Knockin' on heaven's door 〜 side B [Pushing the sky] 〜
Knockin' on heaven's door
〜ARMORED CORE3 Artificial Sky〜
〜 side B [Pushing the sky] 〜
飛行機雲で思い出す
空の上 雲の海を過ぎた先
空の向こうに 本当の空がある
空は青くて 夜はライトの代わりに
綺麗な月と星の光が空に輝く
飛行機雲を見た時に 彼女から聴いた
子守唄
今日も俺は 空を見上げ 目を瞑り
笑顔の彼女を思い出す
だけど風が吹き抜けて
いつの間にか 消えていた
そして空の扉が開いて
天国からの使者がくる
幾多の街を 瓦礫と骸で埋めながら
死を蒔いて 破滅を咲かせ
紅い焔は 自由を奪い
別れの道で 戦いの狼煙を上げ
それは飛行機雲を思い出させて
俺の心を肉ごと剥がす
その時 煌き広がる鉄の屑
灼熱の滅波流れる戦場で
紅に点る俺の瞳
張裂けた痛みを共に 俺は撃って
もっと多く
一瞬でも多く
もっと
本当は どうでもいい
この苦しみは
癒せはしない
大きな声で
泣叫び
神を呪う声で喉を灼いて
天の扉を仰いで
溢れた涙が零れ落ちる
メインシステム
戦闘モード 起動します
レイン:
通信が入っています
クレストの代表者からのようです
クレスト代表者:
君が何を求めているのか
我々にはわかならい
たとえ
この深い地の奥底を
火の海に変えて
地獄へ落とされ その中熱に身を焦がそうと
クレスト代表者:
秩序を打ち壊すことで、
何が得られるというのか
指先に力を込められる限り
クレスト代表者:
だが、我々には
もう君を止められない
俺は銃爪を引き続ける
クレスト代表者:
行くがいい、そして
君が為したことが何を生むのか
それを見届けるがいい
もてるものを全て投げ出し
神を呪う声で喉を灼き
苦痛に顔を歪め どんなに嘆き泣き叫ぼうが
どんなに血反吐を吐き尽くそうが
天の扉を叩き続け
開くまでずっと叩いて叩いて
叩いて扉をぶち破る
たとえ
この深い地の奥底の
秩序を打ち壊して
地獄へ落とされ その中氷に身を砕かれようと
脚に力が込められる限り
俺は地を踏み立ち続ける
レイン:
管理者の本体は強力なシールドで
ガードされています
直接の破壊は不可能です
四角い心臓 四角い魂が
俺をこの世に留める限り
レイン:
柱の中央に熱源を感知
管理者へのエネルギー供給源と
思われます
破壊してください
体が
心が
命が
レイン:
エネルギー炉です!!
あれを破壊すれば、管理者への
エネルギー供給は止まるはずです
バラバラになっても
彼女の願った
青空を見るまで
天の扉を叩き続けて
開くまでずっと叩いて叩いて
叩いて扉をぶち破る
管理者:
機関ユニットの破損率が・・・
90%を越えました・・・
エネルギー供給率・・低下・・・
再生プログラム・・・
最終レベルへ移行します・・・
地上への・・・
ゲートロックを・・解除・・
本命令の実行を・・・もって・・
プログラムの・・・
全行程を終了・・・
管理者:
システムを・・・停止します・・
レイン:
今の言葉は一体・・・
地上・・・?
俺は
いつか 彼女が夢見た
空の向こう
そのまた先の
遥か彼方の
天の扉を 開けた先
その上に広がる 本当の空
無垢なる青空
彼女が失くした
自由
懐かしい
未来に
彼女と一緒に
・・・・・・・・・
輝く 雲
その合い間から射す光
天の扉が開いた先に
本当の空は確かにあった
彼女が夢見た 無限の青空
本当の空気に 本当の風
本当の大地に 俺は寝そべり
草の匂いを 噛みしめながら
空を眺めて 目を瞑った
Epilogue
陽の光をいっぱいに浴びた大地は
とても暖かい
風が聞こえ
靡いた草と一緒に 頬を撫でてゆく
「―」
その時、俺は呼ばれた。
まさか、な。
瞼を開けると―
「Hi 元気してた?」
寝ている俺の足先に女。
俺は女をじっと見る。
足にはハイヒール、丈の短いブラックレザーのタイトスカートを穿いて、
モスグリーンのタートルネックのセーターに、
白いノースリーブのジャケットを羽織り、髪の毛の色は金。
後ろ髪を頭の後ろで束ねて、短くまとめている。
女にしては背が高く、体はしなやかな美しい筋肉に覆われ、猫科の猛類動物を思わせる。
魅力ある肉厚の唇が悪戯っ子のように緩んで、細めている瞳は黒い。
その眼はなんとも言えない雰囲気を醸し出していた。
―魔性の女。
「……ああ、元気さ。
MTを腐るほど撃ち壊して、
ACを何機も叩き潰して、
企業の施設とか戦地になった市街地を2、3粉々にして、
クレストを無視して突っ走って、
大ハッスルこいて、自然区のアヴァロンヒルにでっかいクレーターつくって、
今さっきは管理者をグレネードで吹っ飛ばしてきた」
全部、ここに来る為だ。
「相変わらずね」
―笑顔。
「お前は―」
「―ねぇ、これから世界はどうなるかしら?」
何度も聞いたフレーズ。
「…」
「いくら私達が戦い続けても、争いや貧困は決してなくならないわ。
むしろ酷くなっていく。
もしこのまま行けば、どんなに広大な資源を得ようと、
人はそれを使い切る前に、自滅。滅亡よ」
「そんなの…分かるかよ」
「へぇ、どうして?」
「まぁ、そうかもしれないな」
「ちょっと、どっちよ?」
「どっちだって良い」
「…」
「世界がどうのとか、人が滅びるとか、
俺にはケツから出てくるもんと一緒だぜ。
人は皆、好き勝手にやって自分の思うことしかやらない。
それで? 俺達が何したって、どうなるもんでもないだろ?
他人のことなんて、面倒だけだ。どうだって良いじゃないか」
「じゃあ皆が死んでも構わないっていうの?」
「…」
「私は嫌よ」
黙る俺をよそに、彼女は続ける。
「皆死んじゃったら、私の人生が楽しめないじゃない。
人生は一度きりの遊園地よ。
途中退場も入場券の払い戻しだってできないんだから。
それなのに――楽しまない手は無いわ。
どんな結果が待っていようと、
私は人生を楽しみぬくって決めてるの、とことんね」
腰に手をあて、熱弁する彼女。
「…」
判ってる。彼女はいない。だけど―
「だから、私はレイヴンになったの」
そうだった。
「何ものにも縛られない…?」
俺は訊いた。
「Yes!」
彼女はそう言って、笑顔を見せる。
「じゃあ、手品の練習で睡眠時間に追われてるお前は、レイヴン失格だ」
彼女は手先が器用だった。
手品が上手かった。
「昼寝するからいいのっ! それに手品は副業よ。
こんな殺伐とした世界に、夢や希望を与えるってやつよ、子供達とかに」
腕を広げて自慢げに語る。
街を歩いていた時も、
近くに子供が通る度に手品で花をあげていた。
「ひでぇな、あれで金とるのかよ、しかもガキから?」
「親からとるに決まってんじゃない!
ああ、そりゃあ…親のいない子だっているから…だから副業なのよ。
でも何!? 私の手品のどこが悪いってのよ!」
彼女は手品で、誰からも金を取らなかった。
それでどこが「副業」なのかと訊いた時もあった。
「あの胡散臭いメガネとか衣装とか―」
手品師としての正装は本当に酷かった。
紫のスーツに、太い黒縁の伊達メガネ。
変な形のテンガロンハット。
嘘じゃない本当だ。
「手品と関係無いじゃない!」
「大有りだ。センスの問題だな、それに―」
彼女が迫る。
「ちょっと黙りなさい」
彼女は急に圧し掛かり、キスをしてきた。
何度も重ねた、記憶と同じ。
俺は抱きしめようとするが、何故だか腕が上がらなかった。
彼女の唇が離れる。
「…うるさいからよ」
「教えてくれ」
「なに?」
「悲しくて哀しくて、どうしようもない時はどうすればいい?」
「…泣けば?
夜通しワンワン叫べば、明け方頃には疲れてぐっすり眠れるはずよ。
夢なら楽しいことだって、見られるものよ?」
彼女ほどの楽観主義者を俺は知らない。
「お前のいない、お前を殺した、この世界が死ぬほど憎かったらどうすればいい?」
どうすれば良かったのか判らない。
憎い、悔しい、苦しい、どうにかしたい。
どうしようもない。
どうやったって、この感情は言い表せない。
「ふふ…スッキリするまで、世界を片っ端から全部壊しちゃえば?
管理者だって吹っ飛ばしてきたんでしょ?」
全部…?
「良いのか?」
「…貴方には…できないわ」
いつか見た、朝起きた時の優しい微笑。
駄目だ。
「……そうだな」
「そうよ」
限界だ。
胸が締め付けられる。
我慢できない。
目頭が熱い。
どうやっても、彼女を思い出す。
喉が痙攣寸前で、叫びたい。
今すぐ彼女を抱きしめたい。
「ルシー、俺は…もう…。
分からないんだ…これか…ら…どうすればいい…?」
生暖かいものが頬を伝う。
「…一人で歩くしか無いわ。
シャキッと胸を張って、後ろなんか気にせず、どんどんどんどん前に進んで。
大丈夫、貴方の背中は観ててあげるから――ね、ダメ?
そうね…もし…どうしても、振り返りたかったら振り返れば良いわ。
私は手を振ることしか出来ないけれど―思いっきり振ってあげるから。
とっておきの手品も見せたげる。
それでも……辛くて苦しくて…膝が折れそうになったりしたら、
支えに、心に突っ支い棒を仕込むと良いわ。
空の元気って書いて『空元気』って、突っ支い棒。
タネも仕掛けも無いんだけど…効果バツグンよ?」
そう言って彼女は、俺の頬を優しく撫でた。
「ふ…くく……悪く…無い……な…名案…だ…」
ことばがつづかない。
息が苦しい。
目が痛い。
喉が痛い。
俺は子供みたいに噎び泣いている。
「でしょ?
でも気をつけてね。
う〜んと強い支えにしとかないとダメよ」
彼女が頬から手を離し、翻す。
すると、手から小さい赤い花が1つ出てきて、
俺は濡れた手でそれを受け取る。
ここは地上。
彼女との約束の地。
この青空の下で、緑の大地で、
息をしているのはこの俺だけだ。
次の風が吹く頃に、既に彼女は消えていた。
―掌に赤い花も、ない。
俺はACに乗り込んで、ジェネレーターを起動する。
飛びたかった。
涙で視界が滲んで、よく見えない。
だけど、この大地に邪魔なものは一つもない無い。
―コンソールに飾られた色褪せた赤い花を見る。
ブースターを一気に噴かして、眩い空に飛び立った。
叫んだ―
俺の咆哮がコクピットに響き渡る。
声を出して、大きく泣いた。
空をどんどん突き進んで。
雲を抜けて。
地面が見えなくっても、
それでも進んで、
俺は泣きながら飛び続けた。
飛びたかった。
天井のない、
無限の空を知りたかった。
彼女の空を知りたかった。
辺りは真っ白で、
ビルより大きい雲が幾層にも重なりながら、見渡す限りに覆われている。
太陽の光でより一層の白さを増しながら、
所々、自らに自らの影を作り出し、その陰陽が何ともいえない質感を生み出している。
上は真っ青の空が広がり、その蒼さに吸い込まれそうだ。
ここの景観は目を見開く程美しい。
それでも俺の嗚咽が止むことはなかった。
俺は生きる。
俺を後ろで観てる、彼女の思い出と共に。
再び、震える声が喉を灼く。
俺は空を飛び続けた―
風が吹いて彷徨う記憶
戦い生きた
彼女の記憶
今日も俺は 彼女を真似て 手を伸ばし
空飛ぶカラスを手に掴む
だけどカラスはすり抜けて
青い空へと翔けてゆく
たとえ
見渡す世界が敵になり
苦界で憂き身が
歩き疲れてうなだれようと
彼女の信じた暮らしために
弱気な心に蹴りを入れ
俺は天の扉を叩き続ける
四角い心臓 四角い魂が
いつか壊れて 飛べなくなっても
終わりじゃない
体が
心が
命が
全て尽き果てるまで
その最期の時まで
俺は戦いたい
いつか
彼女が夢見た
自分さえ捨ててまで選んだ
戦いの向こう
遥か彼方の一握の平和
無垢なる混沌
人が失くした
楽園
誰も知らない
彼女の居場所に
辿り着けたなら・・・
さよなら ルシー
俺の愛しい レイヴン
またいつか
天国で逢おう
Knockin' on heaven's door
end
あとがき
はい、読んでいただきありがとうございました。
初めての方は、はじめまして。知っている方は、これからも宜しくお願いします。
いかがだったでしょうか?
もう判っているとは思いますが、これはAC3のオープニングを題材としています。
3オープニングの描写は既に著名人がいますので、避け、
あの映像を見ながら、音楽に、もし私が歌詞をつけるとしたら―
ということを思いついて詩形式で書いてみました。
この製作工程は、私個人としてはちょっと新しく新鮮でした。
あと一応、SSとしてのストーリーもとっておきました。
単なるSSとしてもお楽しみ頂ければ幸いです。
さらに「面白い」と思って頂けたら嬉しい限りです。
さて、補足説明を。
「side A」
これはオープニング「Artificial Sky」で。
「side B」
これは判ると思いますが、エンディングです。
エンディングにはエンディングの「Artificial Sky」が流れてますので、
それをオープニングと対比させた感じで。
ついでに言うと、
「side A」の詞の中には、AC3のサントラの曲名が一部入ってます。
他にも色々遊んでいる面も。
気付かれましたでしょうか?
今後も精進を重ねて頑張っていきたいと思います。
誤字脱字、文字化けがあったら御免なさい。
では、機会があればその時にまた。
AC3のオープニングを観ながら、飲まず食わずで、
Akiko Graceのアルバム「東京」の
「東京狂詩曲」を聴きながら
2004/12/02
作者:E&Iさん