サイドストーリー

〜決戦前夜〜
 街道を歩く、一人の青年がいる。
「バース…か」
 彼の名は…エース…偽名なので、これからは彼と呼ぶ、元アリーナ一位。漆黒の髪に漆黒の目。
「う〜む、ここらへんのはずなんだが」
 彼は今、バースというレイヴンの家に向かっている。
 街道を歩む人々が、彼の横を通り抜けていく。

 ある者は、恐ろしそうに。ある者は、興味深そうに。また、ある者は、殺意を秘めて……。
「どこだ、ここ」
 誰かにきこうにも、皆、逃げる。周りを見まわす…。人、店、そして。
 武装した者が彼の後ろをつける。
 さてと、まずはここから遠ざからないとな。でも、どうやって?自分に質問しても答えはわかるはずがない。
 止まっていてもしかたがないので、適当に歩き始める。










 開けた場所まで来た。
 後ろの方には武装した者が、ついてきている。ひい、ふう、みい……軽く見積もっても、20人くらいか。やっかないだな。
 まぁ、問題は、いつ仕掛けてくるか、だが。
「何の用だ?こんな大勢で」
 ドンとかドドンとかいう効果音が似合いそうな登場の仕方をしてくれた。
 パキュンパキュン、反射的に、サイレンサーを付けた拳銃を乱射していた、どんどん敵が倒れていく。
 後、一人。この間わずか五秒足らず。
「……化物」
 恐怖にひきつった顔で俺を見ていた、俺はゆっくりと銃口を向ける。
「化物か、そうかもな」
 パキュン、眉間から血が噴水の如く吹き出てきた、それが、俺の銃に付き、太陽の光で、不気味に輝いていた。
 頭がボーっとする。
 …………とりあえず寝よ。









「こんな所で野宿する者がいるなんて…」
 目を閉じて、さぁこれから寝ようとした時に…声をかけられた。
「…悪かったな」
 とりあえずそう言う…さて今度こそ、夢の世界へ。
「……ひょっとして、ずっと一位だったのに、青二才に一位からあっけなく叩き落された負け犬さんかしら?」
 負け犬…。無視するわけにもいかず、起きあがる。
 腰まである髪…背丈は俺と同じくらいか。茶色の瞳に紅色の髪。
 ”黙っていれば”、もてるだろうな…。
「誰だ?」
 相手は手を胸に当てて言う。
「私の名前はレジーナよ」
 レジーナか、最近アリーナで順位上昇中の新人レイヴンか、いや、新人とはもう、言えんな。
「言わなくてもわかっていると思うが、一応言っておこう、俺はエース、けっして負け犬では無い」
「負け犬の遠吠え〜」
 今のは無視することにする。
「所でバースの、いや、現一位のレイヴンの家、知らないか?」
「へ?もしかして目の前にあるのにわからないの?(っち無視しやがって)」
「…ああ、あの家か?」
 木から落ちた葉が地面に着く。
「でかいな」
 何にしろ、その家へと向かう。


 でかい でかい でかい でかーーーーーい!!!
 …一丁目などの広さだ。
 それより、玄関どこだ?。
「あの〜、レジーナさんにエースさんですね?」
「はい、そうですけど?」
 俺より先にレジーナが答える、まぁ、どうでいいがな。
 声をかけた人物は、人形と表すのが一番適当だと思われる…。薄青い瞳に赤の髪。
「よかった〜、あ、玄関はこちらです」





「やっと来たか」
 玄関に入ってすぐに、バースに言われた。
「家がわかりにくてな」
「……こんなに家が、でかいのにか?」
 確かにそうだが、これはやりすぎだぞ。
「まぁいい、今日は依頼が入ってな」
 一緒に行ってくれ…か。まずは内容を聞かんとな
「どんな依頼だ」
「これだ」
 俺とレジーナは、それぞれ書類の束を渡された。何々……
 
 地上に派遣された、調査部隊からの連絡が、途絶えた。しかし先日、その部隊の中の一機が、帰還した、
 その者の話によると、四機のACと、少なく見積もってもMT一〇〇機に部隊を全滅されたそうだ。
 これを受けた我々、クローバルコルテックスは、AC七機と、MT二〇〇機による調査を決めた。……

 要約するとこんな感じだな。まぁ、これだけは言える、”七機の中に俺が入っている”。重大な依頼だからな〜、
 上位陣は当然、出るわけだ。
 ……聞くだけのつもりだったんだがな。
「作戦決行は、明日の0300時だ」
「拒否権無いのか…」
「無い」
 最後の抵抗も虚しく、撃破された。まぁいい、こうなったらやってやる。
「報酬はどれだけなんだ」
「三〇万Cだ」
 俺はわが耳を疑った、管理者破壊でも、十五万と聞いた、それの二倍、嫌な気などしない。俺は笑みをこぼした。
「エース、オペレータに会って、詳細聞いて来い」
 ……今回は特別にオペレータが全員に付くらしい、ちなみに、オペレータは、あの”機動兵器”に乗って同行する、
 あれさえあれば十分な気がするがな。






「君がミリーか」
 俺の前には、さっき、玄関に案内してくれた人物が居る、彼女が今回の依頼でオペレータをしてくれる。
 名前はミリーと言うらしい、というか返事したんだから、らしいではないな。
「えっ、あ、はい、今回の依頼のオペレータをするミリーです」
 今回だけではなくて、次回からもやってほしいんだがな〜。……む、そうだそうだ、今回の依頼の詳細聞くんだった。
「できれば、詳細を聞きたいんだけど」
「わかりました、まず、エースさんは、バースさんとテラさんと一緒に、前衛で戦闘してください、
 後ろから、レジーナさんとBBさんがグレネードで支援射撃してくれます、
 残りの、コールハートさんとワルキューレさんは、皆さんが補給を行ってる時の代わりに戦います、
 いわゆる補欠です、MTには補給車の護衛と偵察、最小限の戦闘をしてもらいます」
 一度、話を切る。
「これで、戦闘時の詳細を終わります」
 ってことはまだ続くのか。
「敵戦力ですが、一切不明です、MT最低一〇〇機、ACも最低四機と、までしかわかっておりません」
 戦闘で困るのは三つある、一つは補給、一つは戦力、一つは戦術。俺達は戦力で負けている、
 非合法に手に入れた情報だが、調査部隊には護衛で、MT二五〇機、AC三機がついていたはずだ、それが、全滅。
「他に何かありますか?」
 地形を知りたいんだが、とは言えなかった、そのための調査部隊が、死んだのだ(一機いるが)、
 何にしろ、これで詳細は聞き終えた。
「もうこれだけで十分だ」
 共同作戦など、性に合わんがな。
「では、失礼します」
「わかった」
 この時に俺がもう少し注意深く彼女を見ていれば、気づいたかもしれない、彼女が、人ならざる人だと言う事を。







〜???〜

 丸く、細長いテーブルを人影が囲んでいる、周りは暗く、テーブルの中心にある蝋燭だけが、この部屋の光だった。
 突然、甲高い声が響きわたる。
「レイヤードが動きはじめたとの連絡が入りました」
「遂に、か、いや、これだけの事をしないで、動かないほうが、おかしいな」
 そう言った人影は、少し笑った。
「ではこれで、望みが叶うのですか」
「ああ、そうだ」
 そして、あいつらを、我等を無能と言った奴らを、殺す。
「では、出撃準備をしましょう」
「では行くぞ、”愚か者”を殺しに」
 カンカンカンカン、足音が遠ざかって行く、部屋には、静寂が戻った。




 
 裏(?)設定    敵がわには名前が無く、NO1になった時に初めてもらえる。(それまでは番号)
            ミリーは機械の体で、ちょっとした武器を内臓している。
            地上は基本的に森で平地はなきに等しい。
            レイヤードの人は光を知っているが太陽は知らない。
            機動兵器は、武装を使えない。
作者:ウィルさん