サイドストーリー

地上編第九話後編 時の流れに逆らって
リア
「いない?いないってどういうことですか!?」

看護婦
「少し目を離したら、、、もう、、、」

医者
「院内のカメラの映像には映ってなかったのかね!?」

看護婦
「それらしき人が外に出て行くところしか、、、」

リア
「そん、、、な、、、ラゴウ、、、、」

医者
「治安維持部に連絡しなさい!この街にいるならきっと見つかる!!」

看護婦
「は、はい!!」

リア
「ラゴウ、、、、」








ヨシュア
「ここ、は?どこだ、、、母さん、、、母さんは、、、どこへ?」

住人
「ん?おい、君。大丈夫か?ふらふらして。」

ヨシュア
「あ、すまない。あの、、、バルザックシティはどこに?」

住人
「バルザックシティ?聞いたことがないな、、、どこの企業の管理下なんだい?」

ヨシュア
「ジオマトリクスとエムロードの共同出資だったはずなんだが、、、」

住人
「ジオマトリクス?エムロード??悪いけど、中小企業の方までは詳しくないんだ。ごめんね。」

ヨシュア
「え?す、すまん、、、」

住人
「 ? じゃあ、気をつけて。」

ヨシュア
「ジオマトリクスとエムロードも知らないなんて、、、余程の田舎なのか?とりあえず、現在位置を確認しなけりゃ動きようが無いな、、、」



ドゴォォン!!!



ヨシュア
「っ!!なんだ!?」

住人
「テロだぁぁぁ!!」

住人
「う、うわぁぁぁ!!」

ヨシュア
「なっ、、、くそ!!インディーズの残党か!?」



ドォォォォン!!!!



ヨシュア
「うお!!くっ、ACさえあれば!!」



力無き者を攻撃する数機のアローポーター。暴力によって己に力があるかのように見せかけるものたち。人はそれを、テロリストと呼んだ。



テロリスト
『母なる地下世界への恩恵を忘れ!!ただただ資源を食い潰すことしかしない連中に、天誅を!!』

ヨシュア
「地下世界?何を言ってるんだ?」

テロリスト
『レイヤードの安寧のために!!秩序ある世界のためにぃ!!』



ドゴゴォォォン!!!!



ヨシュア
「ぐあっ!!レイヤード?なんだってんだ!?」

住人
「ACだ!!レイブンが来たぞぉ!!」

テロリスト
『AC!?くそぉ!各機散、、、』



ドシュゥゥゥン、、、ドォォォン!!!



アンチロウ
『久しぶりの活躍だぁねぇ♪精々暴れるとするかい!!』

テロリスト
『リーダー!?くっこいつぅ!!』

アンチロウ
『おせぇ!!出直して来いや!!』



目の前でACとMTが踊っている。この景色、見たことがある。あのACの動きも、見たことがある。見たことがみたことがミタコトガ、、、



ヨシュア
「ぐあぁぁぁ!?ああ!!ぐ、ぅぅぅぅ!!頭が、、、割れる、、、」



『強化人間に自由など無い!!』  『今のあなたを愛します。』  『この、殺人鬼がぁ!!』  『離したら殴るだろう?』

『あなたの目には常人じゃ及びもつかないような何かがある』 『父さん。』 『レイブン、ここは通さない。』 『オレにとってのあんたはヒーローだ。』

 『これを、これが幸せというものなのでしょうか、、、』  『生まれた時から人形よぉぉ!!』  『若いのぉ。』



ヨシュア
「ううううう!!リア、、、リア?誰、だ?誰、、、がぁぁぁぁ!!」

住人
「 !! お、おい!大丈夫か!?」

ヨシュア
「、、、、、、、」

住人
「おいってば!?あ〜もう、しょうがねえな!!」





アンチロウ
『オラァ!とどめぇ!!』

テロリスト
『くそぉぉぉ!!』



ドゴォォォォン!!!



アンチロウ
「ふぅぅ、、、なんか最近扱い悪くない?オレって。」







サルビア艦橋



通信士
「レーダーに機影!!敵、第9波接近!!」

操舵士
「前方に岩盤あり!!針路維持できません!!」

砲撃士
「右舷WS沈黙!!メデューサ残弾数20%切りました!!」

イーガル
「ロイヤルガードを補給の終わった機体から発進させろ!!現在位置を測定、最短コースで密林を出る!!妖閃紅を右舷に回せ!!ケイト君とはまだ連絡がつかんのか!?」

通信士
「以前反応無し!!」

操舵士
「敵砲撃、来ます!!」

イーガル
「総員対ショック体勢!!」



ズズゥゥゥン!!!



イーガル
「ぐぬっ!!撃つしか、、、ないのか!?」

通信士
「RG1被弾!!帰還します!!」

操舵士
「艦長!!密林を抜けます!!」

イーガル
「180度回頭!!デリンジャー1番2番照準!!」

砲撃士
「くっ、、、ロック!!」

イーガル
「てぇぇぇいい!!」



ドゴォォォォン!!!!
老兵の雄たけびとともに放たれた火球は死にゆく者の怨念を象徴するかのように全てを薙ぎ払い、灰としていった。



通信士
「、、、敵部隊の、後退を、確認。」

操舵士
「ジェネレーターに過負荷、システムダウン、、、」

グナー
「終わった、、、けど、森が、、、」

イーガル
「結局、こうなってしまった、、、100年かけても、再生はできんじゃろうな、、、」

通信士
「、、、上空の龍閃紅が禍閃紅を発見しました。被弾の跡は見られるものの、パイロットは無事のようです。」

イーガル
「RG2とRG3に回収を、収容したMT部隊に艦の防御を頼んでくれ。」

通信士
「了解。」

イーガル
「収容作業が完了次第、サブジェネレーターを用いて第6大隊駐屯地へ移動。それまで損傷の激しい部位の補修作業を行う。」

グナー
「ルートはどう取ります?まさかあの炎の中を突っ切るつもりですか?」

イーガル
「メデューサに圧縮窒素弾頭を取り付け、消火作業を行いながら進む。」

グナー
「圧縮窒素弾頭!?対人殲滅用装備ですよ!?」

イーガル
「構わん。火が消えればそれでいい。」

グナー
「無茶をなさいますね、、、そんなことをしたら十年単位で死体を氷漬けのまま放置することになりますよ。」

イーガル
「物言わぬ数十の遺体より、この数え切れぬ木のほうがワシにとっては大事なんじゃよ。その結果人から憎まれようとかまわん。」

グナー
「、、、わかりました。そこまで意志が固いのでしたら。」






通信士
「禍閃紅の収容を確認。」

操舵士
「サブジェネレーターの出力80%、いけます。」

イーガル
「微速前進、森へ入り次第レーダーをパッシブに切り替え。続いてメデューサ1番から4番、てぇ!!」

通信士
「消火率60%、進行は収まりました。」

イーガル
「続いて5番から6番、てぇ!!」

通信士
「火の消沈を確認。」

操舵士
「う、、、し、死体が、、、氷漬けに、、、」

イーガル
「、、、、、、、、、」



永遠に燃え続くかと思えた地獄の業火、それは容易く消え去った。数え切れない死者を氷漬けにする事によって、、、



イーガル
「犠牲者に対し、一分の黙祷を行う。黙祷!」

通信士
「、、、、、、」

操舵士
「、、、、、、」

砲撃士
「、、、、、、」

グナー
「、、、、、、(死者を冒涜するような真似をして黙祷も何もあったものか。)」

イーガル
「黙祷、止め。メインジェネレーターはどうか?」

操舵士
「少々機嫌が悪いですが、大丈夫。最大出力を出さなければいけます。」

イーガル
「うむ。メインジェネレーター、出力50%。速度20%上げ、針路第6大隊駐屯地。」

操舵士
「了解。」








住人
「おい?聞いてるか?もう大丈夫だぞ?」

ヨシュア
「う、、、」

住人
「お?起きたか?」

ヨシュア
「痛っ!!」

住人
「頭でも打ったのか?頭抱え込んだまま突っ伏しやがって、、、死んでも知らねえぞ?」

ヨシュア
「あんた、、、は?」

住人
「オレか?オレはファン=シャオロン。歴史学者だ。」

ヨシュア
「歴史学者?そうには見えんな、、、」

ファン
「人に色々探り入れる前に自分の正体を明かしな。」

ヨシュア
「あ?ああ。俺はヨシュア、、、レイブンだ。」

ファン
「レイブン?ぷっ、、、だっはっはっは!!」

ヨシュア
「な、、、何がおかしい!?」

ファン
「戦場にいながらACに乗ってねえレイブンなんざ初めて見たぜ!!あっはっはっはっはっは!!!」

ヨシュア
「し、仕方ないだろう!!レイブンだからっていつでもACに乗ってるわけじゃない!!」

ファン
「はははは、、、いや、まあそりゃそうなんだけどよ、、、」

ヨシュア
「まったく、、、それよりここはどこなんだ?バルザックシティに行きたいんだが、誰も知らないんだ。」

ファン
「へぇ、、、ぱっと見オレと大して歳変わんねぇのに物知りだな。けど、そんな冗談この街じゃオレぐらいにしか通用しねぇぞ?」

ヨシュア
「何を言ってるんだ?冗談なんかじゃない!俺は本当にバルザックシティに行きたいんだ!!」

ファン
「はぁ?おいおい、ホントに頭打ってたのかよ?」

ヨシュア
「俺は正気だ!!」

ファン
「正気の人間がセカンド・ブレイクで跡形も無くなった都市に行くなんて言うかよ?」

ヨシュア
「バルザックシティが、、、跡形も無くなった、、、?」

ファン
「お、おい、アンタ、、、マジで何者だ?時の漂流者です、なんて冗談言うんじゃねえぞ、、、」

ヨシュア
「アンタの、、、」

ファン
「あん?」

ヨシュア
「アンタの知ってる限りの歴史を教えてくれ、、、」

ファン
「マジかよ、、、そういや昔、母ちゃんが落ちてる物を拾うんじゃありませんって、、、ありゃ[物]じゃなくて[者]だったのか、、、」

ヨシュア
「、、、聞いてるのか?」

ファン
「お?おお。ったりめーよ。さて、どこから話そうか、、、」

ヨシュア
「そうだな、、、まず、セカンド・ブレイクとはなんだ?」

ファン
「ああ、そりゃオレが仮につけた名称でな。早い話が二度目の大破壊だ。それのせいで人類はレイヤードへの移住を余儀なくされた、とオレは考えている。」

ヨシュア
「二度目の、大破壊、、、」

ファン
「もっとも、大多数の連中は大破壊が二度あったことすらしらねえよ。」

ヨシュア
「レイヤード、とは?」

ファン
「地上で生活することができなくなった人類が移り住んだ地下都市さ。ほんの5〜6年前までは全人類がそこに住んでた。こっから先はオレの推測だが、レイヤードは元々存在したものを作り変えたものなんじゃないかとオレは思っている。」

ヨシュア
「何故?」

ファン
「考えてもみろよ。地上で生活できなくなったから地下都市を作ったって言うんなら、レイヤードが完成するまでの間、人類はどこにいたんだ?地下都市なんてものが1年やそこらで作れるはずがない。予め大破壊が起きると予測していたんなら別だがよ。」

ヨシュア
「アンバー・クラウン、、、」

ファン
「あん?」

ヨシュア
「その、セカンド・ブレイクが起きる遥か前に存在していた地下複合都市の名称だ。」

ファン
「それだ!!すげえぜ!!長年の疑問の一つが解決したんだ!!」

ヨシュア
「一度目の大破壊を仮にファースト・ブレイクと呼称するとして、アンバー・クラウンはファースト・ブレイク時に人類の避難先として作られた都市だったはずだ。ファースト・ブレイクは地上が荒廃、汚染はされたが、まだ人類が住める環境が残っていたからな、、、」

ファン
「こいつぁ思わぬ拾い[者]だぜ!!求めていた答えが全部目の前にあるんだからな!!」

ヨシュア
「、、、レイヤードは一つなのか?」

ファン
「ああ?そりゃ一つに決まって、、、 !! まさか、、、地下都市は一つじゃ!!」

ヨシュア
「ああ。地下都市は一つじゃない。複数の地下都市が存在していたはずだ、、、」

ファン
「はぁ、、、」

ヨシュア
「どうした?」

ファン
「今日はここまでにしよう。いっぺんに全て知っちまうのはどうも、な、、、」

ヨシュア
「そうか、、、わかった。」

ファン
「そういやアンタはこの街に来るまでの記憶ってのはあるのか?」

ヨシュア
「この街に来るまで?」

ファン
「気づいたら街中でしたってのはおかしいだろう?なんらかの経緯があってこの街に来たはずだぜ?」

ヨシュア
「、、、気づいたら病院にいた。頭に霧がかかったような酷くぼんやりした状況だったがそれは憶えている。」

ファン
「それ以前は?」

ヨシュア
「わからない、、、」

ファン
「ふ〜ん、、、ってことは、アンタは記憶喪失だな。」

ヨシュア
「記憶ならある!!」

ファン
「調べても出てきそうにない過去のものばかりが、な。そんだけ昔の事を憶えてんならコールドスリープに、、、いや、細胞にも記憶があるというし、、、」

ヨシュア
「おい?」

ファン
「、、、わからん!!!!」

ヨシュア
「うおっ!!」

ファン
「ん?どうした?」

ヨシュア
「お、驚かせるな!!」

ファン
「ん?ああ、悪い悪い。集中するとこうなっちまうんだ。とりあえず、自分がレイブンだったってことは憶えてんだろ?だったらレイブンになりゃいい。知り合いにガレージ持ってる人がいるんだ。紹介してやるよ。ひょっとしたらACの一機ぐらいは貸してくれっかもしんねぇ。」

ヨシュア
「そうか、、、すまん。世話になる。」

ファン
「な〜に、金の生る木ならぬ知識の生る木だ。金の工面ができるまでオレの部屋の一角を貸してやっからよ、アンタの知識は全て吸収させてもらうぜ?」

ヨシュア
「あ、ああ。お手柔らかにな。」

ファン
「そういやレイブンネームはなんていうんだ?ACを用立てるってんならレイブンネームがなきゃな。」

ヨシュア
「ラゴウ、、、昔はそう名乗っていた。母さんがつけてくれた、俺の誇りの名前だ、、、」



今の記憶を失い、過去の記憶を取り戻した。まったく別の記憶で愛しい人を忘れたことすら知らない。

時の流れに逆らうかのように、彼は過去の記憶で今を生きる。






第十話へ続く






あとがき

最近生活ペースが乱れ気味。ネタはあるのに書く気が起きない、、、いや、本文じゃなくあとがきのはなしっす。
作者:ミストさん