サイドストーリー

サイレントライン外伝〜Fencers lanker〜
第2章 キサラギ突入
旧中枢部 1400時
「うわぁ・・・」

中枢途中の生産ラインめがけ、名だたるランカーが突入していく。
グランドチーフ、カイザー、カラードネイル、アイゼン&サラシナ・・・いずれもかなりの実力を持つランカーだ。
こいつらとともに敵軍のACを撃破、基地を制圧するのが目的だ。

「大丈夫なんでしょうか?」
「うーん・・・」

リューンが不安に思っているのは、「こんな大規模なことしてミラージュやクレストが気づかないか」ということ。
できる限りの偽装工作を行っているのだが、大丈夫だろうか・・・?

「ま、気にしても始まんないよ。行くよ?」

リルに言われ、フェンサーチームも突入を開始する。
この8機が制圧部隊。キサラギ製MTも後ろからついてくる。
・・・本当にばれないんだろうか?




「・・・今度こそ!今度こそあの憎きフェンサーチームをぶちのめしてやる!」
「いきがってどうする。エース・・・」

クレストがキサラギの動きを阻止しようと、コープスペッカー、ワルキューレに飽き足らずエースとクラフツパーソンを派遣した。
目的は制圧を見届けた後、よこから耐久力の減ったACを撃破し制圧しろとの事。
が、怒りに燃えているエースにクラフツパーソンがさりげなく突っ込む。

「お前、レイヤードでナンバー1のランカーだろ?何意気込んでるんだ?」
「・・・フェンサーチームって知ってるだろ?」
「ああ。俺もE1の僚機をやったがいいランカーだ。だが何か?」
「・・・俺はあいつらを敵に回した任務でいつも不幸に見舞われているんだ。1回目はアーカイブ砂漠に突き刺さって4時間救助を待つ羽目になった。」

思わずクラフツパーソンは笑ってしまった。
レイヤードのエースがここまで間抜けな失敗をするとは。

「で・・・次は何だ?」
「2回目は踏まれた。エアガンナーとフェンサーE1A7、挙句の果てにシガレットだ。」
「お前も大変だな・・・」

おかげでコアパーツの修理費が無茶苦茶にかさみ、家賃すら払えず逃げ回ることに。
任務をこなしてしっかりと払ったが・・・

「そして今日の任務にも参加するんだと。」
「・・・幸運を祈ろうか。」

小説書きを副業としているクラフツパーソンは、いずれ暴露本でも出してやろうかと考え始めていた。
このエースの間抜けな失敗とやらを。



「早速来たぞ!」
「うろたえるな。迎え撃て。」

さっそくロイヤルミストがミサイルを乱射。敵機の黒いACにダメージを与える。
そしてブレードでコアパーツにダメージを与えるとひき、そこにフェンサーE1がプラズマ砲をぶち込む。
同時に大多数のACの集中攻撃を受け、敵ACが爆発する。

「邪魔だ。」

ロイヤルミストが敵ACの残骸を弾き飛ばし、先に進んでいく。
さらに奥に進むとMTの稼動中の生産ライン。あのレーザーボールを生産しているらしい。
管理者亡き後も、いまだに稼動を続けているのだ。

「何のために・・・?」
「待って。AC熱源反応8個・・・この奥から。AC生産ラインの中枢部みたい。」

8機が侵入した先には8機のAC、いずれもこちらに砲口を向けている。

「E7より各機へ。攻撃開始だ。」
「E6了解。」
「急げ!もたもたするな、1機ずつ当たるんだ!」

ロイヤルミスト機が真正面の敵機にブレードで切りかかると同時に、8機が1対1で向かう。
十分広い戦場、ならフェンサーE2は活躍できると思いリューンはバズーカを逆足ACにぶち込む。

「・・・攻撃目標、敵雪上迷彩のタンク型AC。攻撃開始。」

すかさず敵の小型ロケット弾をかわし、平行移動しながらグレネードをぶち込む。
耐久力は低いしスピードもE2ほど無い。重火器で押し捲るだけでいけそうだ。

「甘いです!」

コアパーツが自動的に敵垂直発射ミサイルを迎撃、その間にバズーカを叩き込む。
敵エクステンションの増加装甲がはじきとび、さらにバズーカを喰らい腕パーツを吹き飛ばす。

「・・・左腕シールド破損。先頭続行に影響なし。」

その途端に敵機は500発マシンガンを発射。こいつがメイン武器か。
交わすのは難しいが耐えられないことは無い。チェインガンで応戦する。
敵機は空中から射撃を加えるが、こっちにはブースターが無いため地上で応戦。
弾幕を張り合う銃撃戦・・・相手はすばやいが、リューンにとってはなんてこともない。
正確な射撃で頭部パーツに集中砲火をくわえると、それを破損させる。

「レー・・・離脱・・・・す・・」
「じゃあね。」

肩武装のグレネードで最後に吹っ飛ばして作戦終了。
敵機を大破状態に追いやったが、他の敵機が後ろから襲い掛かってくる。

「・・・っ!」
「あんたの相手なんて私で十分なの!」

途端に敵の背後で爆発。敵機はバランスを崩したまま吹き飛んでくる。
リューンはすかさずムーンライトを突き刺す・・・かなりの相対速度でブレードが貫通し、一撃で中破させてしまう。
敵ACはそのまま離脱。動きが単調すぎる。
が、今度は敵ACが。またあいつだ・・・

「フェンサーチーム、覚悟ぉぉ!!」
「・・・落ち着け。」

あのエースだ。またまた懲りずにやってきたようだ。
後ろにいるのはランカーACクラフツパーソン。こっちが厄介な相手といえるだろう。

「あの不運なACだね。」
「眼中に無いんです。クラフツパースン、相手します!」
「お、俺を無視するなぁぁ!!」

・・・どんどん壊れていっていると思うのはリルやリューンだけではないだろう。

「・・・お前、悪いものでも食ったか?壊れてるぞ。」
「ロイヤルミスト、俺はあいつらを敵に回す任務だと不運続きなんだよ!」
「ああ、なるほど・・・」

昔の知り合いのように話しているが、その前にリューンがエースの足元の硝子をぶち抜く。
が、アルカディアはホバリングで待機。そこからグレネードを撃ってくる。

「ふん!この前みたいに落とせばいいという手段など通用するか!」
「子どもっぽいです。」
「何だとぉ!?」

完璧に冷静さを失っている。リューンはほくそえむとインサイドのCWI-GJ-20を発射する。
連続でぶち込んで行き、次々にジェネレーターの出力をそぎ落とす。

「な・・・!?」
「さようなら・・・ですよ。終わりです。」
「なぁぁ!!?」

チャージ状態にはいったアルカディアが、硝子の下の空間に落ちていく。
・・・哀れエース。今度こそ戻ってこないだろう。

「くっ!」

マスターピースがブーストをかけながらスナイパーライフルを連射。
だが・・・フェンサーE1A7はすぐにブーストを稼動させて回避。グレネードをぶち込むがこちらも交わされる。

「・・・やられた・・・!こちらアイゼン、離脱します!」
「こちらサラシナ、僚機を支援するため戦線を離脱する。」

2機のACが射撃をしながら撤退。黒いACが追撃しようとした途端に背後からカイザーに一刀両断される。
さすがレイヤードのトップランカー。腕前はすごい。

「勝手に退くなら退くがいい。あとは俺が撃破する。」
「フェンサーチームにお任せ!」
「・・・僚機としては最高だな。」

そっとロイヤルミストがつぶやくと、目の前のランカーのブレードをブレードで受けとめる。
はじき返すと重火器の一斉射撃で粉々に粉砕・・・パーツの大半を使用不能にさせた上に大破させてしまう。

「甘いな。」
「き・・・停止・・・・」

黒の敵ACが爆発を起こす・・・完全破壊だ。
搭乗員がベイルアウト。ああなったら修理費は無茶苦茶にかさんでくる。
双思いつつも、リューンはマスターピース相手にプラズマキャノンをぶち込む。
射程、破壊力共に文句なしの一撃が命中、クラフツパーソンは甚大なダメージを負ったようだ。

「くっ、さすがだな・・・何故こいつらがCランクなんだ!?」
「ヘルストーカーに勝てないんですよ・・・!」

エキシビジョンではシルバーフォックスを軽く撃破し、メビウスリングとの勝率が五分五分と言うほどのエース。
彼女達の実力はかなりのものだろう。

「・・・それだけか!くっ・・・!」
「もっといきますよ!緊急自動射撃管制装置(ハルマゲドンモード)作動!」

2秒だけタイマーをかけてスイッチを押した途端、全砲門がマスターピースを向いて射撃する。
マトモにグレネードとチェインガン、プラズマを喰らいマスターピース大破炎上・・・戦闘続行不可能だ。

「くっ、そんな・・・!」
「・・・まだまだです。腕前を磨いてくださいね。」

が、まだ終わりではなかった・・・
増援の黒いACとMTの混成部隊が出現。まだまだ弾薬に余裕はあるがAPのほうがまずい。
重装備MTメインではかなりつらいところがある。下手な方向からバズーカを喰らって動きをとめられたら厄介だ。

「くっ・・・」

ロイヤルミスト機も弾薬がかなりきついしカラードネイルも輸送車から弾薬を受け取ったが完全ではない。
グランドチーフは離脱。5機で7機のACと10機以上のMTを相手にしなければならない。
が、キサラギから通信が入ってきた。

「増援のACを送った。そろそろ到着するだろう。」
「こちらスフィルナ。行くぞ。」

灰色の迷彩に身を包んだタンク型ACが、チェインガンを乱射し重装備MTタイフーンを次々に破壊していく。
・・・すばやい。そして射撃に無駄が無い。
レーザーカノンも併用して重装備MTを撃破すると、グレネードをACにぶち込む。

「・・・敵増援、ランカーAC「フェンサーE4」。攻撃開始。」

敵ACは散開、頭数がちょうどそろったように向かっていく。
リューン機に来たのは軽量2脚で両腕武装がマシンガンの敵機。EOを射出してきた。

「重火器で押しますか・・・!」

残りグレネードは3発。ここで使い切るつもりで発射。
敵ACは真上に回避、空中からマシンガンを乱射する。
見越し射撃で敵にグレネードをぶつけ、そこにプラズマ砲まで発射。

「・・・機体損傷度高め。戦闘続行に影響なし。」
「押します!このまま・・・!」

オーバードブーストで接近、すかさずムーンライトで突き刺してとどめ。
引き抜いたと同時に敵ACは力なく倒れこみ、爆発する。

「敵機撃破。ルーシャ、そっちは?」
「上手く言ってる。カラサワで2機叩きのめしたから。」

相変わらず早いとリューンは考える。
隣ではロイヤルミストがバズーカでACを吹き飛ばしリルが携行グレネードで弾き飛ばす・・・規則的な動きしかしないから逆に戦いやすい。
そしてあのフェンサーE4はAC3機をすでに片付けている。

「トップランカーに比べれば軽いな。こんな雑魚など・・・」

重装備ACとは思えないほど鮮やかにグレネードを回避し、逆襲にレーザーを叩き込む。
そして4機目を撃破・・・カラードネイルもバズーカで撃破して敵ACを掃討した。
敵勢力の掃討を確認。これでキサラギの部隊が占領してこの生産ラインを手に入れるわけだ。

「敵戦力掃討を確認。よくやってくれた。報酬は撃破したACおよびMTの数に応じて支払おう。」

工作部隊が敵中枢を占拠し機能停止・・・作戦は成功だ。
これで、莫大な報酬が振り込まれることだろう。


グローバルコーテックス社格納庫 1700時
報酬を新型のパーツと生活費などに振り分けて帰還。
フェンサーチームには1/2の報酬が支払われたが、それも戦果の大きさゆえだろう。
修理費を差し引いても、なお有り余るほどの予算だ。

「お久しぶりです、皆様。」
「あ、ワルキューレ?」

ここではランカーネームで呼ぶのが通例。
ワルキューレとはフェンサーチームも仲良くやっている。

「・・・見事に裏をかかれたの。キサラギに。私達の伏せてる場所を迂回するルートをとって・・・
クラフツパーソンは機体大破で現在修理中。エースは・・・ACの残骸の中から1時間後に発見されたの。誰かさんの開けた穴に落ちて。」
「私・・・ですね。」

照れ隠しのようにリューンが頭をかくが・・・ワルキューレは笑ったままだ。

「あの不運な人、いつになったら幸運に転じるのかな・・・?レイヤードじゃとても輝いてたのに、
フェンサーE4にかかわってからロイヤルミストに負けて、しかも今回のような不運続き・・・」
「そうだったんだ・・・」

リルがああとうなずくが・・・そういえばと思い出す。

「あのフェンサーE4って、どんな人だった?」
「・・・強かった。普通に戦ってもチェインガンを乱射しながらの射撃で私があっさりと負けて・・・
軽量級にチェインガン、重量級にグレネードと使い分けてた。重火器には重火器で押し捲って、軽量級にはチェインガンの圧倒的な破壊力を使うって。」

なかなか上手いランカーだが、唯一ミサイルの扱いは苦手だったらしい。
ミサイルを装備してきたときだけ決まって惨敗していたと言う・・・アップルボーイにさえ。

「なるほどね。」
「まぁ、私がマシンガンの扱いが苦手なのと同じ様なものね。」

人それぞれだとワルキューレは言う・・・そうかもしれない。
その後は他愛ない世間話の後で散開。次の任務に備えリューンたちは機体整備を行う。

続く

あとがき
・・・ロイヤルミストの武装が違うのは、代えたんです。
決して何も見ないで描いたわけじゃありません。ブレードにしたんです。
まぁ、これからどんな方向に行くかは不明です。けど・・・
かけるだけがんばってみます。では。
作者:スフィルナさん