サイドストーリー

地上編第六話 彼の思い、彼女の気持ち 〜陸上隠密機動母艦【サルビア】〜
その日、ラゴウはキサラギ社特殊部隊【ヤタガラス】の運用に向け、キサラギ本社を訪れていた。


レイ 「やぁ、ラゴウさん。いらっしゃい。毎日毎日ご苦労様です。」

ラゴウ「毎日毎日呼び出してるのは誰だと思ってるんだ?」

レイ 「、、、カツラさん?」

カツラ「わ、私ですか!?」

レイ 「あははは!冗談冗談♪今日は大まかな部隊編成について案がまとまった辛見といてもらおうと思ってね。」

ラゴウ「部隊編成?一部隊による精鋭部隊じゃなかったのか?」

レイ 「たった一つの部隊で攻めも守りもどっちもこなせるほど相手は簡単じゃありませんよ。カツラさん?」

カツラ「ハイ。どうぞこちらを、、、」

ラゴウ「ファイル?、、、これは!?」

レイ 「部隊の構成リストです。ラジルさんには防衛部隊、ラゴウさんには奇襲部隊による攻撃を担当してもらいます。」

ラゴウ「そんなことはどうでもいい!!それよりこれはどういうことだ!?何故、、、何故リアと【ダスティーミラー】の名前が載っている!!」

レイ 「、、、彼女が望んだからです。共に戦うことを、、、」

ラゴウ「なっ!ふざけるな!!オレは認めない!!」

レイ 「ふぅぅ、、、じゃあ聞きますが、あなたが認めなければどうだというんです?」

ラゴウ「な!!」

レイ 「結婚すらしていないあなたにとって、あなたは彼女のなんだというんです?夫?上司?あなたには彼女を拘束する権利なんてないんですよ?」

ラゴウ「だからといって彼女が戦場にでるなど!!」

レイ 「それはあなたの思い、願望ですよね?あなた一人の意思によって彼女の気持ちが足蹴にされることなどあってはならない。」

ラゴウ「クッ!」

レイ 「あなたが彼女を戦わせたくないのは何故ですか?傷つけたくないから?それとも――彼女が傷つくことによって、自分が傷つくのを恐れている?」

ラゴウ「 !! 貴様ぁ!!」

ラジル「ハイハイハイ、ストップストップ!!」

ラゴウ「ラジル?離せ!!」

ラジル「離したら殴るだろう?」

カツラ「ジャンクメーカー?あなた、、、」

ラゴウ「、、、クソ!!」

レイ 「言いすぎでした、謝ります。ですが、ラゴウさん。危険から遠ざけるだけで彼女は満足なんですか?
帰ってこないかもしれない人を待ち続ける辛さを解ろうとした事があるんですか?」

ラゴウ「俺は彼女を失いたくない!それだけだ!!」

レイ 「なら何故自分のそばで守り続けようという気は起きないんですか?」

ラゴウ「俺は自分は何があっても死なないなどと思えるほど自惚れちゃいない!!」

レイ 「彼女を戦いに駆り立てるもの、それが何かあなたにはわかっていない。」

ラゴウ「なんだと!!」

レイ 「彼女がそうまでして戦おうとするのは全てあなたが原因じゃないですか?」

ラゴウ「な!!お、俺、、が?」

レイ 「好きな人を守りたい。たったこれだけの理由があなたにはまだ解らないんですか?」

ラゴウ「だが、、、だがそれが彼女の身を危険に晒すことならば、俺はどこまでも否定し続ける!!」

レイ 「ならばもう戦いを捨てることですね。あなたが戦い続ける限り、彼女はいずれ自分の意思だけで戦場に出ますよ。」

ラゴウ「そんなこと、、、」

レイ 「させはしない、とでも言うつもりですか?呆れるほどの傲慢さですね?どうしても戦場に出したくないのであれば、
彼女のACを廃棄してしまえばいい。戦う術を奪えばよかっただけの話なんです。
なのにあなたはそれをせず、結果としてACのパイロットであり続けさせてしまった。
戦う力は与えるが戦場には立つな、心配だろうが帰らないかもしれない人を待ち続けろ、ですか?独りよがりもいい加減になさい!!
彼女はあなたの物じゃ無い!彼女は彼女自身の物だ!!」

ラゴウ「レイ、、、」

レイ 「目の前の人一人守ってやる自信もない人に世界の何を変えられる?そんな人間が誰を救えるというんだ!!」

カツラ「社長が、」

ラジル「キレちまった。」

ラゴウ「俺に、どうしろと言うんだ、、、」

レイ 「強くなればいい、自信を持てるぐらいに。あなたは今のままでも十分脅威的な力を持っていると思っているようだがそれは違う。
    強さに限りなどなく、強さは力だけではないんです、、、」

ラゴウ「、、、、、、」

レイ 「とりあえず彼女には戦闘員以外の箇所で働いてもらいます。ラゴウさん、傷つけるまいと物陰に隠すような真似はやめて、
大切な物ぐらい身を挺して守ったらどうですか?」

ラゴウ「だが、、、」

ラジル「だぁ〜!!わっかんねぇ奴だな!!どうしてもイヤだってんなら別れちまえ!そしたら後腐れねぇし、あいつだって戦わずに済むんだぜ?」

カツラ「ジャンクメーカー!!消えかけの火に油を注ぐような真似を、、、」

ラゴウ「常備戦闘要員じゃ、ないんだな?」

レイ 「ええ。あくまで予備要員です。どうしても戦わなければならなくなった場合にはどうしようもありませんが。」

ラゴウ「少し、考えさせてくれ、、、」

レイ 「存分に、と言いたいところですが時間はあまりありません。クレストをあしらい続けるのも限界ですし、次は武力衝突になりかねませんから。」

ラゴウ「わかった。失礼する、、、」

ラジル「行っちまったか。あっ、オレを完全に無視しやがったな!?」

レイ 「ラジルさん。そんなノリでごまかそうったって無駄ですよ。」

カツラ「あのタイミングの良さ、立ち聞きしてましたねぇ?」

ラジル「ギクゥ!!で、でも殴られなかったからよかったじゃねぇか?」

レイ 「そういう問題じゃ、」

カツラ「ありませんよねぇ?」

ラジル「ぐぅぅ、、、ゴメンナサイ、、、」

レイ 「まったく、、、それで、彼の行方は掴めましたか?」

ラジル「ん?あ、ああ。探しても探してもいねぇなと思ったらレイヤードに居やがった。」

カツラ「レイヤード?一体何を?」

ラジル「さぁ?名前を捨てたとかわけわかんねぇこと言ってたけどとりあえずご同行願ったぜ。」

カツラ「手荒な真似はしてないでしょうな?」

ラジル「す、するわけねぇだろぉが?あ、あはははははは!!」

???「どこからどこまでを手荒と呼ぶのかは知らんが、身の危険は振り払わせてもらった。」

レイ 「それは失礼しました。ようこそ、キサラギへ『エース』さん、、、仮装の趣味があったんですか?」

???「その名は捨てた。名前が必要なら『ネームレス』とでも呼ぶがいい。この仮面はいわば過去との決別。他意は無い。」

カツラ「ネームレス、、、何故、お名前を?」

ネームレス「輝かしき栄光はレイヤードとともに朽ち果てた、、、昔のエースはもういない。」

レイ 「なにがあったかまで聞くつもりはありません。聞いてもしょうがないですし。ところで、、、レイヤードで一体何を?」

ネームレス「人を、、、『人』を探していた。」

カツラ「人探しでしたか。それならわが社のほうで早速、、、」

ネームレス「いや、もういい。もしやとも思ったが、アイは、、、彼女はもう死んだ。」

レイ 「、、、そう、ですか。じゃあ、それでは本件に入りましょうか?」

ネームレス「いいだろう、、、」




ラゴウ「ただいま、、、」

リア 「ラゴウ、、、ごめん。」

ラゴウ「いまさら謝ってどうにかなる事でもない。少し、話をしよう、、、」

リア 「うん、、、」

ラゴウ「、、、どうしても、戦いたいのか?」

リア 「戦いたいわけじゃない!けど、待つのはもう、、、辛すぎる、、、」

ラゴウ「そう、か、、、(あいつには永久に勝てそうもないな、、、ドンピシャか、、、)」

リア 「私は守ってもらいたいんじゃない。支えてあげたいから戦うの。たとえそれで嫌われようとも、、、」

ラゴウ「予備戦闘要員だ。」

リア 「え?」

ラゴウ「常に戦い続けるわけでもないなら、もう何も言わないよ。俺が強くなれば戦わずに済むしな、、、」

リア 「ありがとう、、、」

ラゴウ「ケイトも連れてくか?」

リア 「ケイトも?」

ラゴウ「一人ぼっちにはさせらんないよ。」

リア 「うん!」


翌日、


ラゴウ「レイ、いるか?」

レイ 「あれ?早かったですね?」

リア 「ちょっと複雑なお願いがありまして、、、」

レイ 「お願い、ですか?」

ラゴウ「彼女も部隊に参加することには納得した。一応、な。それで、もう一人連れて行きたい奴がいる。パイロットとして。」

レイ 「へぇ、、、誰です?」

ラゴウ「ケイト、入れ。」

ケイト「、、、誰?」

リア 「また始まった、、、」

レイ 「あぁ!お子さんですか!!いやーでもいいんですか?危険ですよ?しかも15歳でパイロットは、、、」

ラゴウ「【オペレーション・ファントムキラー】のことは知っているな?」

レイ 「そりゃもちろん。紅いACがどうのって、、、うそでしょ?」

ラゴウ「嘘じゃない。紅いACのパイロットはこのケイトだ。」

レイ 「へ、へぇ〜、、、雰囲気はあるけど、そうは見えませんねぇ、、、」

ラゴウ「お前が動揺しているところを見られるとはな、、、」

レイ 「やだなぁ、私だってまだ20の若造ですよ?ラゴウさんたちが威厳ありすぎなんですよ。」

ラゴウ「そうか?」

レイ 「老けてる、とも言いますけど。」

ラゴウ「、、、、、、」

リア 「鮮やかなカウンターね、、、」

ラゴウ「、、、うるさい。で、どうなんだ?」

レイ 「人手が少しでも増えるのはありがたいんですけど、、、いいんですか?リアさんとはえらい違いですね?」

ラゴウ「リアの事があったから、だ。それに、贔屓じゃなくこいつは強い。」

リア 「ちょっと性格面に問題がありますが、そこは教育しますので、、、」

レイ 「ケイトさん、、、だったよね?君はどうなの?」

ケイト「戦えって言うんなら、戦う。」

レイ 「そうじゃない。君自身『戦い』というものをどう考えているのかを聞かせて欲しいんだ。」

ケイト「オレの兄弟達を生み出さないため。それがオレの戦い。」

レイ 「兄弟?」

ラゴウ「その件についてはいずれ話す。今言えるのはとある実験の犠牲者ということだけだ。」

レイ 「ふぅ〜ん、、、ま、いいでしょう。よろしく、ケイトさん。」

ケイト「、、、、、、、、」

レイ 「あれ?嫌われちゃったかな?」

ラゴウ「俺たち以外の対人関係が皆無に等しいからな、そのうち慣れるさ。」

レイ 「ならいいですけど。それじゃ、ちょっと移動しましょうか?」

リア 「え?」

レイ 「これからの君たちの『家』を紹介しとこうかと思いまして。」

ラゴウ「家?」

レイ 「そ。さぁ、レッツゴーです。」

ケイト「あんた、ホントに二十歳?」

レイ 「、、、、、、、」


キサラギ本社にある地下開発エリア、主に新型パーツの開発を主流とするエリアのさらに奥にその花は咲いていた。


ラゴウ「これは、、、」

レイ 「大型兵器【SRBIA】改、陸上隠密機動母艦SARVIA【サルビア】です。」

リア 「大きい、、、」

レイ 「母艦とするためにかなりの拡張作業をしましたから。もう原型ありませんねぇ?」

ラゴウ「母艦?」

レイ 「言いませんでした?これからの『家』を紹介するって。」

リア 「ひょっとして、、、」

レイ 「はい。あなた方が乗る船です♪」

ラゴウ「陸上戦艦など使い物になるのか?地上戦の主流はAC及びMTによる白兵戦だろう?いい的じゃないか。」

レイ 「ま、普通はそうなんですけどねぇ。撃たれる前に撃つっていうのが基本コンセプトですから。」

リア 「戦艦でMTやAC相手に機動戦闘する気!?」

レイ 「まさか。あなた方は『奇襲』部隊ですよ?要は、見つからなけりゃいいんです。」

ケイト「意味がわかんない。」

レイ 「それじゃあこの船の武装なんかを説明しましょうか?そしたら大体のことはわかるでしょ?」

リア 「賛成!」

ケイト「どうでもいい。」

ラゴウ「自慢したいだけじゃ無いのか?」

レイ 「ハイ、満場一致ということで説明してあげましょう!!」

ラゴウ「オイ。」

レイ 「まず火器類からいきましょうか。双頭型の艦首に搭載されているのが連装大型グレネード副砲『デリンジャー』です。
    片方に二つずつ砲塔がついていて、最高四発同時発射まで可能です。ちなみに二発しか撃てないというわけではないのでご安心を。
    でもって中心にあるブリッヂの下に搭載されているのが主砲、高エネルギー圧縮砲『トールハンマー』になってます。
    かなりエネルギーを使いますけど、小さな施設一つぐらいなら吹き飛ばせますよ♪
    あと艦尾に搭載されてるのが8連式ミサイル『メデューサ』で、近接防御砲『WS』、正式名称『ストロベリーシード』っていうんですけどね。
    でもって装甲には、、、、、、、、さらに特殊兵装として、、、、、、、あれは、、、、、、、、」

ラゴウ「やっぱり自慢したいだけか、、、」

リア 「憶えられるわけないじゃない、、、」

ケイト「頭痛い、、、」

レイ 「、、、、、、、ということになってるんです。わかりましたか?」

「「「いや、全然。」」」

レイ 「、、、なに聞いてたんですか?」

ラゴウ「こっちが聞きたいぐらいだ、、、」

リア 「あの、で、どうしたら見つからないんでしたっけ?聞き逃しちゃって、、、」

レイ 「あっ!忘れてました♪」


ガシャコン


ラゴウ「、、、逝くか?」

レイ 「え、遠慮しときます、、、」

ラゴウ「まったく、、、早く話せ。」

レイ 「はいはい。目には見えませんが、この艦自体が特殊な装置になってるんです。」

リア 「装置?」

レイ 「ええ、キサラギが誇る特殊パーツ製造技術の最高峰とも言える特殊装備『ゴースト』を搭載しています。」

ケイト「だからどういう効果なのさ?」

レイ 「急かさない急かさない♪単純に言うならジャマーメーカーなんですよ。この艦自身が。」

ラゴウ「、、、なに?」

レイ 「ですから、レーダージャマー、ECM、この二つの能力を艦に搭載したんです。射出タイプではなく、艦自身をジャマーメーカーにしたんですよ。」

リア 「な、、、」

ケイト「ふ〜ん。」

ラゴウ「ほう、、、」

レイ 「先ほども言いましたが装甲板に採用されている密林用の物を改造した特殊ステルス装甲によって隠密性も抜群です♪」

リア 「すごいじゃないですか!!」

レイ 「でしょ?でしょ?」

ラゴウ「欠点は?」

リア 「え?」

ラゴウ「どんな物にも欠点の一つぐらいは必ずあるものだ。」

レイ 「うぅ、、、わかりました、、、」

リア 「あるんだ、、、なぁ〜んだ。」

レイ 「『ゴースト』とステルス装甲を展開中は移動以外の行動が取れないんですよ。研究途中の高出力ジェネレーターを5基も搭載してるんですが、、、」

ラゴウ「その程度なら問題ない、な。」

レイ 「ついでに制限時間もついてます。同時展開の場合三分が限界ですね。それ以上を越えるとジェネレーターが爆発しかねません。」

ラゴウ「大丈夫さ。多分、な、、、」

リア 「でも、誰が動かすんですか?私たちはさっぱりですよ?」

レイ 「クルーについてはこちらで特訓中の精鋭がいますので安心してください。艦長も新米ですが信頼を置ける人ですし。」

ラゴウ「初任務の日も近いという事か、、、」

レイ 「まっ、皆さんなら大丈夫ですよ。」

ラゴウ「ならいいがな、、、」




第七話へ続く



あとがき
やってしまった、、、マニアなら誰でも一度は夢見たはずのオリメカ、、、笑わば笑え!!やりたかったんだから仕方ないじゃない!!
エース=ネームレスっていうのは私自身微妙に思いましたよ!!でも理由が頭のなかで出来上がっちゃったんです!!
ごめんなさい!!!!!!


オリメカ設定

陸上隠密機動母艦【サルビア】

最大速度 時速600q
全高 50m
全幅 150m

武装

高エネルギー圧縮砲『トールハンマー』
固定式連装大型グレネード副砲『デリンジャー』×2
8連式連装ミサイル『メデューサ』×2
近接防御機関砲『ストロベリーシード(WS)』×8
ECMメーカー射出装置『ドリーマー』
特装ジャマー発生装置『ゴースト』

キサラギの開発区域にあった古戦場から発見された地上兵器【SRBIA】を元に陸上母艦として再設計、建造された。
随所にキサラギ特有の特殊装備を施されており、隠密性に非常に優れている。
主砲である『トールハンマー』は実験兵器の域を出ておらず、『一度の戦闘において一度撃つことができれば充分な戦果を上げることができる。』
という破壊力本位の考えの下に搭載され、実際の扱いにおいて主砲は『デリンジャー』であると言える。
外見は双胴型をしており、3つの艦から成り立っている。これは【SRBIA】を二つ組み合わせることで初めて理想とする艦体像が出来上がったため。
中心に二つの船体を繋げるようにブリッジや居住区域のあるセントラルシップ【キクネ】があり、最悪の場合【キクネ】は脱出艇となる。
ブリッジから左側を【レフトリーフ】、右側を【ライトリーフ】と呼ぶ。
また、分離後も攻撃以外の簡単な動作なら【キクネ】からの無線操作で動かすことができる。
ただし、分離してしまうと『デリンジャー』を始め、各兵装および特殊兵装が使用不能になってしまう。
これは各所に搭載された火器の管制システムを一箇所に集中することにより人員、重量の削減をした代償である。
格納庫には最大でAC6機を搭載可能。余談ではあるがこれの建造費のためにキサラギは支社を3つほど整理した。

敵メカ

【SRBIA】;アーマード・コア2の『地上兵器侵攻阻止』に出てくる。私としてはこいつを沈めるよりKARASAWAを探すのに時間がかかった。
作者:ミストさん