サイドストーリー

サイレントライン外伝〜Fencers lanker〜
第1章 管理者の生産ライン
レイヤード旧管理者地区

「じゃあね、しっかりやって来るんだよ?」
「そっちこそ。

ルーシャの乗ったフェンサーE1が中枢に向かう間、リルとリューンの機体は別の扉に来た。
エレベーターの途中にある・・・すると、扉が開いてボールのような浮いた機械が出てくる。

「・・・入っちゃう?」
「そうですね。」

入れ替わりに2機は突入する。
あのボールのような機械は以前管理者の使っていた小型ガードマシンだ。
レーザー発射時にマシンガンやライフルで狙えば一撃で破壊できる。
扉の回廊を抜けると、エレベーターにでる。

「相変わらず違法改造のACで大丈夫なんですか?」
「多分いけるよ。」

携行グレネードやレーザーカノンを構え無しで発射できる改造がフェンサーE2には施されている。
しかもブレード射程延長など、その機能は多岐にわたっていてすさまじい性能を出せるのだ。
・・・違法といっても管理者の時に違法であって、今では平然と使えるが。
その意味ではかつてのエグザイルやエースも違法だったのだが、実力で管理者部隊を排除してきたのだ。

「というより、真上から反応です。」
「ランカーみたいね。誰?」
「アルカディアです。」

その途端にオレンジ色の強化硝子をグレネードで突き破り、ACが落下してきた。
ランカーAC、アルカディアだ。

「また会ったな。」
「いいかげんしつこい。今回は何?」

リルがエースをにらみつけて、口調を鋭くして言う。

「クレストからの依頼だ。管理者跡にミラージュを近づけるなということでね。」
「だから私達を?」
「そういうことだ!さーて・・・俺と同じインフィニティ改造したACはとっとと・・・」

グレネードをアルカディアが構えた途端、また真上から何かが降ってきた。
重装備2脚ACが、アルカディアの真上に落ちてきて踏みつけてしまう。

「ぐおっ!!?」

アルカディア、灰色のランカーACに踏みつけられたまま。
敵ACはマシンガンと肩装備のガトリング砲を向けると、こちらを目標と認識したようだ。

「・・・あれは誰?リューン。」
「ランカーAC、エアガンナーです。元はレイヤードで対空機銃の専門傭兵やってたみたいです。」

なるほど、だから重装備でしかもガトリングとマシンガンということか。
だが・・・エースが踏まれている。

「俺を踏むなぁぁ!!」
「目標確認、対空射撃開始。」

エースの叫びを無視して敵機のガトリング砲が発射、2機はすぐに分散して交わす。
動きのすばやいフェンサーE2を真っ先に狙っているようだ。

「早いよ・・・っ!!」

狙いはきわめて正確で、E2の装甲を派手に削り取っていく。
すかさずE1A7がグレネードを発射するが全然効かない。

「・・・装甲はかなり硬いですね。ならば!」

接近するが、すぐにエアガンナーはジャンプしてかわす。
変わりにフェンサーE1A7がアルカディアの上に載り、チェインガンを乱射するが相手はE1A7に目標を変更する。
そして大量の銃弾を浴びせてきたのだ。

「もう!これでも喰らえっ!!」
「ちっ!」

フェンサーE2がブレードでエアガンナーに切りかかり、損傷を与える。
だが、エアガンナーもブレードを装備しているのか逆に切りかかりこちらも同等のダメージだ。

「さすが噂のフェンサーチーム。Aランクくらいの実力はあるな。」
「お褒めに預かり光栄ってね!本気モード行くよ!」

その途端にE2がオーバーブースト。すさまじい速さで回避行動をとりつつマシンガンを乱射する。
2脚タイプというのが災いし、旋回性能に追随できていない。

「くっ!ならば奥の手だ!」

その途端にもう片方のウェポン・ベイが開放・・・中型ミサイルだ。
それを発射、こちらに向かわせてくる。

「うわぁぁっ!」

とっさにマシンガンでぶちぬき、すぐにガンレンジから離れる。
何も近距離だけがこのフェンサーE2の戦い方じゃない。背中の折りたたみレーザーを展開させる。

「・・・くっ!そんなものを!」
「アウトレンジ射撃、開始ぃ!!」

遠距離から動きの鈍い重装備2脚をレーザーでダメージを与える。
軽量、超射程、そして高威力のレーザーを15発もマトモに喰らい・・・エアガンナーは爆発を繰り返す。

「・・・この俺が・・・っ!!」
「じゃあね。アリーナで今度会おうね。」

敵機戦闘不能。そこまで持ち込むとエアガンナーはブースターで離脱する。
いずれ再戦するか、僚機として戦うだろう。それがレイヴンの宿命だ。
潔く引き際をわきまえるのも傭兵としてのルールだ。

「終わったね。全戦力の破壊を確認。」
「・・・俺の上からどけ!」
「あ、アルカディアだ。」

今更のようにリルがエースに気づく。

「これ、どーします?起こすと厄介ですよ?」
「うーん・・・行こうか。仕方ないけど。」

2機はエレベーターから降りて、扉をあけて隣のエリアに行く。



「ふざけんな・・・よくもこの俺を!!」

エースはオーバーブーストで不意打ちを狙い、後ろから切りかかるが・・・自動ドアがしまりぶつけてしまう。
あっけなく転倒し、エレベーターの上に放り出される。

「ちっきしょう・・・俺の連勝記録で運を使い果たしたか?だが今度こそ・・・」
「うわぁぁぁ!!」

立ち上がろうとした途端に真上からランカーAC、シガレットが落下してきてアルカディアの上に落ちる。
再びアルカディアがつぶされてしまったのだ。

「どけ、ドランガード!」
「ダメだ・・・俺もヤキが回った・・・機体大破で動けん・・・」
「何ぃぃ!!」

重装備ACを中量級のアルカディアが持ち上げるなど、不可能に近い話だ。
結局、そのまま2時間ほどそこにいることになってしまう・・・



「ここですか・・・?」
「あ、見て・・・黒のACだ・・・」

強化硝子越しに見えるのは黒のAC。そのすべてがばらばらで機体特性もすべて違う。
逆足、タンク、フロート・・・何でもありだ。
それが4機保管されている・・・そして次の部屋の硝子越しに黒いMTがたくさんだ。
重装備系統と上級MTがほとんど。ここが生産ラインだろうか?

「ぶっ壊してキサラギに提供する?それとも報告する?」
「報告しましょうよ。こっそりと・・・情報だけでも先に与えれば前金がもらえますし、あとでレイヴンの増援を呼べばいいんです。」
「・・・させない。」

その途端にまたAC反応。前から来たようだ。
すぐに2機が奥の部屋に進入すると、真正面に黒のACが立っている。

「誰、ですか!?」
「・・・この防衛部隊。目標を抹消するだけ。」

敵機は2脚型重装備AC。プラズマ砲を右腕に装備している。
後ろのはフェンサーE2と同じレーザーカノンとグレネードか。左腕にバズーカを。
こてこての重武装支援ACだ。が、それだけに厄介すぎる。
こっちより機動力は高い。だからこそだ。

「ランカーに登録がありません。これは・・・」
「ここの防衛部隊ってことね。やるよ、リューン!」

すかさずリューンのフェンサーE1A7が真正面に向かい、バズーカを発射。
敵ACがブーストで回避すると、もう1機・・・フロートタイプだ。

「フロートは私が相手します。リルは重装備を。」
「1機なら負けないよ。」

向こうでフロートタイプの機体めがけフェンサーE1A7がチェインガンを乱射する。
あれは重装備ACが小型の目標を撃破するために作られたもの。ちょうどいい。

「さーてさて、やらせてもらうよ!」

フェンサーE2の基本戦法は敵機の周囲を旋回しつつ、マシンガンで痛烈な一撃を与え続けること。
狙われたらブースターで加速するか逆向きに回ればいい。
強行偵察用のACは耐久力と攻撃力は低めだが、このフェンサーE2はそれを高いレベルで保持している。

「・・・しつこい。」

敵がバズーカを発射、だがそれは虚空を引き裂いて部屋の壁にぶつかる。
逆にこちらからグレネードを乱射、移動中の敵機に命中する。

「あっははー♪もっと行くよ!!」
「・・・黙って。」

インテンシファイを装備したフロートACの集中攻撃を受けているが・・・いきなり敵機は肩のプラズマ砲を落下させる。
そして、ブレードでいきなり切り込んでくる。

「わあっ!?」

不意打ちだった・・・リルも気づくべきだった。
おかげで弾薬450発残したところでマシンガンが使用不能に。残るはグレネード12発。
そしてブレード・・・こうなったら戦法を変えよう。

「・・・撃滅開始。」

敵機は肩武装のレーザーカノンとグレネードをこれでもかというほど乱射。
しかも射撃精度が高い・・・インテンシファイを使っているようだ。

「・・・あーっ!!もうあったまにきたんだから!」

ぶちきれたリルが真正面から突っ込むと、ムーンライトでダメージを与える。
敵機が距離を置こうとすると今度はグレネードを切り裂いて使用不能にさせる。
おまけにコアパーツについている機銃をぶち込みまくり、軽量ACではありえない真正面からの接近戦を挑んでいる。

「・・・血迷った?」

敵機がレーザーカノンで応戦するが、フェンサーE2のグレネードを受けて熱変形により使用不能。
そこにブレードでコアパーツを直撃。もう一度斬るとようやく破損させた。

「敵機の防御力低下。大破状態、戦闘不能です。」

憎い相手ならここで止めを刺せばいい・・・いわゆる「大破状態」でありこの場合は動きが停止してしまう。
エネルギー供給のパイプが破損、動きが停止した場合が大破であり火器システム使用不能で機動可能となるのが中破とよく言われる。
さっそく操縦席を空けると、リルは相手ACの操縦席に入る。

「お疲れさん。さて、捕虜になってもらおうかな・・・?キサラギの。」
「・・・」

同じくらいの年齢・・・16歳の少女はカプセルを飲み込もうとする。
が、リルに叩き落とされた上に踏みにじられてあきらめたようだ。

「・・・どうする、の?」
「キサラギに連れて行くのもなんだしさ、せっかくだから・・・エマ、輸送機のパイロン4機用にしておいて。」

回収して、無理やり僚機として扱うつもりか。

「こんなところで死ぬべき人じゃないの。ランカーACに登録してさ、レイヴンになってがんばれば?」
「・・・え?」
「自殺しても、意味無いしさ・・・」

その途端、フロートがたの敵機が爆発・・・チェインガンを受けすぎて大爆発を引き起こす。
高熱に耐えられなくなった機体が爆発してしまったのだろう。

「リルさん、帰りますよー?」
「後にしてよ。リューン。ほら・・・一緒に来て。名前は?」
「・・・無い。何も・・・」

どうやら、この少女は名前というものが無いらしい。
この生産ラインで何があったのか気になるところだが・・・

「じゃさ、ランカーAC「ネームレス」ってどうかな?」
「・・・ありがとう。リル・・・優しい・・・」
「ま、ちょっとした気まぐれだしさ。」

自分のACに戻ると、リルは武装などを回収し輸送機に戻る。
無論・・・ランカーAC「ネームレス」を連れて。



「報酬もらってきたってねー・・・キサラギから大量に。」
「そういうこと!」

200万C・・・情報提供だけでもこんなにくれたのだ。
サイレントラインの方は何故か沈黙を保ったままで、無人機暴走以降何も起こらない。
それよりも、こっちの生産ラインのことを調べようとして必死のようだ。

「で、あのネームレスって少女まだやってるみたいです。レイヴン認定試験を。」
「ポテンシャルはいい感じだし、いい線いくと思うけどなぁ。」

リルの言葉にルーシャとリューンがうなずく。
が・・・それ以上に不安なのがミラージュやクレストの動向だ。
ミラージュが管理者生産ラインの偵察にBBを、クレストはエグザイルを投入したと聞く。
かつてレイヤードで大活躍をしたレイヴン達。強敵ぞろいと言っても良いだろう。

「つぶしあってくれれば楽なんだけど。BBとエグザイル・・・互角なんだよね?」

そう、ルーシャの言うとおり今ではBBとエグザイルが最強だろう。
メビウスリングが今1位だが、任務でフェンサーE1A7にボロボロにされたのだからそんな実力は無い。
ということは、フェンサーチームでも恐れるに足らない相手だ。

「じゃさ、あのヘルストーカーって何者・・・ってことになるよね。」
「うん。」

どう見てもメビウスリングより強かったが・・・何かわけありのようだ。
リルは納得いかない表情で武装などを見つめている。
実際は相性が悪いだけなのだが・・・

「ですけど、エースは不運ですね・・・前は足だけ出して埋もれてましたし、今回は踏みましたし。」
「・・・リューン、意図的に踏んだ?」
「偶然ということにしておきましょうか。」

ダークすぎるっ・・・リルは内心そう毒づいてみる。
次の任務までは間が空いているから、ゆっくりと休むことにした。

続く

あとがき
エアガンナーの解説でもやってみますか。

ランカーネーム・サジタリウス搭乗機 エアガンナー
頭部パーツ MHD-MM/007
コアパーツ CCM-0V-AXE
腕パーツ CAM-11-SOL
脚部パーツ CLH-04-SOD
ブースター CBT-FLEET
FCS AOX-ANA
ジェネレーター KGP-ZSV
ラジエーター RMR-ICICLE
エクステンション KWEM-TERRIER
肩武装 CWM-VM48-6およびCWC-CNG-500
右武装 MWG-MG/1000
左武装 MLB-LS/003
オプション OP-INTENSIFY

対空射撃に優れたAC。高速で動く目標の撃破が得意で重火器搭載の相手にはFleetで霍乱する。
ミサイルを積んだりするあたり、対空砲としては抜群の動きを見せる。
ただ、タンク型の脚部には値段が高すぎて手が届かないようす。

使った感想
・・・やっぱり固定砲台。機動力が無いのが痛い。けどどんな状況でも使えます。
作者:スフィルナさん