サイレントライン外伝〜Fencers lanker〜 序章
地下都市に人が生活し始めてから何世紀か後・・・
1機のランカーACが「管理者」と呼ばれるAIを破壊、地上への扉を開いた。
そして管理者の後ろ盾を失ったクレストは主導権を失い、ライバル企業のミラージュが強大な力を手にする。
ユニオンと呼ばれた連合を取り込み、あたかも自分達が地上への扉を開いたかのような振る舞いをする。
クレストも対抗して戦力を増強、そして戦争が始まる。
が・・・レイヴンと呼ばれた彼らが数多く必要になってきたのだ。
主力のMTを何十機でも破壊できる彼らの実力を欲し、果てのない戦争につぎ込んでいく・・・
「稼ぎ悪いなぁ・・・前もしくじったんだから今度こそ成功させようよ?」
「解ってます・・・」
「こいつが一番の金食いだもんね・・・」
AC3機。それが今出撃の時を今か今かと待っている。
コーディネーターのルクレール社で設定してくれたものをチューンしたのが3機。
乗るのは三人の少女。リルとルーシャ、リューンの3人。
「だいたいね、伝説のランカーと同じ名前にしようというのが間違いなのよ!」
「そうですか・・・?」
タンク型2機。フェンサーE1とフェンサーE1A7。
そしてフロート型のフェンサーE2と呼ばれるAC。
いずれもムーンライトのブレードを装着しているから、そして半ば伝説になった彼の機体に近づくためにつけた名前。
グローバルコーテックス所属の3機だが、何故か「弾薬費と修理費が報酬よりも多い」とか「相打ち」とかが多い。
・・・つまり、腕前は下。だがCランクまでアリーナを勝ち抜いたのは奇跡かもしれない。
ヘルストーカー相手に手詰まり状態。誰がやっても勝てないのだ。
「いつもみたいに3対1なら勝てるんですけど。アーカイブの時みたいに。」
リューンがそんなことを言うが・・・アーカイブの時は3機ともボロボロでフェンサーE2など大破、戦闘不能状態だったのだ。
無論、修理費がかさんでマイナスに。おかげでチェインガンを売る羽目に。
「じゃ、行くね。」
リル1人だけで依頼を受けたのはクレスト社の新鋭機運用テスト。
オートマティックの無人ACもミサイル攻撃を耐えた後で破壊すればいいのだ。
報酬も良いが「1機だけにしてくれ」といわれたので生存製の高いフェンサーE2で行くことに。
「簡単すぎ。大丈夫なの?」
デコイでミサイルを交わし終えた後、長距離狙撃レーザーで回避しながらぶち抜く。
輸送機の上だが回避には何ら支障はない。
簡単すぎる。こんな任務で呼ぶ必要が・・・あったみたい。
「敵飛行MTだ。撃破しろ。」
「了解です!」
800発のマシンガンで対空砲火。相手の火力はかなり低い。
なら、この軽量級のE2でも十分耐えられる。
レーザーを受けたが、その敵機はマシンガン10発にぶち抜かれ爆発。
「まだいる!こいつを・・・!」
弾薬の余った長距離狙撃レーザーでもう1機ぶち抜く。
これで0。輸送機の上で投棄するとあとで改修部隊が困るのでこのまま。
ミラージュの部隊だろう。エンブレムも見えた。
残り携行グレネード15発。マシンガン650発。
まだ戦えると・・・思ったとたんに真上に輸送機が。
ミラージュ制輸送機が護衛機のトループ11を伴って飛来。何かを投下する。
「ランカー・・・う、嘘!」
「エマ、何か?目の前のACに何かあったの?」
その途端に敵機は構え無しでグレネードを発射。
すかさず回避。敵機は空中でブースターをふかしそこからグレネードをぶち込んでくる。
「ランカーAC、アルカディアを確認!」
「・・・エース!?」
そう、エース。アリーナ連勝記録をたたき出した最強のランカー。
フェンサーE4に破られるまで、次々に並み居る強豪を倒してきたが管理者消滅後はアリーナから消失。
地道に任務を引き受けてきたと聞いた・・・ミラージュに入ったとすら噂されていたのだ。
あのフェンサーE4ですらこの連勝記録は破っていない。
「お前は、俺を楽しませてくれるんだろうな?」
「どうかな?」
「俺の連勝記録を打ちとめた忌々しいランカーの名前を引き継いだ奴を、この手でぶち破るって決めたんだ!」
狙われてるってわけ。冗談じゃない・・・
こっちのACと同じ改造してるらしく、構え無しで肩撃ちグレネードを打ってくる。
無論・・・火力、技量、耐久力すべてこちらに勝っている。
「これで・・・!」
グレネードに兵装変更、至近距離で発射するがダメージなし・・・かわした!?
反応するまもなくレーザー砲塔がブレードで切断される・・・同じムーンライトだ。
「機体性能は十分だが・・・つまらないな。」
「え?」
「そこそこのランカーだ。だが、奴にも遠く及ばない。」
・・・工場防衛のとき無人重装備ACにボコボコにされた私だから及ばないのは十分知っている。
が、手段はまだある。奴がグレネードをぶち込んできたところに・・・
「喰らえっ!!」
「な・・!?」
マシンガンでグレネードの信管をぶち抜き、逆に携行グレネードを発射。
逆向きに回避すると見越しマシンガンを叩き込む。
「ふん、腕前は見直した。ロイヤルミストくらいはある。」
「あっそう?ごめんね、期待はずれで。」
銃弾をぶち込む。ぶち込む。
相手の耐久力は削れたが、グレネードのかわりにチェインガンをぶち込んできた。
・・こいつの痛みはよく知っている。
アリーナでフェンサーE1やE1A7と戦ったときにいつもこんなもの受けて惨敗しているのだから。
「やばい・・・」
チェインガンの弱点は弾数。だが確実に命中させてくる。
・・・リューンやルーシャくらいの腕前はある。もうだめかも知れない。
ダメでもどうせ、赤字が増える程度だが。
「増援のランカーACです。フェンサーE1とE1A7が接近。」
地獄で頼れる姉2人。ようやく来てくれた・・・
着地する前からカラサワと超砲身グレネードの十字砲火をエースに浴びせて着地する。
「・・・分が悪いけどな、俺の実力を甘く見るなよ?」
「E4の悪夢を3人姉妹で再現するというのはどうですか?」
「ふざけんなよ?お前らごとき、俺が・・・!」
その途端に・・・レールガン砲撃がブースターを破壊。
同時に黒のランカーACがエース機にブレードを当てて吹き飛ばし、落としてしまう。
「な・・・何ーーー!?」
「・・・目標、確認。排除開始。」
エースの叫び声をかき消すかのような機械的な声。
乗っているのは人。逆足ACだが武装はかなり重いものばかり。
カラサワにLS-3771。背中には大口径エネルギー砲が。しかも真っ黒だ。
「なんか嫌な予感がします。」
「同感・・・」
その途端にこのAC、なんとカラサワとエネルギー砲で輸送機をぶち抜く。
そして周囲の輸送機も次々に破壊して言ったのだ。
「な・・・なんでこの輸送機までぶち抜くの!!?」
最後は自分達もろとも輸送機を破壊・・・そのまま4機は落下していく。
「うそ!?何でこいつこんな無謀なことするんですか!?」
「知らないってば!!」
「・・・やばそう。」
3人は悲鳴を上げる・・・もう1機のACからは悲鳴も上がってこない。
アーカイブエリアに落下していく・・・そして安全高度でブースターを稼動。
少しでも落下速度を緩め、耐久力を温存するためだ。
「助かりました・・・」
リューンが助かったというが、本当にリルも助かった気分だ。
肝心のエース機は・・・頭から落下したらしく砂地から脚部だけ出しているという間抜けな姿をさらしている。
そしてあの真っ黒なACは・・・無残にも破壊されている。
「・・・変だなぁ。生体センサーに何も感じない。」
「リル、無人ACってこと?」
「そうじゃないけど・・・あ!」
いた・・・が、生体センサーの反応はかなり薄い。
強化人間・・・何故こんなところにいるのだろう?そして誰が送り込んだのだろう?
ミラージュならアルカディアを送り込んだし、クレストは違う。キサラギ?
だが、そのマークはキサラギでもなかったのだ。
「誰がやったんでしょうか?」
「うーん・・・」
「フェンサーチームに連絡。弾薬費と修理費は持つが報酬は支払わないとのコトです。」
突然のアクシデントで任務失敗の場合はたいていこうするのが礼儀だ。
やれやれといった感じで、3機は輸送機に乗り込んで帰還する。
「俺を抜いてくれー・・・」
エースは救助機が繰るまでの4時間、刺さりっぱなしだったとか。
「・・・これ、見てよ。」
ルーシャが見せたのは新聞・・・黒のランカーACによる被害の拡大と描かれている。
ミラージュの調査委員会では強化人間による仕業だと言っているのだが、それを送り込んでいるのが誰かは不明だという。
ミラージュ本社ビル倒壊、地下居住区壊滅などすさまじい被害だ。
しかもこいつらはACを優先的に破壊していくらしい。
レイヴンの犠牲者4名。機体大破50機と1年間で出る被害がたった1週間で出ているのだ。
・・・以外にもレイヴンの犠牲者は少なめだが、ACそのものの生存性が高いからだろう。
防御力の低下した機体に重火器かブレードを操縦席めがけてぶち込まなければ死ぬことはありえないのだから。
「・・・これだけの被害を出した後は離脱するか相打ちになってる。そしてパイロットは捕まる前に毒で自殺している。よっぽど訓練された部隊の犯行としか思えない。」
「誰がそんなことを?」
「・・・管理者だったり・・・して。」
ルーシャの言葉にリルは戦慄する・・・ありえない。
管理者はもういない。2年前に消えたばかり・・・
「でも、そんな・・・」
「じゃあ。管理者の部隊は誰が作っていたの?クレストは違うしミラージュもユニオンも主義は違う。キサラギはそんな実力はない・・・となれば?」
管理者部隊・・・管理者の破壊前に大規模な被害をもたらした謎の無人部隊だ。
その生産ラインは今でも見つかっていない。これは今でも1000万Cで各企業から捜索願が出ているのだ。
見つけたらまず間違いなくこの戦いを制することができるだろう。
大規模なラインがあればいくらでも量産できるのだから。そして見つからないから破壊活動も免れる。
「・・・管理者はないけど、その生産ラインを保有する誰かってことですよね?」
「リューン、その通り。だからそいつらを叩けばいいと思うんだよね。レイヤードで探してないところ。」
ルーシャの言うことはもっとも。あるとすれば・・・
機密データ奪取のときにロックされていた扉。あそこくらいか。
が、ロックされたままだ。どうしようもない。
「・・・で、ちょうどいい依頼が来たの。管理者のデータをハッキングする部隊を送り込むから、先にいるクレストの連中を始末してくれってミラージュから依頼が。」
「じゃ、それ受けてついでに・・・」
「そういうこと。私が依頼受けておくから、僚機として同行して。途中の扉をE1A7とE2で破壊するの。」
リルはああとルーシャの提案にうなずくと、リューンが2人に言う。
「誰に引き渡します?その生産ラインを。」
「キサラギにしておこっか。どうせ小さいし。」
かつて管理者がいた頃はユニオンと組んで一大勢力を誇っていたキサラギも、今ではミラージュの子会社に過ぎない。
だからこの生産ラインにもっとも高額な資金をかけていて、これで再興をもくろんでいるようだ。
「あ、ダメです。これからカラードネイルさんとのデート・・・」
「リューン、行くよ。」
「ダメですってば!」
無理やりルーシャに連れられて、リューンは無理やりフェンサーE1A7にのせられる。
そして出撃・・・3機は輸送機に載せられレイヤードへと向かう。
続く
あとがき
エースは無茶苦茶なギャグキャラになりました(何
・・・ファンの皆様、ごめんなさい。
それはそうと、執筆をし始めたスフィルナという人です。AC3、サイレントラインともに使っているランカーネームで。
では、最後にフェンサーシリーズの解説でも。
リル・クレスタ(ランカーネーム・ストームウィンド)搭乗機 フェンサーE2
頭部パーツ CHD-04-YIV
コアパーツ CCH-OV-IKS
腕パーツ CAL-44-EAS
脚部パーツ CLR-00-MAK
FCS AOX-ANA
ジェネレーター KGP-ZS4
ラジエーター RMR-SA44
エクステンション CSS-IA-64S
肩武装 CWC-GNS-1&MWC-LQ/15。
任務によってグレネードをMWM-HAVM24/2に。
右武装 MWG-MG-800もしくはMWG-MG/1000
左武装 MLB-MOONLIGHT
オプション
色 ブルーメインの迷彩。
フェンサーチームの強行偵察型。万能に使えるが装甲がうすい難点が。
でも、これでネームレスやメビウスリングでもちゃんと撃破できる。IBISも。
「違法改造」がINTENSIFYにあたり、ランカーそのものを改造する強化人間とは別物。
ルーシャ・アイリス(ランカーネーム・スノウウィンド)搭乗機 フェンサーE1
頭部パーツ MHD-MX/RACHIS
コアパーツ CCH-OV-IKS
腕パーツ MAH-SS/CASK(だったような・・・)
脚部パーツ CLC-D3TA
FCS AOX-ANA
ジェネレーター KGP-ZXV1
ラジエーター RGI-KD99
エクステンション CSS-IA-64S
(時々インサイドにMWI-DD/10)
肩武装 CWC-CNG-300&MWC-IR./20
右武装 MWG-KARASAWAおよびMWG-XCB/75
左武装 MLB-MOONLIGHT
オプション ダメージ軽減および旋回性能向上
カラーリング オレンジもしくは陸上迷彩カラー
主力AC。実力はかなり高くあらゆる任務に投入可能。
プラズマ砲は弾数を増やしたいところ。
リューン・クライスト(ランカーネーム・フェアウィンド)搭乗機 フェンサーE1A7
(フェンサーE1と頭部からエクステンションまで同じ)
肩武装 CWC-CNG-300&CWC-GNL-15
右武装 MWGG-XCG/20およびCWG-BZ-30
左武装 MLB-MOONLIGHT
オプション E1と同じ。
カラーリング スカイブルー、もしくは雪上迷彩カラー
支援ACという位置づけのため、威力重視の火器が多い。
雑魚相手にはチェインガンとブレードで対処。どちらかといえば移動砲台に近い。
ランカーネーム・スフィルナ搭乗機 フェンサーE4
(フェンサーE1とコアと頭部、武装以外同じ)
頭部パーツ CHD-02-TIE
コアパーツ MCH-MX/GRP
肩武装 CWC-CNG-500&MWC-LQ/80
右武装 CWGG-GR-12もしくはMWG-MG/1000
左武装 CLB-LS-3771
オプション 各種軽減パーツ、旋回性能向上など
カラーリング 灰色迷彩
かつて管理者を破壊したランカーAC。その素顔は謎のまま。
強さはかなりのもの。アリーナでは壁を背にしてチェインガンを打ちまくる。
実戦でもその戦法を多用する。至近距離だとグレネードとレーザーで。
作者:スフィルナさん