SILENTLINE EPISODE 14 〜傾く世界〜
Part.1 〜屋上の大決戦〜
ある夜の事だった。
此所、反ミラージュ武装勢力「F.H.(フライングハーツ)」の棲処となっていた新居
住区のとあるニュータウンの新造マンション。このニュータウンの一角にある公園で、
武装犯の生き残りが集まって来ていた。此所に入る武装犯は、全部で13人ぐらいに
なっていて、残った勢力は全部壊滅させられてしまっていた。
「なあ、おい」
「えっ?」
「近頃、どうもグローバルコーテックスやミラージュがのさばって仕事し難いなあ」
「全くだ・・」
「ついこないだも、ザックスとゼルフの2人がやられたって話だ」
「レイヴンで、実力のある奴だったがなあ」
「何でもミラージュは、コンピューターや無人兵器とかを使って、俺達の事を探し出
すらしいぜ。それに、傭兵組織『グローバルコーテックス』と繋がっているらしいし・
・・」
「困ったものだなあ・・」
「うーむ」
「物騒で生薑ねぇから、俺は山に隠って生活しようと思ってるんだが」
「俺も・・新居住区を捨てて何処かの街へ身を隠そうと思っている」
「山に隠って、街へ身を隠してどうする?」
「イモでも作って暮らそうかと思ってるんだがよ」
「俺は何処かの整備業で働いて暮らそうかと思ってよ・・」
「やり切れねえなあ・・(全)」
と、そのとき。
シュッ、と闇を切り裂いて何かが飛んで来た。するとそれは、武装犯の1人の顔にあ
たって、大量の赤い何かを垂らした。
「えっ?」
「ウワーッ、血だーッ!」
「落ち着け、これはトマトケチャップだ」
「ウワーーーーーーーッ!!」
「落ち着けとゆーに」
「動揺してるバヤイか!」
「つまらねー真似をしたのは何処の馬鹿だ!!」
すると、向こうのブランコから、赤いマントを纏った人影が現れた。
「手前か!!」
と、武装犯の1人がマシンガンを持ってそこへ脱兎のごとく走りより、トリガーを引
こうとした。その途端に赤マントの影はシュッ、とそいつの腕からマシンガンを毟り
取る。
「えっ・・」
武装犯の1人が驚く間もなく、赤マントはマシンガンの柄で、ゴン! とそいつの頭
を殴った。地面にバタリと倒れるそいつ。
「馬鹿が!」
赤マントの影はそう吐き捨てるように言うと、武装犯の集団へと向かっていく。丁度
その時、武装犯の集団は焚火を焚いていたから、その灯で赤マントが誰だか分かった。
「ああっ、あなたは!」
「南軍司令の、アリーナランカーD-1のスネイクチャーマー隊長!!」
この赤マントの男こそが、「スネイクチャーマー」。アリーナでは1、2を争う残酷
なレイヴンで、眼前の敵が苦しむのを至福の喜びとし、嫌悪感を持たされている人間
を作っているが、その実力は本物。彼の力は止められず、彼によって作られた犠牲者
は増える一方である。両手に火炎放射器、肩にロケット、リニアガンを装備した4脚
AC「コブラワインド」を駆る。オルキス集光施設を襲撃した頃に何処かに身を隠し
て、修行を積んで戻って来たようだ。
「数年前の敗走から、修行を積んで再び戻って来てみりゃあ、いい若い者の同志達が
集まっていて・・なんてだらしねー話をしてやがるんだ」
「へえ・・」
「酒はあるか」
「はい・・先程、食糧保存庫にあったブランデーなら」
「ブランデーとはオーソドックスなモン飲んでんじゃねえか」
スネイクチャーマーは差し出されたブランデーを受け取ると、栓を開けてラッパ飲み
の要領で、ブランデーを飲み干した。
「プハーッ・・甘露甘露」
スネイクチャーマーは一息つくと、
「・・で? 聞くともなく聞いてたらミラージュが怖いから山やどっかの街に籠った
り、隠れたりして暮らすって?」
「はあ・・・(全)」
「ケッ! 打らしのねえ、俺達が東と西を攻撃した頃、彼奴等と丁々発止とやり合っ
たもんだ」
?長が東と西を攻撃した頃とは違うんで・・」
「今じゃ、技術力、科学力、無人兵器という3つの武器を駆使して強力になってるん
でさぁ・・」
「技術だろうが科学だろうが無人兵器だろうがなんだか知らねえが・・、そんなもの
に怖気ついてどうするんでぃ」
そう言うと、スネイクチャーマーはもう一本差し出されたブランデーを半分飲んだ。
「隊長、どうなさるんでさぁ!?」
「まあ少し落ち着け。俺にいい考えがある」
それから一週間が立った頃・・
全レイヴンに、こんな依頼メールが届いた。
「Re:ミラージュ本社ビル防衛
依頼主:ミラージュ
成功報酬:45000c
緊急事態です。
クレストの機動部隊が、我が社の本社ビルに襲撃を仕掛けて来ました。恐く目的は
我が社の本社ビルの制圧が目的だと思われています。この屋上に飛来するクレスト
の
機動部隊の撃滅をお願いします。また、機動部隊の中には、工作員を乗せた戦闘ヘ
リが 数機確認されています。おそらく前者は威圧、後者は工作員をビルに進入させ
るつもり なのでしょう。工作員の進入を許す訳には参りません、1機残らず撃破し、
工作員の進 入を防いで下さい」
恐く、クレストは邪魔なミラージュを制圧せんがために、機動部隊をミラージュの本
拠地に送り込むつもりなのだろう。いよいよ、大規模な制圧作戦に乗り出すつもりだ。
この作戦に選ばれたのが、アリーナで1、2の強さを争うこの2人。「覇王」と呼ば
れている「ジノーヴィー」と「鋼鉄の戦神」の「MxS7HGS」だ。
ジノーヴィーはA-1のメビウスリングと親仲で、グレネードキャノンの扱いには、右
に出る者がいないと噂されている。さらに、管理者がいた時代では、エースとBBの
2人を打ち負かし、頂点にたったという経歴がある。
そしてMxS7HGSは、大量に積み込んだ威力の高い武器を装備させたタンクAC
「アイアンLーOW75」を駆使し、タンクの扱いには、ジノーヴィーのグレネード
キャノンの扱い同様、右に出る者がいないと噂されている。ロイヤルミストやワルキ
ューレと言った猛者達と渡り合った経験もある。
「こう見えても、私は数々の強敵と渡り合った経験があるのです。エース、BB、ファ
ンファーレ、ストラング、グランドチーフ・・・その他大勢エトセトラ。おまけにM
xS7HGSという強力なパートナーも入る事ですし」
グローバルコーテックス・応接室にて。ジノーヴィーは依頼主のミラージュ代表者を
捲し立てる。
「へっ・・俺に頼り過ぎんじゃねえぞ」
MxS7HGSはにやりと笑う。これを見て、ミラージュ代表者は腹の中で、(今ま
での依頼したレイヴン達は殆どダメだったが、今度のは頼りになりそうだ)と踏んだ。
「で? クレストの機動部隊は今夜何時頃に此所へ到着する予定なんです?」
「はい、これこれこうこうで・・」
代表者はジノーヴィーとMxS7HGSに説明した。その後で、敵の機動部隊は今夜
10時頃にこのビルへ到着する予定だ、と話した。そして、2人は作戦内容と敵部隊
の襲撃計画を飲み込むと、早速ACに乗り込んでビルの屋上で敵が来るのを待つ事に
した。
バコ、バコ、バコ、バコ、バコ・・・・
バコ、バコ、バコ、バコ、バコ・・・・
「今頃ミラージュの依頼メールにつられて雇われた腕利きのレイヴンが待ち構えてい
るだろう」
「こうしてそいつ等を片付ければ、後は雑魚だ。俺達も活躍しやすくなるってモンよ」
「今度は、いざと言う時の隠し玉にも働いてもらうぜよ」
バコ、バコ、バコ、バコ、バコ・・・・
バコ、バコ、バコ、バコ、バコ・・・・
「敵航空部隊の接近を確認しました、全機撃墜して下さい」
屋上で張り込んでいたジノーヴィーとMxS7HGSの2人に、ミラージュオペレー
タの指示が走る。そして上空に、数え切れない程のトラーゲンが現れた。
「おお、待つまでもなく現れたぞ!」
ジノーヴィーが叫ぶ。その途端に、トラーゲンの大軍は蜂の巣を突いたように、一斉
に攻撃して来た。
「トラーゲンは私が引き付ける! 君はその隙に戦闘ヘリを撃ち落とせ! 着陸され
た場合は今すぐに破壊だ!」
「まっかせーなさーい!」
2人は二手に別れて攻撃する事にした。ジノーヴィーはトラーゲンを引き付けて、M
xS7HGSは戦闘ヘリの撃墜役に回った。
「さあ、かかってこい、雑魚ども。私との決定的な差と言うものを、教えてやる!!」
ジノーヴィーはトリガーを握る。そして、上空に飛び上がって、ライフルを連射する。
動きの早いトラーゲンたちを相手に、バッタ、バッタと撃ち落とす。
それを今の内にと、工作員を乗せた戦闘ヘリが上空からヘリポートの一つに降りて来
た。
バッ、バッ、バッ、バッ・・・
「敵は囮に引っ掛かった! 計画通りだ!」
ヘリの操縦士が樮笑んでいて、いざ着陸、となった時に、いきなりフロントガラスの
前を何かの銃口がガチリ、と突き付けられた。
「え・・・」
バシュゥゥゥゥゥン!!
ドッゴォォォ・・・
その銃口とは、MxS7HGSの駆る、アイアンLーOW75の右腕武器・・・
「MWG-KARASAWA」の銃口だった。トリガーが引かれた途端に青い光の塊が飛び、戦闘
ヘリを乗っていた操縦士、工作員達諸共吹き飛ばした。
「俺から逃れて無事にビルへ進入しようと思っていたのか、己惚れるな、雑魚が!」
MxS7HGSはヘリの残骸を見て毒づく。そして次なる新手の戦闘ヘリの相手をし
ようと、離れていく。
「さて、次のお客さんは何処だ、ああ? 俺を退屈させんじゃねぇーぞ、ンン?」
やがてそうこうしているうちに、戦闘ヘリの部隊が全滅。ミラージュオペレータの通
信が入る。
「敵の部隊が撤退を始めました、作戦成功です」
通信が入った途端・・・
バコ・バコ・バコ・バコ・バコ・バコ・・・・
上空を2体の輸送ヘリ「クランウェル」が飛んで来た。
「輸送ヘリだと?」
MxS7HGSが小火く。すると2機の輸送ヘリのハンガーにぶら下がっていた2機
の何かが、ガパッ、と音を立ててジノーヴィーとMxS7HGSのいる屋上へ落ちて
来た。
「何だ、こいつは!!」
MxS7HGSが叫ぶ。
「識別信号なし・・・これは!!」
ジノーヴィーも叫ぶ。すると、その4体のACの1機が喋った。
「誰かがクレストの邪魔をしていたから、調べに来たら標的(ターゲット)が揃って
いるじゃねーか」
「お前達は何者だ!」
「こねーだ、てめえらに壊滅させられた武装集団「F.H.」の仲間の者よ」
「!!」
「F.H.・・・フライングハーツか!?」
ジノーヴィーとMxS7HGSは驚く。
「俺等の仲間達や親分たちは、俺達とお互いのためにてめえらとミラージュをブッ潰
そうとして、やられちまったんだ」
「今度は俺達が仲間のかたきを討つ番だ!!」
「俺等が今乗ってるこのACは、クレストが俺達の決起を聞いて、協力して作って下
さった物なんだ! そして、さっきの攻撃部隊のMTもだ。どんどんこの調子でもっ
と強くなって、ミラージュを目茶滅茶にしてやるぜ!!」
そう言った途端、その4体のACは襲い掛って来た。
1体は軽量2脚型で、肩にレーダーとロケット、腕にライフルとブレードと言った武
装だ。もう1体は軽量逆関節型で、肩にレーダーとミサイル、腕にショットガンとブ
レードと言った武装だ。もう1体も軽量逆関節型で、両肩にチェーンガン、腕にマシ
ンガンとブレード、最後の1体は4脚型で、両肩にデュアルミサイルと、腕にマシン
ガンとブレードと言った武装だ。
「「「「うおらああああアアァァーーーー!!!!」」」」
叫び声を挙げて4機のACは襲い掛ってくる。
「くっ、集団戦法か!」
MxS7HGSがたじろぐ。だがジノーヴィーだけは、平然としている。
「あぁ、集団で来るのか。そんなモノを君達に出されればこちらも手加減できないが、
いいな?」
ジノーヴィーの言葉に、4機の武装集団ACはたじろぐ。
「え・・・」
その途端に、ドシュゥゥゥゥーーーーーン、という物凄い音が響いて、武装集団AC
の1機の2脚型は吹き飛ばされた。残骸となったその2脚型の拉げたコアと脚部らし
き部分が地面に倒れる。
「そんな・・一瞬だと・・・!?」
残った3機は驚く。だがさっきまでたじろいでいたMxS7HGSも、
「・・・はっ、あんなモノで俺達を倒そうとするたぁなぁ。さあクラッカーども、掛
かってきな! てめえらも、あの世のダチどものもとに送ってやるぜ」
と、勢いを取り戻した。すると、
「「「なにおう!!!!」」」
と、3機のF.H.ACは怒って襲い掛って来た。2機の逆関節が、ブレードを振り上げ
てジノーヴィーのデュアルフェイスに襲い掛かるが、ジノーヴィーはこれをガード。
ガチッ、という音が響いてデュアルフェイスのブレードから発せられるオレンジ色の
光が、
2機の逆関節のピンクと緑のブレードを弾き飛ばす。
「「!!」」
2人が驚いた途端に、2機の逆関節はジノーヴィーのブレードで叩っ斬られた。それ
は、伝説の騎士「オーディーン」の持つ、鋭い切れ味を持つ特殊な剣「斬鉄剣」また
は伝説の鋭い破壊力を持つ槍「グングニルの槍」みたいに、2機の逆関節は、1発で
両断された。
「F.H.とは、この程度か・・・つまらぬ・・・」
ジノーヴィーは、ブレードを、ブンッ! と唸らせる。
一方、最後のF.H.ACの4脚型は、圧倒的な耐久力を持つMxS7HGSのAC、ア
イアンLーOW75に苦戦していた。
「どうした、どうした! 4脚型でその程度か!」
「黙れ! これでもか!!」
MxS7HGSに挑発されて、カッとなった4脚型。ミサイルを撃ち込もうとしてト
リガーを引こうとしたが、その途端にアイアンLーOW75の「MWG-KARASAWA」を突
き付けられた。
「じゃあな」
MxS7HGSはそう言うと、カチッ、とトリガーを引いた。
バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!! ドッゴォォォ・・・・
青い光の矢が4脚型を貫いて大爆発を起こす。そして、爆発の後に脚だけになった4
脚型が、もうもうと煙を挙げて拉げている。すると・・
バコ、バコ、バコ、バコ、バコ、バコ・・・・
また、上空を1機のクランウェルが飛んで来た。
「今度は何だ?」
ジノーヴィーとMxS7HGSが首を傾げてみると、そのクランウェルのハンガーに
はもう2機のACが振ら下がっている。傾げてみた途端にクランウェルの機首の下が
チカッ、チカッと光って、そこから極細の黄色い閃光が放たれた。
「「おおっ!?」」
2人が驚いた途端、黄色い閃光はビルの屋上に溶け込む。その途端に地面が小さい爆
発を何度も起こし、終いに、バァァァァーーーーーーーーン!!! と大爆発を起こ
させた。
「「う、うわーーーーーーーー」」
2人のACの立っている地面が陥落して、ビルの内部へ落ち込む。
「敵ACを確認、ランカーAC、コブラワインドとウォーターハザードです」
ミラージュオペレータの通信が入る。
「目標を確認した、これより作戦を実行する・・・!!」
「敵ACに侵入されました!! 直ちに撃破して下さい!!」
「また、現れたか。まあ、どれだけ現れても雑魚は雑魚だ」
MxS7HGSは言う。すると、眼前に2体の敵ACが降りて来た。1機は赤い2脚
型で、実弾EOコア、肩にリニアガンと大型ロケット、両腕に火炎放射器と言った武
装で、もう1機は水色のフロート型で、肩にマルチミサイルと大型ミサイル、武器腕
ミサイルと言った武装だ。赤い2脚型がスネイクチャーマーの駆る「コブラワインド」
で、水色のフロート型がプロミネンスの駆る「ウォーターハザード」だ。
「またしても現れたか、ミラージュのレイヴンども。此所で会ったが100年目ーーー
、数年前の恨みを晴らしてやる」
スネイクチャーマーは恨めしそうに言う。
「ほう、それはどうかな?」
ジノーヴィーとMxS7HGSは各々の武器を唸らせて、強そうに見せる。それを見
たプロミネンスが弱音を吐く。
「あのぉぉぉ〜〜、というか今回の相手はすんごく強そうなんですけど・・・(それ
に弱点は・・・・ない。と言った感じがする)」
それを言われてスネイクチャーマーは・・
「・・・・・・・・」
と、数秒間黙っていたが・・・こう叫ぶ。
「ええ〜い!! 行くぞプロミネンス!!」
スネイクチャーマーとプロミネンスの機体は突撃して来た。するとMxS7HGSは、
「ハッハッハッハッ! そんな機体で勝負するつもりか、なめられたモンだ!」
と言うと、KARASAWAをチャキリと構えた。そしてジノーヴィーも、
「フン! 暴れるだけの獣は、私が狩ってやろう」
と、グレネードランチャーを構えた。
「オラァァァーーーーーーーーーーーー!!!!」
スネイクチャーマーのコブラワインドが、両腕の火炎放射器を連射して接近してくる。
「武装が貧弱なのに、何故接近してくるのか・・・バカの一つ覚えだな」
ジノーヴィーはそれに応じてグレネードランチャーを連射する。
ドシュゥゥゥン!! ドシュゥゥゥン!!
黒い火筒から吐き出される光の塊が、コブラワインドに何回か激突する。だが、
「こなくそーーっ!!」
スネイクチャーマーはそれでも突っ込んでくる。
「何!? 奴め、攻撃を気にせず突っ込んでくるのか!?」
ジノーヴィーが驚いた途端、デュアルフェイスとコブラワインドは激突。デュアルフェ
イスは反動で少しの間だけふらついて、隙を作ったところをさらに体当たりを喰らわ
された。
「くそっ、調子に乗るな!!」
ジノーヴィーはグレネードをもう一度撃ち込む。その途端にコブラワインドの動きが
一瞬反動で止まる。
「!!」
「見切った!! ここだ!!」
ザシュゥゥゥゥン!!
「げっ!?」
一瞬反動で止まった所を、コブラワインドはデュアルフェイスのブレードで袈裟がけ
に斬り捨てられた。そして、大爆発が起こる。
「・・・貴様ああぁぁ・・・」
スネイクチャーマーの断末魔が響く。そしてその頃にも、プロミネンスのウォーター
ハザードも、MxS7HGSのグレネードを受けて、反動を喰らって隙を見せてしま
う。だがその瞬間、勝負はきまった!!
「そこまでだ!!」
MxS7HGSが言った途端、アイアンLーOW75のMWG-KARASAWAが炸裂。その名
銃から吐き出された光の矢はウォーターハザードを貫いた。
「なっ…!!」
「作戦は成功です、帰還して下さい」
丁度2人が撃破されて作戦終了時に、ミラージュオペレータの通信が入った。そして
一方、上空の機動部隊は、大物が全てやられたのを見て、蜘蛛の子を散らすように逃
げていった。
「逃げやがったか。はっ、口程にもない」
上空の逃げていく機動部隊を見て、MxS7HGSは呟く。
「だが、私にとってはいい運動になった」
ジノーヴィーは汗を拭いながら言う。
「さて、帰るぞ。報酬を山分けしてな」
Part.2 〜衛星砲破壊作戦〜
「これが衛星砲か?」
「おっきいなぁ〜」
その頃、軌道上に浮かぶ正体不明の兵器「衛星砲」にて・・・
衛星砲付近に打ち上げられたAC搬送用の射出ポッドが、幾つか衛星砲のゲートに打
ち込まれ、入っていく。そして、内部で幾つかのACが活動している。
何故、こんな事があっているのかと言うと・・・
数カ月程前、ミラージュの依頼メールが全レイヴンに送られた。
「Re:衛星兵器破壊
依頼主:ミラージュ
成功報酬:56000c
衛星砲による被害は、各地で勃発している他、多くの被害を齎しています。
このままでは危険です。そこで我々は、ついに衛星砲を強制停止させる手段に出ま
す。
衛星砲を強制停止させるには、最深部のエネルギー増幅装置を全破壊することが必
要で す。しかし、衛星砲内部には、厳重なセキュリティと防衛システムが配備され
ており、
警護が厳重です。
そこで今回は、複数のレイヴンで同時に突入し、最深部のエネルギー増幅装置を全
て破 壊する作戦に出ます。このチャンスに2度目はありません。何としてでも、
必ず一回で成功させて下さい」
この依頼を受けたのが、BB、フォグシャドウ、ジャック・O、イディオット、ロー
テーションの5人だった。
「全設備の起動再開まで、5分。カウントダウンを開始します」
館内放送が流れる中、5人は衛星砲の最深部を目指した。その途端・・
「未確認部隊の侵入を確認。ガード部隊を起動します」
突然、館内の室灯が全て非常灯に変わり、大部屋や通路内等では天井マシンガン砲台
「フライペーパーMG」が動きだし、特殊変形MT「I-CO12-AS」と格闘型MT「カ
イノス/EO2」が侵入者の駆除に向かった。
「シルエットよりオペレータ! ゲートロック解除。このまま前進する」
フォグシャドウとBBは、スタート地点の扉を開けて、パイプ通路を進む。すると天
井から、ガガガガッ、ガガガガッ、とパイプ通路にいた、4基の天井砲台のフライペー
パーMGが攻撃を仕掛けて来た。
「うるさいハエだ!」
それをBBがトリプルロケットで叩きのめす。1秒もしないうちに、砲台は全部撃ち
落とされた。それを尻目にフォグシャドウが続ける。
「シルエットよりオペレータ! 情報を頼む」
「ヴァリアードアームズよりシルエット! そちらは大丈夫か?」
一方、ローテーションのほうは、単独で敵を蹴散らしながら奥へ進んでいく。そこへ、
1機のI-CO12-ASが高出力のビームを放って来た。
「・・・っと・・・」
ローテーションは上へジャンプしてビームをやり過ごし、I-CO12-ASを踏みつぶした。
「くそ、敵が邪魔で進めない!」
一方、パイプ通路を陣取る6機のI-CO12-ASと6基のフライペーパーMGに、ジャッ
ク・Oとイディオットは悪戦苦闘していた。
「カメみてぇーにぼうとしやがって!」
ジャック・Oはレーザーライフルとグレネードを連射して叫ぶ。
「マリスよりオペレータ! このままでは進めない! どうなってる!?」
「敵を殲滅中、きりがない!」
ローテーションのほうは、先に進んでから特殊MT、格闘型MTの大集団に悪戦苦闘
していた。弾薬数の多いヴァリアードアームズの相棒「MG-800」も、弾が尽きそうで
悲鳴を挙げている。
そしてしばらくしてから、ビービービービー!! と、警報が鳴り響き、画面の右下
に「ARMOR LOW」との警報が鳴り響いていた。慌ててAPを見ると、
「1789」と出ていた。
「・・機体の損傷が激しい!」
慌てたローテーションが叫ぶ。その時には必死の抗戦のお陰かもう敵は視界から消え
ていて、その残骸達が残っている。奥へ進むと、いきなり黒い影が現れた。
「!?」
ローテーションはあわてて武器のトリガーを握ろうとしたが、遅すぎた。その影は左
手から赤い光を放ち、ローテーションのヴァリアードアームズの頭めがけて振り降ろ
した。
「敵・・・!」
ローテーションが叫びかけた途端、ヴァリアードアームズは幹竹割りのごとく叩き斬
られていた。
「ガゴッ、ガギギギギギガガガガガガ・・」
「識別信号消滅。ヴァリアードアームズの撃破を確認」
その頃にはミラージュオペレータが通信を流す。
「持ち堪えられなかったのか・・・」
フォグシャドウはローテーションが撃破された事を知って、呟く。だがその時、衛星
砲のエネルギーのもととなっているエネルギー増幅器のある部屋の前へ辿り着いてい
た。
「・・・この奥にTARGETの反応がある」
BBは扉の奥を見て呟く。そして扉を開けると、さらに奥に巨大なシャッターがあっ
た。
だがその前に、それを守るかのように格闘型MT6体が立っていた。部屋に入って来
たタイラントとシルエットを見た途端、いきなり攻撃を仕掛けて来た。そして、部屋
の天井の両端にいた2体のフライペーパーMGも攻撃を仕掛けて来た。
「また敵か!」
「うるさいハエどもだ! 返り討ちにしてやる!!」
仕方なく2人は戦う事にした。だが部屋に入った途端、ミラージュオペレータから通
信が入る。
「レイヴン、こちらから何とかゲートロックを解除してみます。それまで耐えてて下
さい」
「「出来るだけ早くな!」」
やがて10分か経った頃・・
「ゲートのロックを解除しました、先に進んで下さい」
ミラージュオペレータの通信が入る。丁度その時、BBとフォグシャドウが相手にし
ていたMTと砲台も全滅出来たようだし、タイミングがよかった。
フォグシャドウは自分とBBに、こう語った。
「衛星砲に直結するエネルギー増幅器を全て破壊する! 時間がない、急ぐぞ!」
だが、その途端・・
「おい!! ACがいるぞ!?」
と、BBが叫んだ。「何!?」とばかりにフォグシャドウもBBの視線の先を見ると、
奥にACがいた。それも、黒と青紫のカラーリングの、重量2脚の。
そのACの武装は、
レーザーキャノン。
リニアガン。
マシンガン。
ブレード。
そしてエクステンションに、ステルス。
と、言った武装だ。ミラージュオペレータが解説する。
「敵ACを確認。ミラージュの残していった無人機です!」
「何いいいいいいいいいい!?」
「こんなモン、速攻倒しちゃる!! 行くぞ、BB!!」
「おう!!」
2人はそのACに真っ向から挑み掛かる。だがその途端、AI機体は上へジャンプし
て、上空からリニアガンの鉛玉を打つけて来た。タイラントとシルエットは、上から
ハンマーでガツンと殴られたように、ちょっと前のめりになった。
「ウカガッ! くそっ!!!」
BBは負けじとグレネードランチャーで反撃する。そのグレネードランチャーの鉛玉
は、AI機体めがけて飛んでいったが、AI機体はそれをヒョイと紙一重で躱す。
それを見たBBは怒り、我武者らに攻撃をぶつける。だが、AI機体はそれをヒョイ
ヒョイヒョイと紙一重で素早く躱す。
「んああっ!! 避けるんじゃねえ!!」
BBは更に我武者らになる。だがその途端、AI機体はその途端に突っ込んで来て、
左腕から赤い光を発し、それをタイラントの左腕のジョイントめがけて切り裂いた。
その途端にタイラントの左腕が、それに持たされたブレードとそれを背負っていたト
リプルロケットと共に飛んでいく。
「クッ・・」
BBは焦る。その途端にもう一撃が飛び、ザグッ、と右腕のジョイントが切り裂かれ
た。そして、宙に舞う右腕。
「くっそ〜!! こいつ重量級のくせに、はえぇ!!」
だがその途端、AI機体に止めの一撃を喰らった――――。
ザグッ!!!
「ぐッ・・ぐぐぐぐ、ゴホッ!!」
BBは血を吐いた。今度は、コクピットの部分に突きの一撃を喰らったようだ。
その途端、BBのタイラントは爆発を起こし、そのまま地面に崩れ落ちた。
「び・・」
フォグシャドウの目が一瞬、潤んだ。だがその途端、目が釣り上がり、怒りの表情と
なった。
「クッ・・よくも俺の相棒を!! 許さん!!」
それがフォグシャドウを逆上させてしまったらしい。フォグシャドウは両腕のショッ
トガンを連射して、高速でAI機体の周りを移動して連続攻撃を浴びせる。
「おらあああああああああああああ!!!」
フォグシャドウはショットガンを連射し続ける。そして、10発目が入った途端、左
腕が外れる。そして15発目で右腕、20発目で片足、25発目で頭部が吹き飛ぶ。
そして、大爆発を起こした。
「ああああああああああああああああぁぁああぁぁぁあああああぁぁぁああぁ!!!!
」
フォグシャドウは叫びながら、エネルギー増幅器に狙いを変え、1個、また1個、そ
してまた1個・・・そして全て破壊した。
「・・・・・・」
フォグシャドウは目標が全て無くなったのを見ると、連射をやめた。
「・・・くっ、BB・・」
フォグシャドウのシルエットがBBのタイラントを支え起こす。
「見ろ、目標と敵AI機体は全部、俺が始末した。もう作戦は終わったぞ・・」
「は・・はは、そうか・・終わったんだな・・・」
「どうした?」
「喉・・・やられたみたいだ。声、あん・・・まり・・出てないだろ・・・う?」
「・・・・」
「た・・・かっ・・・」
「何だ?」
「楽・・しかった・・・フォグさんと・・エース・・メビウスさんと共に戦って・・・
・
たの・・しか・・・た」
「・・・減点だな・・BB。そういう事を言うのは減点。男気−10減点だぞ。おい」
「・・・・・」
「嘘寝してないで何とか言えよ、BB!?」
「・・・・・」
「くそっ・・・事切れたか・・・」
「作戦の終了を確認。帰還して下さい」
「フォグシャドウ・・・帰還する・・・」
ども〜しじみ汁です。
今回は「ミラージュ本社ビル防衛」「衛星兵器破壊」で、2つのパートに別れて描き
ました。最後はバッドエンドになりましたが・・。
僕の第2章の作品も、あと3話で完結と言った所です。
次回は「未到査地区探査」の予定です〜。
〈今回新しく登場したレイヴン〉
名称:ジノーヴィー(28・強化人間)
新たにアリーナに参戦した、実力者の強化人間。またの名をメビウスリングやエース
と同じく、頂点に立つ「覇王」という。グレネードランチャーの扱いには右に出る者
はいない、と噂されていて、グレネードランチャーを多用した戦法を取り、その前に
立って破れ去ったレイヴンは数知れず。A-1のメビウスリングとも親仲である。
AC:デュアルフェイス
頭部:CHD-SKYEYE
コア:CCL-01-NER
腕部:CAM-11-SOL
脚部:CLM-55-RVE
ブースタ:CBT-FLEET
FCS:VREX-F/ND-8
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR14
インサイド:KWI-DM/30
エクステンション:CWEM-AS40
右肩装備:CWG-GNL-15
左肩装備:CWG-GNL-15
右腕装備:CWG-RF-150
左腕装備:CLB-LS-3771
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-S/STAB OP-E/CND OP-ECMP
OP-L-AXL OP-LFCS OP-L/TRN OP-E-LAP
OP-INTENSIFY
OP-R/INIA
名称:MxS7HGS(35・強化人間)
大量に威力の高い武器を積み込んだタンクAC「アイアンLーOW75」を駆り、
その攻撃の威力と凄まじさに頼って戦って来た、「鋼鉄の戦神」と渾名される男。
その実力のせいか、任務成功率100%を誇り、本人は戦場の外でも鍛練を施し、
AC乗りの他、トレーニングを施してるお陰で筋肉が凄まじい。
AC:アイアンLーOW75
頭部:MHD-MX/BEE
コア:CCH-OV-IKS
腕部:MAM-SS/RLS
脚部:CLC-D3TA
ブースタ:None
FCS:PLS-SRAO2
ジェネレータ:KGP-ZXV1
ラジエータ:RGI-KDA01
インサイド:MWI-DD/20
エクステンション:CWEM-AM40
右肩装備:MWC-IR./20
左肩装備:CWC-GNL-15
右腕装備:MWG-KARASAWA
左腕装備:CWG-BZL-40
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-S/STAB OP-E/CND OP-ECMP
OP-L-AXL OP-LFCS OP-SP/E++ OP-E/RTE
OP-TQ/CE
OP-INTENSIFY OP-R/INIA
〈今回登場した敵レイヴン・AI機体〉
名称:スネイクチャーマー(36)
武装集団「F.H.」の襲撃部隊のリーダーで、D-1のアリーナランカー。
アリーナでは1、2を争う残酷なレイヴンで、眼前の敵が苦しんでいるのを見るのを
至福の喜びとしている。そのお陰で、嫌悪感を持つ人間が増える始末。今回は、ミラー
ジュに復讐しようとミラージュの本拠地の攻撃に向かうが、ジノーヴィーに殺された。
AC:コブラワインド
頭部:CHD-04-YIV
コア:CCM-OV-AXE
腕部:CAM-11-SOL
脚部:CLM-01-EDF
ブースタ:CBT-01-UN4
FCS:AOX-F/ST-6
ジェネレータ:KGP-ZS4
ラジエータ:RMR-SA77
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:CWR-HECTO
左肩装備:CWC-LIC-100
右腕装備:KWG-FTL600
左腕装備:KWG-FTL450
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-E/CND
名称:プロミネンス(34)
武装集団「F.H.」の襲撃部隊のリーダーで、C-7のアリーナランカー。
水に入る事を極端に怖がるため、その為に昔からフロートACしか使わない。
機動性を活かした戦法、オービットキャノンを多用する戦法を混ぜ合わせて、敵を翻
弄しつつ敵を倒す。復讐戦を挑もうと、スネイクチャーマーと共にミラージュの本社
ビルに急襲をかけるが、MxS7HGSの猛攻を受けて憤死した。
AC:ウォーターハザード
頭部:CHD-07-VEN
コア:CCL-01-NER
腕部:MAW-DHM68/04
脚部:MLR-MX/LEAF
ブースタ:None
FCS:VREX-ST-2
ジェネレータ:KGP-ZS4
ラジエータ:RIX-CR14
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:MWM-MM16/1
左肩装備:CWM-TITAN
右腕装備:None
左腕装備:None
オプション:OP-S/SCR OP-E/SCR OP-E/CND OP-L-AXL
名称:武装集団AC1
頭部:CHD-SKYEYE
コア:CCL-01-NER
腕部:CAM-11-SOL
脚部:CLM-02-SNSK
ブースタ:CBT-FLEET
FCS:VREX-ST-12
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RMR-SA77
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:CWR-M50
左肩装備:CRU-AA01
右腕装備:CWG-RF-160
左腕装備:CLB-LS-3771
名称:武装集団AC2
頭部:CHD-02-TIE
コア:CCL-02-E1
腕部:CAL-44-EAS
脚部:CLB-SOLID
ブースタ:CBT-FLEET
FCS:VREX-WS-1
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:CWM-S60-10
左肩装備:CRU-A102
右腕装備:CWG-GS-56
左腕装備:CLB-LS-2551
名称:武装集団AC3
頭部:CHD-02-TIE
コア:CCL-02-E1
腕部:CAL-44-EAS
脚部:CLB-SOLID
ブースタ:CBT-FLEET
FCS:VREX-WS-1
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:CWB-DC-150
左肩装備:CWB-DC-150
右腕装備:CWG-MG/500
左腕装備:CLB-LS-2551
名称:武装集団AC4
頭部:CHD-06-OVE
コア:CCM-00-STO
腕部:CAL-44-EAS
脚部:CLF-D3-WIZ
ブースタ:CBT-FLEET
FCS:VREX-ST-12
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RMR-SA77
インサイド:None
エクステンション:None
右肩装備:CWX-DM-32-1
左肩装備:CWX-DM-32-1
右腕装備:CWG-MG-300
左腕装備:CLB-LS-3771
名称:AI機体・TYPE:ε
頭部:MHD-RE/005
コア:MCM-MX/002
腕部:MAM-MX/MDD
脚部:MLH-MM/LINK
ブースタ:MBT-NI/MARE
FCS:AOX-X/WS-3
ジェネレータ:MGP-VE905
ラジエータ:RMR-ICICLE
インサイド:MWI-DD/10
エクステンション:MEST-MX/CROW
右肩装備:MWC-LQ/15
左肩装備:MWC-LIC/40
右腕装備:MWG-MG/350
左腕装備:MLB-HALBERD
オプション:OP-INTENSIFY
作者:しじみ汁さん