サイドストーリー

VOL,02 邂逅 (前編)
それはありふれた任務だった
キサラギの前線基地を襲撃し、部隊を無力化させる事。

依頼主のミラージュにとって、キサラギはクレストとは別の意味で厄介な存在だ。
奴らは未知の物は何でも掘りかえさねば気が済まない。
元々俺達の祖先が宇宙放浪をするハメになった理由も奴らの暴走が発端だと囁かれている。
プラントの技術が無ければ誰もが奴らを宇宙に放り出しただろうに・・・
キサラギ嫌いの俺は二つ返事で依頼を引き受けた。


「作戦領域はまだまだ先だ。もう少し休んでいったらどうだ?」
輸送機パイロットの誘いをやんわりと断って、俺はACハンガーに向かった
神経質な訳ではないが、念には念をだ。今回は歩合制だしな。
ACに乗り込みアイドリングを開始する。調子は上々だ
ミラージュの多機能構成に加えて今回は敢て右腕にカラサワを装備してある。
時代遅れの骨董品だが、脅しには十分な威力だ
ミラージュの意思を狂信科学者の集団に伝えると云う意味においても・・

ズガァァァンンン!!! 

突然の衝撃が輸送機ごと俺のACを襲った
機が見る見る傾斜し、機内の積荷が四散する。
「おい!状況を説明しろ!」
俺が喚くと同時にパイロットからの通信が入る
「判らんが地上から攻撃を受け・・・あぁ畜生ぉっ!制御できん!!」

地上攻撃!? 馬鹿な、ここは未開発地域だろうが。第一俺の背部レーダーさえ何も捕捉していない・・!
思考するまもなく輸送機は墜落を始めていた
「今のうちにACハンガーを開放しろ!俺はそこから脱出する!」
俺は素早く高度を確認した。ギリギリだが大丈夫だろう・・
「了解した、ロック解除、お互い幸運を!」
大きく開け放たれた輸送機ハッチに向かい、俺は積荷を押し退けフルブーストで飛び出した

眼前に迫る緑のジャングルの中、俺は何とか着陸態勢を取り、衝撃に備える。
ゴッ!ガリガリガリッ!ガガガッ!!
予想外の堅い衝撃にベルトが身体に喰い込み俺は苦痛に舌打ちする。何だ、巨大岩石にでも乗り上げたか?
同時に焼け爛れた輸送機の積荷が周囲に落下する。
思わず上部モニターを確認すると、断末魔の輸送機から銀色の救命ポッドが射出されたのが見えた
どうやらパイロット達も脱出に成功したらしい。
ホッとすると同時に俺に新たな緊迫感が満ちてくる。パイロットは確かに地上攻撃を受けたと言っていた。
ならば敵も近くの筈だ・・・

だがシステムは依然オールグリーン。辺りに反応は見つからない。
一応状況報告の為に俺はコーテックスに連絡を入れた
  ・・? 何だ、ヤケに通信が乱れる・・
イライラしながら受信感度を最適化する為に、俺のACは足場の岩山を飛び降りた。
    「・・・・・・!!!」
一瞬すべての思考が吹き飛ぶ


これは・・岩山なんかじゃない・・・


俺が着地したのは紛れも無い巨大な建造物の上だった

しかしこれは我々のものでは無い
ミラージュでもクレストでもキサラギでも・・ ましてやヴァーダイトの物でも無い
我々人類がこの惑星に降り立ってたかだか半年足らず。
ジャングルの緑に半ば埋もれたソレはどう見てもはるか昔の遺跡じゃないか・・

やがて通信が回復し、俺は若干興奮気味に状況を報告した。
「・・了解しました、直ちに依頼主に送信します。・・・ミラージュの返答があるまで待機して下さい」
場数を踏んだベテランオペレーターの声も震えていた



                邂逅 (前編) 完
作者:キングスフィールドさん