第六話 決戦前夜
ここは元パラサイト・エッヂのガレージ。見たものを威圧するような漆黒のACがそびえ立っていた。
ラゴウ「できた、、、」
エース「完成したか、、、お前の新しい力が。」
ラゴウ「ああ。あいつとやり合うには機動性は欠かせなかったからまた中量級になったが、スピードだけは軽量級に匹敵する。」
エース「の割にはグレネード、か?何を犠牲にした?」
ラゴウ「ラジエーターさ。最低限軽いものに変えた。オーバーヒートを起こすほど耐えるタイプのACでもないしな。」
エース「しかしこのアセンブルは、、、お前、まさか?」
ラゴウ「ああ、INTENSIFYを使う。」
エース「本気か?」
ラゴウ「あいつに勝つには生半可じゃだめだ。それに『あの力』だって自由に扱えるようになったわけじゃない。」
エース「しかし!!」
ラゴウ「あの時はお前への嫉妬、力への羨望につけこまれた。」
エース「、、、」
ラゴウ「けど、今は力を振るう意思がある。譲れない思いがある。それに、支えてくれる人がいる。もう、大丈夫さ。」
エース「そこまで言うなら何も言わん。お前が以前使っていたものがある。それを使え。それとACの名前はどうするんだ?」
ラゴウ「名前、か。そうだな、、、ブリオニア、、、うん。ブリオニアだ。」
エース「ブリオニア?」
ラゴウ「花の名前さ。」
エース「ふ、はははは!!」
ラゴウ「何がおかしい?」
エース「すまん、だからそう睨むな。つくづくお似合いだな、お前らは。」
ラゴウ「どうゆう意味だ?」
エース「彼女のACが完成してな、名前は、『ダスティーミラー』。」
ラゴウ「『あなたを支えます』、か。そうだな。」
エース「?なんだそれは?」
ラゴウ「花言葉さ。」
エース「なるほどな。お前の機体のはなんなんだ?」
ラゴウ「ブリオニア、、、花言葉は、『拒絶』、、、」
エース「お前、、、」
ラゴウ「そんな意味じゃない。オレが拒絶するのは『敵』さ。」
エース「ならいいんだがな。しかし、アセンブルに共通するところがあるな。」
ラゴウ「基本設計が同一人物だからな。送られてきたデータを元に組み上げたんだ。ましてダスティーミラーはブリオニアの兄弟機だ。」
エース「アンチロウの奴も意外におせっかいだな。」
ラゴウ「いい奴さ。」
エース「ああ、そうだな。」
人気の極端に少ないガレージで、
アンチロウ「クシュッ!!こんなときに風邪ひいたかな?レイン!!ツヴァイは組み終わったか?」
レイン「はい。全工程終了しています。」
アンチロウ「鬼が出るか、蛇が出るか、どっちにしろ、ろくなことにならないんだろうな。」
レイン「ですが、管理者をこのままにしてはおけません。」
アンチロウ「わかってる。レイブンの『自由』を脅かす奴とは、戦うだけさ。」
エースのガレージ、三番ハンガーの前で、
リア 「よろしくね、ダスティーミラー。」
借り受けたハンガーを見上げる。そこには紛れも無い、自分のACがあった。他人のではない、自分が乗る、自分だけのACがそこにあった。
優雅さを感じさせる白。真っ白なのではない、濃さの違う白を塗りわけ、気品を感じさせる。奇しくもブリオニアとは対極の色になっている。
リア 「守ってね。あの人を、、、」
そして戻って、元パラサイト・エッヂのガレージ。
ラゴウ「エース、最後の仕上げ、手伝ってくれるか?」
エース「仕上げ、か。いいだろう、、、」
ラゴウ「負けっぱなしってのは癪だからな。さて、」
エース「やるか、」
「「実戦だ」」
誰の気配も感じないアリーナで二つのACは睨み合うように立っていた。
ラゴウ「お前が妬ましいと思ったのは確かだ。」
エース「お前を疎ましいと思ったことがある。」
ラゴウ「同期でさえなければ『すごい奴だな』で終わっただろう。」
エース「同期でさえなければ気にもとめなかったろう。」
ラゴウ「だが、」
エース「だが、」
「「巡り会えたことを感謝している。」」
ラゴウ「フフ、さあ、始めよう。」
エース「ああ、戦士の語らいを。」
「「ウオオオオオ!!」」
どちらもオーバード・ブーストを使って自機を最高速度まで加速させる。
アルカディアが月光を振りかぶる。しかしこれがラゴウの狙いだった。
オーバード・ブーストを解除しつつ少し右にそれる。目標を失ったアルカディアが自機の横を通り過ぎてゆく。
エース「なっ!?」
ラゴウ「背面、とった!!」
反転しつつアルカディアに向けマシンガンを撃つ。いや、撃とうとした。
狙いをつけ撃とうとした瞬間目の前に飛び込んできたのはアルカディアのパージしたエクステンションだった。
時速300キロ近い速度ではそれすらも立派な質量兵器となる。故にブリオニアが撃ったのはアルカディアではなくパージされたエクステンションだった。
ドーン!!
撃ち落されたエクステンションが圧縮されたエネルギーを開放し、眩い閃光をあげる。一瞬カメラが白く染まり、アルカディアを見失う。
エースにはこの一瞬で充分だった。
ラゴウ「クッ!いない!?上か!!」
閃光が収まったとき、ブリオニアのカメラは何も映してはいなかった。ただロックオンを告げるアラートだけがけたたましく鳴っていた。
ガォン ガォン ガォン
アルカディアのライフルが吼える。回避行動も取れていないブリオニアへの一撃は確実にマシンガンを射抜いていた。そして、
ラゴウが、変わった。全てがクリアになる。数式パターンがイメージとして現状を伝える。
そして、INTENSIFYがラゴウの意思と共鳴するかのような反応を見せ、破壊衝動が戦意へと変わった。
ラゴウ「これは?そうか、、、」
エース「これでメインウェポンを失ったぞ!!な!?」
ラゴウ「見えた!ここだ!!」
スナイパーライフルの長い砲身が仇となった。
ブリオニアは自分に向けられた銃口から逃れるどころかそれを掴み、引き寄せると腕ごとライフルを切って落とした。
エース「グァ、、、!フッ、これで五分と五分か。」
ラゴウ「さて、それはどうかな、、、」
エース「なに?」
ラゴウ「終わったときにわかる。行くぞ!」
アルカディアがチェーンガンを、ブリオニアがレーザーキャノンを放つ。チェーンガンは地面を穿ち、レーザーキャノンは空を切った。
そして両者のグレネードが同時に炸裂した。互いに左足を失い、ブーストを吹かして機体を支えているが長く持つはずがない。両者がとった行動は同じ。
二度目のオーバード・ブーストが発動、蓄えられたエネルギーが一気に放出される。
「「アアァァァァ!!!」
そして、激突。
エース「、、、負けだ、、、」
ラゴウ「楽しい。この一言に尽きる時間だった、、、」
アルカディアののど元に突きつけられたブレード。そしてアルカディアのブレードはブリオニアの右腕によって軌道を逸らされ、何も切ってはいなかった。
右腕さえあればまた、違った展開になったろう。だが、右腕を失ったこと、それがエースとラゴウの決定的な差だったのだ。
「「フ、ククク、あはははははは!!」」
どちらともなく笑い声が漏れた。悔しさも、憎しみも、一欠けらもない。そこにあるのは楽しさ、満足ゆくまで語り合えたことへの喜び、それだけだった。
ちなみに、この大変な時に実弾を使って機体を中破させた二人にリアが怒声を浴びせたのは言うまでもない。
そして、人知れずアイの姿が消えた。
第七話へ続く
あとがき
主人公とエースの戦いを書こうかどうか迷いましたが書きました。
だって主人公まだ一度も勝ってないし(雪崩汗)
ACSSとしてはもうすぐ最終話ですが、ACSLSS(長!!)として続けます!紛らわしくてごめんなさい。
AC解説
『ブリオニア』
ペインチェーンに代わる主人公機。攻・守・速の三拍子に優れた欠点のない機体。強いて言うなら弾数が若干少なめ。
ところどころ色の濃さは違うもののほぼ真っ黒。INTENSIFYのおかげで冷却性能を多少おざなりにしてもOKなので最軽量のものにしてある。
まだ登場してないが、同時進行で設計されたダスティーミラーとは兄弟機にあたる。同じく未登場のアキレア・ツヴァイとも共通点がある。
今回からパーツ全指定
頭部 MHD−MM/007
コア MCM−MI/008
腕部 MAL−RE/HADRO
脚部 CLM−55−RVE
ブースター CBT−FLEET
FCS PLS−SRA02
ジェネレーター CGP−ROZ
ラジエーター RMR−SA44
インサイド 無し
エクステンション KWEL−SILENT
右肩武器 CWG−GNS−15
左肩武器 MWC−LQ/15
右腕武器 CWG−MG−500
左腕武器 CLB−LS−3771
『ダスティーミラー』
リアが乗ることになったブリオニアの兄弟機。攻撃力、防御力で一歩劣るものの、機動力、耐久力で上を行く。
新米同然のリアには多少キツイ機体だが、ブリオニアの支援役としてだけではなく、単機でも十分戦闘に耐えうる機体に仕上がっている。
武装等から伺えるところがあるが、INTENSIFYの搭載を前提としている。エースによって絶対禁止とされているが、
パイロットの身に危険が及ぶと判断された場合プログラム・ロックが解除され、真の力を発揮する。
頭部 HMD−MM/007
コア MCM−MI/008
腕部 MAL−RE/HADRO
脚部 MLM−SPINE
ブースター MBT−NI/MARE
FCS PLS−SRA02
ジェネレーター CGP−ROZ
ラジエーター RIX−CR10
インサイド 無し
エクステンション KWEL−SILENT
右肩武器 MWC−LQ/15
左肩武器 CWC−LIC/100
右腕武器 MWG−MG/800
左腕武器 CLB−LS−3771
作者:ミストさん
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