サイドストーリー

最後の依頼


管理者の破壊され、地下世界に光が差し込んだ。

その光は、もちろん彼にも届いていた。



「地上の光?……そうか、奴は死んだか」

コアに突き刺したブレードを引き抜き、彼は光へ近づいた。

そして機体から身を出し、その体全身で光を受けた。

「…これで俺も自由になれる。」

管理者の消滅、彼にとってそれは依頼の終了を意味する。



奴と契約した時の様子が目に浮かぶ。

そう、奴は唐突に現れた。



『貴様、力が欲しいか?』



俺に一通のメールが送られてきた。



『私の依頼を受諾するなら、報酬代わりに最強をくれてやる。』



迷わず俺は依頼を受けた。

強さばかりを求めていたあの頃の俺にとって、依頼内容など関係なかった。

そして俺は力を手に入れた。

しかし、奴からの依頼『イレギュラーの抹殺』、それは俺から『自由』を奪った。

永遠と続く殺戮の日々、抵抗しようとも奴に貰った力のせいで体が言うことを聞かない。

もはや俺は奴の手ごまと化していた。



だがそれも終わりだ。

雇い主が死んだ今、管理者が死んだ今、俺は呪縛から解き放たれた。

これでもう、穴を開けずにすむ…



ピピ

新着メッセージ1通



『このメールを貴様が見ている時、私は既に破壊されているだろう。

しかし貴様はまだ依頼は達成していない。

イレギュラー、そう称してこれまで貴様に殺させていた連中。

奴らは私の存在に疑問を覚え、私を否定した。

だから殺した。

何が言いたいのか分かるか?

貴様が私に反感を抱いていたのは、うすうす感ずいていた。

すなわち貴様もイレギュラー要素だったのだ。

今まで殺してきたのは、全て貴様の同志だ。



これで分かっただろう。

全てを捨ててまで手に入れた「力」の愚かさを。

貴様はもう、まっとうな人間ではない。

最後まで私の手ごまになってもらう。

そしてこれが、私からの最後の依頼だ。

私を破壊したイレギュラーを殺せ。そして貴様も死ね』



俺はターゲットにメールを送った。

最後の依頼を達成するために。

作者:エマイルさん