サイドストーリー

第1波

「よーしゆっくりだ!ゆっくり降ろせ!…」



 ここはアリーナの第4格納庫。
 今、半壊したACが大型の輸送車に積み込まれようとしている。

 その様子を見ながら僕は先ほどまでのことを思い出していた。
・・・
・・・
・・・ガインンンン!・・・
「つっ!!・・・キサマァァふざけるなぁ!」
 どうやら癪に障ったらしい。
 と突然、右腕に握っていたMWG-XCW/90を投げ捨て、肩に乗っている大型砲CWX-LIC-10を構えた。

 ・・・そんな!なぜ実兵装なんか・・・ ・・・誰かアイツヲトメロォ・・・ ・・・ダメ、応答ありません!・・・
オペレータールームのざわめきがインカムを通じて伝わってきた。

「2番パイロット、聞こえてますか?」
 僕のことらしい。
「えぇ、大丈夫、聞こえます」
 操縦することに必死だったから、それとなく答えた。
「あなたの相手のACには実戦で使われる兵器が装備されています!」
「え?なに?」
「詳しく説明している暇はありません、今すぐ降参して!彼は本気です!!」

 よく・・・わからなかった・・・・・・

 たしかこの場はアリーナの上位ランカーが新人の相手となって、その腕を見極めると同時に
 厳しさを解らせるための模擬訓練、もちろん企業の宣伝も含む、いわば『イベント』だったはずだ。
 当然被害を出さないために出力を調整したエネルギー系の武器が使われている。
 先ほど相手がパージしたMWG-XCW/90だって、喰らったら衝撃はあるもののダメージとはならない。
 僕たち“若者”達が操るACだって同じだ。

「・・・そんな!どうすれば!?」
 やっと理解できた僕の思考がオペレーターに助けを求める。
「インサイドに信号弾を装填してあります!それが降参の合図!」
「え?だって、それはデコイだったよ!」
「パネルを良く見て!」
「見てる!見てるよ!!」
「切り替えるの!2つ右!」
 必死の回避行動の最中、交信をつづける。
「これでいい!?」
「OK!こちらからも確認、早く発射を!」
「よ、よし・・・・・・・・・」

 なんだよ、降参か・・・いい感じがしない・・・カッコ、、悪いよな・・・

「繰り返します早く発射を!」
オペレーターの怒声が耳に響く。
「・・・オペレーターさん・・・僕、やってみます。相手は構え姿勢だし、チャージだってまだ!!」
すぐさまNOの返事が返ってきた。
「ダメ!ランカーレイブンを甘く見ちゃ!」
 だけど僕の耳には届かなかった。すぐさま武器を右手のMWG-XCW/75に切り替え機体を相手にめがけ
 突っ込んで行く。
「至近距離で当てれば!」

一直線に相手のACに向かっていく
・・・相手は微動だにしない
・・・不意に通信が入る
・・・不適な笑みと嘲笑
・・・

ィィィィィィイイイ!!!
距離120、相手の肩からエネルギーの塊が今にも放たれようとしている。
ここまでは僕の考え通りだった。ここまでは・・・

ブーストを一度止め慣性で進む、同時に機体を反転、再びふかす。
「これでどうだっっ!!」
 少し浮き上がるような感じで相手の左側面に回りこむ。
 急速な機体の移動に意識を持っていかれそうだったが、
 なんとか持ちこたえ銃口を相手の頭部に突きつける。
「何!?」という声が聞こえて来そうだった。
 相手はまったく反応できていない様子でこちらを振り向くこともしなかった。

「それが甘いというんだぁぁぁぁあ!!」
叫びが聞こえたかと思うと相手は上半身を回転させ腕を振ってこちらの銃を払ってきた。
バランスを崩した僕の機体は惰性で流れる。
「う、うわぁぁ」
 情けない声をだして慌てる僕の耳にロックされたことを告げる警告音が聞こえてきた。

・・・
・・・
・・・あとは、まぁ、体が無事だったことだけが幸いかな?コイツはこんなになっちゃったけど・・・


「・・・っおいったら!聞こえますかーー!!シュティムさ〜ん」
 誰だろう?僕の名前をよんでいる?
 振り返ってみると変にガタイのいい整備士の風貌をした男が立っていた。
「あ、はい。すいません。大丈夫です」
「お前の体調はいいんだけどよ、んまぁ〜派手にやっちまったなぁ。修理するの金かかるぞーコレ」
 レイヤード西部特有の訛りがある話し方で、陽気に語りかけてくる。
「脚部全損、コア機能停止、内部ジェネレータ全損、FCSとブースタはどこにいったか行方不明
・・・買い換えた方が速ぇんじゃねぇか?」
 確かにもっともな意見だった。もう少し当たり所が悪ければきっと僕はここにいない。
「でもパーツを交換する気はないんです」
「・・・あぁ、治すんだろ?コレ読んだよ」
パンパン、とレポートの束を手の甲で叩きながら男は言った。
「はぁ、形見ねぇ・・・なんのためのACシステムかね・・・まぁ無くなったもんは新品になるぞ、いいな」
「はい・・・」
「んだぁ、しょげるんじゃねぇや!バキっと元通りにしてやるからよ!それでよ今回の・・・」
正直なところ、信用はし難いが、なんだか気持ちが楽になった気がした。

一通りの説明を聞いたあと、僕は尋ねた。
「ところで、この輸送車、今までにないタイプですね。なんだか随分と大型ですし」
パッと男の顔が明るくなり自慢げに話だした。
「おぅよ!俺様特別の車体『トリシオン』だ!いや!もうコレは車ではなく、艦と呼ぶに相応しいぃ!!
フル装備のAC5体を搭載可能、そのうえ最高時速170km/時はでるぞ!しかもホバー推進で荒野のデコ
ボコなんのその!追加装甲でMG/350ぐらいならビクともしねぇ!!!ほかにもびっくりドッキリメカが
満載の」
「凄いような、凄くないような・・・」
「凄いだろぉが!今までの常識を覆す輸送車だ!こいつならレイブン殿の護衛もいらねぇぜ。あまり」
「あまりって・・・」
「時と場合によりけりだな!だっはっはっはっ!!。・・・んじゃ、中でな!」
 大声で笑ったあと男はのしのしと歩いていった。
「ふぅ」
僕はといえば、一つため息をついてもう一度自分の機体を見上げてみた。当たり所が悪ければ?いや、
狙ってこうHITさせたんだ・・・ランカーレイブンか・・・



〜陸上輸送艦『トシリオン』内〜

 外から見たよりも内部はずっと狭かった。輸送目的が主なのだから仕方のないことなのかもしれない。
 室温は快適だが、妙に圧迫感がある。むき出しのケーブル類に足を取られないように移動するのも至難の業だった。
 とにかく僕は艦長に挨拶しておこうと操舵室に向かうことにした。
 入り口からまっすぐな通路で、途中機関室の入り口らしいものはあったが一本道。
迷うようなところではない。
しばらく進むと突き当たりのエアロック風のドアに
『艦長室兼操舵室兼食堂』と刻印された金属製のプレートが打ち付けてある。どうやらここがそうらしい。
「しょ、食堂も兼ねてるのか・・・」
 なんだか不安にかられながらもとりあえずプレートのすぐ下にあった『よびりん』と書かれたスイッチを押す。

ぴーーんぽーーん♪

「おぅ!開いてるぞ!入れ!」
軽い音に驚いていると、奥から先ほど聞いたばかりの声が聞こえてきた。
「シュティム=ライルです!失礼します!」
ドアに一歩近づくとシュゥゥと蒸気を吐き出し重い壁が上下に開い・・・いや、途中で止まってしまった。
「わりぃな、まだ直してないんだ、またいで入って来い」
「・・・」
無言のまま僕は室内に入った。

さすがにこの部屋だけは整然としている。機能的な配置の計器類、大型のMAPモニタ・・・
やはりというかなんというか、艦長は先ほどの整備士風の男らしい。一段高いところに彼は座っている。
そうしてあたりを見回していると、どうにも腑に落ちない一つの映像が目に入った。
この室内に艦長が一人、しかしなぜだろう・・・座席があと二つある・・・
「あ、あの。質問一ついいですか?」
恐る恐る訊ねる。
「おぅ、なんでも聞いてくれ」
「この艦は艦長だけで操縦できるのですか?」
「んなわけはねぇだろ!このデカさだ、さすがにすべてのことに手はまわらねぇ。
 艦自体は手作りだがなっ!だっはっはっ」
(手作り・・・どおりで)
「そ、それでなんですが、他のクルーは・・・」
「そうだな、あと一人は途中で拾う。」
「え〜と、艦長と、その方と、あと一人は・・・」
ニヤッとこちらを見つめる男の視線ですべてを悟った。
「…ですね。やっぱり」
「さすがレイブンのハシクレ!話が解るじゃねぇか!」
“ハシクレ”ってのは余計だとムッとしつつも冷静を装い言う。
「でもこんなの操縦したことなんてないですよ」
「でー丈夫だ。移動することに関しては全部俺がやる」
「では僕は何を?」
「砲撃手を頼む!責任重大だぞぉ!!つまりは命がかかっているわけだ。自分と、俺の」
「砲撃!?武装してるんですか!?」
「たりめぇよ!このご時世、手ぶらで外歩けるかってんだ!だっはっはっは!」
 お得意の笑いの後、艦長は付け加えた。
「んまぁ、さりげな〜くだがな」
 
当然、レイブンではない一般人の武装は堅く禁じられている。“さりげな〜く”というのは、“外見上は”
非武装ということだろう。

Pin!Pin!Pin!
 通信が入る。
「こちらアリーナドッグ。そちらの出発時間だ、ゲート開放を確認後速やかに出てくれ。幸運を祈る」
 それに艦長が応答する。
「よし、時間だシュティム君!配置につきたまえ!・・・了解、こちらトリシオンのカリフだ!
お土産買ってきてやるから楽しみにまってな!」
 艦長ってカリフっていう名前なんだ。と、思っているとお怒りの言葉が飛んできた。
「何やってる!早く配置につけ!」
 と言われても、どうしていいかわからない。
「どうすれば!?」
「そのイスにでも座ってベルトを締めろ!」
 指さす方を見ると先ほどの空席があった。
「どっちでも?」と体の動きでたずねると、「あぁ、どっちでもいいから早くしろ」と言わんばかりに
大袈裟なうなずきを見せた。

ゥゥゥゥゥゥゥン・・・
 シートに座ると同時にトリシオンの機関部が始動する低い唸りが聞こえてきた。
 この座り心地といい、どこかACに似ていると率直に感じた。

 前方のゲートが開いていく。眩い人工太陽の光が格納庫へ差し込み、
 少しずつ外の世界が目の前に広がってきた。
 まっすぐにどこまでも続いているハイウェイがこの旅立ちの行く先を示してくれているようだ。

 はて?旅立ち?
「艦長!!!」
 突然立ち上がると、動力音で充満している室内でも聞こえるように大声で叫んだ。
「あぁ?なんだぁ?」
「ところで私はどこへ向かうのですか!!!」
「なぁに今頃すっとぼけたこと言ってんだ!!おめぇのあのポンコツを修理するにはこの街のショップ
じゃ用足りねぇ!!!自然区を抜けて隣ブロックの重工業区へ向かう!!!!」
「でもお!!!それなら真っ直ぐ」
「いいから黙って座ってろ!!!!・・・トリシオン。出るぞお!!!!」

プシッ!プシッ!シュォォォォン・・・フ・フゥウウウウウウゥゥゥ!!
 車体を固定している数本の太いアームが解除され、ゆっくりと、しかし力強く滑り出した。
 


〜自然区『アヴァロンヒル』〜


 先ほどから艦長のカリフは僕の横にきて一人でしゃべり続けている。「操縦は?」とも尋ねたが
「時代はオートだろ」と即答された。じゃぁ僕の方もそうしてくれればいいのに。
「それにしてもよう!さっきのアリーナでのお前の戦いっぷり。ありゃぁなかなかのもんだったぞ!」
「見てたんですか?」
「最初ッから最後までしーっかりとな!他の奴らは始まってすぐにやられちまったが、最後まで残った
お前!ぷっっ、それであの攻撃かぁ!?」
 ・・・あの攻撃?あぁ、あのときか。思い出したくないな。
「まさかよぉ。デコイ投げつけるとは思わないもんなぁ!相手も真っ赤になって怒ってたじゃねぇか!!」
 …そう、相手のランカーレイブンが怒って実兵装を使用してきたのも、元をただせば僕があんな
馬鹿げたことをしたからなんだ。
・・・
・・・
・・・
 ほかのチームはすでに規定の被弾ポイントを超えて退場となっていた。
 僕はなんとか動き回って生き延びてはいるが、こちらの攻撃がどうやっても当らない。

「さぁどうした!一撃でも俺にHITさせてみろ!ぬぁっはっはっは」
 勝ち誇ったような笑いが耳に障る。
「クソっ!重装型なのになんで当らない!!」
ピピ・・・ピピ・・・
「ロックされた!?」
 と気がついたときにはすでに『DAMEGE』とモニターに表示される。

「そら!!そこだ!!」
シュンーー!!・・・ガガガガッ!!
相手の右手に握られているビームライフルの放つ光は確実に僕の機体に届く。
「くっっ!!どうして!!」
 困惑していると、再び相手から通信が入る。
「貴様の動きは単調すぎる!!一定のリズムだけではすぐに読まれるぞ!」
 悔しいが確かにそうかもしれない…一定じゃないリズム…予想できない動き…
「止まってる!!!」
ンンーー!!・・・ガガガガッ!!
…右手のビームライフルだけではダメだ…ブレード?いや使いこなせない…
ンシュンーー!!・・・ガガガガッ!!
「くっそ!少し考えさせて!!!」
「そんなこと実戦で敵に頼むのか!!あっというまに粉々だぞ!!!!!!」
ンシュンーー!!・・・ガガガガッ!!容赦ない正確な攻撃が続く。
「ダメダ、ダメダ!!その程度ならそろそろ終わりにさせてもらう!」
 銃口がこちらに向けられ、光条がこちらに発射される!
「うわあああああ!!!」
 即座に武器を切り替える。両肩のインサイドを射出!
ンンンンン・・・ボシュン!
 “まぐれ”というしかないタイミングでデコイにHITしたビームは出力のせいもあるだろう、その
まま消えた。
「!!ふんっ!奇跡は2度続かないぞ!!!」
 当然次の攻撃を行う。

「それじゃ!コイツでどうだああああ!!」
 もう一度射出したデコイを左腕でむんずと掴み相手に投げつけた。
不思議なもので勢いに乗ると何でもうまくいく。
見事相手の頭部に命中!・・・アリーナの観客席、
オペレータールームなどからはクスクスと笑いも出ていた。

・・・
・・・
・・・
「だっはっはっは!!うぃ〜!!腹痛ぇ!」
 話始めてからずっと笑い転げている。
「・・・でもよぉ。俺はお前の動きに何か光るもんを感じたね!!はっはっは!」
「あんなことするの僕ぐらいでしょうね・・・すいません」
「ひっひ〜っく、苦しい。いやいや、本当にたいしたもんだよ!!だっはっはっはっは!!ドリフみてぇ
だったもんなぁ!ひぃ〜!」
「?ドリフ??それはなんで、、!!」

!!?
 不意に見たレーダーに赤い光点があった。
「艦長!レーダーに反応!!機数1、距離・・12000!!」
「!・・・識別信号確認を急げ!!」
 艦長はすぐにキッっと鋭い目つきに変わり指示をだす。
「・・・と、いわれても・・・」
「だぁ!!んもぅ!ドケっ!!」
 席の僕を突き飛ばしモニターを確認する。
「…ふぅ。味方だ…さっきも言ってたもう一人の“クルー”だよ」
 やれやれと自分の席に戻りドッカと腰を下ろす。
「しっかしよう、お前よくそんなのでレイブンになれたな」
「こんな旧式な計器見たことないですよ・・・」
「確かに旧式だがまだまだ現役よ!俺はそういうレトロなものが大好きなんだな」
 そのあと少しのあいだ、即席“レイヤードの歴史”の授業を聞かされた。

 そうこうしていると先ほどの反応が目視できるまでに近づいてきた。
 最近の塗装には見られなくなった迷彩が施されている。レーダー機器が発達した今なんの意味がある
のだろうと思っていたが、ついで出た艦長の言葉で納得できた。
「ほら、あれが今回のもう一人のクルー、レイブン『ハンク』だ」
「レ、レイブン!?な、なんでこんなところに!!」
「何そんなに驚くことある?シュティム君だってレイブン殿だろ?」
 通常、コーテックス経由の依頼以外でACを使用することはできない。
 それなのに彼は砂漠のど真中にこうして立っていた。
「僕は自分のACを輸送してもらっているから、ここにいるだけです」
「ん〜、ま、ハンクの場合“元レイブン”だからな。自由に使えるんだろ?」
 そんなはずはない、レイブンであるからACを扱える資格が与えられる。
 そうでない者が勝手にどうこうしていいなんて代物ではない。
 それに、そんなことをすればすぐに“管理者”というモノからの制裁が下る。

 そういえば僕がレイブンになってまもなくのこと、一人の男が脱走をしたと一時期大騒ぎになったっけ・・・
コーテックスも躍起になって行く手を捜したけど結局見つからずじまい。ミッションリストにも
まだあったな『逃亡者探索』・・・僕はランクが足りなくて参加できないから大して気にもしていなかったけど。

「艦長、そんな奴と行動を一緒にしたら僕たちまで反逆者扱いされますよ!」
 とうの艦長はそんな言葉を鼻であしらった。
「はんっ、大丈夫だあいつは腕は立つし、何より“いい奴”だ」
「って、もう何度か一緒に?」
「おう!よく助けられたもんだ!ついでに故郷も同じだしな!!だっはっは」
 だっはっはがまた増えるのか?と少し心配になった。

ツーツーツー・・・ツツツー・・・
「お?こちらに搭載の許可を求めてやがるな!おぅし!こいっ!!」
ツツツー、ツツツー・・・
 なにやらノイズ音でお互いやり取りをしている。僕にはその光景が不思議に見えた。
「あ、あの、それは?何を言ってるのか解るんですか?」
「モールスシンゴウといってな、こうして短い音を決まった周期で流すことによって意思疎通をはかる。
失われた技術ってやつな」
と言うと再びハンクとの交信を続けた。

・・・ややしばらくして、ようやく目途がついたのか小さな発信機を横に放ると僕のほうに近づいてきた。
 随分と待たされた気になって、僕はたまらず聞いてみた。
「えぇと、何を話していたんですか?」
「くっくっく!相変わらずだ!サイキン サケト ゴブサタ タンマリヨウイシトケってよ!!それで
俺はこう返した。ソンナ モンハ ネェってな。したらアイツなんて言ったと思う?ジャア コンカイハ
 ナカッタ コトニしてくれとさ!」
「・・・じゃぁ・・・」
「いいや!すかさずこう返した。その代わりピチピチのレイブンちゃんが一人いるってな!ったら、
すぐにこう来た。今すぐ乗り込むからハッチは空けておけ、開いてないならこじ開ける!・・・だってよ!
だっはっはっは!」
「なんか、それって・・・」
「ヤツァ、お前の事、女性レイブンだと思い込んでるぜ!!襲われるなよぉ!」
 やばぃ。騙されたことをしったら暴れるのかな?・・・ここはひとまず隠れておこぉ・・・
 コソコソと部屋を出ようとした僕は襟をワッシと掴まれ席に戻された。
「おうおう、どこ行こうってんだ?コレから楽しいところなのに」

ガンガンガンガンッ!!!ギギッギギッ!!!!
 急に大きな音がしたと思うと、艦全体が激しく揺れ、艦内放送の回線にリンクした怒声が響いた。
「オッッッサーーン!!早く開けろぉぉぉお!!」

 それからはもう、ひっちゃかめっちゃか・・・中に僕しかいないことを知ったハンクは予想どうり大暴れ。
 艦長と一バトル繰り広げる。
 ハンクが辺りの物を適当に毟り取って艦長へ投げつければ、負けじと投げ返す・・・
 両選手がくたびれたところを見計らって、間に入った。
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて下さい」
 ・・・失敗だった。
 ギョロっと4つの目玉がこちらを睨んだかとおもうと、一斉にに攻撃の矛先が僕に向いた。
「元はといえばお前が悪い!!ACなんだからパーツ交換せー、交換!!」
「そ、そんな!さっきは“バキッと直してやるからな”って!」
「そーだ、そーだ!!お前が悪い!!!何で女じゃねぇんだ!!」
「し、しりませんよ、そんなことっ!」
「だいたい!お前みたいな若造が・・・ウキィー!!」
「キャッキャッ・・・!」
「ウホッウホッ!!」
「フー!!!」
・・・
・・・



 その日はお互いろくな自己紹介もせず、3人とも疲れ果ててその場に寝込んでしまっていた。

 この輸送が長い物語の始まりになるとは知らずに。
つづく(か?
作者:エル・フライレさん