VOL,02 邂逅 (後編)
緑のジャングルの彼方から大型ヘリの一群が向かってくる
ミラージュの先遣調査部隊だ。
ラボコンテナを吊り下げているという事は大方研究員達も同乗しているのだろう
最初の報告から既に3時間が経過した
思いもよらない大発見に依頼主のミラージュ首脳陣も色めきかえった。
彼らはコーテックスを通じて、俺に潜入調査への依頼切り替えと破格の報酬を提示して来た
勿論断る理由は俺に無い。
いや、むしろこの偶然に感謝さえしている
之でうだつの上がらないB級ランカーともおさらばだな・・・
「準備完了です、では我々は此処でモニターしておりますので」
ミラージュ調査部隊長の通信が入る
カラサワを軽く挙げて了解の合図を送り、ACを前進させる
調査隊が開けてくれたゲートから俺は暗闇へと足を踏み入れた。
新型の暗視解析機能のお陰で状況把握は容易だ
しかし、何て広さだ・・・・
次々と現れる回廊に眩暈すら覚える。
俺はマップメモリーを注視しつつ、先に進んだ
未知の古代遺跡と云うのは、俺達の嘗ての母星にも存在した事は過去の文献で知られてはいた。
しかし其れはあくまで過去の人類の痕跡であったと記録されている
今俺が直面しているのは、紛れも無い異世界の住人達の産物だ。
凡庸な俺でもある種の感慨を覚える。俺たちと同じ知的生命体との初邂逅・・・
石造りの回廊の所々には機械的な構造物が埋め込まれており、記されている文字は明らかに我々のものとは異なる。
それでもエンブレムと思わしき同じマークが定期的にはめ込まれているのは解る
・・角ばった青のマークと丸状の赤のマーク・・
まるでクレストとミラージュをそっくり逆にしたような組み合わせのエンブレムだな。
それも調査隊に送信し、俺は先を急いだ
次第に地上との通信が途切れてくる
センサーには何の熱源反応も現れてはいないのだが・・・
やがて行動可能時間ギリギリで俺の進む本道は行き止まりとなった。
目の前の巨大な鉄の扉はは様々な瓦礫で埋め尽くされている。
ホッとした俺は調査隊に通信を入れようと試みた
・・クソッ、深く潜りすぎたか、・・・
繋がらない無線をまたもや最適化している間、ぼんやりとモニターを見ていた俺はふとあることに気が付いた。
思わず背骨が軋んだ音を立てる
暗視システムには其処にあるはずも無い「もの」が写っていた。
いや、正確には「彼ら」だ
扉の前を覆いつくしている瓦礫達は明らかに見覚えのある形状をしている
多種雑多な角ばった鉄の塊・・・・
これは・・・まるでACじゃないか!
そんな・・幾らなんでも馬鹿げている。なんでこんな大量のACの残骸が此処にあるんだ!?
それにどう見ても彼らも長い年月を経た代物で、半ば苔むしている。
更に注視すると類似してはいるが我々のACとはどれも若干の相違点が見受けられる
つまり之はこの星の文明の・・・
「ピッ ・・」
突然の警告音で俺は我に変える
微弱な・・・熱源反応が・・
遺跡と化した古代のAC達に遮られた扉の向こうからの信号をセンサーが探知している
一瞬迷いが起こる。行くべきか、それとも・・・
システムを再確認した俺は弱気を振り払った。たとえ何があっても所詮古代遺跡の残骸だ
どうせなら追加報酬の土産も欲しい・・
扉の前のAC達をブレードで振り払い、何とか進入経路を確保する
巨大な開閉装置にカラサワを何度も撃ち込み、ゲートを押し開く。
俺は迷わず信号源を確認すべくACを滑り込ませた
そこは巨大な暗黒のドームだった
周り中壁一面に奇妙なACと思しき同一の兵器が格納されているのを見て、俺は思わず戦慄する
素早く広角のFCSで状況確認を行い、無反応な事に思わず安堵の息が漏れた
ドームの中央にその中の一台が頓挫しており、信号は其処から出ていることが確認出来る。
近ずくと色褪せた赤色のそれは明らかに表の古代ACとは異なっていた
半ば破壊されているものの、背部には飛行用の翼と思えるギミックが装着されており、禍々しい多連装ミサイルポッドも
確認できた。機動力をも兼ね備えた恐ろしい重武装兵器らしい・・
通信遮断状態の為、証拠として頭部部分を切り離そうとブレードを振りかぶる
「ヴィヴァァァァァァッ!!」
え、・・・?
虹色の閃光が何の前触れもなく奔り、ACの左腕がブレードごと吹き飛んだ
切り離そうとした奴の頭部が青色に点灯している
右手ブレードの残光を振り払いつつ奴は立ち上がった
「なっ・・!!」
パニック状態になりながら、俺はカラサワを後退しつつ乱射した
蒼の光弾が色褪せた赤い胴体に何発か当たったが、奴は一向に怯まない!
恐怖に駆られた俺は背部ミサイルを乱射しつつ、ゲートに向かう
翼の折れた奴になら何とか逃げ切れると願いつつ。
「ゴォォォォォォォオオオオオオー!!!」
咆哮の様な轟音が背後に響き、思わず後ろを振り返る
奴の背部から何十発もの多段数ミサイルが一斉発射され襲い掛かってきていた
すかさずエクステンションから迎撃弾が自動発射されたが、焼け石に水だ・・・
ゲートまでは間に合う訳もない・・
あのAC達は、此処を守っていた訳では無かった
寧ろ防ごうとしてあの扉を塞いで朽ちていったのだ
奴らを再び地上に出させない為に。
ふと俺は気嫌いしていたキサラギの事を思い出した
奴らは何でも掘り返さなければ気が済まない。
しかし、今の俺はそれ以下の存在になってしまった様だ
禁断の扉を開けてしまった最初の愚者として・・・
死を目前に飛来するミサイルを眺めながら、俺は狂ったように笑い始めた
邂逅 (後編) 完
作者:キングスフィールドさん
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