サイドストーリー

「友」と呼べるもの
コンコン…
「開いてますよ」
ドアがノックされ無意識にオレはそう言ってしまった。
「レイヴン試験でACに突っ込んで怪我したって本当!?」
カトル…いやレイヴン名は本名とは別でファナレと登録してあったはずだったか…。
部屋に入るなり早口で言われ オレは少々戸惑った。
大破したオーグを九十九――いやマルスだったか――と二人でガレージまで運び
病院に連れてきたのもファナレだったそうだ。
「そうらしいな とりあえず例を言っておく 助かった」
ガラにも無くオレの口からそんな言葉が出た。
「だけどよぉ… オレは誰なんだ!? 何で名前も顔も違う!?」
行き所の無かった怒りを込めた言葉を彼を叩きつけてしまった。
しかし
「それは コーテックスの手違いだったらしいよ」
ハイ?
「なんだか同じ 形式のMTが似たようなポイントで大破したんだって
そのMTのパイロットが『ユウ』らしいよ
まあ敗因は焦ってペアのACと激突
彼もそうだけどコーテックスもどうかと思うよね
何しろあそこは視界も悪いし地図もコンパスも役に立たないけどさぁ…」
「で…レイヴン試験はどうなったんだ」
「君かそれとも『ユウ』かは分からないけど
『ACの腕をつけてくろっ焦げになってる方』が合格らしいよ」
くろっ焦げ!? オレのじゃないか!?
「で…試験番号は!?」
機体にはマーキングされて試験番号が明記されていたのだ。
オレの試験番号はそう…オレの誕生日0324と覚えやすいものだった。
「えっとね 確かまだ中央広場に貼ってあるはずだから見に行く?」
「おお!! ちょいと運動ついでに行くか」
しばらく ファナレと並びながら歩いた。
彼もギャグ――旧西暦に流行った娯楽――好きでなかなか話があった。
こういうのも悪くない…そんな風に思った。
思えばあの事件以来オレは孤独であり 馴れ合いなんかまっぴらだと思っていた。
話しながら歩いていると中央広場が見えた。
「ちょいと見てくる」
子供のように発表票に駆けていき自分の番号を探した。
合格者は皆 名前 番号ともに書いてあった。
オレのを必死に探した。
「あった!!」
叫びファナレを手招きして呼んだ。
「でもさ…」
しばらくの静寂を彼の一言が破った。
「でも…?」
「名前のとこ見てみなよ…」
ん…?
「合格者 番号0316 名前ケイン 番号0324 名前未登録」
なにぃぃ!!?
「何で!?何でこうなってるんだ!?」
ファナレに再び叫んだ。
「たしか 合格者は発表当日にコーテックススに登録するんだよ」
…登録?
「そういえば!!」
飛ばし飛ばし読んでいたのが災いした。だが後悔先に立たずだった。
「とりあえず接続してみれば?」
こう言われてオレは ダッシュで病室まで戻った。
バァン と音を立てて部屋に行くと
「どこへ行っていたんだ?」
マルスがオレの病室にいた。
「お前は登録がまだだ 早くしろ」
そう言われて コンピュータをコーテックス回線に接続した。
「レイヴン番号0324ですね 登録は今日が締め切りです 間に合いましたね」
結構可愛い子が 通信に出た。
「では AC名とレイヴンネームを入力してください」
「えっと…AC名 トロンベと…」
オレは少し考えながらキーを打った。
「どうした? レイヴンネーム登録がまだだぞ?」
マルスにそう言われたが
「なんて名前で登録すればいい? 『ユウ』か?」
「フフッ 手違いのことなど気にするな お前の名乗りたい名前で名乗ればいい」
そうか…オレの名前は「ユウ」じゃない
「オレの名前は『カズ・カラサワ』だ!!」
「ちょっと待ってよ 君の名前『カズ・グラックス』でしょ?」
ファナレにつっこまれた。
「いいだろ オレはこの名前がいいんだ いいですよね マルス…さん…」
「好きにしろ」
そうオレは マサの期待も夢も背負ってるんだ オレが叶えなきゃだよな。
「ゴメ〜ン ファナレ遅くなっちゃった〜」
ファナレのペアのメグリムだった。
「あ もう大丈夫なの?…え〜〜っと」
「カズ・カラサワ」
先に言おうとしていたファナレを制し 先ほど登録した名前で名乗った。
「あぁ ヨロシクね カズ ところでカラサワって言えば名銃の……」
さすがはファナレのペア おしゃべりなお方だ…(笑
でも…こういうのも悪くないか…

そしてしばらく4人で 話をしていた。
そう これが運命とも知らずに……
作者:ジェットさん