サイドストーリー

地上編第四話 ターニング・ポイント
ケイト「う、、、こ、こは?」

ラゴウ「起きたか。」

ケイト「父、さん?」

ラゴウ「ケイト、、、この馬鹿が!!」

ケイト「!!」

ラゴウ「何があったかは知らんがな、先走ってあれだけの大群のど真ん中に単機突入など無茶のしすぎだ!!」

ケイト「、、、、、」

ラゴウ「おまえ自身にも戦う理由があるだろうことぐらいわかっている!!しかし、あの力が自分や周りにどれだけ危険を振りまくか分かっているのか!!」

ケイト「、、、ごめん。」

リア 「ハイハイ。ラゴウ、そのくらいでいいでしょ?」

ラゴウ「しかし!!」

リア 「お客さんよ。しかも結構厄介な、、、」

ラゴウ「客?」

リア 「そ。相手は、、、キサラギよ。」


キサラギ、この名前を知らない者はいないだろう。かつて、レイヤードにおいてクレスト、ミラージュと共に世界を3分した有数の大企業である。
しかし、反管理者武装組織『ユニオン』に援助し同組織の壊滅とともにその力は大きく削がれ、現状では存続すら危ぶまれている。


ラゴウ「で、そのキサラギ社が私に一体どのようなご用件でしょうか?」

リア 「(変わり身が早いわね、、、)」

???「おっと、その前に、初めまして。私、キサラギ社治安局のカツラというものです。」

ラゴウ「あっ、失礼しました。私はティア・クロウ。まぁご存知でしょうが、何でも屋です。そして、こっちがパートナーのミリアです。」

カツラ「いやいや、偽名はご遠慮願えますか?ラゴウさん、、、それとリアさん、でしたな?」

リア 「え!?」

ラゴウ「、、、なぜ、その名を?」

カツラ「ハイ、お恥ずかしい話ですが、わが社は現在存亡すら危険視されている状況でして、情報は生命線なんですよ。」

ラゴウ「なるほど、、、まぁいいでしょう。早速ですが、ご用件は?」

カツラ「単刀直入に申しますと、あなたのお力をお借りしたいと思いまして、、、」

ラゴウ「残念ですが、私は現在ミラージュ社と無期限の契約を結んでいます。ご希望に添えることはできません。」

カツラ「はい。そちらのほうも承知です。」

ラゴウ「ではなぜ?」

カツラ「私どもがお借りしたいのは『何でも屋』としての力ではなく、『死神』としての力のほうなのです。」

ラゴウ「なっ!!」

カツラ「人類が地上へ戻って早五年。地上の有り余る魅力に企業は虜になりました。しかし、地下世界こそが故郷であり、
そこを自分の墓場としている者も数多くいるのです。しかし、企業はそんな言葉に耳を貸さず、レイヤードは今荒れ放題です。」

ラゴウ「、、、、、」

リア 「悲しいことですね、、、」

カツラ「その通りです。ですが、彼らは彼らでレイヤードに秩序を取り戻そうとしています。しかし、彼らには力が無い。」

ラゴウ「そのためのレイブンでしょう?」

カツラ「ええ。ですが、彼らの全てが善意で動くものとは限りません。」

リア 「野党まがいのことをするレイブンが?」

カツラ「当然、そのようなことを考えるレイブンもいます。そこでわが社が地下層の方々を援助、
後々にはレイヤード全域をキサラギ主導のものにできれば、と考えております。
他の企業が目もくれない莫大なシェアを独り占め、おいしいとは思いませんか?」

ラゴウ「私にレイヤードの治安維持を?」

カツラ「いえいえ、そんな簡単な話しではありません。先程もお話したとおり、わが社は存亡の危機を迎えています。
当然、配置できるMTも限られてきます。しかも、広範囲に渡って配置できるだけのMTもありません。
それではレイヤードの治安維持もままならず、他企業の侵略に対してはもはや成す術がありません。
ならば無理して防衛用のMTを量産したり、中途半端なレイブンを雇うよりは、、、」

ラゴウ「表舞台には立てないが、凄腕のレイブンを抱き込んだほうがマシ、ということですか、、、」

リア 「つまり、治安維持はこっちでなんとかするから他企業からの防御を頼むってことですか、、、」

カツラ「ご理解いただけましたかな?」

ラゴウ「だいたいは、ですが。しかし、何故?最初っから私が『死神』だと決め込んで調査しなければ絶対にばれないという自信はあったのだが?」

カツラ「ええ、非常に骨を折りましたよ。実は、私どもに協力を約束して下さった方が数人おりまして、たとえば、アリーナの元トップランカーですとか、、、」

ラゴウ「エースが、、、そうですか。しかし、いいんですか?まだ明確な返事を出していない相手にプロジェクトの内容を話して。社命に関わりますよ?」

カツラ「それだけ本気であり、そうでもしなければ貴方の信用は得られませんからなぁ。本名を隠すためだけにあれだけの隠蔽工作を行うぐらいですから。」

ラゴウ「は、ははは、、、そういうことですか。完敗ですね。わかりました、ご協力しましょう。それなりの条件はありますが、、、」

カツラ「ええ、それについては自分で判断する、との社長自らのお達しですので、申し訳ありませんが後日本社のほうで、、、」

ラゴウ「社長自ら?」

カツラ「ハイ、私が言うのもおかしい話なんですが、わが社の社長は少々変わり者でして、、、」

ラゴウ「地上開発が始まって社長が変わったらしいが、、、変わり者とは?」

カツラ「達観している、というのでしょうか『剣は壁に、盾は右手に在るべき物だ。』というのが口癖なんです。」

ラゴウ「ほう、、、」

リア 「なんだかあべこべですね、、、」

ラゴウ「そうか?私は全く同感だが。」

カツラ「ふむ。意味がわかりますか?」

ラゴウ「私の解釈だから相違はあるかもしれませんが、、、『他人を傷つけるためにある剣は飾り物であればいい。その手に持つべきは守るための盾だ。』
    ということではないでしょうか?」

リア 「なるほど、、、」

カツラ「奥が深いですなぁ、、、」

ラゴウ「興味がわいてきましたよ。社長さんに、、、」

カツラ「それはよかった。是非とも会っていただきましょう。ところで、一つお願いしてもよろしいでしょうか?」

ラゴウ「なんでしょうか?火急の依頼なら最大限引き受けますが。」

カツラ「サイン、貰えませんか?」

ラゴウ リア 「「、、、はい?」」

カツラ「実を申しますと、私、ファンだったんですよ。パラサイト・エッヂの、、、」


二人が立ち直るまで数分かかったのは言うまでも無い。

そのころ、【オペレーション・ファントムキラー】が大失敗に終わったミラージュ、クレストは揺れていた。

ミラージュ社では、


ミラージュ「部隊の3分の1が壊滅というのは事実か!?」

秘書 「は、はい。[マリオネット]からの報告によりますと、クレストの部隊は大部分が壊滅、敵に未確認機四機が味方し、被害が拡大した、と。
    また、司令官に任じていた元レイブン『カイザー』もACに乗り出撃しましたが、敗北。[マリオネット]に処刑させました。」

ミラージュ「元レイブンのことなどどうでもいい!!【ファントム】の素性を全力を挙げ、徹底的に調べろ!敵味方問わず、だ!」

秘書 「み、味方もですか!?」

ミラージュ「これだけ探していないのなら、味方を疑うしかあるまい!!調査主任のクロウともども、怪しいと思われる者は全て捕らえろ!!」

秘書 「了解しました!失礼します!!」

ミラージュ「ふぅ、、、あれだけの罠をしかけて突破されるとは、、、抱き込めれば最善だが、な、、、」


また、クレスト社では、


クレスト「二個大隊もの戦力を送って帰ってきたのは僅か一個中隊だけだったというのか!?そんな馬鹿な話があるか!!」

担当者「残念ながら事実です。ミラージュもかなりの被害を出していたようですが、部隊を後方で温存していたため半分以上が無傷です。」

クレスト「くっ、おのれミラージュ!図りおったか!!」

担当者「【ファントム】を討伐しようにもMTが足りません。どうなさいますか?」

クレスト「生産ラインにピッチをあげるように伝えろ!限界までな、、、それとキサラギに早期合併をもう一度要請しろ。多少の無理は大目に見る。」

担当者「ハッ。」

クレスト「ミラージュ、、、このままにしてはおかんぞ、、、」


ピピピピ ピピピピ


クレスト「私だ。」

研究員『社長、[DOLL]の調整が終わりました。』

クレスト「何?そうか、、、わかった。【イグニション】の整備を万全にしておけ。出撃はそう遠く無い。」

研究員『ハッ。』


後日、キサラギの社長との会談のため、ラゴウたちはキサラギ本社ビルを訪れていた。


カツラ「なんと、条件とはこれしきのことでよいのですか?」

ラゴウ「ええ。私達が私達らしくいられる、その自由さえあればいい。」

カツラ「はぁ、欲がありませんなぁ。任務時間以外の自由、住居の提供、安定した報酬、ACの所有権を認める、報酬は全額前払い、これだけですか、、、」

リア 「生きていくのにそれ以外のことは必要ありませんもの。ACだって自分たちのお金で組み立てたものですし。」

カツラ「ふむ、いやいや人格者ですなぁ、、、」


コンコン


秘書 「カツラさん、社長が、、、あっ!しゃ、社長、会談は社長室のほうでと、、、」

???「いいでしょ?場所なんてどこだって変わんないよ。」

カツラ「はぁぁ。社長、ご自分が立てた予定をご自分でぶち壊すのは困ります。」

???「初めまして。キサラギ社代表取締役のキサラギ=レイです。よろしく。」

リア 「(わか〜い。何歳だろ?)」

カツラ「無視ですか、、、」

キサラギ「カツラさん、忠告はちゃんと聞いてるから安心しなよ。」

カツラ「なら返事の一つぐらいできないんですか!?」

ラゴウ「すみませんが、、、」

キサラギ「ほぉら。カツラさんがうるさくするからお客さん困っちゃってるじゃないか?」

カツラ「誰のせいだと思ってるんですか!!」

リア 「あ、あはははは、、、、、」

キサラギ「あ!これが条件ってやつですか?ちょっと失礼。」

カツラ「全く、、、あれだけの腕をもちながらこれだけの条件でいいそうです。よかったですな?」

キサラギ「ふぅ〜ん、、、大体オッケーだけど、ACの所有権を認めるわけにはいかないなぁ。」

ラゴウ「、、、何故だ?」

カツラ「社長、わが社で用意しろというわけではないのですし、、、」

キサラギ「駄目だね。これだけは認めるわけにはいかないよ。」

リア 「ですが、私達にはなすべきことがあります。それを認めていただけないことには協力はできません。」

キサラギ「力はあってもいい。けどそれを個人が持つのはナンセンスですよ。持たない人にとっては脅威以外のなんでもない。
まして個人が企業相手に喧嘩をするなんて馬鹿げてる。」

ラゴウ「そうか、ならここに用は無い。行こう、リア。」

キサラギ「人の話は最後まで聞きましょうか?」

ラゴウ「なに?」

キサラギ「個人で出来ないのなら企業がやればいい。あなた方が我々に攻撃要請を出せばいいんです。
それは依頼という形であなたに実行してもらいましょう。強化人間の人体実験、、、褒められた事じゃありませんしねぇ?」

ラゴウ「企業のトップがする発言とは思えないな。全ての責めは自分が負うと言っているようなものだぞ?」

キサラギ「そうでしょうか?人の上に立つ者なら、人を虐げる行為を黙認することはできませんよ。利権とは人がいて成り立つものですから。」

ラゴウ「結果として潰されても、か?」

キサラギ「そうならないためにあなた方を雇おうとしているんじゃないですか?」

ラゴウ「、、、口ではいつになっても勝てそうに無いな。」

キサラギ「口喧嘩したいわけじゃないんですから。歓談しましょうよ?」

ラゴウ「フフッ、無礼な振る舞い、お詫びいたします。社長。」

キサラギ「つまり契約成立って事で?」

ラゴウ「もちろんです。」

カツラ「はぁぁぁぁ!社長、心臓に悪すぎます!!まったく、、、」

キサラギ「ほらほらカツラさん、仕事仕事♪」

カツラ「人を怒らせて楽しまないでください!!」

リア 「あ、あの〜?」

カツラ「はっ!し、失礼しました。住居のほうはこちらで用意させていただきますが、二人部屋でよろしいですか?」

リア 「いえ、それが、、、」

ラゴウ「子供が一人、な。」

カツラ「なんと!そうでしたか!いやぁかわいいお子さんなんでしょうね?早くても三歳ぐらいでしょう?」

ラゴウ「15、、、です。推定ですが、、、」

カツラ「へ?し、失礼ですがご年齢は、、、?」

ラゴウ「27、です。」

リア 「25になります、、、」

カツラ「ということは、、、ええ!?」

キサラギ「カツラさん、なに真に受けてんの?養子とかに決まってるでしょ?」

カツラ「え?あ、ああ!そういうことでしたか!!」

リア 「い、いくらなんでも十歳で出産は、、、あはは、、、、」

ラゴウ「、、、三人用の部屋で頼みます、、、」


なぜか戦闘より疲れたラゴウだった、、、




あとがき

新キャラぞくぞく出しちゃってます。いつか自分でも分からなくなるような気が、、、
見直しを怠けているわけではありませんが、つじつまが合わない、ということも多々あるかと思います。
全て私の力不足です。お詫び申し上げます。
作者:ミストさん