サイドストーリー

輸送車両護衛(前編)
ビルの影にACが潜む。
「残弾は…半分切ったか」
致命傷にこそなってはいないが、被弾の後が所々にある。
レーダーで確認するとビルの向こう側に赤い点、少し離れた所に緑の点が一つ。
赤いのは恐らくさっきのタンク型のACだろう。
「くそったれ、何故こんなことに…」

(ねぇねぇ、いい仕事あるんだけどやってみない?)

バカみたいな声が頭をよぎる。
あいつは何とかなるだろうが、こっちは厳しいな。ったく、金欠だからって気安く受けるもんじゃないな。


ガレージの中でバカみたいに叫ぶやつがいる。
「おーい、ランスー!」
手をぶんぶん振りながらネロが走ってきた。
「ねぇねぇ、いい仕事あるんだけどやってみない?」
「依頼か…内容は?」
「明日、輸送車両の護衛。依頼主は別にいるんだけどさ、やらない?今月、もうヤバイんでしょ?」
「確かにな、場所はどこだ」
場所は研究開発地区のバルガス空港付近。バルガス空港といえば、数日前ミサイルの強襲を受けたとニュースで見た。
最も、向こうもレイヴンを雇っていたため大事にはならなかった様だが。
ま、もし飛んできてもミサイルくらいなら何とかなるかな?
「判った、手続きを済ませてくれ」
了承の意を示す。
「大丈夫、もう二人分申し込んだから」
…こいつ他人名義は犯罪だと知ってるのだろうか。
「そうか、もし俺が断ったらどうするつもりだったんだ?」
まともな回答を期待してるわけではないが一応聞いておく。
「んー、さぁ?断るなんて思ってないから」
期待どうりの回答だった。
「じゃあ明日10時に第四格納庫集合ってことでよろしくー!」
詳しい資料を渡して来た時と同じように元気に去っていった。
あいつと一緒なのが不安でしょうがないが、護衛任務で20000Cは今は非常に助かる。
これ以上生活費を切り詰めるのは、さすがにきつい。ここはネロに感謝しなきゃな。

翌日、格納庫に着くと既にネロと輸送機の運転手が到着していた。
恐らく任務にあたっての注意点などの確認だろう。
「あ、ランスこっちこっち」
「ずいぶんと早いんだな」
「そうかな?時間ギリギリなのもどうかと思うけど?」
時計を見ると9時57分を指していた。
「じゃあ、そろそろ出発だね。頑張って」
どうやらこいつとは別行動らしい。ま、その方が色々心配しなくてすむのだが。

その後輸送機で目的地に送られた俺を待っていたのは一台の輸送車両とその運転手らしき人が一人。
「それでは施設までの護衛、頼んだぞ」
作業服がやけに似合う運転手が車を走らせる。俺はその少し先を先行する形だった。
途中MTの邪魔が入ったが、苦戦することなく退けていった。
「妙だな…」
MTが輸送車両を襲うのは別におかしくもなんとも無い。が、その数や襲ってくる間隔に不審な点が見られる。
中には撤退して行った機体もあった。別の目的があるのか、もしくはACがいるかだが…
その時レーダーにこちらに接近する赤い点が一つ。
「AC、エアを確認」
同時にオペレーターの通信が入る。ACか…あまり損害は出したくないところだが、そうもいかないらしい。
「AC!?こちらはスピードを上げる。何とか守りきってくれ」
輸送車両が加速するが、このままではすぐに追いつかれるだろう。相手は軽量二脚か…まずい。

(輸送車両一台にACアンバー…話と違うがまぁいい、任務を遂行するだけだ)
ライフルの銃口を向ける。が、その前にミサイルが放たれていた。
ライフルを構えるのを止め、回避行動に移る。
「さすがにミサイルだけじゃ無理だよなぁ」
スナイパーライフルを構え乱射する。装甲に穴を空けるに留まったが、間接部に上手く当たったらしくエアの左肩が火花を散らしていた。
(なかなかやるが…甘いな)
瞬間、エアがオーバードブーストを発動させ、凄まじい勢いで突進してきた。
間一髪で避けたものの、ランスの横を過ぎた敵はなお速度を緩めない。
「くっ、しまった!」
あわてて旋回すると敵はこちらにライフルの照準を合わせていた。
「!?」
敵の行動に驚きランスの動きが鈍る。
ライフルが火を噴き次々に被弾する。
「く…そっ…」
(もらったな……反応がもう一つ!?)
「熱源を感知AC、クリッセンを確認」
「ネロかっ」
オペレーターの通信よりもなお早くグレネードが飛んできた。
(ぐっ!くそ、よりによって。……ここまでだな)
腕部に被弾したエアはそのままオーバードブーストで撤退していった。
暫くしてグレネードが飛んできた方角から四脚ACがやってきた。
奴と合流し、任務を続行する。
作者:Klissenさん