サイドストーリー

地上編第一話 不殺の死神
部隊員『こちら第三機動部隊!!応援を!!ひ、、うわぁぁぁ!!!』

部隊長『クソォ!!分散するんじゃない!!固まるんだ!!う、グァ!?』

部隊員『た、隊長!!なんなんだ?なんなんだよお前は!?』

???『誰も殺しはしない。だが、命を張ってでも守るというのなら、、、保障はしない。』

部隊員『な、、、うわぁぁぁ!!』


人が地上への帰還を果たしてから、五年の月日がたった。得たものは非常に多いが、同じぐらいに失ったものも多い。
おざなりにされたレイヤードの管理、絶対の存在を失ったことによる団結力の喪失。そして、未踏査地区、すなわち【サイレントライン】の塵となった者。
地下世界以上の混沌が渦巻く地上の水面下で何かが起きていた。


???「これでクレストのものと併せれば、9個もの研究所が潰されたんだぞ!!研究員以外一人も殺さずに!!
これほど派手にやられて何故何の手がかりも掴めんのだ!!」

???『ですが、守備隊、応援に向かって全滅させられた部隊、どちらのパイロットも皆≪死神≫にやられた、としか、、、』

???「だから、そいつの正体を掴めと言っておるのだ!!ともかく!そんな真似ができるのはACしかない!キサマも元レイブンだろうが!?
グローバルコーテックスへの所属、未所属問わずすべてのレイブンを洗い出せ!!」

???『りょ、了解しました!!』


ブツン  一通り怒鳴り散らすと太目の見るからに裕福そうな男は荒々しく通信を切った。


???「まったく!金ばかり取ってちっとも役に立たんレイブン崩れが!!」


先程まで裕福そうな男と通信をしていた男はため息混じりに愚痴を漏らしていた。


???「とは言ってもなぁ、、、まさか自分の事を調べるわけにもいかんだろうが、、、」

???「でも、灯台下暗しとはよく言ったものよね?ラゴウ。」

ラゴウ「ははは、そうだなリア。まさか調査担当者が犯人だとは考えもしないだろう。」

リア 「あんなのが会長だなんてミラージュも案外情けないのね。」

ラゴウ「あれでも商才と人を見る目は天下一品だよ。オレに名指しで調査を依頼してきたんだから。」

リア 「で、どうするの?」

ラゴウ「でっち上げの報告書を出してごまかすしかないだろう。解雇されたらオレにも嫌疑がかけられるのは目に見えてる。」

リア 「そうね。しばらくはそれでごまかし通すしかなさそうね。」

ラゴウ「報告書のほうは頼む。で、、、新しい情報は?」

リア 「新興工業地区の外れに一つ。結構規模が大きいわよ。」

ラゴウ「関係ない。悲劇の種は全て叩き潰す。」

リア 「はぁ、、、ダスティーミラーももう埃まみれなんだけどなぁ?」

ラゴウ「もう君が戦場に立つ必要は無いんだ。IBISがサイレントラインの奥にいることは間違いない。今まで何の動きも見せなかったが、、、
    きっと動き出す。奴も、、、その時まで君に危険な橋を渡らせるつもりはない。」

リア 「でもエースもアンチロウも行方不明なのよ!?少しでも強くなっておかなくちゃ、、、」

ラゴウ「すまない、、、」

リア 「、、、、、わかったわよ、、、もぅ、尽くすタイプは辛いわ、、、」

ラゴウ「?」

リア 「何でもありません!!ブリオニア、スタンバイさせておくわよ!!」

ラゴウ「あ、ああ。(変わったな。それはオレも、か)」


人気の全く無いガレージで合成音声が鳴り響く。
『一番ハンガー、リフトアップ。【ブリオニア】発進、どうぞ。』


ラゴウ「死神、か。甘んじて受け入れよう、、、ラゴウ、行くぞ!!」


キイィィィン、、、、ゴオォォォォォ!!!   そして、死神が戦場に舞い降りる。


警備員『こちら正面ゲート前。異常なし。』

通信士『了解。レイブン、そっちはどうだ?』

???『いまのところ、何にも。それより一夜とはいえ命を預けあう仲なんだからせめてレイブンネームで呼んでもらいたいもんだね。』

通信士『変わった奴だな。わかったよ、アンチロウ。これでいいか?』

アンチロウ「へへっ上等だ。」

通信士『しかし、何が目的なんだろうなぁ?死神さんは。』

アンチロウ「襲われるなりの理由ってもんがあるんじゃねーのか?」

通信士『ここはただの技術開発研究所だぞ?そんなもんあるわけ無いだろう?入ったことは無いけど。』

アンチロウ「おいおい。大丈夫なのかよ?」

通信士『ここに限ってそんな、、、』

警備員『こちらゲート正面!!来ました!死神です!!速、、うわぁぁぁ!!』

通信士『おい!おい!!応答しろ!!くそ!なんだってんだ!?出番だ!頼む!!』

アンチロウ「了解。旧式のアキレアじゃ辛いかも知れんが、、、しょうがねぇ、さて、死神さんとご対面だ、、、」


既に瓦礫の山と化したゲート前。そこに死神は立っていた。時代錯誤の黒いマントコートを羽織りその全容は確認できないが、
知っているものなら一目でわかる。


アンチロウ「あいつは、、、ブリオニア、、、?」

ラゴウ「レイブン?警戒されてるな、、、当然といえば当然か。まあいい、、、行くぞ!!」


驚いているアンチロウをよそにラゴウは攻撃を再開した。アンチロウだとは気付かない。なぜならラゴウは初期のアキレアを見たことが無かった。
数年前の決戦時には彼はもう既にアキレア・ツヴァイに乗っていたから。


アンチロウ「おいおいおいおい!!容赦なしかよ!?通信は、、、くそ!切ってやがる!!」

ラゴウ「こいつ、、、強い。」


ブリオニアからマシンガンが放たれる。いつもなら回避しつつ反撃に出ることが出来るアンチロウも回避に全力を注がざるを得ない。
マシンガンなのに狙いがすべて急所狙いなのだ。


アンチロウ「クッ、、ソがぁ、、、いい加減にしやがれぇぇ!!」

ラゴウ「!?」


いままで回避しかできなかった敵が人が変わったように攻撃を繰り出してきた。無論こちらの攻撃は避けきれなくなっている。
しかし、致命傷を受けるような弾は完全に回避されていた。


ラゴウ「チッ!!こんな奴がいたとはな!!しかし、何故避けない?」

アンチロウ「破損率50%突破!?くそ!もう少し、、、」


被弾を顧みず前進を続けるアキレア。関節などの急所は避けているものの、その装甲は秒刻みで削られていく。そして、


アンチロウ「捉まえた!!」


既に各所から火花を出しているアキレアがブリオニアを掴んだ。


アンチロウ「システムコネクト、オンライン!!強制通信、開始!!てめぇ!!何しやがる!!」

ラゴウ「お前は!?似ているのは機体だけじゃなかったのか?」

アンチロウ「ふざけんな馬鹿野郎!!オレだ!アンチロウだ!!」

ラゴウ「本物、か。どうしてこんな所にいる?」

アンチロウ「依頼されたからに決まってんだろ。お前こそなんだってこんな事やってんだよ?」

ラゴウ「ここが何の研究所か知っているか?」

アンチロウ「技術開発研究所だろ?」

ラゴウ「知らないか、、、いや、そのほうがいい。」

アンチロウ「何?」

ラゴウ「悪いがどうあってもオレはここを潰す、、、少しの間大人しくしててくれ。」

アンチロウ「えっ?ちょっ!?」


バババババババ   ゴオォォォォォ   

全身にまんべんなくマシンガンを撃ち付けるとアキレアは黒煙を出し、崩れ落ちた。それを横目にブリオニアはさっさと研究所内に入っていってしまった。


アンチロウ「ぐぅぅ、、ま、待てって、、、」

通信士『ACが研究所に侵入!!研究員は総員退避、警備部隊は戦闘態勢に移行されたし!!』

アンチロウ「くそ!!駄目か、、、一体何があるってんだ、、、この中に、、、」

ラゴウ「邪魔だ!!道をあけろ!!」

警備員『な?うわぁぁぁ!?』


ドオォォォォン   バババババ   ズズズ、、ズズズン   バシュゥゥゥン   ドゴォォォォ


主任 「総員退避ぃぃ!!急げ!資料の処分を忘れるな!!」

研究員「サンプルは!?」

主任 「データさえ残っていればいくらでも作り出せる!!捨てていけ!!」

研究員「わかりました!!」

ラゴウ「悪いが、貴様らだけは逃さん。」

主任「な!?き、貴様が死神、、か?」

ラゴウ「そうだ、、、」

研究員「不殺の死神なんだろぅ?こ、殺しはしないんだよなぁ?」

ラゴウ「公にできない死者を発表しない企業が勝手につけたあだ名だ、、、貴様らにまで不殺が適用されると思うな、、、」

主任 「く、、、こ、この殺人鬼が!!何が目的だ!?」

ラゴウ「殺人鬼、だと?貴様らが、、、貴様らがそれを言うか!!大義名分があれば何でも許されると思うなよ!!」

主任 「ひぃぃぃぃ!!」

ラゴウ「貴様らのような奴をこの世界から消す。それが目的だ、、、」

研究員「た、たすけ、、、、」


ドォォォン!!


ラゴウ「ミッションコンプリート、帰投する。」

リア 『了解。偵察機に気をつけて。』

ラゴウ「わかっている。通信を切る。ふぅ、、、ん?これは、、、人?犠牲者か、、、クソ!まだ子供じゃないか!!どうしてこんなことが平気でできる!?」


怒りを隠そうともしないラゴウの前には一つのカプセルがあった。その中に入っているのは見掛け15〜6歳前後の紛れも無い、人。
生きているのかさえわからなかったがラゴウは戸惑うことなくカプセルからその子を出すと、ACに乗せ、去っていった。自分と同じ境遇であるが故に。

『一番ハンガー、リフトダウン。【ブリオニア】帰還を確認。』
太陽が朝を告げる頃、無人のガレージ内で再び合成音声が鳴り響いた。


リア 「おかえり、ラゴウ。って、、、誰?その子?」

ラゴウ「拾った。研究所内でな。」

リア 「はぁ!?どういうことよ!?」

ラゴウ「オレと同じ被験者、さ。相変わらず本人の意思なんて関係ないようだったがな。」

リア 「あっ、、、そんな、、、まだ子供じゃない、、、」

ラゴウ「こいつ、オレはこいつを引き取ってやりたいと思ってる。駄目かな?」

リア 「駄目、なんて言う訳無いでしょ?あなたが引き取るって言わなかったら私が言ってたわ。」

ラゴウ「ありがとう。あっそうだ。名前、付けなくちゃな。」

リア 「それっぽいもの書かれてなかったの?」

ラゴウ「奴らにそんな感情があったらな、、、」

リア 「そっか、、、よし!男の子だから、、、計都!!この子の名前はケイトで決まり!!」

ラゴウ「おいおい、少しはこいつの意見も聞いてやらないと、、、」

リア 「あら?生まれたばかりの赤ん坊に名前を付けるとき赤ん坊に聞いたりする?」

ラゴウ「それは、、、」

リア 「どうせ、そんなあたり前のことも知らずに育った子なんだから、、、お母さんっていうものをとことん教えてあげたいの。」

ラゴウ「っ!!」

リア 「ど、どうしたの?」

ラゴウ「そ、そっか、そうだよな!ありがとう、リア!!」

リア 「へっ?」


ラゴウは思いもよらず、母の姿を見た気がした。きっと自分の母親もこう思って自分を育ててくれたんだろう、と。それがなぜか、たまらなく嬉しかった。

そして翌日、技術開発研究所壊滅のニュースが世間を騒がせた。




第二話へ続く







あとがき
しぶとい。我ながらそう思う今日この頃。何がって?決まってるじゃないですか?私自身のことですとも。
もうちょっと躍動感ある文が書けたらなぁ、、、皆さん、つまんなくてごめんなさい。

P・S

計都とは羅喉星と同じく、五百年周期(確かそんくらい)で地球に近づく彗星の名前です。
神話では、切り落とされた阿修羅王の首が羅喉星、その体が計都星になったとされています。
作者:ミストさん