!?」
トラックに乗った職員が叫ぶ。それは「オォーオォー」と吠えると、いきなり口をカー
ッと開けたかと思ったら、プラズマキャノンの、光の塊を連発して来た。そいつはさっ
きのとは違って、口からビームを乱射していた。
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
ドガァァァン!!
「うわあああああ!!」
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
ドガァァァン!! ドガァァァン!!
「うわああああああ!!」
「く、くそぉっ!!」
1人、また1人・・・
次々と救出部隊のMTは倒されていく。そして、隊長機のMTが倒されると、生体兵
器(親)は攻撃の矛先を職員の乗ったトラックに向けた。
「うわああああああ!!」
職員たちは慌ててハンドルとアクセルを回して、どこかへ自分達の身を隠そうとした。
だが、生体兵器(親)は、ビームを発射して来た。
バシュゥゥゥゥゥゥン!!
「救出部隊に何かあったぞ!!」
「「無線が破壊されました!!」」
「「何だと!?」」
「何ッ!!」
「「何ですって!?」」
「レ、レイヴン・・ガガー、頼ガガガザザザーーーブッ、ブ・・ブ・・ブ・・・・」
通信が切れた。おそらく、救出部隊は壊滅した模様だ。そこでカラードネイルとバッ
ド・ブレインが「わたしたちが救援に向かってくる」と、皆に言い残すと奥へ去って
いった。
「破壊されてる・・一体、何が・・」
中の様子を見て、バッド・ブレインは青ざめる。
ここは、どうやら渡り廊下らしい。両側の壁にある窓が割れていて、そこからは大量
の生体兵器(子)がうじゃうじゃと湧き出ている。しかし、カラードネイルはという
と。
「どけどけどけぇー!!」
と、生体兵器(子)を蹴散らして奥へ進んでいく。しかたなしにバッド・ブレインも
彼の後を追う。
エレベーターを使って、さっきの水溜まり部屋(フォグシャドウとカロンブライブの
通った、スイッチ部屋)へかけ戻る。すると、その先に・・・生体兵器(親)の3体
目がいた。ォォォォゥゥゥゥーー、ォォォォゥゥゥゥーー、とうなり声をあげている。
「うわ・・・」
バッド・ブレインはそのあまりの気味悪さに目を瞑る。
「まるで噛み付き亀・・いや、鰐亀みたいだな」
カラードネイルはそう言うと、真正面から生体兵器(親)に向かっていく。
「親玉だけじゃなく、子玉も沢山いますよ! 1人じゃ危―」
「レ、レイヴン、頼む!!」
バッド・ブレインが叫びかけたところで、突然通信が割り込んで来た。
「え?」と言って声のした方を向くと、1台の輸送車が岩に隠れていたのを見つけた。
「し、職員!? 職員さんではないですか!!」
バッド・ブレインはその輸送車の所へ飛んで向かう。だがその時、バーン、バリバリ、
ババーンという爆発音が聞こえて、「キシャアアアアアアアア!!」という生体兵器
(親)の断末魔が響いた。
「え?」と言ってまた振り返ると、振り向いた先には生体兵器(親)が完全に昇天し
ていた。沢山の目玉のあった跡から、ドロリ、ドロリと赤、緑色の血を流していた。
その前に、返り血を浴びたカラードネイルのグラッジが立っていた。
「カ、カラードさん・・・?」
バッド・ブレインが声をかけた途端、ブワアアアアアアアアア、と一斉に虫の大群が
飛んでくるような音がした。その途端にカラードネイルのグラッジを取り囲むように、
生体兵器(子)の大群が現れた。カラードネイルはそいつ等に、ポツリと語りかける
ように呟いた。
「ヤルか、貴様ら・・・」
「え?」
「・・・ブッ殺す」
「は?」
その途端だった―――。
「相手になってやろうじゃねえか、この野郎!!!」
途端にカラードネイルの人格が変わった。突然、バズーカ、グレネードランチャー、
EOの一斉回転乱れ撃ちで、周りを漂っていた生体兵器(子)の大群を吹き飛ばし始
めた。
「今すぐ俺の前から消えろ、この殺人蜂どもがあっ!!」
今のカラードネイルの人格は、まるで別人のようだった。薮蚊の大群に火炎放射器を
浴びせるように、生体兵器(子)を撃ち落としていく。
「・・カラードさんが壊れた・・」
「同感だ、レイヴン」
バッド・ブレインと職員たちは、岩の影でこの様子をみて愕然としていた。
そしてその時、周りを取り囲んでいた生体兵器(子)の大群がいなくなった。だがそ
の時、ブワアアアアアアアアアアアアアッ、とまた蜂の大軍が巣から飛び出すような
音が響いた。カラードネイルのグラッジが辺りを見回すと、この部屋の8ケ所に生体
兵器(子)の巣がある。
「とっとと蜂の蜜漬けになってしまえ!!」
カラードネイルはまず1個目の巣に掴み掛かると、土台を引き抜いてもう1つの巣に
投げる。バキバキバキバキ、という音と共に巣が打つかり合い、バラバラに裂けて壊
れた。その引き裂かれた巣の中から血だらけの蛹や繭、卵、孵化したばかりの赤ン坊
が落ちる。
「殺人蜂の血の密漬けを作ってやる!!」
その時に、狂ったようなカラードネイルの高笑いが響き、次々と巣を壊しては引き裂
き、その中にいた蛹や繭、卵、孵化したばかりの赤ン坊までもを叩き壊し、裂き殺し
た。
全ての巣が壊し終わるまで、大量の血とカラードネイルの高笑いが響く、それはまさ
に地獄絵図だったと言う・・・と、帰還する途中でバッド・ブレインは語った。
グローバルコーテックス・宿舎にて。
地下のACガレージで、徹底的に自分の愛機に付着した、大量の血を洗い落とし終わっ
たカラードネイル。彼は今、自分の部屋のベッドに、毛布に包まれたまま横たわって
いた。
「あ、あの・・病気で寝てるんじゃないですよね・・・?」
テレビのニュースを見ていたリトルベアが、恐る恐るカラードネイルに声をかけた。
「病気じゃないと、言っているだろうが・・・」
カラードネイルは威圧の掛かった声をあげる。静かだが、ジワ〜ンと恐怖感がリトル
ベアの体に伝わって来た。
「・・・・・」
リトルベアは縮み上がって、テレビの方に向き直った。だがその時、プワ〜ンと一匹
の蝿が、部屋に入り込んで来た。
「あ、蝿が・・」
リトルベアが言い終わらないうちに、その蝿はシューッと言う音と共に、スプレー殺
虫剤で撃ち落された。フラフラと蝿が2、3回低空飛行をしたかと思うと、パタッ、
と地面に落ちた。
「・・・・・・」
カラードネイルは昇天した蝿の死体を見下ろすと、そのままフンと言うばかりにまた
横たわってしまった。当然、蝿の死体はリトルベアがトイレに流すか、それともゴミ
箱に投げ込んで処分する羽目になるだろう。
次の日の夜、カラードネイルとリトルベアの部屋でバリバリバリバリ、という電撃が
響く音が何回か起こった。ちょうどその時、見回りをしていたグローバルコーテック
スの警備員が吃驚して、逃げてしまった。
朝になると、天井に1つの電撃殺虫器がぶら下がっていて、その下に蝿や蚊が何匹か
昇天していて、転がっていた。その電撃殺虫器には、自動殺虫モード(夜中に虫が飛
んでいたら、電撃を放って殺虫する仕掛け)が施されていたと言う。
どうも、しじみ汁です。
サイレントライン編では生体兵器との戦いは、これが初めてですね。
今回の章では、少しグロテスクな場面が出てしまいました(爆)。
次回は「無人要塞鎮圧」の予定です。
〈今回登場したレイヴン〉
名称:バッド・ブレイン(28)
ナパームと火炎放射器で敵を火達磨にする戦法を好み、
近・遠距離の武器を両方に装備させ、バランスの良いACを作った知恵者のレイヴン。
自ら愚者を演じて「バッド・ブレイン(狂った脳)」という名に変えて、
愚者を演じているが、実は知恵者と言う事から非常に頭の切れるレイヴンである。
何故彼が愚者を演じている理由は、誰も知らない。
AC「ブラッディーホルン」を駆る。
名称:サバーハンキング(36)
近・遠距離の武装を兼ね揃えた高機動のフロートACを駆使し、至近距離の一撃を放
つ。
その素早い機動力に勝つ事ができず、撃破されてしまった者も多い。
操縦にはまだ未熟な部分があるが、今まで対戦成績の浅いレイヴンにとっては難関と
なる。フロートAC「ガスト」を駆る。
名称:パーティープレイ(22)
普段はボーッとしている彼だが、
後半戦になると実力を発揮して逆転劇を繰り返す典型的なスロースターター。
最初はズルズルと負けを繰り返すが、人が変わったように勢いを盛りかえして、最後
に勝つという戦闘スタイルに、根強い人気を持つ。
レイヴンの中でも、浪費癖があるレイヴンで、その日に貰った賞金と報酬は大半が消
えて無くなると言う。フロートAC「ジョーカー」を駆る。
名称:カルカース(25・強化人間)
最近、アリーナに参戦したレイヴンで、新人の中でも接近戦を好むレイヴン。
師匠ボーキュバインに数々の秘技を授かり、接近戦では最強のレイヴンと言われる。
突出型ブレードとACシリーズの名刀を持って、両肩にはレーダーしか装備しない、
典型的な接近戦仕様のACを操り、そこから繰り出される攻撃は、敵に大ダメージを
与える。
噂では、最近、機体のチューンナップを始めたと言う噂があり、現在は武器腕ブレー
ドとグレネードと言った武装に切り換えている。
AC:コーラルスカイ
頭部:MHD-RE/008
コア:CCL-01-NER
腕部:KAW-SAMURAI2(武器腕・デュアルブレード)
脚部:CLL-03A-SRVT
ブースタ:CBT-FLEET
FCS:VREX-ND-2
ジェネレータ:MGP-VE905
ラジエータ:RMR-SA44
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:CWC-GNS-15
左肩装備:CWC-GNS-15
右腕装備:None
左腕装備:None
オプション:OP-INTENSIFY
作者:しじみ汁さん