サイドストーリー

ナインブレイカー 〜再生〜

OT訓練施設敷設ガレージ AM8:00

右腕はだらんと垂れ、左腕は蜂の巣。
コアも蜂の巣一歩手前。
アイカメラに光は灯っていない。
狂気の巨人と化し、破壊された『SHOT』は静かに横たわっていた。
その深緑のボディペイントはマシンガンの弾に抉られ、ENによって溶かされている。
カークはレイヴン一人一人に用意されるガレージの中で、整備主任と二人で使えるパーツを選別している。
ほぼスクラップ状態の『SHOT』から使えるパーツを探し出すのは困難を極めた。
「ん〜〜。フレームは完全にダメだな。腕部・脚部・コア共に全損。爆発しなかったのが不思議なくらいだ。」
「そうか・・・」
確かに素人目に見ても、この破壊模様では無事なパーツは無いように見える。
「これを機にフレームを一新してみてはどうだ?」
整備主任はパーツリストを呼び出し、カークへと手渡す。
「・・・考えておく。」
カークは「新型パーツ!」と表示されているパネルを持ったまま、「SHOT」へと向かう。
「戦闘データとOSを引き出してくる。」

慣れたいつものシート。ゴムが磨り減り、自分の手の形に吸い付くような感触の操縦桿のグリップ。
警告を出してくれるAIの声が出るスピーカー。
これら全てひどく懐かしく思えた。
元気に動いてくれていたこの機体とも、今日でお別れだ。
カークは補助電源を作動させ、OS及び戦闘データをディスクへとコピーする。
あらゆる死線を潜り抜けてきた第二の体。
その「記憶」が全てディスクへと移送されてゆく。
ピン、と電子音が鳴り、コピーを完了した事を伝える表示が画面にでる。
パネルに手を伸ばし、本体に残った記録を全て抹消する手続きを済ませる。
     Delete? →【YES】  【NO】

「・・・さようなら、だ。」
AIは答えない。だが、これが自分を生かし続けてくれてきた者への手向け・・・
パネルを軽く叩き、カークは本体に残った機能を全て抹消した。


レイヴンにとって機体のフレームを変えることは一大事である。
戦闘スタイル自体が変わる事もあるし、さらに性能が上がり自らの手に余るような代物になる可能性もあるのだ。
パーツリストを見ながら、カークは今までの戦いを振り返る。
カークの戦いには『高機動』『一撃離脱』『精密砲撃』の三つの代名詞があった。
まず、『高機動』で敵の攻撃を回避しつつ距離を詰める。その際ロケットによる『精密砲撃』で牽制及び削りを行う。
そして『一撃離脱』を着実に守り、ショットガンを放った後ブースト及びOBによる離脱を行う。
また、『高機動』を利用し空中からのショットガン乱射によるラッシュをかけることもある。
パネルを見つめ、自らの新しい機体に思案をめぐらすカークに通信が入る。
「カークだ。」
『カイです。今、ガレージに凄いのがきてますよ。』
「・・・何?」
凄いの、とは一体?疑問を抱きつつ、カークは「SHOT」のハッチを開け外へと出る。

「SHOT」のハッチからのっそり出てきたカークは、そこにあるパーツを見て目を疑う。
今まさに「新型パーツ!」として売り出されているEYEシリーズの最新型・・・
『CR−H05XS−EYE3』が、搬入されていたのである。
「カイ、これは一体どういうことだ?」
『SHOT』を降りながらカークは搬入された頭部パーツを見つめる。
「いやー・・・先ほど私のほうにメールがありましてね。」
「『復帰祝いにコレを送る。早く私の元まで昇ってこい。』って・・・」
「イツァム・・・ナーか。」
どうやらナーはカークに興味を持ったらしい。そうでなければこのようなパーツをよこしたりしないだろう。
「フン・・・ありがたく使わせてもらおう。」

早速ガレージでACをくみ上げる作業に入る。
ガレージが慌しくなり、第2ACアセンブラリにパーツが次々と搬入されてゆく。
とりあえず今までの戦法でいくことにし、そして・・・

頭部:CR−H05XS−EYE3
コア:C04−ATLAS
腕部:CR−A82SL
脚部:LH09−COUGAR2
ブースター:B05−GULL
ジェネレータ:G01−LOTUS
ラジエーター:ANANDA
FCS:MONJU
エクステンション:JIREN
右肩武装:WB10R−SIREN2
左肩武装:CR−WB72RO2
右手武装:WR07M−PIXIE3
左手武装:CR−WL88S2
左手格納:WL14LB−ELF2

ロケットを使用する戦法は変わっておらず、右手にマシンガン、左手にショットガンを装備し火力を引き上げた。
格納にはいつもと同じように、ELF2が入っている。
とりあえずこの機体構成でくみ上げることにし、後はガレージに任せる。

「カークさん。こいつの機体名は何にするんですか?」
「SHOTは・・・もう、居ない。名前は変えるつもりだ。」
「そうですか・・・どんなのにするんですか?」
「まだ決めていない。」
「ふ〜む・・・   『BUSTER』、なんていうのはどうですか?」
「『BUSTER』・・・か。」
「いい名前だな。」

新しい相棒が、組み立てられていく。
待ち遠しい気持ちと、自らを恐れる気持ちが交錯する。
しっかりと拳を握り、EYE3のモノアイを見る。
彼の戦いは・・・これから始まる。


あとがき
新型ACのお話。
実際に使っている機ですが、イレギュラーナンバーが無いレギュなら素敵な機です。
暇なときに『ブレッド・レイン』になってみてくだs(炸裂音
作者:カーク・ショットさん