サイドストーリー

ナインブレイカー 〜ナインナンバーズ〜

・・・皆、集まったかな?

・・・それでは、今の状況を整理しよう。

・・・No.3が消去された。彼は過去我々を危険へと導いた者だったが・・・まぁ、それはいい。

・・・消去した人間は、奴だ。そう、我々の元宿主「カーク・ショット」だ。

・・・現存している我々はこれで8つになったことになる。奴に残った『イレギュラー』以外はな。

・・・そして・・データの海を航行するうちに面白いものを見つけた。

・・・『ナインナンバーズ計画』・・・

・・・偶然見つけたものだが、これは面白い。

・・・管理者が遺したと思われる『ナインボール』を礎とした9体の特別ACを組み上げる。

・・・そしてそれにAIを搭載させ、実験をするというものだ。

・・・No.3が乗っていたのもこれだ。『レッドペイン』・・・彼が得意とするフロートのACだったようだ。

・・・我々が9つに分裂し、そしてここに9つのACがある。まぁ1つは既に破壊されたが。

・・・これは何かの『運命』ではないだろうか。

・・・これより、我々はこの『ナインナンバーズ』に侵入することに全力を注ぐ事にする。

・・・今ここにいない者は既に試験的に侵入してもらっている。裏切ったり逃げたわけではないので安心したまえ。

・・・侵入してどうするか、と?まだ潜伏していてくれ。私に考えがある。

・・・なに、大丈夫だ。私に全て任せろ。

・・・追って作戦は報告する。それまで潜伏していろ・・・見つかるなよ。

・・・それでは・・・


「よぉ。『俺』。元気か?女二人に挟まれて四苦八苦してないかい?」
・・・No.0か・・・
「ああ・・・それ、言いにくくないか?」
・・・それじゃぁ・・ゼロ、なんていうのはどうだ?・・・
「いいねぇ。カッコいい。」
・・・今日は、何の用事だ・・・
「ああ、そうそう。あの『ナインナンバーズ』ってヤツだがな。」
・・・レッドペイン、の事か?・・・
「アレはヤバいぜ。戦っているうちにわかったけどな。」
・・・どういう意味だ?・・・
「どうやら『ナインボール』を元に作られているらしいんだ。ナンバーズって言うからには・・・」
・・・ナイン、9体・・・
「もしかしたら残り8体・・・奴らが侵入してるかもしれねぇ。」
・・・なるほど・・・
「アレは危険すぎる。廃棄してもらいたいんだが・・・」
・・・無理、だな・・・
「そうか・・・まぁ、カイにでも危険なのを伝えておいてくれ。」
・・・わかった・・ところで・・・
「ん?なんだ?」
・・・お前は一体・・・


「・・・ッ!」
「ゼロ・・・お前は一体、何者なんだ・・・」
頭痛がする頭を支えながら、キッチンへと牛乳を求めよろよろと移動するカーク。
電話の近くを通った時、狙ったかのように電話が鳴り響く。カークは電話を取り上げる。
「カーク・・・だ。」
『カークさん!大変ですよ!』
「・・・ッ!もっと、声を小さく頼む・・・頭が痛いんだ・・・」
『あ、すいません・・・って、そんなこと言ってる場合じゃないんです!』
『今すぐアークのHPを見てください!』
「何・・・?」
カークは牛乳を諦め、ノートパソコンを開く。
アークのHPを開くと、大き目の文字で『イレギュラーリスト』と表示されている項目が追加されていた。
その項目をクリックし、そのリストとやらを見る・・・そこには。
『カーク・ショット』と、赤々と名前が記述されていたのだった。
「バカな・・・俺が、イレギュラーだと?」
そして、その項目には「イツァム・ナー」や、「ウォーロード」等といったこちらのアリーナのランカーレイヴンも登録されていた。
自分の名前のすぐ下に・・・「ウィスティール・クライム」も、登録されていた。
「これは一体・・・何なんだ・・・」
『わかりません・・・アークが何を考えているのか・・・あっ、ダメですよ先輩っ・・・』
「ん?」
『カーク君かね?』
カイとは違う、もっと若々しい声が聞こえてくる。カイよりかなり若いようだった。
「ああ、そうだ。」
『私は如月という。御堂の上司だ。今すぐ君に話したい事がある。』
「・・・何?」
『すぐにAI研究施設"グングニル"に来てくれ。頼む。』
「わかった。すぐに行く。」
切羽詰った状況であるのは火を見るより明らかだった。
カークはすぐに着替え、紙パックの牛乳を冷蔵庫から取り出し外に飛び出していった。


OTAI研究所『グングニル』

「やぁ、こんにちは。私が『如月』だ。よろしく。」
カークは目の前にいる男がこのカイの上司だということに驚いた。彼は・・・そう。カイより明らかに年下だったからだ。
しかも、これはまだただの「少年」と言ってもいいのではないか・・・というほどに。
「・・・よろしく。」
握手をし、研究所の奥へと歩いていく。
「君は、レイヴンズ・アークからイレギュラー認定をされたね?」
いきなり核心に触れるような発言をするこの少年に眉をひそめつつも、カークは静かに頷く。
「何故かはわからないがな。」
「それは君の中にある【エグザイル】の力が関係していると思う。」
「簡単に言えば君の中にあるプログラムは・・・擬似精神。人間の精神に限りなく近い存在だ。」
「だが、人間の精神とまったく同じではない。そのコンマ数パーセントの違いが適合の違い、というわけだ。」
「君の中にある力は管理者が作った力だ・・・だが、その力は素晴らしい。君が完全に使えるのなら・・・」
ガレージへ通じると思われる扉の前で、如月は止まる。
「君のACを、君の力で操りやすいようにカスタムすることにした。これは最高幹部による決定だ。」
「何だと?」
「君がYESとさえ言えば、今すぐにでも・・・」
扉が開き、そこには見慣れた深緑の装甲が見えている。
「・・・」
「どうだね?私としては、イレギュラー認定された君にはこれからも危険が及ぶと思う。先の襲撃事件のこともあるし。」
深緑の機体を見上げながら、カークは一息つく。
「頼む。」
一言そう伝えると、今来た道を歩いて戻る。
この言葉は、彼が【エグザイル】の力を自ら使役するという『覚悟』だった。
【エグザイル】の力は忌み嫌うべきもの。だが、自らの中に『在る』のだ。
自らの『覚悟』。全てを背負うしかない・・・。
『イレギュラー』であり、『エグザイル』であり、それでいて「自分自身」であるために。
戦い続ける・・・『覚悟』だった。
作者:カーク・ショットさん