CODE:09 SatelLite CanNon. Bad END
「・・・・・・ミラージュ基地の防衛?」
カイが訝しげな声を漏らす。
自らのACのメンテナンスにいつも通りの黒いロングコートで行っていたカイは、AC――ドランクレイドの通信システムの音量を、現在進行形で使っている厚手の革手袋で上げる。お陰でタールがついてしまった。
『ええ』
「――話にならんな。却下だ」
『何故です?』
「さあな」
追求するエマに投げやりに答えると、コックピットブロックの床を外し、ACのラジエータへと手を伸ばす。
『さあなって・・・ただでさえ出費が嵩んでいるんです。少しは高額な依頼も受けた方が良いのでは?』
「・・・」
『前々から貴方はミラージュの依頼には、非協力的な態度でしたけど・・・』
「知らんな」
穴に上半身を埋めるようにしてから、カイが返す。声が反響して聞こえ辛くはないか、と余計な心配をしたが。
ラジエータのメンテナンスを行う為にカバーを外そうとしていたのだが、それに必要なレンチが無い事に気がついて穴から体を起す。
『・・・レイヴン、彼方の為を思って言っているんです』
「いつ、俺の為に何かをしろと言った?」
邪魔だったので後方へ移動させていた座席シートを少し前に寄せ、その上に置いてあった作業箱−正式名称不明。街中の至る所に売られている−から目当てのレンチを取り出す。
『それもそうですが・・・レイヴンは、毎週第2レイヤードの方へ仕送りをしているみたいじゃないですか? それだけでも大分生活を――』
「・・・・・エマ」
低く押し殺した声が、まだ少年の面影がうっすらと残る−殆ど成年だが−少年の喉から這い出た。
「次、俺のまわりの事を勝手に調べてみろ。――殺すぞ」
『・・・』
「通信を切れ」
『・・・・・・・・・・・・わかりました』
ノイズがはしり、静寂が薄暗いコックピットの中に齎される。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ミラージュめ」
パシッ
レンチを革の手袋に叩き付ける。そこまで強くやったつもりは無いが、結構大きい音が出てしまう。
そんな事は無視して、ドランクレイドの操縦桿に掛けられた懐中時計を開く。
午前7:32分。
「グローバルに登録させたからと言って・・・俺を拘束できたとは思うなよ・・・!」
唸るように呟くと、ラジエータの蓋を開く作業に取り掛かった。
グローバルコーテックス・オペレートブロック。
「はぁ・・・」
人知れず、エマはその一室で溜息をつく。
ここは、グローバルコーテックスに所属する、レイヴン達のオペレートを担当するオペレーターが活動する場所である。
エマは、最近になってカイの身の回りの事を調べようと思い始めたのだが、彼の名前とDNAで調査するだけで、膨大な量の情報が現れる。それらの見出しは開くのを躊躇ってしまうような事しか書かれていない。
カイの親類などは完全にデータからは抹消されているし、かと言って友人が居る訳でも無い。
この事自体は別段珍しい事ではない−情報の量は除くが−。実際、レイヴンには親や兄弟を殺されて、グローバルコーテックスに登録した者もいるし、他の者を見返すために入った者もいる。
こんな事をいちいち調べる方が間違っているのだ。職場の先輩にもからかわれた事がある。
しかし――最近はどうも様子がおかしい。
自分が彼の部屋で気絶した後、起きた時には彼はいなかった。それは珍しい事では無い。
しかし、彼が部屋に帰途してから様子がおかしいのである。始終いらついているようだった。
直後に受けたミッションの時など、防衛対象であったAI搭載型MTまで故意に破壊し、報酬も無くなってしまった。
再度、溜息をつく。
これで心配するなと言う方が間違っているのだ。
エマ専用の個室を隔てて、オペレートの声が聞こえる。
「・・・」
なんとは無しに耳をすますと、そのオペレートは的確であり、ルートを調べる時間も短い。
先輩だろう。しかし、なによりも凄いのはレイヴンに信頼されている、という点である。
私は・・・こうはなれないのか・・・。
心でぼやいた直後。
ブーッ ブーッ ブーッ
「!?」
非常事態を知らせる警報が鳴った。
「戦闘システム起動。作戦目標――ミラージュ、集光施設破壊」
カイは呟くと、格納庫の扉をHALBERDで袈裟斬りにする。
カイのACには、基本的にAIが無い。もちろんロックオンサイトはあるのだが、使用する事は滅多に無い。殆どマニュアルである。
その為もあり、実際の起動にはグローバルコーテックスからの、戦闘システム移行の確認などがいらないのだ。よって、単機行動ができるのである。
残った扉にブースターで突進、破壊するとそのまま空へと飛び立つ。
『――レイヴン!! 何をやっているんですか!?』
「・・・」
ブツッ ピッ
『レイヴン! 答えてください!!』
回線を切ると同時に、また通信が入る。
どうやら全て切断したと思っていた、グローバルに通じるシステムが残っていたようだ。システムが繋がっているのなら、いくらでも通信は入れる事が出来るだろう。
しかし――無駄である。
『レイヴン!!』
叫ぶその言葉には答えず、街行く人々の頭上を飛び越えて隣の施設へと飛び乗る。
そして――OB。
衝撃を受ける――対衝撃用のスーツを着ていないのだから、当たり前ではあるが。
カイがスーツを着ないのはそれなりの理由がある。衝撃とて、ACの性能を上げれば少しキツいが、日頃の訓練の甲斐もありそれほど問題にはならない。そして、生身の作戦行動・・・。稀に起きる事態への対処だ。
『レイヴン、直ちにACを止めてください!!
止めなければ条例違反として、武力行使も止むを得ませんッ!!』
「・・・勝手にするがいいさ・・・」
『そんな・・・』
パートナーから返って来た言葉は、余りにも残虐だった。
「とうとう・・・・・・動いたか」
騎士――線の細い白いシルエットに、銃身のとてつもなく長い銃を従える様は、まさにそういった感じがある。
その脇には、1人の男が佇んでいる。体に密着するようにフィットした白のスーツを、これでもかと言わんばからに広げる上半身。下半身には更にがっしりとしたイメージを持たせる、分厚い茶色のズボンを履いている。髪は短めだが、軍人刈り−とでも言うべきか−をしばらく放っておいたような感じである。
更にこの男に特筆すべきモノは・・・バイザーである。
目の周りを真っ黒なバイザーが包んでおり、辺りの景色が見える事叶わないように見える。
「スカーよ・・・何故、お前はこのカラミティ・チャイルドと行動を共にするのだ・・・」
かねてからの疑問を漏らし、老いたる巨漢は自らの体とは違う、滑らかな機体のコックピットへと歩む。
ガシャン ガシャッ ガシャン ガシャッ
エネルギーが回復するまでの間、カイはステップを続ける。
回復すればまたOB発動、と目指すは集光施設――と。
「・・・」
レーダー後方に赤い点が3――いや、5つ。
反応からしてACでもMTでも無い。
追いつく為の航空兵器だろう。
しかし、ACと戦わせるには余りにも数が少ない。
ガヒュッ ガヒュガヒュッ
射程内に入った瞬間、カイの持つエネルギーライフルによりヘリは爆砕した。
「・・・指令! この施設へ向かうAC反応感知! 識別は敵です!」
「クレストからの刺客か!」
視察していたオペレータの声に、指令が焦った声を漏らす。
「――いいえ、違います! 後方からグローバルコーテックスのMT、輸送機反応感知!
こちらは味方の識別を出しています」
「ならば・・・単独・・・!?
そんなはずはッ・・・! オペレーター! 守備隊と防衛依頼を出したACを出撃させろ! グローバルの部隊に挟撃すると伝えろ!!」
「了解!」
「ふん・・・針鼠めが・・・!」
施設からわらわらと流れ出たMTの部隊を、カイは真っ向から斬り捨てる。
『レイヴン、もう止めてください! 今ならまだ間に合います!!』
「何に間に合う? 俺がグローバルコーテックスに登録された時で、既に間に合っていなかったんだ・・・!
元から、こうしていれば良かったんだよッ!!」
レーザーライフルで目の前のMTを破壊し、そのまま上昇。
上空からエネルギーの雨を降らす。
『なッ・・・!?』
『うわぁぁ!!』
『や、やめろっ・・・!』
外部マイクの拾う声を聞きながら、カイの口元が自然と歪む。
「群がらなければ何もできない雑魚共が・・・!」
吠えてレーザ−を施設へ撃ち込む。同時に響く悲鳴が、彼の攻撃をより凶悪化させる。
後方から飛来する輸送機には、エネルギーの消費を考えてロケットで迎撃する。
グローバルの航空隊の奴らは、何もできずに破壊されるのだ。さぞかし悔しい事だろう。
その様を思い浮かべると、それが更に彼を刺激する。
ガシャン
真下に居たMTに飛び乗ると、そのままHALBERDで真っ二つにおろし、隣に佇むMTに体当たりを――
「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」
しばしの時間がたち、カイが辺りを見回す頃には、動くMTや航空戦力は見当たらなかった。
『レイ・・・ヴン・・・』
「・・・」
呆然としたエマの声を耳で捕らえると、深呼吸をして息を整える。
「・・・・・・居るんだろ? 出て来い・・・ブレイブハート・・・!」
『わかるんだ? どうしてわかったのかナ?
ボクがここに居るって・・・』
ガシャッ
MTの残骸を踏みつけて、深紅の機体が姿を現す。
円筒形の頭部、無駄な装甲を削り落とし、機動戦だけを想定したかのような細すぎるフォルム。それとは不釣合いのラッパ銃と、小さな幅の、逆三角形のような物が左腕に張り付いており、バックユニットは追加ブースターだ。
『ヴァーナルフラワー!? なんで今頃・・・レーダーにも反応は・・・!』
『どーだっていいでしょ、そんなコト・・・それにボクは、ブレイブハートだよ・・・』
エマの言葉に投げやりに返すブレイブハート。
ステルス――彼女の機体にはそれが装備されておらず、明らかにその機体自体がECMを発生させているとしか思えない。
実際、カイが気付いたのはレーダーに映る施設の反応が点滅したりしたからだ。
通常のECMメーカーなどは、レーダーに異常を残す事なく干渉する事ができるのだが・・・そう考えると安物のようだ。
彼自体、このECMを見るのが初めてだという訳では無いので気付けたのだ。
エンブレムには円を共有した、燃え上がる炎の中で♂♀のマークが紅で彩られている。
・・・これでは余り、相手の性別などの理解は乏しいだろう。声でわかるが。
「それで・・・カロンブライブを病院送りにした、久しぶりの実践はどうだった?」
『うん、楽しかったよ』
すでに弾丸を撃ち尽くしたXCMKをパージしながら聞くカイに、ブレイブハートは嬉しそうに答える。まず間違い無く、笑っているだろう。
「・・・次は、俺がお前を墓地に運んでやる」
『・・・君の[音]、凄くいいね・・・
ぞくぞくするよ・・・実力は別として、ね?』
「言っていろ」
言うと同時にブースターでブレイブハートのAC、ヴォルケイノCに突撃する。
『ブレードは、効かないよ』
ジャリィッ
不可解な音を残して、HALBERDがヴォルケイノCの左腕によって、弾き返される。
「シールド・・・!」
『キミのロケットには当たらないよ』
昂然と言い放つと、カイのロケットをあっさりとかわし、同時に血の色をしたOBを起動させる。
「!」
『――まだ直ってないんだ・・・キミのクセ』
ザギィッ
「ぐぅ!」
『レーダーには気を配らなくちゃね?
最も、キミのヘッドパーツじゃ高機動にはツいてけないよネ? ECMもついてるし』
左肩のロケットを切り裂かれ、小爆発が起こる。
ヴォルケイノCのパーツは明らかにオリジナルだ。盾でもあり、ブレードでもあるでのだら。
『ふふふ・・・』
「くっそ・・!」
爆発をものともせず、更に追撃を行うヴォルケイノCに、カイはドランクレイドのブースターを機動させて体当たりを行う。
「おおおッ!!」
『っ!』
ドガッ
さすがにこれは予想していなかったようで、ヴォルケイノCがバランスを崩して倒れ込む。
『紙みたいなACで、良くそんなマネできるネ?』
「お前も同じだろう!!」
ブースターで滑空しようとするヴォルケイノCの左足の関節部に、ドランクレイドの細い指を差し入れる。
そして、その左腕からブレードを発生、切断を試みる――が。
『・・・どーしたノ? それじゃあ穴も開かないよ・・・』
「・・・!」
紅い光が散るだけで、装甲には焦げ跡ひとつつかない。
『ボクのヴォルケイノは・・・ACじゃ無いんだよ?』
「ちぃッ!」
ヴォルケイノCから離れようとした刹那――
ドガンッ
短い轟音と共に。
メインモニターの光が消え、戦慄した。
弱い・・・どうしたのだろうか?
以前は、これよりも比べ物にならないくらい強かった。
エネルギーライフルの弾数が無いため――それはわかるが・・・過去、彼はイレギュラーナンバーとは言え、ブレード一本で自分を負けへと追いやったのだ。
あまり楽しませてもらえなかったが・・・これで終わりだ。
彼のACは今、頭部を破壊されている――。
「これでチェックメイトだネ?
少しだけだったけど、おもしろかったよ・・・前の方が楽しかったかナ?」
告げると、コアのコックピット間近へ幅の広い銃を向け――
ぶんっ
「・・・」
勘に頼ったのだろう――前方へと降られたブレードを、軽く後方に跳んでかわす。
「見苦しいね・・・そんなに生き延びたいの?」
『俺は・・・!』
「・・・」
『お前を倒す!!』
「レーダー無しで? 位置もわからずに?」
『レーダーなど、心休みに過ぎない・・・!』
ぷしゅーっ
蒸気音をはっすると、コアの搭乗口が開く。
「・・・へぇ・・・」
やっぱり。
彼はいい・・・。
カイは、コックピットブロックから見える、ブレイブハートのヴォルケイノCを睨む。
「エマ!」
『は、はい!?』
「お前がレーダーだ・・・ブレイブハートの機体が、側面・後方に回ったら位置を言え!」
『・・・・・・了解!』
少し間があったが、エマは承諾する。
「ブレイブハート・・・!
ゲームはここからだ!」
『・・・・・・楽しくなりそーだよ、本当に・・・』
ブレイブハートが、ラッパ銃をこちらに向ける。
ズドンッ
すぐさま弾丸が飛来するが、当たる訳にはいかない。
ブーストを起動させて避けると、OBを起動させる。
『・・・いいのかナ? 突っ込んで来て・・・!』
ドンッ
諸に空気の衝撃がカイを襲うが、そんな事は気にしてはいられない。
ブレイブハートの機体も、ブレードを起動させて構える。
『ソコだね・・?』
しゅっ
風を斬る音――OB発動時でもそんな感じがする程、ブレイブハートの狙いは的確だった。
――そこにドランクレイドが居れば。
『・・・へぇ』
「くらえ・・・!」
ブレイブハートの右に回りこんだカイは、すぐさまブレードを一閃させる。左の方がブレードを振ったモーションが続いている為、隙があったのだが、危険な飛び道具を潰すに他は無いと判断したのだ。
ズギャッ
「!」
動けないと判断した相手ACが視界から消え失せる。
「――エマ!!」
『左です!!』
エマの声と共に――再びブレードを振るう。
ジャギャッ
『!』
鋼を焦がす臭いと音を残して、ラッパ銃の銃身がざっくりと斬り落とされる。
『やるネ・・・』
ヴォルケイノCが銃を投げ捨てると同時に、銃が爆発を起す。
『ホントはもっとオモシロイ機能がついてたんだよ・・・?
見せる前に壊されちゃったケド・・・』
「俺が面白いと思うのは――」
ガシュン
ドランクレイドの右肩ロケットをパージ。ブレードは振りなれているから、当てれる可能性はあるものの、ロケットの標準も無い状態で当てる事は叶わない。
「お前の絶叫を・・・・・・・・・聞いた時だけだッッ!!!」
声の限りに叫ぶと、ドランクレイドを走らせる。
『いいね・・・』
ギムッ
エメラルドのブレードと紅いブレードが真っ向からぶつかり合い、相殺しあってエネルギーを散らす。
『ボクも、キミの絶望の声が・・・聞きたかったんだよ!!』
「ぐっ・・・!」
いつもの気だるそうな声とは一変した大声に強調するかの様に、ブレードの輝きが激しさを増し、HALBERDを吹き散らしてゆく。
「ちぃ!」
さすがにカイも後退してその場をしのぐが、ヴォルケイノCは追いすがる。
ギャンッ ギンッ
ブレードが触れ合う度に耳障りな音をたて、更なるブレード戦が始まる。
ヴォルケイノCが斬り払い、それをドランクレイドが後方へブースト回避。追いすがるヴォルケイノCを迎撃しつつ回り込み、一撃を加えようとするも、ヴォルケイノCが先に回りこんでいる。異常に攻撃モーションが短い。
対するドランクレイドは攻撃モーションは普通の速さであり、紙一重でヴォルケイノC
攻撃をかわすなどしてカイの方圧倒的に不利である。回り込まれればエマから言葉を聞かなければならない為、その分タイムラグがある。
もし無視しようものなら、運がない限りは切り刻まれている。
(どう見ても、勝てる戦いでは無いと・・・!?)
そんなはずは無い。
昔は勝てたのだ、昔は・・・。
(・・・なら)
何故勝てたのか?
その時の勝因とは?
カイはあの時、ヴォルケイノCを始終圧倒していたように思える。
しかし、現実には違うだろう。幼い頃の記憶が、過大評価されて残っているのだ。
・・・良く考えてみれば、ヴォルケイノCにはブレードは効かなかった。
攻撃する手段が無い――はずなのに、昔の自分は勝っていた。確かに、ブレード一本で・・・。
(・・・考えろ。落ち着け――そして思い出すんだ)
例え・・・ブレードリミッターを解除しても、奇襲にはなるだろうが相手の防御力を超えなければならない。しかし、その一太刀で勝負がつかなければ、ブレードを失った自分が負ける事は目に見えている。
(発想を変えるんだ・・・)
プラスの考慮としては――
威力の増大。
レンジは飛躍的に上がる。
奇襲でもあるため、命中率も飛躍的に上がる――はずだ。1度、この手はヴァ−ナルフラワー相手に使用している。2人の記憶が共有されていると考えても不思議では無い。
そして、マイナスの考慮として。
ヴォルケイノCの盾の防御力だ。一刀両断にしない限り、この先戦うのは無理である。
同様にして――ヴォルケイノCのフレーム。リミッター解除のHALBERDで斬り破る事ができるのか? できなければ、終わり・・・だ。
違う・・・。
結局自分は、同じ事を考えているではないか!
発想を変えろ――どうやって?
フレイ・ディノクライド・・・奴と戦った時と変わりはしない。
絶望的だ。生存率がとてつもなく高いだけ、マシだと言えようが。
その時。
「・・・」
カイは視線の先に、破壊されたMTの残骸を見る。
(・・・・・・・・・・・・・・・使える、な?)
すぐさまカイは、手を通信機へ移した。
ズバッ
「・・・・・・何のマネ?」
問いともぼやきとも取れる言葉を紡ぐ。
真っ向から、至極正直に。
『・・・』
カイはその言葉には答えず、足元の残骸――全壊状態のMTをヴォルケイノCに投げつける。
結果は先程のように2枚におろされたが。
そのまま追撃するヴォルケイノCに向かって、足止めのようにひょいひょいMTを投げるカイのドランクレイド。
・・・ウザい。
この前のカロンブライブとの戦いと同じく、自らの意識が赤へと染まってゆく。
ただ単調に、MTの残骸を投げつけるACに対して。
ズガァン
突進しようと試みるが、MTに残っていた火薬のお陰で爆発・少量のダメージを受けてしまう。
「・・・」
ザンッ
仕方なくブレードで斬り落とす。微量也と言えど、まだまだ残骸は残っている。無理矢理ドランクレイドの元へ突進すれば、ダメージの問題は甚大になるだろう。
バランサーがいかれて、動きが遅くなるかもしれないのだ。
とは言え――
ウザい。
とにかくウザい。
ひたすら投げて後方へとステップするドランクレイド。
イタチごっこだ。切りが無い・・・このまま逃げるつもりか?
・・・そんなハズは無い。
いくら追い詰められた者でも、仮にもレイヴン――そんな愚かな真似はしないだろう。
例えそうであったとしても、残骸の消える荒野での戦闘の結果は、火を見るよりあきらかだ。
「・・・ナニを狙ってるノかナ?
教えてごらんヨ」
言い終わって。
妙に自分の言葉がたどたどしい事に気がついた。
「エマ・・・! まだなのか!?」
『急かさないでください! 例え構造を教えてもらったとしても、これでは時間がかかります!』
「くそ・・・まだ鬼ごっこを続けるのか・・・!」
『お、おに・・・?』
「気にするな! 作業を続けろ!」
『了解・・・!』
カイの言葉にエマが答える。
作業――それは、グローバルコーテックスに通じるシステム回路からの遠隔操作である。
ドランクレイドの左腕には、カイ手製のリミッター解除のシステムが組み込まれている。
まさに一撃必殺であり、エネルギーパックを使い果たすか、そのブレードの耐久力を超えて破損するかの2つに1つであるが、代償として得られる攻撃能力とブレード範囲が非常に高い。
勿論、かわされれば終わり、であるが。
その欠点を最初に上げられたのがフレイ・ディノクライドの駆る人型機動兵器だったのだ。
そしてそれを補う為に、ドランクレイドの右腕にもその機能を追加。しかし――
プラズマライフル等であれば話は別だが、カイの装備していたエネルギー兵器は直接手で持つトリガー式。プラズマライフルとは違って腕に装備する物では無いし、これも当たり前だが、カイは右腕に組み込まれた配線の蓋を開いている訳でもない。
つまり――遠隔操作によってその蓋を開く炸裂ボルトを起動させ、叩きつけるなりなんなりでXCMKの外装を外し、エネルギー回路の配線を繋げようという事だ。
・・・かなり無茶である。
(ライフルはあくまで前菜・・・! 勝つにはこれしか無い!!)
とにかく時間稼ぎの為に、次々とMTの足やら胴やらを掴んでは放り投げる。
ドランクレイドはカイの経験上、あらゆる任務をこなさせる為に指先の動きを、異様と思える程増やしている。お陰で、殆ど人間と同じ動きが可能である。MTを捕まえる事などは序の口だ。
しかし――さすがに見切られ始める。
1つかわされ、2つかわされ・・・しかし、物量によって斬り払うしかない場面もあり、その度に動きを止める。
「エマ! もう保たんぞ・・・急げ!!」
『・・・カウント、入ります!』
「とっととやれ!」
『分かってます! 5・・・3・・・レイヴン!』
エマの声が響いた直後、深紅の色が視界に広がる。
「――!」
『なにしたかったのかは知らないケド・・・間に合わなかったよーだネ?』
ブレイブハートの呟きと共にエメラルドの光が――
ジャギュィ
「くっ!」
『さすがだねェ・・・・・・このタイミングでブレードが使えるなんテ・・・』
「邪魔なんだ・・・よッ!」
唸ってヴォルケイノCのブレードを弾き返す。
そのままブースターで後方へ引き下がると、ドランクレイドの左手でXCMKを掴む。
『――パージ!』
バシュン
大きな火花が飛び、右腕部の外装が剥がれる。
『ナニするつもり・・・!!』
「邪魔だと言った!!」
斬りかかろうとするブレイブハートのヴォルケイノCに、ブレードで先手を打ってシールドを発動させて動きを止める。
「退け・・・!」
動きの止まったヴォルケイノCに回し蹴り−単に足を前に突き出した状態での、ブースト旋回である−を当ててバランスを崩すと、そのまま突進して距離を開かせる。
(――動きが鈍っている・・・・・?
今なら!!)
『ううう・・・!』
ブレイブハートが体勢を立て直す隙をついて、外装の取り外しを行ったXCMKを左手の配線に繋げる。
「・・・・・・・・・・勝負!」
チャンスは1度。
放射し続ければかわされても当てられるかも知れないが、その間にXCMKが耐え切れずに破損する可能性もある。
『なにヲ――!?』
「堕ちろ・・・・・・!!」
無理矢理装備させている為、左腕で支えつつトリガーを引く。
プラズマ・レーザー・パルスライフルは、基本的にエネルギーを生成し、それを放つ事によって敵にダメージを与える。しかし、それには弾数がある。――エネルギーを保護する膜の数である。
何故ならエネルギーを高密度に集中させるだけでは、拡散されて完全に虚空へ消えてしまうからである。
エネルギーを生成しようがなんだろうが、それを包むモノがなければ意味が無い。
しかし、それをクリアする為にやる事があるとすれば・・・とにかく、エネルギーの持続時間を上げ、エネルギーそのものを発射するのである。
しかし――これはあくまでカイ個人の考慮であり、それが当たっているかどうか分からない。すぐに爆発するかもしれないし、エネルギーが上手く照射できるかもわからないのだ。
――賭けだったのだ。成功するかどうかの。
そして、カイはその賭けに勝った。
ズ度オオオオオオオオオオォオォオォォォォォォッッ
『!!』
並々ならぬエネルギーの奔流が、ヴォルケイノCを包み込む。
シュババババッ
大気を焦がす電流の音が、墓所となった基地に響く――。
システム起動
目標 ミラージュ集光施設
動ク物 反応ガ有ル物 全機排除
目標――2機ノAC――
「・・・シールドか!」
『マ・・・だだよ、ボクは・・・・・・・・コんな場所で、キミなンかニ!!』
機械的――そうイメージするような声である。
(精神が乱れてる・・・!?)
『まだやられる訳には、・・・・・・イかナイ!!
ここで・・・・・・こんな場所デ!!』
「だが・・・俺はお前を殺す!!
終わらせてやるぞ・・・・・・・!! ブレイブハート!!」
エネルギーの奔流を射出したまま、ヴォルケイノCに投げつける。今だエネルギーが銃内に残っており、それでヴォルケイノCの動きを止めるためだ。
「エマ!」
『了解!』
力強く答えたエマが、いまだエネルギーを放出しているドランクレイドの右腕のシステムを強制的に切り替え、配線を切る。
そして――
ヴウゥゥン
「おおおおおおおおおッッ!!」
リミッターを解除した唸りをあげて、巨大化する。
『・・・っ!!』
ジャギャギャッ
相変わらず嫌な音をたてて、ヴォルケイノCのシールドとぶつかり合う。
ぎりぎり防御に間に合ったのだ。
(――いけ・・・!)
じりじりと。
ドランクレイドの長大な赤い刃が、ヴォルケイノCのシールドを押し付ける。
「斬り裂けぇ!!」
ザンッ
『ッアアァ!!』
ブレイブハートの口から漏れた短い悲鳴が、外部マイクを伝ってこちらにも聞こえる。
「まだまだッッ!!」
『くぅゥぅぅ・・・・!』
唸りを上げると、ヴォルケイノCは上昇、ドランクレイドの刃をかわす。
『そんなアブないモのなんカ・・・子供が振り回スものじャないよぉぉ!!』
ドガァッ
「うぁっ!」
ドランクレイドの両肩に飛び乗り、そのままブースターで押し倒して動きを止める。
エネルギーが・・・切れる。
「! くっ・・・」
『・・・キけンな剣は・・・消えたのカナ?』
ブレイブハートの言葉に、カイは返す言葉を失くす。
終わった――
コックピットに伸びるヴォルケイノCの右手を見て、はっきりと意識する。
握り潰すつもりだ。
ブースターを使おうにも、エネルギーを使い果たしているのだから、無理な事だ。
『レイヴン!!』
エマの声さえ遠くで聞こえる。
そして、虚空に浮かぶ赤い光――
光?
思って自問する。
そんなもの、あるはずは無いのに・・・。
だがしかし、動きの止まったカイにはその光がゆっくりと降りてくるように見えた。
ゆっくりと――
「・・・・・・・・・あれは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・照準!!?!」
『・・・!』
カイの叫びに、ヴォルケイノCが首を巡らせる。
赤い光が、地面に落ちる。
シュバアアアアッ
『!!!』
元々軽かったACが武器を外して更に軽くなったのだ。
すぐ後ろで起きた爆発によって、まさに軽々と吹き飛ばされる。
「うあああああああ!!!」
かなりの熱量が放出され、それをまともに受けたカイは絶叫する。
咄嗟に両腕で庇ったおかげもあり、焼けたのは腕だけで済んだ。
『衛生砲・・・!! ここもサイレントラインの領域内だったと言うの!?
そんなハズは・・・!!』
「あろうがなかろうが、実際ここにあるんだ! これを利用せずして終われるか!!」
『利用!?』
「これに、あいつを――ブレイブハートを放り込む!!」
エマの訝しげな言葉に、カイは叫んだ。
修正プログラム 起動
目標トノ角度 3,14ニ切リ替エ
目標 補足
排除 再開始
シュバババァッ
ガキッ
「ちぃ!」
『とっトと、終わっチゃいナよォ!!』
衛星砲の攻撃が降り注ぐ中、カイのドランクレイドとブレイブハートのヴォルケイノCが格闘戦−といっても、只のブーストパンチやキック、体当たりだが−を繰り広げている。
これで装甲を破損させるつもりであるのだが、幾ら時間があっても足りないだろう。
軽量型とは言え、形は変えてもすぐに破壊できる訳ではない。2人の狙いは只1つ――
衛星砲のエネルギーの中に、相手を入れる事。
これはブレイブハートにとって、カイを消滅させ今までの戦いを完全に終わらせる事になり、カイにとっては唯一の勝機なのだ。
ドガッ
「ぐうう・・・!」
両腕があるだけこちらが有利なのだが、衝撃も考慮に入れるのなら、こちらが不利だ。
相手も動きが鈍っているとは言え、こう何度も衝撃をうければダメになってしまう。
「お前を・・・! お前を殺すまで、俺は!!」
『うるさいよオ!!』
ガッ
ヴォルケイノCの右拳を、ドランクレイドの左手で捉える。
『!』
「――共に逝くのも趣きがあるじゃないか?
ブレイブハート・・・・・・!」
『まサか・・・!』
ヴォルケイノCを抱き寄せると、一路赤い照準の落ちる場所へとOBを起動させる。
『――ああああああああああああああッ!!!』
ガン ガンッ
ヴォルケイノCの右手が、ドランクレイドの背中を叩く。
それぐらいならば問題は無い――はずなのだが。
ボブァアアア
異様な音をたてて、機体バランスが崩れる。
「おあああああ!?」
ブレイブハートがドランクレイドから逃れ、地面がカイの目に急速に広がる。
ザガギャッ
激突と同時に地面を滑る。
さすがに衝撃に耐えられず、カイがコックピットブロックから放り出される。
「ぅぐッ!!」
ブラックアウト――
「・・・・・・・・・・・・・ふゥ」
小さな吐息をつく。
終わったのだ。
メインカメラに映っていたので確認は済ませてある。
コックピットから投げ出され、そのまま地面に激突・滑走。
明かに即死だ。
終わり――だ。
楽しい『音』を奏で、自分に奏でられたくない楽器は――完全に終わったのだ。
「長かったヨ・・今マでで一番付キ合いが長カったネ・・・」
どっと疲労感が押し寄せる。
未だ、衛星は動き続けているようで、まだ反応のある。
ドランクレイドに照準光が伸びてゆく。
あのカラミティ・チャイルドの死体を弔う為に。
少し距離があるが、充分焼かれる範囲だ。
もう、どうでも良い事だ。
どうでも――
ヴォルケイノCを、後方へと向かせようとしたその瞬間。
「・・・?」
頭に声が響く。
キ ミ は ダ レ ?
キ ミ は ボ ク ボ ク は キ ミ
「――違う!」
ブレイブハートが目を見開く。
「こノ体はボクのだ! キミみたイな出来損ないじゃナい!!」
ブ レ イ ブ ハ ー ト
「呼ブな・・・話かケルなッ!」
キ ミ の す る 事 は そ れ で は な い は ず だ よ ?
「・・・・・!!」
ざああああ――
激しい、雨。
濡れて冷えた体の傍らに、1つだけ温もりを感じる部分がある。
その部分も徐々に冷たくなってゆく――。
自分は――走っている。
薄暗い市街の中を、走り回っている。
何処も彼処も火の海で、その行為に意味が無いと思いつつ――けれども縋る事が出来るのはそれだけであり、走り回っている。
建物を見つければ中に入り、人がいなければ道具を探し、それが無くてまた外へ出る。
それを、何度も何度も繰り返し、何度も何度も絶望する。
助けて
誰か
お願いだから
同じ言葉を何度も口から零し、周りの気温が上昇するにつれて、どんどん声もかすれて、呟きのようになる。
消え入りそうな気配も無い戦火の中で、ただただ歩き続ける。
雨を強く、激しく感じているのに火は消えない。
たまに破壊された工場から流れ出たタールに足をとられながら、ただひたすらに進む。
助けて
誰か
お願いだから
何度も呟いている内に、温もりが消えていく。
ただ――焦る。
どんなに頑張っても、なにも実らない悔しさ。
ただ眺める事しかできない無力の自分――
力が欲しかった。
何者にも流されず。
何者にも掻き消す事の出来ない力が。
そして――
彼の腕に眠っていた少女の体から、完全に温もりが消えた。
少年は。
絶叫した。
「・・・・・・・・・・・・・」
目を開く。
(・・・・・・・・・・・・生きている、のか・・・・・・・・・)
自分の状態を意識するよりも早く、その言葉が心に浮かぶ。
意識がはっきりし始めると、どろどろとした感触や、激しい嘔吐感と痛みに見舞われる。
「ぐぅうぅ・・・あッ・・・が・・・・!!」
大分擦り切れた腕で胸を押さえる。
肋骨の3、4本は軽く折れているだろう。
ブレイブハートは何処に――!?
痛みを堪えて見回すと。
居た。こちらを眺めるようにして佇んでいる。
『ホラ・・・・・・無事ダッタデショ、ぶれいぶはーと・・・』
カクカクとした声がスピーカーから漏れ。
『違ウ・・・コノ体ハボクノ、ダヨキミナンカノジャ、ナイ!』
それに反発するように同じ声が流れる。先程の声よりも、一層機械的だったが・・・感情の流れがわかる。
ブレイブハート、お前は・・・?
喋ろうとして、変わりに血の塊を吐き出す。
痛みも、何も感じずに血を吐いたのだ。体の状態が良くわかる――。
『かい・・・彼方ニハ謝リマス。
例エ、ドレダケ償ッテモ償キレナイ罪デショウガ、私ハ・・・・・・私タチハそれを背負イマス。ドウカ、忘レナイデクダサイ。彼方ニハ・・・』
『ボクハ、コンナ所ジャ終ワラナイ・・・』
恨めしそうなブレイブハートの言葉。
・・・ならば、あと1つの声は?
――決まっている。考えるまでも無い。
『キミハ勇敢ナコデショウ? ダッタラ、大丈夫ダカラ・・・光ノ中ニ・・・』
『違ウ・・・ボクハ・・・』
「・・・!」
佇むヴォルケイノCの頭上に、赤い光が接近する。
やめろ――
これは、俺の望む形では無い――
俺の望む終焉の形では――
これだけは、自らの手で幕を下ろさなくてはならないのだから――
だから――
「や・・・・・・め・・・・・・・・・」
しかし、自らの意識に反して、かすれた風が喉から漏れるだけ。
『ボクハ・・・・・・』
『ぶれいぶはーと・・・キミハ、美シイ音ノ中ニハイレルンダヨ』
そして――
光がヴォルケイノCを包み込んだ。
ピッ
「・・・・・・・・・・・・エマ」
『レイヴン!?』
間を空けて呟いた言葉は、更に大きな声によって返される。
『生きて――生きていたんですね!?』
「ああ・・・・・・・・・」
精力の無い声で、カイが答える。
『レイヴン、すぐに救護班をそちらへ回します。もう少しこらえて――』
「・・・・・・無駄だ」
『え・・・?』
カイの言葉に、エマが呆然とした声を上げる。
「無駄だよ・・・・・俺は、もう・・・」
『そんな・・・! だって、レイヴンは・・・!!』
そう――カイの言葉を聞いただけでは、無駄だとわからない。
声がかすれ、生気の無いような、という以外は問題と見られるような声では無い。
「無駄なんだよ・・・・・・・・・例え癒されても、ミラージュが俺を殺す・・・・・・。
俺のやる事はもう終わった・・・どんなに足掻こうが、それだけは――」
ズガンッ
銃声。
「・・・あ・・・・・・?」
呆然と、自らの胸部に視線を移す――穴が穿たれていた。
巨大な穴が。
ごふっ
もう、吐けないとまで思っていた血反吐を吐く。
『レ、レイヴン・・・? レイヴン!!』
「・・・・・・・・・・・・・・・す・・・まな、い・・・・・・・アメリア・・・・・・・・・俺は・・・・・・・・」
そのまま――ゆっくりと、体が倒れる。
『レイヴン!!!』
エマの声は聞こえなかった――はずなのに、その声が聞こえたような気がした。
――お前は、頑張り過ぎたんだよ
誰かが、言った。
――なんで何もかも1人で背負うんだッ!! 俺達は、仲間だったんじゃ無かったのか!?
その言葉には、聞き覚えがある。
思い出せない――しかし、この声の持ち主には――この少年、自分と同期の彼にはなにかを託したはずだ。
思い出せない、何も・・・。
ただ、視界が急速に暗くなる。
眠い――とてつも無く。
先程、自分はなにを言おうとしていたのだろうか。
そして、思い出す。謝罪の言葉を。
な に も し て や れ な く て す ま な か っ た
数時間後、ミラージュより派遣された部隊が、集光施設跡に、1機のACを発見。
直ちに周りを囲むが、そこにあるべきレイヴンの姿は無かった。
数日後。
ミラージュの管理局はそのACから戦闘記録の残ったデータを入手。
それには、施設に居たはずのACとの戦闘記録、そして――
白いACとも何ともつかない、白い機体が映っていた。
更に数日。
グローバルコーテックスから、カイ・カツラギの名は永久免除、そのオペレーターであったエマ・シーンにも「レイヴンへの抑制能力が足りない」という理由で、オペレーターの仕事を解任される。
人とは、いつでも身勝手なモノであり、そうなるように造られている。
神とは、それらをより良い方向へ導くために、もしくはそれらを罰するためにだけに。
存在する。
そう。
まさにその為だけに。
神は存在し、
人はそれを崇める。
ならば・・・この薄暗い天は?
迷宮の檻。
永劫に続く刻の流れの中で。
我々を完全に束縛する、
自由と言う名の、
檻。
ならば・・・この汚れた海は?
生命の起源。
薄汚れた、我等と。
完全に同一なる色を持つ、
罪深き起源。
ならば・・・この鋼鉄の檻は?
汝が操る棺桶なり。
死と言う名の。
偽の力を与え、自由を与える唯一絶対の存在。
ならば・・・この月光の帯は?
汝等を包む、生のヴェール。
そして、死に逝く者を見舞う、残忍なる女神の衣。
この地上に、この世界に、この星々に。
死に逝く者に手を、
差し伸べる者等いない。
Game over.
後書
???「くっくっくっく・・・はぁーっはっはっはっはっはっはっは!!
遂に!! 遂にこの俺様の時代が来るのだあああああ!!
はーハッハッハっはっはっはっはっはっはっは!!!」
・・・なんじゃあいつ;;
それはともかく、どーも安威沢です。
当初の予定をズレまくって書き上げた結果。
なぜか3部構成になっちゃたんですよねーこれが。いきなり;
まぁ・・・作者の人生にもヤキが回ってきたと言う事ですなw( ̄― ̄)y――」~~
・・・元々ヤキの回りまくった15年近くの人生ですが。
そんな事はどうでも良いので置いときましょう。
作者のやってみたかった予告ッ!
カメラマンさん、キュー!!(ナニ
次回作予告
地下世界 レイヤード。
管理者からの電力補給が不可能になった人類は、新たなレイヤードへと作り変えた。
そのレイヤードで、再び戦火が広がる数日前。
元リターナーのメンバーであったクレオ・マキシマは、予てからの親友から託されたアメリアと同棲している。
親友からの仕送りと、クレオの金稼ぎにより、さほど貧しくはなかった2人だったが、収入源の1つである、仕送りがある日を境に途切れる。
不振に思ったクレオは何かあったのだと踏み、地上に出る事を決意し始める。
そして、広がりし戦禍の渦の中心へと。
彼は追い立てられる・・・。
えー・・・
大変失礼な程つまらない予告でした。
とりあえず、次回作も頑張ります^^
???「とりあえず〜・・・?
俺様主演の物語にとりあえずなんていらねえ!! 超大作にしろ!!」
そんな無茶な・・・これだからトーシロは・・・・・・!?
ちょ、ちょいマテちみぃ、それは、あの、ほら、あれだあれ! 言葉のあやと言うもので・・・
???「問答無用、手加減無用!!!」
いやぁそれはちょっとってマテこら・・・・・・・・・・・・!!
ヒィいいいいぃぃいぃいいぃいいいぃ・・・・・・・・・・・・
終了。
作者:安威沢さん