サイドストーリー

レイヴン試験
「第2次試験の合格者を発表する。」
試験官の声で、第2次レイブン試験の会場にいた数百のレイブン志願者が静まる。
「合格者は、
カイル、
カタストロフ、
アルスター、
アップルボーイ、
この4名だ。」
試験官が合格者を言うと、他の志願者から、
「そんなーー!!」
とか、
「嘘だーー!!」
とか言う人がいた。
何せ、今回も含め、第1試験の筆記は10分の1まで減り、
第2試験の面接と適正審査で、最終試験の合格者が決まるのである。
その数は片手で数えられるのである。
「やったなアルスター!」
「そうだね。」
「あんた等かい?他の合格者は。」
「そうだけど、あなたがカイル?」
「いや、俺はアップルボーイ。あんた等は?」
「私はカタストロフです。」
「・・・・・・アルスターです。」
「・・・何だか元気無いな、こいつ。」
「ただ、知らない人に怖がっているだけですよ。」
「カ、カタストロフ!!」
アルスターが慌てる。顔も少し赤い。恥ずかしいのだろうか。
「臆病者で、あと優柔不断。」
「関係無い事を・・・。」
「合格者!何をしている!早くこっちに来い。」
試験官がアルスター達向かって叫ぶと、奥に行ってしまった。アルスター達は慌てて後を追う。
「人使いが荒いな、あの試験官。」
「そうだね。」
「あーゆー人は、昇進しない、という法則がある。・・・噂だが。」
「言うね。アップルボーイ。」
しばらく歩くと、格納庫に着いた。そこには、ACが4機あった。
「なるほど・・・。」
「・・・・かっこいい。」
「これがACか!」
「・・・・・・・。」
後ろに気配を感じ、三人は振り返った。そこには、
「あんたがカイルかい?」
「・・・・ああ。」
「あんた・・・・やる気無いだろ。」
「・・・悪いか?」
「いや、悪くは無いが・・・。」
「なら、言うな。」
そう言うと、カイルはACの元に向かった。
「合格者!さっさとACに乗れ!」
試験官が叫んだ。3人は慌ててACに乗た。
乗り込むと通信機から試験官から声が聞こえ、
カイルとアップルボーイは1番輸送機、アルスターとカタストロフは2番輸送機乗れ、
と通信が入った。
カイルは素早く操作して輸送機に乗り込んだが、アップルボーイは戸惑いながらも乗った。
「カイル。」
「・・・・・。」
「前はMT乗りだったか?」
「・・・・ああ。」
「操作が滑らかだから。」
「・・・それで?」
「いや、それだけ。」
「なら、言うな。」
そのまま、沈黙が続き、
「そろそろ目標地点に到達する。君たちに課せられた依頼を確認する。
目標は市街地を制圧している部隊の撃破。敵戦力は戦闘メカだ。このチャンスに二度目は無い。
必ず成功させることだ。」
そして、ハッチが開き、
「機体を降下する。ミッションを開始せよ。」
カイルとアップルボーイの駆るACが降下した。

「あいかわらずだな。」
「・・・いたのか、シャウシュッツ。」
試験官は監視を補佐に任せて、後ろを向いた。
「いたのか、じゃ無いだろ。」
「仕事はどうした。」
「オペレーターがいなければ仕事にならない。分かっているだろ。」
実は、この試験官はこのレイブン、シャウシュッツのオペレーターなのである。
「で、どんな所?」
「最終試験が今開始された。」
「気になる奴はいたか?」
「ああ。」
試験官、リールはシャウシュッツにある奴の資料を見せた。
「何々・・・カイル?何処かで聞いたことがあったような・・・。」
「以前、僚機で雇ったことがあるはずだ。」
「・・・あのMT乗りか。」
「そうだ。そいつがここにいる。」
「どうして、気になるんだ?」
「そいつには、兄がいた。」
「いた?」
「そいつの兄は、ここ1、2週間の間、姿を見ていない。」
「そいつはレイブン?」
「ああ。」
「そいつの名は、ノヴァ。」
「そいつは!」
シャウシュッツは流石に驚いた。
「ああ、以前お前をアリーナで秒殺したレイブンだ。」
「あいつの弟・・・。確かに気になる。」
「試験官。」
「どうした。」
「カイル、アップルボーイの方の試験が終了しました。」
「何!」
リールとシャウシュッツは時計を見る。わずか二十秒未満。
「早いな。」
「お前以来だ。この速さは。」
リールは真剣に言った。
「その映像はあるか?」
「はい。」
「出してくれ。」
補佐はそのときの映像を出した。

カイルとアップルボーイは地面に降りた。その直後、敵の攻撃が来る。
「うわっと。」
「・・・・・・。」
アップルボーイはギリギリで避けきる。カイルは、
バキュン。バキュン。
ドゴン。ドゴン。
回避後の一瞬をついて、2機を2発で落とす。それぞれの動力部に命中したらしい。
「さすが。」
「後ろは任せる。」
そう言うと、さっさと行ってしまった。
「お、おい!」
「少しは倒せ。」
ブツ
「・・・・・通信機、切ったな。」
また爆音。アップルボーイも走り出した。
バキュン。バキュン。バキュン。
ドゴン。
「よし!」
アップルボーイも1機撃破した。
「よーしこの調子で・・・。」
「終わったぞ。」
後ろを見ると、カイルのACがいた。
「終わったって・・・。」
アップルボーイはレーダーを見る。しかし、反応がひとつもない。
「まさか、お前が?。」
「ああ。」
カイルは簡素に言うと、輸送機に戻った。
「・・・すごいと言うか、なんてゆうか・・・。」

「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
シャウシュッツ、リール、補佐は黙り込む。
「・・・アルスター、カタストロフの方も終わりました。」
「・・・そうか。」
リールは通信機を繋げて、
「敵部隊の全滅を確認。なかなかの腕前だ。そうでなくては。」
リールは間を置いて、
「ようこそ、新たなるレイブン。我々は君達を歓迎する。」

カイル達が格納庫に戻って来た時、格納庫にはリールとシャウシュッツがいた。
「・・・・・。」
「まだなんかあるのかよ・・・。」
「嫌なんだよな・・・。」
「そうそう。ああいう奴は、女に好かれない。」
アルスター達が色々言っているが、リールは気にせず、
「おめでとう、新たなるレイブン。実は、後もうひとつ、渡す物がある。」
そう言うと、4人の係員だと思われる男女が何かを持ってきた。
「これは・・・?」
「AC用のパイロットスーツだ。」
「パイロットスーツ・・・?」
「これは・・・。」
「これは、絶縁、耐熱、耐寒する特殊素材で出来ている。」
リールが言う前に、シャウシュッツが言った。
「AC自体は機密性が高いが、外部から空気を取り入れる仕組みになっている。
その為、水中や空気が薄い所では空気が取り入れられないんだ。
その為、このメットがある。このメットには12時間分の酸素が入っている。」
「・・・・・・・・。」
カイルは何もかも分かっているかのように、出口に向かって行った。
「次回からはこれの着用をしっかりしろ。
依頼中に感電死や窒息死になってもこちらは責任を取れないので、あしからず・・・。」
リールが最後にこう言い、
「以上だ。解散!」
アルスター達は、
「・・・試験、怖かったーー。」
「よく言う。ライフル乱射していたくせに。」
「へ〜。そうなんだ。」
「カタストロフ!!」
と、雑談をしながら帰っていた。
「あれ?」
「どうした?」
「カイルがいない・・・。」
どうやら、説明に夢中で、出て行ったのに気づかなかったらしい。
「あ〜あ、ノヴァについて聞きたかったのに・・・。」
「今度あったときに聞けばいいじゃないか。」
「そりゃそうか。」
そう言い、シャウシュッツとリールは帰っていった。

「・・・・。」
カイルは、自分の部屋である物を見ていた。小型のチップだった。
カイルは、チップとナイフを取った。カイルはナイフを額に僅かに切った。
切った部分にチップを入れた。チップは徐々に額の中に入っていった。
「数少ない成功品・・・か。」
カイルは不思議な言葉を残し、眠りについた。
これから始まる壮絶な戦いが始まる事を、この時、誰も気づかなかったのである。
作者:カイルさん