サイドストーリー

Guardian 02(A)-無敗の敵
まず最初にしなければならないことは、奴の正体を突き止めること。
あのお方を殺したのだから、今日の朝刊に載っていることだろう。
僕は部屋の隅にある、スリープ状態にしてあるパソコンを立ち上げた。
何百年も前、新聞という言葉は最近の社会の情報が印刷された紙のことを指していた。
現代はもちろんそんな古くさいことはしない。
毎朝印刷会社からメールが届き、その中に様々な情報が網羅されているのだ。
誰々が死んだとか何々がどうなったやらの記事は僕にとってまったく意味のないものだった。
僕が新聞を見るときは、あのお方の指令に関係することを調べ上げるときのみだ。
メールボックスを開き、早速今日の記事に目を通してみた。
『管理者破壊 これからのレイヤードはどうあるべきか』
『ユニオンの陰謀 管理者のいない世の中』
関係のない情報は読み飛ばし、次を読んだ。
『リオ=クラヴス大金星』
リオ。こいつか?
その後の文章を読んでみる。
『アリーナで無敗を誇ったエースを打ち破り、見事頂点に輝いたレイヴン、リオ=クラヴス(19)が、
先日管理者を破壊することに成功した。リオ=クラヴスは・・・』
どうやらこいつのようだ。19歳ということは、僕と同い年である。
しかし、あのお方に勝てるようなレイヴンがアリーナにいただろうか?
疑問ではある。だが、最近は世間にまったく干渉していなかった僕には、わからないことがあっても当然だった。
僕はリオについてインターネットで調べることにした。
あいにくだがそいつのファンクラブは多いらしく、簡単に戦績などのデータを取ることができた。
『リオ=クラヴス 19歳 ♂  
16戦0敗0分 アリーナデビューはランクBから
ミッション経験は一度(管理者破壊)のみ。
戦闘スタイルはショットガン&ブレード。エグザイルをブレードだけで勝った話が有名。
ちなみにアリーナ16勝無敗という記録は歴代新記録。
管理者を破壊したときはユニオン提供の特殊ブレードを装備していったらしい。
本人はこう語っている。”あのときは冷や汗ものだった。なにしろ化け物だったんでね”と。
だが、彼はあれ以降その事件については黙秘を続けている。一体中枢で何があったのだろうか?』
16戦無敗で頂点に立ったというのは確かにすごい記録だ。この僕でもそこまでいけるかどうか微妙なのに。
だが、黙秘を続けるというのはどういうことだ?
傲慢で自分のことしか考えないクズ共にしては珍しい。『俺は管理者を倒したんだ』などと自慢はしないのか?
まぁいい。とにかく、現時点で最大にして唯一の問題点は、リオが強すぎることだ。
アリーナでの新記録とあのお方を倒したという事実がある限り、迂闊には手を出せない。
これは入念に作戦を立てる必要があると見える。
しかも、今の僕は普通人だ。
チップがいまだに機能していれば正面対決でも何とかなるかもしれなかったが、今回ばかりはそうも行かない。
あのお方の指令を失敗したことは一度もない。そして今回は最終指令であるからして、絶対に失敗を許されないのだ。
ふと、あのときのことを思い出した。
僕がチップを得てすぐのときであり、目覚めたときでもあった。
作者:Mailトンさん